PDFの請求書は有効?メリットや作成・保存時の注意点を解説

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  • PDFの請求書は紙と同様に法的な効力を持ち、税務調査においても証拠資料になる
  • PDFの請求書は、コスト削減・検索しやすい・改ざんしづらいなどのメリットがある
  • PDFの請求書作成・保存には電子帳簿保存法・インボイス制度の要件を満たす必要がある

PDFの請求書は紙と同様に法的な効力を持ち、税務調査においても証拠資料として認められます。しかし、PDFの請求書を送る際は取引先への確認やパスワード設定などが必要です。本記事ではPDFで請求書を発行するメリットや、作成時・保存時の注意点などについて解説します。

目次

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  1. 請求書をPDFで送るのは有効か
  2. 請求書をPDFで発行するメリット
  3. 請求書をPDFで作成するときの注意点
  4. 請求書をPDFで保存するときの注意点
  5. 請求書発行システムでPDFの請求書も簡単に作成
  6. まとめ

請求書をPDFで送るのは有効か

近年、ビジネスの世界では、請求書をPDF形式で送ることが一般的になっており、紙の請求書同様に有効性にも違いはありません。その他にも、納品書・見積書・領収書なども、電子化・PDF化するのが主流となっています。

税務署の事実確認調査でも、PDF請求書は証拠資料として認められています。そのため、客観的に見ても取引内容が分かるように作成し、電子帳簿保存法の要件に従って保存することが重要です。

紙の請求書同様に、見た目を見やすく保ちながら、データ保護とセキュリティ・受け手の利便性を高め、環境への配慮もできます。このように、PDF形式の請求書を活用することで、ビジネスプロセスの効率化とスムーズな運営ができます。

参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁

請求書をPDFで発行するメリット

ビジネス効率化とデジタル化の進展により、請求書の発行方法も大きく変化しました。その中でも、PDF形式で請求書を発行することにはさまざまなメリットが存在します。PDF形式で請求書を発行することの利点や、紙の請求書と比べてのメリットを紹介します。

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ペーパーレス化でコストを削減できる

PDF形式で請求書を発行することにより、紙や印刷、郵便に関連するコストを大幅に削減できます。ペーパーレス化は、紙と印刷のコスト、郵便料金の節約・経費の削減に繋がり、業務時間の短縮と労力の削減もできるため、作業プロセスの効率化も図れます。

さらに、PDF形式でデジタル化すると、印刷や郵送の必要性がなくなり、資源の節約や環境への負荷軽減にも貢献します。その結果、PDF形式で請求書を発行することによってコスト削減と業務の効率化が実現され、ビジネスの運営において重要な利点をもたらします。

迅速な対応と信頼関係の強化

PDF形式なら電子メールなどを使用して、瞬時に請求書を送信できます。これに対し、紙の請求書を郵送する場合、到着まで数日から数週間かかることがあります。よって、郵便の遅延や紛失のリスクを回避し、受け手が請求書をすぐに受け取り、迅速に対応できます。

PDF形式では、送信履歴がデジタルデータとして残るため、請求書の送付日時や開封状況を確認することができます。仮に、請求書が「届いていない」というトラブルが生じた場合でも、送信履歴を参照して問題を解決でき、双方の信頼を高めることができます。

また、請求書に誤りがあった場合や修正が必要な場合、新しいPDFファイルを作成して即座に送信することができます。紙の請求書では訂正や再送には時間とコストがかかりますが、PDF形式ならば、簡単かつ迅速に対応できます。

これらにより、顧客との関係を強化し、ビジネスの円滑な運営をサポートします。なお、PDFファイルは社外からでも確認でき、パソコンからだけでなくスマホからも簡単に閲覧可能である点もメリットです。

検索しやすく時間と労力を節約する

紙の書類に比べて、PDF形式で請求書を保存することには、探しやすいという利点があります。紙の請求書を大量に保管している場合、特定の書類を見つけることは非常に困難です。

手作業での検索や整理は時間と労力を必要とし、ヒューマンエラーのリスクも存在します。

しかし、PDF形式で請求書を保存することで、キーワード検索、目次やブックマーク機能、デジタルファイル管理により、特定の請求書を素早く見つけることができます。手作業での書類整理や検索に比べて時間と労力を節約し、効率的なビジネスプロセスを実現できます。

セキュリティ強化で改ざんしづらい

PDF形式は、Excel(エクセル)やWord(ワード)ファイルなどと比べて、改ざんが困難なファイル形式です。その固定的なフォーマットとデジタル署名機能により、文書の改ざんを容易に検知できます。

