タクシー業界における2024年問題とは?影響や対策を解説
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- 2024年問題とは、労働時間などの法改正によって運送・物流業で生じる恐れがある問題
- タクシー業界では、ドライバーの収入低下や稼働率・利用者の減少が懸念されている
- 今後のタクシー業界は、2025年問題などから安定的に需要が見込まれると言われている
働き方改革の一環として、2024年4月から時間外労働の上限規制がタクシー業界にも適用されました。これに伴い、改善基準告示の改正も行われ、ドライバーの労働環境が見直されています。この記事では、タクシー業界における2024年問題や対策などについて解説します。
2024年問題はタクシー業界にも影響

労働者が個に応じた多様で柔軟な働き方を選択できるようにすることを主な目的とする「働き方改革」が、政府によって進められています。その中で労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制や、有給休暇取得の義務化などが行われました。
物流・運送業界は、業務内容の特性や短期間での環境整備の難しさから、これらへの対応を2024年3月末まで猶予されていました。しかし、2024年4月1日から完全実施され、それに伴って発生する物流・運送業界の課題を「2024問題」と呼ばれています。
2024年問題は、タクシー業界にも大きな影響を与えると予測されていました。そこで本記事では、タクシー業界の改善基準告示の改正を基に、2024年問題や今後のタクシー業界で予想されていることについて解説します。

2024年問題とは?物流業界への影響や対処法をわかりやすく解説
2024年問題とは、働き方改革法案により、2024年4月1日からドライバーの時間外労働に上限が課されたことで生じる問題を指します。この記事では、2024年問題の概要や、2024年問題によって何が起きるのか、また諸問題への対処方法などについて解説します。
改善基準告示の改正
改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)のことを指します。
この基準は、自動車運転者の健康確保と利用者の安全確保を目的としており、2024年4月からは時間外労働の上限規制と合わせて改正・適用が始まりました。タクシー運転者の場合、勤務形態(日勤勤務・隔日勤務)ごとに拘束時間や休息時間の上限が定められています。
改善基準告示では、拘束時間の上限や休息期間についての基準が示されています。改正後の基準を下記で紹介します。
日勤勤務の場合
| 拘束時間 | 基準 |
|---|---|
| 1か月の拘束時間 | 288時間以内 |
| 1日の拘束時間 | 13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安) |
| 1日の休息時間 | 継続11時間与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない |
隔日勤務の場合
| 拘束時間 | 基準 |
|---|---|
| 1か月の拘束時間 | 262時間以内 ※地域的その他特別な事情がある場合、 労使協定により270時間まで延長可能(ただし年6回まで) |
| 2暦日の拘束時間 | 22時間以内、かつ、2回の隔日勤務を平均し1回あたり21時間以内 |
| 2暦日の休息時間 | 継続24時間与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回らない |
2024年問題によるタクシー業界への影響

上記のような規制に基づいたタクシードライバーの管理が2024年4月1日から必要になったことで、タクシー業界では「ドライバーの収入低下」「利用者の減少」などが懸念されていました。
ここではこの2点について詳しく解説します。
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タクシー業界に起こり得る2024年問題
ドライバーの収入低下
2024年の改善基準告示の改正により、日勤での1か月の拘束時間は299時間から288時間と11時間短縮しました。休息時間の延長や拘束時間上限の回数制限なども設けられたため、実質的なドライバーの労働時間が減ることによる収入の減少が課題となっています。
特にタクシー業界は、歩合制で働くドライバーが多く、乗車回数がそのまま収入に繋がります。そのため、労働時間の減少によって乗客が減り、大幅な減収に陥るケースもあります。
このような影響からタクシー業界には、一定の業務時間内にできる限り多く集客するための工夫が必要になります。
利用者の減少
2024年問題による労働時間の短縮は、タクシーの稼働率低下に繋がり、タクシーの待ち時間が増加してしまうことが予想されていました。その結果、需要に対して供給が追いつかず、一部では移動方法を公共交通機関に移行し、利用者の減少を懸念する声もあります。
そのため、タクシー業界には、スムーズにタクシーを呼べる仕組みの構築や、安定性・利便性といったタクシーならではの強みの発信が求められます。
タクシー業界の2024年問題への対処方法

