ウェルビーイングとは?意味や要素、企業に取り入れるメリットも解説

Check!

  • ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に良好な状態を表す概念のこと
  • 価値観の多様化や人材不足などの社会的背景から、ウェルビーイングは注目されている
  • ウェルビーイングを目指す取り組みにより、社内の生産性向上やEVP向上に繋がる

ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に満たされ良好な状態であることを表す概念です。会社を健康的に経営していくにあたって重要な概念として、近年注目されています。本記事ではウェルビーイングの意味やメリット、概念を取り入れた取り組み例などを紹介します。

目次

開く

閉じる

  1. ウェルビーイングの意味とは
  2. ウェルビーイングとウェルフェアの違い
  3. ウェルビーイングが注目される社会的背景
  4. ウェルビーイングの5つの要素
  5. ウェルビーイングの2つの判断軸
  6. ウェルビーイングの向上を促すPERMA理論
  7. ウェルビーイングが企業にもたらすメリット
  8. ウェルビーイングへの取り組み例
  9. ウェルビーイングを進める際の注意点
  10. まとめ

ウェルビーイングの意味とは

ウェルビーイングとは、身体的・精神的な健康と社会的に良好な状態を表す概念を指します。この概念は、1948年に施行された世界保健機関憲章の内容が元になっています。

この概念を元に、従業員が身体的・精神的・社会的な面でも満たされるよう、会社や組織の環境を整える「ウェルビーイング経営」が注目されています。これは会社を健康的に経営するにあたって重要な概念と言えます。

また、満足度・生活の質についての幅広い視点を目に見える形にする目的で、現在は内閣府により満足度・生活の質を表す指標群が公開されています。

参考:満足度・生活の質を表す指標群|内閣府

ウェルビーイングとウェルフェアの違い

ウェルビーイングと混同されやすい用語に「ウェルフェア」があります。ウェルビーイングとウェルフェアは、お互いの間に関わりがありますが、両者の意味は異なります。

ウェルフェアは、貧困者や障害などがある方の生活を保障する「福祉」の意味を含む用語で、会社組織についての文脈では「福利厚生」の領域で使われる場合が多いです。

企業においての福利厚生とは、従業員の職場環境や生活を改善し、仕事に対するモチベーションや企業に対する愛社精神を向上させる目的で行われます。福利厚生には、法律で決められた法定福利と、企業独自の制度を指す法定外福利があります。

ウェルビーイングが注目される社会的背景

ウェルビーイングの概念はもともと、医療・介護・社会福祉で用いられていましたが、最近ではビジネスを含め、さまざまなシーンで注目されています。ビジネスでウェルビーイングが注目されている社会的背景には、主に4つの理由があります。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

価値観が多様化している

近年は国際化によって、国籍・宗教・性別などさまざまな背景や考え方を持つ人々と、ビジネスの場で交流する機会が増加しています。そのため、一緒に働く企業で価値観が多様化しており、それぞれが幸せを感じる状態は異なります。

さまざまな人々と円滑なコミュニケーションを図り、ビジネスを推進するには、価値観の違いを許容することが重要です。従業員の多様性を許容することで、人々が実力を発揮できる環境の構築につながります。

さらに、情報交換が活発になることで、イノベーションが誘発され、企業競争力を高める効果も期待できるでしょう。

深刻な人材不足

日本は少子高齢化に加え、移民の受け入れ態勢も万全でないため、労働力が不足しています。このまま労働力人口が減少すると、各企業の人材確保が難しくなるのは明らかです。

最近では、終身雇用よりもライフステージや価値観に重点を置いた企業で働くため、転職が当然の社会に変わり、企業側として自社への定着は難しいと捉えています。

企業がウェルビーイングを進めることで、従業員にとって働きやすい職場に改善され、離職を防止できるメリットが生まれます。

参考:~人口減少・社会構造の変化の中で、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けて|厚生労働省