また、アクセス制御やパスワード保護、チェックサムの検証などのセキュリティ機能が、ファイルの同一性を検知し、PDFファイルの改ざんを防ぎます

PDFは、信頼性の高いビジネス文書や重要な情報の保護に適しており、情報の完全性とセキュリティを確保するための効果的な選択肢です。さらに、デジタルな保存形式であるため、改ざんの痕跡を容易に見つけることができ、文書の信頼性を保証します。

以上のことから、PDFは改ざんが困難であり、文書の完全性とセキュリティを守るための優れた手段となります。

テレワークの推進

請求書は印刷すれば作成が可能ですが、在宅勤務の場合において、個人が機密文書の取り扱いを厳重に行うことは容易ではありません。従来のように、紙ベースの請求書作成を続けていると、働き方改革によるテレワークの推進活動が進みません。

しかし、PDFによる請求書の作成を固定化し、セキュリティ面でも強化を図れば、個人でもインターネット・メールを利用して、相手先に請求書を送付することができます。このように、リモート勤務を促進したい企業にとっても、請求書のPDFにはメリットがあります

請求書をPDFで作成するときの注意点

PDF形式で請求書を作成する際、いくつかの注意点に留意する必要があります。以下で説明する注意点を確認すれば、正確で信頼性の高い請求書を作成し、スムーズなビジネスプロセスを確保できるでしょう。

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取引先の了承を得る

PDFで請求書を送る際には、相手の企業が紙の請求書の提出を要求してくることを想定しましょう。企業によって請求書の保管方法は違うため、PDFで送付すること・データで送ることが適切かどうかを、事前に確認する必要があります。

請求書をPDFで準備しても、確認不足によって相手側が対応していなかった、とならないように、相手企業の要件や指示を確認し、適切な形式で請求書を提出することが重要です。

PDFのようなデジタルコピーを添付することで、スピーディな情報共有と記録保持が可能となりますが、受け手企業の要件に沿って、適切な形式で請求書を提出するようにしましょう。その対応が、今後の信頼性向上にもつながります。

押印が必要か確認する

通常、電子データ形式のPDFでは押印は不要ですが、一部の会社では押印を必須としている場合があります。PDFは、デジタル署名によって改ざんを検知できますが、会社の内部規定や業界の要件により、印章を使った押印が要求されることがあります。

取引先との必要に応じて、会社のスタンプや印章を使用して押印します。PDFで請求書を作成する際は、相手企業の押印要件を事前に確認し、押印が必要な場合には、PDFを作成する前に対応しましょう。

原本が必要か確認する

一部の会社では、電子データの送付だけでなく、原本の提出も要求してくる場合があります。電子データは便利で迅速なやり取りができますが、法的な手続きや記録の要件に基づき、企業ごとの規約に準じて原本の提出が求められることがあります。

原本は紙の形式であり、会社のスタンプや署名を含む公的な文書としての価値があります。したがって、電子データの送付に加えて、原本を提出することが要求される場合には、適切な方法で原本を提供し、要件を満たす必要があります。

仮に、その要件を満たさなかった場合、請求自体を却下されてしまう可能性もあります。やり取りの状況によって、原本の提出が必要な場合には、電子データと原本の両方を適切に管理し、法的な要件や記録の目的に柔軟に対応するようにしてください。

パスワードを設定する

請求書には顧客情報や支払い詳細などの機密情報が含まれることが一般的で、セキュリティを確保するために、パスワードを設定することが重要です。パスワードによるアクセス制御や機密情報の保護は、データの安全性と信頼性を高め、法的要件にも適合します。

パスワードを設定する際には、強力なパスワードを使用し、定期的に変更することも推奨されます。また、パスワードを安全に管理するために、パスワード管理ソフトウェアや二要素認証などのセキュリティ対策を検討することも重要です。

インボイス制度に対応する

インボイス制度は、2023年10月から開始した、企業間の取引における請求書の電子化を推進する制度です。これにより、紙の請求書から電子的なインボイス制度(適格請求書等保存方式)への移行が進み、企業はこの制度に対応する必要があります。

従来の区分記載請求書に含まれていた、企業名や住所、請求金額などの基本的な項目と合わせて、インボイス制度では、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税を請求書に記載しなければなりません。

要するに、買手である取引先からインボイスの詳細提示を求められた場合、登録番号や適用税率などの記載項目が追加された「適格請求書」を作成・交付し、自社で保存しなければならない義務があります

適格請求書は、取引の透明性や税務上の正確性が確保され、電子的な形式で提出することが求められます。適格請求書の正確な作成と送信は、税務や取引の円滑さを確保するために重要な要素となります。

参考:インボイス制度の概要|国税庁

適格請求書の記載項目

適格請求書には、国税庁のホームページの記載から、以下の項目を適格請求書に明記すべきであることが求められています。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
  4. 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6.  書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

