アジャイル開発とは|ウォーターフォールとの違いやメリットを解説

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  • アジャイル開発はプロジェクト開発手法の一つで、DX推進に繋がる
  • アジャイル開発では、顧客満足度や品質が向上する特徴がある
  • アジャイル開発には、スクラム・XP・FDDといった手法がある

アジャイル開発は、システムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法のひとつで、トラブルが発生した際に戻る工数が少なくて済むといったメリットがあります。本記事では、アジャイル開発の意味と、特徴やメリット・デメリットの他、進め方の例を解説します。

目次

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  1. アジャイル開発とは
  2. アジャイル開発の特徴
  3. アジャイル開発のメリット
  4. アジャイル開発のデメリット
  5. アジャイル開発が適しているプロジェクト
  6. アジャイル開発の手法
  7. アジャイル開発の進め方の例
  8. まとめ

アジャイル開発とは

アジャイル開発とは、近年のシステム開発の主流となっている開発方法のことです。まず開発したいシステムの大まかな仕様を決め、その実装される各機能ごとに計画・設計・実装・テストを繰り返すことで、少ない工数で短期間の開発を目指します。

そもそもアジャイル(Agile)とは、「素早い」「機敏な」「頭の回転が早い」という意味を持ち、その名の通り素早い開発を行うためにも、システム機能の細かいブラッシュアップは、クライアントやユーザーのフィードバックを参考に都度修正していきます。

多くのシステム開発者が課題を持つ、DX推進(デジタルトランスフォーメーション)のプロジェクトに向けて、アジャイル開発は大変注目を集めています。アジャイル開発の特徴である、小さな単位で繰り返す開発スタイルが正確さと品質向上を叶えます。

ウォーターフォール開発との違い

アジャイル開発のほかに、ウォーターフォール開発というシステム開発方法があります。

ウォーターフォール開発は古くから開発の分野で採用されており、手順がシンプルな工程でわかりやすいのが特徴です。「要件定義→設計→実装→テスト→リリース」という開発における一連の流れを、滝(Waterfall)のように上から下へと一気に実行します。

アジャイル開発は大まかな仕様をざっくり決めて設計・実装・テストを繰り返す手法ですが、ウォーターフォール開発は各フェーズを細かく取り決め、完成・テストまでの全工程が完了した後にリリースされます。

ウォーターフォール開発は一つひとつの工程を完結させながら行うため多くの工程を必要とし、前提として前の工程には戻りません。そのため、完成後のバグの修正や仕様変更に対応しにくいですが、予めシステム要件や仕様が細かく決められている基幹システムなどの開発には重宝されます。

アジャイル開発の特徴

アジャイル開発は、変化への対応が柔軟であるため、顧客からの評価も高まる傾向があり、会社の品質向上にも繋がるなどの特徴があります。アジャイル開発の特徴について、具体的に解説します。

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利用したい機能をタイムリーに利用できる

アジャイル開発は、計画・設計・実装・テストといった機能単位の小さいサイクルで繰り返す、反復増加型開発により顧客のフィードバックを反復ごとにリリースします。小さな単位の短いサイクルで行うため、利用したい機能がタイムリーに利用可能です。

優先順位の高い機能から着手できるため、顧客のニーズに合わせられます。より速いスピードでニーズに合った開発を進められるのが、アジャイル開発の特徴です。

要求の変化に柔軟に対応できる

アジャイル開発はリリースを行うごとに、開発の機能を選別します。顧客のニーズに合わせて、不要な機能は削除したり、新たに必要な機能を追加したり、要求の変化に柔軟に対応できるのが特徴です。

また、確定していない要望や、変更の可能性が高い機能に関しては、次のリリース時に実装するかどうか検討されるため見送りされます。確定している要望から優先的に開発対象として着手していくためです。

顧客満足度が向上する

アジャイル開発は、工程のひとつひとつの改善を行い完璧なものとして開発します。優先順位の高い機能から順に、利用できる状態に完成させるため、利用したい機能を優先的に顧客は利用が可能です。

そのため、顧客のニーズに合った素早い対応ができるため、顧客満足度が向上する傾向が多いです。一つひとつにニーズを取り入れて完璧な状態に仕上げることで、トラブルが少なくハイクオリティを目指します。

チームの成長を促す

アジャイル開発は、基本的に開発担当者・実装担当者などの役割分担を設けずに行います。計画・設計・実装・テストのサイクルを繰り返すことで、さまざまな作業を何度も行います。そのため、技術力の向上・応用性など開発に関するスキルアップも可能です。

また、同じチームで開発作業を繰り返していくことで、チーム全体のモチベーション維持にも繋がります。そのため、工程のプロセス向上や、マネジメント向上など、さまざまなクオリティアップにも効果が期待できます。

アジャイル開発のメリット

  1. トラブル発生時の修正工数が少ない
  2. ニーズに対応しやすい
  3. 開発のスピードが速い

アジャイル開発には、さまざまなメリットがあります。アジャイル開発は、急な変更やトラブルが発生した場合でも、機能が完成するごとにリリースされているので、不具合箇所を発見しやすいです。そのため、修正工数を最小限に抑えることができます

リリースの際は顧客の要求を優先的に採用するため、ニーズに合った対応が可能です。また、小さな単位で実装とテストを繰り返すため、開発のスピードが従来よりも速いのがメリットです。

アジャイル開発のデメリット

  1. 全体のスケジュール管理がしにくい
  2. 開発の方向性がぶれやすい

アジャイル開発は、はじめに設定した開発スケジュールに沿って進められますが、開発途中でのリリースが発生するため、スケジュールのコントロールが難しいケースがあります。そのため、全体でのスケジュールや作業フェーズが把握しにくいです。

