MaaSとは?MaaS誕生の背景やビジネスにおける動向を解説

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  • MaaSとは、交通手段検索・自動運転などさまざまな形態を統合した輸送サービスである
  • MaaS導入は、物流の効率化や交通混雑の緩和など企業と利用者にとってメリットが多い
  • 現状で日本のMaaS統合レベルは低く、今後ますますMaaS領域の拡大が予想される

MaaSとは、従来の交通手段検索サービスに加えて、予約・決済・自動運転・ AIなどさまざまな形態を統合した次世代の輸送サービスを指します。歴史は浅いものの、今後の発展が期待されています。本記事では、MaaSの意味や導入メリット、今後の動向などを解説します。

目次

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  1. MaaSとは
  2. MaaS導入のメリット
  3. MaaS導入のデメリット
  4. ビジネスにおいてMaaSの領域は拡大している
  5. まとめ

MaaSとは

MaaSとはMobility as a Serviceの頭文字をとった言葉で、直訳すると「サービスとしてのモビリティ」という意味を持っています。移動手段をサービスとして提供する新しい交通システムを指します。

MaaSは公共交通機関・自転車・カーシェア・タクシーなどマイカーを除くさまざまな移動サービスとテクノロジーを融合させ、1つのサービスで利用できることを意味します。また、データ連携により予約・決済などを一連で完結させることもMaaSに含まれます。

交通の利便性を高める方法は多くありますが、MaaSを使うことでユーザーは1つのプラットフォームやアプリを通じて必要な移動手段をまとめて選択できます。また、地方に合わせたサービスの提供や異業種との連携も可能になります。

MaaSの普及によって、単なるユーザー側の利便性の向上に限らず、交通渋滞の解消や地方と都市部の交通格差の解消など多くの問題解決が期待されています。

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MaaS誕生の背景

MaaSの歴史はまだ浅く、2016年にフィンランドがMaaSに取り組んだことによって全世界に広まりました。ここでは、フィンランドと日本に分けてMaaSが誕生した背景や歴史を解説します。

MaaSがフィンランドで誕生した背景

MaaSをいち早く導入したのは、フィンランドです。フィンランドは自国の自家用車メーカーを持たず、国民が車を持つことは輸入車の購入を意味します。輸入車は高額になるため、車を持ちにくいフィンランドでは公共交通の効率化が課題とされていました。

自家用車の購入で国民の所得が海外に流出することを防ぐためにも、フィンランドは国を挙げてMaaSに取り組み、2016年に世界に先駆けたMaaSのプラットフォーム「Whim」を完成させました。

フィンランドの首都ヘルシンキの周辺では、MaaS専用アプリを使えば電車・バス・タクシーなどの交通手段がサブスク制で乗り放題になります。その結果、利便性の向上や混雑の解消に効果を発揮しました。

フィンランドでの取り組みによって世界でも注目されはじめたMaaSは、現代社会における交通の課題と大きな変化を続けるユーザーのニーズの両方に対応するための取り組みとして注目されています。

日本でのMaaSの歴史

フィンランドではMaaSによって利便性の向上や混雑の解消がされ、その効果を見込んで、日本でも2017年にMaaSの導入が検討され始めました。翌年の2018年には一般社団法人JCoMaaSが発足され、MaaSの社会実装が本格的に動き出しました。

2019年には経済産業省と国土交通省がMaaSの取り組みを支援するプロジェクトを開始し、MaaSの実証実験が実施されるなど、MaaSは日々進歩しています。歴史こそ浅いものの、MaaSの導入は着実に進んでいます。

参考:スマートモビリティチャレンジ|経済産業省 国土交通省

国土交通省によるMaaS統合レベル

日本でもMaaSの推進が進められており、国土交通省は統合の段階をレベル0から4までの5段階に分類しています。構築に最低限必要とされる静的・動的データのみを使った段階をレベル1とし、レベル2以上では予約・決済データの統合が必要となります。

日本におけるMaaSはまだ多くの課題を抱えた発展途上の状態であり、複数の交通サービスの連携や定額制での提供には至っていません。そのため、大半がレベル1・部分的にレベル2に該当します。

レベル内容
情報が統合されていない
静的・動的データの一部が統合され、交通手段や運賃などが検索できる
複数の交通手段が単一化され、検索・予約・決済までが可能
複数の交通手段を定額制で提供できる
交通制御により人やモノの流れをコントロールし、まちづくりとの連携が可能

参考:国土交通省のMaaS推進に関する取組について|国土交通省

MaaS導入のメリット

MaaSを導入することで、地方の交通環境の改善や経済面での利益などさまざまなメリットが得られます。代表的なメリットを6つ解説します。

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交通混雑の緩和に繋がる

MaaSを導入することで、自家用車を使わなくても公共交通機関・カーシェア・自動運転サービスの利用など、便利かつ経済的に移動できる選択肢が広がります。また、タクシーやレンタカーを含めた定額制サービスが導入されれば、経済的なメリットも期待できます。

公道における車両数の減少は交通混雑の緩和に繋がり、旅客輸送や物流がスムーズになります。ただし、MaaSの普及が進むと自家用車の減少が見込まれ、自動車産業への影響が心配されています。

交通面での弱者対策になる

バスや電車などの本数が少ない地方においても、MaaSは力を発揮します。自力での運転が難しくなった高齢者でも、バス・乗合タクシー・自動運転サービスなどを気軽に利用できるようになり、便利で安全な移動手段を確保できます。

