アダプティブラーニングとは｜意味やメリットをわかりやすく解説

アダプティブラーニングは、一人ひとりに最適化された学習内容を提供できるため、効率的・効果的に学習を進められます。本記事では、アダプティブラーニングのメリット・デメリット・注意点や、企業での活用事例の他、主なツールについても解説します。

目次

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1. アダプティブラーニングとは
2. アダプティブラーニングの仕組み
3. アダプティブラーニングと間違えやすい用語
4. アダプティブラーニングのメリット
5. アダプティブラーニングのデメリット
6. 企業でのアダプティブラーニングの活用例
7. 企業にアダプティブラーニングを導入するとできること
8. アダプティブラーニングの注意点
9. アダプティブラーニングの導入にはツールの活用がおすすめ
10. まとめ

アダプティブラーニングとは

アダプティブラーニング（Adaptive Learning）は、学習者一人ひとりの個性・能力・適性に合わせてプログラムを進めていく教育方法を指します。個々に最適化された学習を提供することで、より深い理解と効果的な学習効果が期待できます。

文部科学省は、2018年2月に発表した「学校教育におけるICT、データの活用」において、一人ひとりの状況に応じたきめ細かな指導をさらに促進するとの方針を明らかにしました。

この方針はアダプティブラーニングが目指す方向性と一致しており、教育現場においてアダプティブラーニングは、未来の教育を担う重要な取り組みとして注目を集めています。

参考：Society5.0におけるEdTechを活用した教育ビジョンの策定に向けた方向性｜文部科学省

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アダプティブラーニングはEdTechの1つ

アダプティブラーニングは、EdTechの一分野として位置づけられています。

EdTech（エドテック）とは、教育「Education」と、技術「Technology」を組み合わせた造語で、教育分野におけるテクノロジー活用を指します。教育市場では、すでにIT技術を活用した教育活動が多く展開されています。

新型感染症の影響で、社会活動のオンライン化に拍車がかかる中、最新のテクノロジーを教育分野と組み合わせて技術革新を起こすEdTechの需要が増加しており、これからも成長が見込まれます。

また、EdTechは単にオンライン学習を指すのではなく、教育目標の達成を支援するデジタル製品、ハードウェア、ツール、サービスなどを含む巨大な産業です。

EdTechとeラーニングの違い

eラーニングは、特定の場所で講師が直接講義をするのではなく、PCやタブレット端末などを活用してインターネット上で学習する形態を指します。時間や場所の制限がなく、学習環境を柔軟に調整できるのが特徴です。

試験や研修会場への移動が不要で、また、今までのメディア（紙・スライド・テレビなど）でカバーできないタイプの教育を行うことも可能です。

一方で、EdTechはeラーニングの従来型「知識学習」の補助的な役割のほかに、グループ活動やコミュニケーションを含む「経験学習」の支援など、より広範な教育活動をサポートする側面も持っています。eラーニングはEdTechの一部と言えるでしょう。

アダプティブラーニングの仕組み

アダプティブラーニングを実現する仕組みには、「ルール型」と「アルゴリズム型」の2つのアプローチがあります。ここでは、それぞれの特徴と違いについて解説します。

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ルール型

ルール型は、学習者の問題に対する正解・不正解に応じて、次の学習内容を「事前に設定されたルール」に従って提供する方式です。

例えば、ある数学の問題で不正解の場合、その原因が「計算自体の間違い」なのか「定義の理解不足」なのかを判定し、それぞれに応じた解説や問題を提供します。

きめ細やかな対応が可能ですが、全てのケースを事前に設定する必要があるため、設計には時間と手間がかかります。

アルゴリズム型

アルゴリズム型は、リアルタイムに学習者のデータ（正誤、解答時間、学習スタイルなど）を分析し、一人ひとりの理解度や学習状況に合わせて、次に学ぶべき内容をその場で決めていきます。

学習者の得意・不得意だけでなく、学習の好みや集中力まで考慮できることが利点です。しかし、高度なアルゴリズムと大量の計算資源が必要となるため、実装の難易度が高いという課題があります。

アダプティブラーニングと間違えやすい用語

現在では、学習方法についてさまざまな用語が使われています。そこで、アダプティブラーニングと間違えやすい用語を3つ解説します。

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アクティブラーニングとは

アクティブラーニング（Active Learning）は、文部科学省が提唱する学習方法で、日本語で「積極的な学習」と訳されます。講義のような指導者から受講者に対する一方的な教育とは反対に、受講者一人ひとりが積極的に学習する学習形態を指します。