また、開発途中での仕様変更や要望により、開発の方向性がぶれやすいのがデメリットです。アジャイル開発は、仕様を明確にしない状態で開発を行うため、変更や要望を取り入れやすいのが特徴です。

しかし、無駄な工期や当初の仕様からの大きなブレが生じないように、方向性に関してはコントロールが必要です。

アジャイル開発が適しているプロジェクト

システム開発は、プロジェクトによって適した開発手法が異なります。ここでは、アジャイル開発が具体的にどういったプロジェクトに向いているのか、また不向きなプロジェクトについても解説します。

向いているプロジェクト

アジャイル開発が向いているプロジェクトとしては、「仕様変更が発生する可能性があるもの」が挙げられます。前述の通り、アジャイル開発は前の工程に戻ることを前提とした反復型開発であるため、仕様変更が想定されるケースに向いています。

また、システム要件がしっかり固まっていない場合にも適しています。例えば、全体の7〜8割ほどはシステム要件が定まってはいるものの、残りの1〜2割はリリース後の反応などを見て決めていきたいなど、臨機応変に対処したいケースに活用されます。

不向きなプロジェクト

アジャイル開発が不向きなプロジェクトとしては、ウォーターフォール開発が向いているようなプロジェクトです。

具体的には、銀行のシステムや大規模システムなど、ミスが許されないような高品質の担保が必要なシステムの他、人員数が多く綿密なスケジュールを組むようなプロジェクトです。アジャイル開発は、このような自由度の低いプロジェクトには不向きだと言えるでしょう。

アジャイル開発の手法

アジャイル開発には、スクラム・エクストリーム・プログラミング(XP)・ユーザー機能駆動開発(FDD)という3つの手法があります。それぞれの手法について、特徴を具体的に解説します。

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手法特徴
スクラム少人数チーム・短期間で行う手法
エクストリーム・プログラミング(XP)変更や要望への対応力が高い手法
ユーザー機能駆動開発(FDD)機能ごとにチーム分け・大規模プロジェクト向け

スクラム

スクラムとは、短い期間でシステム開発を行うアジャイル開発における手法のひとつです。少人数のチームに分かれ、短期間のリリースを繰り返し行います。2週間や1ヶ月以内の「スプリント」という単位を設け、計画・実装・テストを繰り返し、精度を高めます。

スクラムのフレームワークには、チーム主体のロールがあり、責任者に頼らずチーム全体でマネジメントを行うことが重視されています。そのため、チーム内でのコミュニケーションが非常に重要です。チーム内での対話がない場合、リリースの改善にも影響します。

エクストリーム・プログラミング(XP)

エクストリーム・プログラミング(XP)とは、顧客の要望を取り入れながら臨機応変に進める手法のひとつです。設計・実装・テストのサイクルを「イテレーション」と呼び、顧客の意見や要望を取り入れながら開発を行うため、はじめから仕様を明確に計画しません。

エクストリーム・プログラミングは、勢いよく開発を進めるスクラムとは違い、継続的な成長に着目しています。顧客のニーズを取りこぼしなく取り入れるために、コミュニケーションを重視しているのが特徴です。

また、要望を重視するため、当初の設計は極シンプルな基本機能だけを盛り込み、要望の都度対応していきます。

ユーザー機能駆動開発(FDD)

ユーザー機能駆動開発(FDD)は、ユーザーにとって価値のある機能(フィーチャー)を中心に開発を進める手法の一つです。開発する機能ごとにチームを分けることで、大規模なプロジェクトにも対応ができます。

ユーザー機能駆動開発の流れは、プロジェクトの全体像を明らかにしたうえで、フィーチャーごとのチームごとに、単位の小さいイテレーションを行います。イテレーションの期間は1~2日程度ですが、ユーザーニーズの把握に時間がかかると遅延しやすいです。

チーム内ではドキュメントのやり取りが中心となり、コミュニケーションは特段重視していません。

アジャイル開発の進め方の例

  1. 取り組むテーマを決定する
  2. チームビルディングを行う
  3. 全体のスケジュールを作成する
  4. 短い期間で開発を行う
  5. 次に取り組むべきテーマを検討する

アジャイル開発は、以上の手順で進めていきます。まずはじめに、取り組むテーマを決定します。アジャイル開発はユーザーの要望を受け入れながら改善を繰り返すため、当初のテーマと大きくずれないように「プロジェクトを開発する目的」を明確にすることが大切です。

テーマが決定したら、工程ごとの役割分担はせずに、プロジェクト単位でチーム構成を行います。アジャイル開発は、仕様の変更を繰り返し行うため、スケジュール管理が難しい傾向がありますが、チーム全体のスケジュールは、チームごとに設定しておく必要があります。

決定したスケジュールは流動的になりますが、リリースごとに振り返り、リリース計画を更新します。ここでは、プロジェクトや機能ごとに、1~4週間程度の短期間で開発を行うことを前提とします。

最終的にイテレーションを行い、プロジェクトを仕上げた後には、さらに精度を高めるのか、完了するのか、次に行うテーマを検討します。

まとめ

アジャイル開発は、短期間で品質の高いシステム開発を行えるため、DX推進のプロジェクトに向けて大変注目を集めている手法です。小さな単位で繰り返す開発スタイルは、正確性がありトラブル発生時に戻る工数が少ないメリットがあります。

顧客の要望を取り入れながら開発を行い、改善を繰り返すため、ニーズに合った機能がすぐに利用できます。そのため、顧客満足度や、技術者のスキルアップにも繋がり高品質の開発が可能です。

しかし、顧客の要望を柔軟に取り入れて仕様変更を繰り返すため、スケジュールや当初のテーマがブレやすいデメリットもあります。アジャイル開発、ウォーターフォール開発など、プロジェクトに合った手法を採用しましょう。

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