参考:適格請求書等保存方式の概要|国税庁

参考:4 適格請求書の記載事項|国税庁

請求書をPDFで保存するときの注意点

請求書をPDF形式で保存することは、データの保護と共有のしやすさの観点から効果的です。しかし、正確性とセキュリティを確保するためには、以下の注意点に留意する必要があります。

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検索しやすいファイル名をつける

電子帳簿保存法では、電子帳簿データの検索性の確保が重要視されています。そのため、ファイル名に特定の情報を含めることが義務付けられています。

取引年月日、取引金額、および取引先名(自社名)は、電子帳簿データにおいて重要な情報です。これらの情報をファイル名に含めることにより、データの検索性を向上させることができます。

検索性の確保は、適切なファイル命名によってだけでなく、フォルダの階層構造やメタデータの活用など、組織的な管理手法も重要です。これにより、必要なデータを迅速に見つけ出すことができます。

参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁

紙からPDFへ変換した場合はスキャナ保存の要件を満たす

紙の請求書をスキャンして電子保存する場合、電子帳簿保存法の「スキャナ保存制度」の要件を満たす必要があります。スキャナ保存制度には、スキャン環境の整備、データの非改ざん性の完全な証明と真正性の確保、適切な管理体制の確立などが含まれます。

スキャン環境は一定の品質基準を満たし、適切な解像度でスキャンを行う必要があります。また、データは元の紙の帳簿や書類と同じ情報を保持し、改ざんされていないことを証明する必要があります。

データの整合性や真正性を保つためには、適切なデータ保存手法やセキュリティ対策が必要です。さらに、スキャンされたデータは適切に管理され、必要な場合に容易にアクセスできるような体制を確立する必要があります。

なお、データの保管場所やアクセス制御、バックアップや保存期間の管理も重要です。これらの要件を遵守することで、スキャン保存制度に基づく紙の請求書の電子化・保存が適切に行われ、法的な要件を順守しながら効果的なデータ管理が可能となります。

参考:電子帳簿保存法一問一答 【スキャナ保存関係】|国税庁

電子データも7年間保存する

電子データの請求書も、法的な規定や会計基準によって、紙の請求書と同様に、企業は請求書を含む重要な財務記録を7年間保管する義務があります。これは、税務申告や監査などの目的に基づくものであり、財務情報の信頼性や法的要件の遵守を確保するための措置です。

データのバックアップ・データの整合性と真正・アクセス制御とセキュリティ・フォーマットの互換性などの対策により、電子データの請求書を紙と同様に7年間保存することが可能となります。適切に保管することで、法的要件の遵守やビジネスニーズに対応できます。

また、適格請求書の写しやPDFファイルなどの電磁的記録に関しては、国税庁から下記のとおりに保存するように求められています。

適格請求書の写しや電磁的記録については、交付した日または提供した日の属する課税期間の末日の翌日から、2月を経過した日から7年間、納税地またはその取引に係る事務所、事業所、その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければなりません。

参考:5 適格請求書等の写しの保存|国税庁

請求書発行システムでPDFの請求書も簡単に作成

PDFの請求書発行には、請求書発行システムの利用がおすすめです。まず、作成した請求書からPDFへの変換が容易に行え、エクセルのようにフォーマットから直接PDFファイルとして保存できます。

また、クラウドソフトでの作成ができるため、インターネット上で請求書を作成できて便利です。ソフトの機能によって誤入力や計算ミスの防止にも役立ち、入力項目や計算式の正確性を確保します。

さらに、請求書作成の自動化と効率化が可能で、顧客情報や商品情報の登録を事前に行い、複数の請求書を一括作成したり、情報を再利用したりできます。トラッキングと管理も容易になり、発行履歴や支払いステータスなどを追跡・管理できます。

PDFの請求書作成を効率化したい場合は、請求書発行システムのメリットを十分に活用して、ビジネスの効率性向上や、法令を遵守した正確な請求書作成を実現しましょう。

まとめ

PDFの請求書の利点として、すでにグローバルなフォーマットであること、データの検索がしやすく利便性が高い、改ざんがしづらい、視覚的な品質の向上、容量の節約と環境への配慮が挙げられます。

作成・保存の注意点としては、フォーマットの整合性やデータの非改ざん性の完全な証明と真正性の確保、セキュリティとプライバシー、バックアップと保存の重要性があります。また、電子帳簿保存法やインボイス制度の法令を遵守する義務があります。

これらを守りながらPDFによる請求書を活用することで、効率的なビジネスプロセスや環境負荷の削減、信頼性と安全性を確保した、プロフェッショナルな業務の遂行が可能となります。

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