従来の学習形態からの脱却を目指すという点では、アダプティブラーニングと共通点がありますが、アクティブラーニングは学習への「積極的な参加」、アダプティブラーニングは「個別最適化」に重点を置いています。

アダプティブラーニングでは、今までの画一性からの脱却を目標とし、受講者の多様性を考慮した学習を目指します。一方、アクティブラーニングでは、受講者がただ情報を受け取るだけでなく、ディスカッションなどを通じて自ら積極的に学習することを重視します。

ゲーミフィケーションとは

ゲーミフィケーション（Gamification）とは、ゲームの要素をゲーム以外の分野へ組み込むことを指します。ここでのゲームの要素とは、課題の達成により自身のレベル（達成度の指標）が上がったり、プレイヤー同士で交流・競争したりすることです。

現代社会においてゲームは、子供から大人まで幅広い世代に楽しまれています。ゲームが多くの人を惹きつける理由は、その設計に人間の動機付けを促す様々な工夫が組み込まれているためです。

この特性を教育分野に活用することで、学習者の意欲向上や継続的な学習を促すことができると期待されています。

LMSとは

LMS（Learning Management System）というのは、eラーニングの実行に必要な学習教材の発信や成績などを統合する学習管理システムを指します。

LMSの導入により、学習者個々の学習ペース、テスト結果、得意・不得意分野などを効率的に把握・管理できるようになりました。LMSはあくまで学習管理をサポートするシステムであり、学習方法そのものではありません。

アダプティブラーニングのメリット

アダプティブラーニングの教育法にはさまざまなメリットがあります。受講者がアダプティブラーニング環境での学習で、どういった効果に期待が持てるのか前もって把握しておきましょう。

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効率よく学力向上を目指せる

アダプティブラーニングは、ベテラン家庭教師のように、受講者自身が気づいていない弱点も見逃さず、十分に理解できるまで学習をサポートします。

受講者は、苦手な分野に集中して取り組み、つまずきにも早期に対応できるため、弱点を確実にクリアしながら学習を進められます。一方で、得意分野では自分のペースで学習を進め、より高度な課題にも挑戦できます。

このような個別最適化された学習により、一人ひとりの学習効果を最大限に引き出すことができます。

得意不得意分野・学習状況を可視化できる

アダプティブラーニングのメリットの1つが、受講者の得手不得手・学習状況などが可視化できることです。テスト結果や問題の回答をシステムが自動で分析・記録するため、受講者はどのような問題が不得手なのか、どこまで理解しているのか、指導者側で把握できます。

指導者はいつでもデータ確認ができ、受講者の学習状況に合わせた指導を行えます。AIやIT技術の発展により、こうしたデータ分析と活用が効率的に実施できるようになっています。

授業の質の均一化・向上につながる

アダプティブラーニングは、指導者側の能力差を解消できます。アダプティブラーニングの実施においては、eラーニングのシステムを使用して、客観的なデータに基づいた均一化された指導を提供できます。

指導品質の均一化は、データ分析に基づく指導の形式化・自動化にも役立っています。指導者の個性や、指導法との相性に左右されにくい学習環境を提供できる点もメリットです。

情報共有がしやすい

情報の共有がしやすいのも、アダプティブラーニングのメリットです。指導者は受講者の学習状況を確認して指導者同士で共有できます。

また、システムにはソーシャル機能が備わっているため、受講者同士でのコミュニケーションや情報共有もしやすくなり、学習意欲の向上も期待できます。

教材やカリキュラムの改善に役立つ

アダプティブラーニングは、受講者の理解力だけでなく、個々のコンテンツがどのように学習目標の習得に貢献したのかについても分析できます。これは、AIが各テキストの効果を精査し、教育カリキュラムやテキストをさらに品質向上させるシステムです。

得られた分析結果は、教材の見直しやカリキュラム改善に役立ちます。受講者のニーズに合わせて教材を適宜更新することで、より効果的な学習環境を提供できます。

過去のデータを有効活用できる

アダプティブラーニングでは、過去の受講者の膨大な量の学習データを分析し、有効活用することで、学習方法の最適化を行えます。例えば、成績優秀者のデータを分析して指導に取り入れることにより、より高レベルな学習を提供できます。

また、過去のデータから受講者がつまずきやすい課題やその解決方法を客観的に見いだすことで、実際に課題を抱える学習者の発見や効率的な指導に役立ちます。このように、過去のデータを有効活用することで、学習効率や指導品質の向上につながります。