SDGs目標達成に必要な概念

SDGsとは、持続が可能な開発目標を指し、2001年に制定されたミレニアム開発目標の後継目標としての位置付けになっています。2015年9月の国連サミットの採択内容に記載され、持続可能でより良い世界を2030年までに目指すための国際目標です。

SDGsは全部で17項目ありますが、その中に「すべての人に健康と福祉を」という項目が設定されています。これは、ウェルビーイングの重要性について考える必要があることを訴えています。

「働き方改革」の推進

2019年4月にスタートした働き方改革にあたって、長時間労働の是正やリモートワーク導入などが推進されています。この取り組みにおいても、ウェルビーイングの概念を採用できるとされています。

また、2020年に問題が生じた新型感染症も1つの引き金となり、リモートワークを強いられるケースが増えています。それに伴って、精神面の不調やストレスを抱える事例も増加しています。

これらの弊害は、コミュニケーション不足によるもので、リモートワークを行う社員だけでなく家族にも影響を及ぼします。これにより、働き方に関してもウェルビーイングの概念が深く関与してくることが分かります。

参考:~人口減少・社会構造の変化の中で、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けて|厚生労働省

ウェルビーイングの5つの要素

毎年公表される世界幸福度調査に対して、データを提供している米国の世論調査研究所であるギャラップ社は、ウェルビーイングの定義について5つの要素を提案しています。これは、国境や文化を越えて共通した幸福の要素を統計的にリサーチした概念です。

ここからは、ウェルビーイングの5つの要素について解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

キャリア・ウェルビーイング

ここでいうキャリアとは、仕事上の経歴や評価だけではなく、自身の生き方それ自体を指します。例えば、仕事・家事・育児・ボランティア活動・自己啓発・趣味など、毎日の生活が生き方です。

仕事も含めて日々の生活に満足しているか、充実した毎日が送られているかがキャリアの幸福を示す指標です。働き方改革や仕事と生活のバランス調整は、キャリア ウェルビーイングに貢献する可能性のある活動と言えます。

参考:Your Career Well-Being and Your Identity|GALLUP BUSINESS JOURNAL

ソーシャル・ウェルビーイング

ソーシャルとは、社会的・社交的などの意味を持つ用語です。また、SNSは、インターネットを活用した人的交流の場と言えます。言い換えれば、ソーシャル・ウェルビーイングは、人間関係においての幸福を表す概念です。

ここでいう幸福とは、友人・知人との交流機会が多い少ないだけではなく、信頼と愛情を伴った関係性が構築されているかが重要です。ビジネスにおけるソーシャル・ウェルビーイングの実現には、上司・部下・同僚との信頼関係を構築しやすい環境づくりが必要です。

参考:Your Friends and Your Social Well-Being|GALLUP BUSINESS JOURNAL

ファイナンシャル・ウェルビーイング

フィナンシャルとは、金融・財政などの意味が含まれます。わかりやすく言うと、ファイナンシャル・ウェルビーイングは、経済的な幸福度を表現する概念です。

具体的には、仕事の見返りとして報酬を得られているか、自身が受け取る報酬に満足できているかなどの指標で測定されます。また、資産について自己管理ができているかどうかもポイントです。

参考:Your Spending and Your Financial Well-Being|GALLUP BUSINESS JOURNAL

フィジカル・ウェルビーイング

フィジカル・ウェルビーイングとは、身体的な幸福を指します。心も体も共に健康で、思った通りの行動が実行できているか、前向きな気持ちで活動できているかが指標とされます。

ビジネスにおいては、仕事に対するモチベーションを維持できているか、前向きに仕事に取り組めているかなどが関係性を持ちます。

フィジカル・ウェルビーイングは、労働時間・業務量・職場環境などの影響を受けやすいため、企業努力によって従業員の身体的健康と心の健康を向上させることが可能です。

参考:Exercise, Sleep, and Physical Well-Being|GALLUP BUSINESS JOURNAL

コミュニティ・ウェルビーイング

コミュニティとは、地域や身近な人との共同体を意味します。町内会・子ども会・マンションの住民同士の集まりなどもコミュニティの1つです。

ギャラップ社の定義によるコミュニティ・ウェルビーイングにおいては、家族・親戚・友人同士のグループ・学校や職場など、ある単位の集合体を形成することをコミュニティと唱えています。