MaaSにより人の流れを把握できれば、より効率的なルートで地方を運行するコミュニティバスなどを導入することも可能になります。高齢者や地方在住者などの交通弱者が取り残されない社会の実現に、一歩近付くことができます。

物流の効率化ができる

MaaSを使った情報の連携により物流事業者が交通情報を把握することができれば、事前に混雑を回避することも可能になります。また、交通渋滞がMaaSによって軽減されれば配達にかかる時間が短くなり、物流の大幅な効率化に繋がります。

物流の効率化はドライバー不足や運送業における働き方改革などの問題解決にも関連するため、物流・運送業界においても大きなメリットが得られます。2024年から施行となったドライバーの時間外労働上限規制への対策にも有効です。

参考:自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト|厚生労働省

観光業への活性化に繋がる

旅行者が観光地での交通手段を選ぶ際、MaaSによって情報が統合されていればアプリなどで簡単に最適な交通手段を選ぶことができます。予約や支払いなども一括してスムーズに行えるため、観光地の混雑解消にも繋がります。

また、交通手段が限られている地方の観光地へもアクセスしやすくなり、交通手段の少なさを理由に足が遠のいていた観光客数の増加や、滞在時間の延長に伴う収益の増加なども期待できます。

SDGsに貢献できる

MaaSによって公共交通機関の利用頻度が増加すると、自家用車を使う機会が減少するため、自動車の排気ガスに含まれる温室効果ガス排出量の削減に繋がります。

SDGsが掲げる17の目標のうち、気候変動対策・住みつづけられる街づくり・産業と技術革新の基盤づくりの3つの目標は、MaaSと大きな関わりを持っています。課題の中にはモビリティも含まれており、持続可能な社会を考える上で切り離せない繋がりがあります。

スマートシティ実現に繋がる

AIなどのデジタル技術によって収集されたデータを活用し、生活の向上に役立てるスマートシティを目指す上でも、MaaSの導入は大きなメリットがあります。MaaSは交通データとそれに関連するさまざまなデータを取得し、最適な選択肢を作り出してくれます。

都市の利便性を図る上で、モビリティは欠かせない重要な要素です。そのため、MaaSの導入は結果的にスマートシティの実現を促進させることに繋がります。

MaaS導入のデメリット

MaaSの導入にあたり、日本ならではの事情によるデメリットもあります。考えられるデメリットを4つ取り上げていきます。

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社内データを開示する必要がある

MaaSを活用するためには、多くの企業が社内データの開示に同意し提供を行う必要があります。しかし、日本の民間企業の多くは社内データを外に出したがらない傾向があるため、MaaSに不可欠なデータの取得が難航してしまう可能性があります。

情報社会を迎えた現代において、社内データは貴重な財産とも言えます。データの活用によって見込まれるメリットが現実になるかは不確定であり、MaaS導入の課題となっています。

法律を確認する必要がある

MaaSを活用したサービスを導入するには、まず交通法や道路運送車両法などの法律に違反していないかどうかの確認が必要になります。現在の法律ではMaaSなどのサービスが想定されていないため、一部法の緩和なども必要になります。

現在の日本では自動運転車の実用化などが段階的に進んでいる状態で、今後も法整備を進めていくことが期待されます。

価格を法律に順する必要がある

日本の交通は多くが民間企業によって運営されていますが、運賃の設定や変更には国土交通省の許可が必要です。そのため、サービスにあわせた柔軟な運賃を設定することが難しく、特に定額制を取り入れる際には大きなハードルとなることが予測されます。

あらゆる業界でサブスクリプションが導入されていますが、交通の業界で導入されていないのは価格設定の難しさが影響しています。

地域特性を加味する必要がある

MaaSの導入により交通格差の解消や利便性の向上が期待される地方は多くありますが、それぞれの地域が異なる事情をもち、個別の問題を抱えています。

そのため、都市での使用を想定して開発された画一的なアプリでは問題が解消されず、地方ごとに多くのアプリが乱立してしまう可能性があります。

ビジネスにおいてMaaSの領域は拡大している

日本でも一部の企業がMaaS事業に取り組んでいます。配送業者向けアプリやタクシー配車アプリが開発されているほか、自動車メーカーによる自動運転技術と通信サービス企業のデータ活用の技術を組み合わせた異業種の連携による取り組みも進められています。

MaaSによって1人ひとりに最適な交通手段を効率的に選択できるようになれば、都市部と地方の交通格差の軽減や渋滞の緩和に繋がります。また、SDGsに取り組みイメージアップを図りたい企業や自治体にとっても大きなビジネスチャンスとなります。

さらに、MaaSの普及が進むと、複数の交通事業者が協力し合ってデータを共有することが不可欠になります。このようにして取得されたビッグデータは都市全体の交通開発や関連サービスの提供にも繋がり新たな市場を生み出します。

まとめ

現在の日本ではまだMaaSのレベルは発展途上にあり、大きな伸び代を抱えた状態です。MaaSの導入によりユーザーは大きな利便性を享受でき、物流業者や開発業者にとっても無駄のない効果的なサービスを実現できるという大きなメリットがあります。
MaaSは、高齢者が増加する地方での交通問題解消や物流の効率化など多くの課題に対する解決策となり、官民連携で今後もますます領域を拡大させていくことが予想されます。

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