アダプティブラーニングのデメリット

アダプティブラーニングの実施においては、メリットだけでなくデメリットも存在します。ここからは、アダプティブラーニングのデメリットを2つ解説します。

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ICT環境整備の遅れ

アダプティブラーニングには、PCなどの端末やインターネット回線といったICT環境が必須ですが、保有している端末やインターネット回線は各家庭・地域によって差があります。

日本は諸外国と比較するとICT環境の整備が遅れており、誰もがアダプティブラーニングを受けられる環境が整っていません。しかし、2020年に新型感染症が拡大したことをきっかけに、ICT環境の整備が急激に進みました。

新たなライフスタイルが確立され始めている現代において、ICT環境はさらに整備が進むと予測されています。

指導者にICTの知識が必要

そもそもICTとは、「情報通信技術」のことで、友人や家族とのスマートフォンを経由したコミュニケーションもICTに該当します。アダプティブラーニングの実施には、ICTの知識を持った指導者が必要です。

デジタル教科書などのソフトも扱えなければならず、アナログな教育現場で長年勤務していたデジタル技術に疎い指導者にとっては、指導を行いにくい環境と言えます。

企業でのアダプティブラーニングの活用例

アダプティブラーニングを実施することで、学習機会の均一化、生産性やモチベーションの向上が期待できます。

受講者は、時間と場所の制約を受けることなく学習を進められ、個々のニーズに合わせた知識の習得やスキルアップを図ることができます。ここでは、アダプティブラーニングの具体的な活用シーンについて解説します。

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新人教育

アダプティブラーニングは、新人教育を効率的かつ効果的に実施するツールとして活用できます。学習環境を整備し、新入社員一人ひとりのスキルレベルや学習ペースに合わせた個別カリキュラムを提供します。

これにより、各新人社員が自身の能力に合わせたぺースで学習できるため、従来の一斉研修と比べて効率的な教育が可能です。また、学習進捗や理解度をリアルタイムで把握できるため、必要に応じて適切なサポートを提供できます。

さらに、対話型の学習を取り入れることで、新人の学習意欲を高める効果も期待できます。

タレントマネジメント

タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりの能力・スキル・経験などの情報を、採用・育成・配置への活用で企業の成長につなげていく人材マネジメントを指します。

アダプティブラーニングをタレントマネジメントに活用することで、従来人事担当者が手作業で行っていた情報収集を自動化できます。これにより、従業員の詳細なデータに基づく客観的な評価が可能になります。

また、アダプティブラーニングで得られた情報を人事評価や人員配置に生かすことでより働きやすい環境が構築され、従業員のモチベーションの向上につながります。

企業にアダプティブラーニングを導入するとできること

注目されているアダプティブラーニングシステムの効率的な運用を行った場合、企業においてどのようなことができるのでしょうか。ここでは、アダプティブラーニングができることを具体的に6つ解説します。

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社員教育に活用できる

内定者や新入社員の知識レベルにはばらつきがあります。また、中堅社員以上の社員教育においても、個々の能力や知識量を把握し、レベルに合わせた個別指導を行うことが理想的です。

この点で、アダプティブラーニングは、一人ひとりのレベルに合わせた教育を実現します。そして、コンプライアンス教育など、全社員対象の研修にも効果的です。

研修コンテンツの習得や社員の出欠記録、複数回の研修実施、テストの集計、未受講者の特定なども可能です。社員の受講状況を確実に把握し、未受講者への注意喚起を行うことで、未受講のリスクを軽減できます。

時間の有効活用になる

企業がアダプティブラーニングを採用することで、業務で多忙な社員でも隙間時間を活用して学習できます。受講者の進捗状況や理解度などをAIが分析し、最適な学習プログラムが提供されることにより、効率良く学習可能です。

一人ひとりの進捗状況・理解度・達成度を分析し、それぞれに最適な学習プログラムを提案してくれます。そのため、短時間での知識習得や弱点の克服が可能です。

早期人材育成に役立つ

企業での導入例はまだ少ないものの、アダプティブラーニングは内定者や新入社員の教育に有効です。これは、メタ認知理論（自分が何を知っていて何を知らないかを認識することで学習効果が高まるという理論）を応用できるためです。

受講者・教育者が、お互いの状況を十分に把握できていない段階でも、アダプティブラーニングを活用することで、受講者は自身の知識レベルと弱点の把握ができ、教育者もそれらを把握できます。