タクシー業界の2024年問題への対処には、タクシー利用の利便性を高めた集客やタクシードライバーの労働環境を整え、ドライバーを増加させることが大切です。ここでは、この2つの対処方法について詳しく解説します。
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タクシー業界の2024年問題への対処方法
配車アプリに対応する
タクシー利用者を増やして、2024年問題へ対応するためには、近年普及している配車アプリの活用が効果的です。配車アプリでタクシーを予約することで、利用者は待ち時間の減少を図れるため、利用者満足度の向上やタクシー離れの防止につなげられます。
また、利用者とドライバーのマッチングも行いやすいことで、タクシードライバーも効率的に乗客の確保ができ、歩合制ドライバーの収入減少も抑えられます。これにより、収入面の安定化にも繋がり、離職防止や人材定着にも期待できます。
研修体制・福利厚生を充実させる
以前からタクシー業界には、ドライバー不足が課題となっていました。その背景には、少子高齢化による労働人口の減少や、ドライバーの高齢化・引退などがあります。さらに、2024年問題が重なり、ドライバー不足が加速することが危惧されます。
このようなリスクに対応するためには、働きやすく長く続けられる職場環境の整備が求められます。例えば、高齢者や外国人観光客でも不安なく対応できるようにするための研修や、若年層ドライバーや女性ドライバーの雇用を推進するための福利厚生の充実も効果的です。
新しい技術を取り入れる
新しい技術の積極的な導入も、タクシー業界における2024年問題が与える影響の解決に繋がります。代表的な技術として、AIが挙げられます。
AIはすでに、タクシー業界で需要予測のために利用されています。過去の走行データをもとに、乗客の多いスポットがわかる仕組みです。限られた稼働時間の中でより多くの乗客を乗せることができ、収入の減少を抑えられます。
また、カーナビの最短ルート計算にもAIが利用されています。これまでのGPSを使ったカーナビよりも高精度であり、より効率的な走行が可能になるため、ドライバーの負担軽減や利用者の満足度向上に繋がります。
タクシー業界の今後とは

現在、タクシー業界は2025年問題の影響も受け、需要の増加が見込まれます。また、物流ドライバーからの転職も増加傾向にあり、慢性的な人手不足であるタクシー業界にとっては人材確保のチャンスに繋がるでしょう。
ここからは、2024年問題を経たタクシー業界のこれからの見通しについて解説します。
安定的な需要が見込まれる
タクシー業界は、今後も長期的に安定した需要が見込まれます。その背景には、団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」を迎え、ますます高齢化が進むことが挙げられます。
2025年問題とは、団塊世代である800万人が後期高齢者となり、超高齢社会が訪れることで生じるさまざまな影響を指します。運転免許を自主返納した人や、体調面から車の運転が難しい人にとって、通院や買い物、日常の移動手段としてタクシーは重要な移動手段です。
公共交通機関を利用する際の負担を避けたいというニーズも高まっており、タクシーの需要増加が見込まれていると言われています。
物流ドライバーからの転職増加
近年、物流業界からタクシー業界への転職者が増加傾向にあります。これは、2024年問題によって、運送ドライバーの残業時間が制限されたことで、これまでの収入を維持できなくなった人が運転スキルを活かせるタクシー業界へと転職するケースが増えているためです。
また、タクシー業界はインバウンド需要や上述したような高齢化社会による影響から、将来的にも安定した需要が見込まれる業界です。そのため、転職者にとっては、今後も成長が期待できる職種として注目され、業界全体の人材確保にもつながっています。
まとめ

政府が推し進める働き方改革によって、労働者の時間外労働に上限が設けられました。物流・運送業界は、業務の特殊性から実施の猶予期間が設けられましたが、2024年4月から本格的に実施されました。これによって生じるさまざまな問題が「2024年問題」です。
タクシー業界においても改善基準告示の改正が行われ、タクシードライバーの収入や稼働率の低下が懸念されていました。2024年問題を経てもなお、タクシー業界ではドライバー不足が続いており、需要に対して供給が追いつかない地域も少なくありません。
こうした中で、業界全体が配車アプリへの対応や研修体制・福利厚生の充実など、働きやすい環境づくりが求められます。本記事の内容を参考に、時間外労働の短縮による影響を理解し、ドライバー不足や需要への効果的な対応を進めていきましょう。
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