コミュニティ・ウェルビーイングでは、所属するコミュニティの中で幸福を感じていることが必要です。ビジネスにおいては、会社単位や所属部署ごとのコミュニティにおける幸福度で測定されます。

参考:Giving and Your Community Well-Being|GALLUP BUSINESS JOURNAL

ウェルビーイングの2つの判断軸

ウェルビーイングは、2つの判断軸を土台として考える必要があります。2つの判断軸も5つの要素と同じように、ギャラップ社が指針として、体験と評価の軸を定義しています。

この理由は、それぞれが相互に関与しながらも異なる概念だからです。人間は、直近の出来事で物事の判断を行います。1日のスタートがどれほど順調に進んだとしても、最後に嫌な体験をすると最悪の1日と評価されることがあります。

これにより、印象に残った体験を再確認することで、従業員の評価についての意識が向上する可能性があります。

ウェルビーイングの向上を促すPERMA理論

アメリカの著名な心理学者として知られるマーティン・セリグマン博士は、以下5つの要素を意識して生活することが重要であり、より良いウェルビーイングの向上に結びつくと提案しています。

要素状態
Positive Emotion
(ポジティブな感情)
面白い・嬉しいなどポジティブな気持ちを持つ
Engagement(物事への没頭)時間を気にせず何かに熱中する
Relationship(良好な人間関係)他の人と良い関係を構築する
Meaning(生きがいの自覚)人生の意味・意義を理解する
Accomplishment(達成感)目的の達成を目指すなど何かを遂行する

ウェルビーイングが企業にもたらすメリット

ウェルビーイングの向上は、従業員だけでなく会社全体に好結果をもたらします。ここでは、ウェルビーイングの向上により企業がどういった効果に期待が持てるのかを解説しましょう。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

健康経営を促進できる

経済産業省においては、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」であると定義づけています。従業員に対する健康管理の取り組みを投資と考え、業績向上に結びつける捉え方です。

大手企業や新興企業を始めとして、福利厚生の充実や柔軟な働き方を容認する形で健康経営を目指す企業が増える傾向にあります。

ウェルビーイングは健康増進だけではなく、その概念はモチベーションの管理など精神面にも波及します。ウェルビーイングの推進は、同時に健康経営にも結びつくでしょう。

参考:健康経営|経済産業省

ワークエンゲージメントが上がる

ワークエンゲージメントは、従業員が仕事に対して前向きな感情を持ち、心豊かな状態を指します。ウェルビーイングの促進は、ワークエンゲージメントの向上に結びつけることができます。

従業員の健康だけに注視するのではなく、組織の中で健全にモチベーションを持って仕事に対処できているかも重要なポイントです。

例えば、ギャラップ社の「Q12(キュートゥエルブ)」や「eNPS(エンプロイー・ネット・プロモーター・スコア)」などのサーベイで、モチベーションを可視化するのも有効な手段です。

生産性が上がる

ウェルビーイングなどの促進により、ワークエンゲージメントが上がることで組織の生産性向上にも期待が持てます。厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」においてはワークエンゲージメントと生産性の相互関係が提示されています。

ウェルビーイングの促進だけで、ワークエンゲージメントを上げられるわけではありませんが、大きな構成要素の1つであると言えます。組織における生産性の高い人材を増やすためにも、ウェルビーイング促進への取り組みは価値があります。

また、在宅勤務が急速に拡大しつつある現状では、オンラインでのコミュニケーションの場をどのようにアレンジするかも重要になるでしょう。

参考:令和元年版 労働経済の分析ー人手不足の下での「働き方」をめぐる課題についてー|厚生労働省

EVPが向上する

EVPは、「Employee Value Proposition」の略称で「従業員価値提案」と訳され、企業が従業員あるいは求職者に提示する価値を指します。今日、EVPを設定している企業とそうでない企業では、人材活用や採用などにおいて大きな差が生じる傾向にあります。