一人ひとりに適した課題を配信し、弱点を克服していく学習を行うことで、短期間での人材育成が可能となり、内定者や新入社員の早期戦力化に貢献します。

適切なアドバイスができる

eラーニングの進化形とも言えるアダプティブラーニングは、受講者の進捗状況や課題の正答率、現在の課題、弱点である課題をはじめ、すべての情報を保存・管理できます。

教育者は受講者の習熟度を可視化して把握でき、それがクラウド型のアダプティブラーニングシステムであれば、どこからでも参照できます。

アダプティブラーニングで受講者の実態を把握することで、仕事でミスが起きた場合の改善点を正確に指摘できるだけでなく、受講者一人ひとりの習熟度に応じて教育者が適切な助言もできます。もちろん、弱点を克服するための課題を、組み込むことも可能です。

教育の質を均等にできる

アダプティブラーニングの場合は、分析データによる学習プログラムが提供されるため、指導者の能力に影響されない均一的な学習ができるメリットもあります。

今までの学習法は、教育者の経験や感覚的な判断に頼るしかありませんでしたが、データによる課題提供のため、スキルの習得において教育者の差が生じることはありません。

また、教育者がマンツーマンで教える必要がなくなり、貴重な時間をほかの有用な活動に割り当てることが可能になります。学習者は、仲間同士の情報共有を行い、ゲーム要素を組み込むなど、学習意欲の向上にもつなげられます。

研修コストを削減できる

アダプティブラーニングは、eラーニングのメリットを継承しています。研修会場や講師の手配、受講者の移動が不要になります。

つまり、従来の研修で発生していた会場費、講師報酬、交通費などが不要となるため、研修コストを大幅に削減できます。教材はサーバーで一元管理できるため、物理的な教材も不要で、再利用や修正も簡単に行えます。

アダプティブラーニングの注意点

企業がアダプティブラーニングの導入を決定した場合、注意しなければならないのはどのようなことなのでしょうか。ここでは、アダプティブラーニングの導入における3つの注意点について解説します。

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モチベーションを維持させる工夫が必要

アダプティブラーニングは、eラーニングをベースとした自主学習であるため、受講者のモチベーション維持が困難な場合があります。

集団研修などの強制力がないため、仕事が忙しい、やる気が出ないなどを理由に、学習への取り組みが困難な従業員の発生も想定されます。

そこで、企業としても従業員に一任するのではなく、締め切りの柔軟化、社内キャンペーンの実施、ゲーミフィケーションの導入など、学習意欲を高めるための工夫が必要です。

初期投資のコストがかかる

アダプティブラーニングを人材育成に活用するためには、一定のコストが発生します。例えば、適切な学習教材がそろったe-ラーニングシステムの導入費用に加え、管理担当者の人件費なども考慮する必要があります。

また、既存のe-ラーニングシステムが自社のニーズに合わない場合は、外部委託によるシステム開発が必要になる場合もあります。既存の学習内容をアダプティブラーニングに最適化する際にも、費用と人的リソースが必要となる点に注意が必要です。

不向きな分野がある

アダプティブラーニングは、データ分析に基づく学習プログラムのため、適さない分野もあります。例えば、医療現場の技能習得やディスカッション形式で学習するコミュニケーション能力の向上など、実践的な学習や非言語領域の学習は不得意です。

 アダプティブラーニングは万能ではなく、全ての分野に適用できるわけではありません。導入を検討する際は、学習内容や導入目的との適合性を慎重に評価する必要があります。

アダプティブラーニングの導入にはツールの活用がおすすめ

アダプティブラーニングを効率的に導入するためには、アダプティブラーニング向けのツール・サービスの活用がおすすめです。このようなツール・サービスにはさまざまな種類があるため、事前によく情報収集して自社に適したものを選定する必要があります。

例えば、対応可能な学習領域や言語、導入実績を十分に確認することが重要です。ツール・サービスには、学校教育向けや学術機関向け、金融機関向けなどそれぞれ適した利用環境があるため、学習領域や対応言語、導入実績から自社への適合性を判断し、選定しましょう。

まとめ

アダプティブラーニングは、受講者一人ひとりに最適な学習を提供します。それにより、効率良い学力向上、得意不得意や学習状況の可視化、授業の質の均一化や向上、情報共有などのメリットがあります。

また、最近は新人教育のプロセスを効果的に改善するための活用や、従業員一人ひとりの能力・スキル・経験などの情報を、採用・育成・配置するタレントマネジメントへの活用などが展開されています。

今後は、AIやビッグデータ技術の進化により、さらに精度の高い個別最適化が実現され、教育・企業研修の分野で重要な役割を果たすことが期待されています。