ウェルビーイングの推進は、EVPの向上にもつながります。EVPが高まることは、従業員だけでなく人材採用においても好結果が期待できます。

離職率低下に繋がる

企業がウェルビーイングの推進に取り組むと、経営側は社員の心身のコンディションを敏感に察知できます。これにより、社員のコンディションが良好に保てるでしょう。

ウェルビーイングの推進で、会社は早期に従業員の変化を捉え、初期段階で対策を考慮し、離職防止に向けて説得することが可能になります。よって、ウェルビーイング経営は人材の定着率を高め、優秀な人材の流出を防止できるため、採用コストの節約にもつながります。

企業のイメージ向上に繋がる

ウェルビーイングを進め、従業員のことを大切に考えている企業ということが取引先などに伝わることで、企業のイメージアップに寄与します。また、従業員の仕事へのモチベーションにも繋がるため、顧客に対しても丁寧な対応ができ、良い印象を与えられます。

企業のイメージ向上は、「この会社で働きたい」と考える求職者の増加にも繋がり、人材不足の解消にも期待できます。

ウェルビーイングへの取り組み例

ウェルビーイングの効果をビジネス場面で高めるために、社内制度や社内体制を整備したうえで実施する必要があります。ここでは、ウェルビーイングの概念を取り入れた取り組み例を解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

働きやすさを考えた設備

働きやすいビジネス環境は、従業員に心身の安定を与えてくれます。企業として、有給休暇を取得しやすくする、残業時間を削減する、在宅勤務など柔軟な働き方を容認するといった施策を提供し、ビジネス環境の整備に注力することが重要です。

また、業務効率化のためにオフィスレイアウトの変更や、禁煙体制の整備、フリーアドレスの容認などのハード面でもストレスフリーで働ける環境整備も効果的です。

ストレスチェックの結果を反映した施策

ストレスチェックを実施することで、従業員は自身のメンタル状態が把握でき、会社側は職場環境を早い段階で改善ができます。これにより、貴重な労働力を失うリスクの減少や生産性の向上ができるなど、両者にとってメリットがあります。

また、ストレスチェックだけでなく、実施後に集団分析を行い、その結果をもとに職場環境の改善に反映させる取り組みが可能です。例として、コミュニケーションにカドが立たないよう言い方に気をつける・小さなコミュニケーションを増やすなどがあります。

健康増進のための施策

生活習慣病の原因の1つに、不規則な食生活が挙げられます。企業は以下のような健康増進のための方策を実施することで、従業員の健康増進を遂行しましょう。

  1. 野菜摂取量を増やすため、健康に配慮した仕出し弁当の利用を提案する
  2. 従業員の健康意識を高めるために、社員食堂で健康的なメニューを出す
  3. メタボと診断された社員に対して専門家がアドバイスを行う
  4. 自販機商品のラインナップを低糖や低カロリーのものに変更する

ウェルビーイングを進める際の注意点

ウェルビーイングの定義は、時代や国によって異なります。同時に一人ひとりの価値観も異なるため、一方的な価値観の押し付けはかえって従業員の不満に繋がり、離職に繋がるリスクがあります。

そのため、時代の変化や従業員の価値観や事情も把握して、最適なウェルビーイングを模索する必要があります。

まとめ

この記事では、ウェルビーイングについて解説しました。ウェルビーイングとは、幸福や健康といった意味を持つほか、身体的・精神的・社会的にも満たされている広い意味の幸福を指す概念です。

価値観の多様化や人材不足などの社会的背景から、現在においてウェルビーイングは注目されています。企業に取り入れることで、健康経営の促進・ワークエンゲージメントが上がる・生産性が上がる・EVPの向上・離職率の低下などのメリットがもたらされます。
従業員のウェルビーイングを高めて企業が成長する起爆剤になれば、かなり効果の高い方策と言えます。ぜひウェルビーイングの導入を検討してみましょう。

Share

top