事業ポートフォリオとは?作成手順やメリット、最適化のポイント解説

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  • 事業ポートフォリオとは、事業ごとに成長性や収益性を分析して一覧化したものである
  • 事業ポートフォリオを最適化することで、M&Aの活用や企業の安定性の向上につながる
  • 日本企業はポートフォリオマネジメントを導入しておらず、ガバナンスが低下している

事業ポートフォリオとは、事業ごとに成長性や収益性を分析して一覧化したものです。事業ポートフォリオを最適化することで、企業の安定性が向上します。本記事では、事業ポートフォリオ作成手順やメリット・デメリット、最適化するポイントなどを簡単にわかりやすく解説します。

目次

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  1. 事業ポートフォリオとは
  2. 事業ポートフォリオを作成するメリット
  3. 事業ポートフォリオを作成するデメリット
  4. 事業ポートフォリオの作成手順
  5. 事業ポートフォリオを最適化するポイント
  6. 事業ポートフォリオにおける日本企業の課題
  7. まとめ

事業ポートフォリオとは

事業ポートフォリオとは、企業が運営または所有する複数の事業を一覧化したもので、戦略的な目標を達成するために行われる管理手段です。成長性・収益性・リスクなどのバランスを考慮し、現状で力を入れるべき事業や撤退すべき事業などを把握できます。

経済産業省の指摘によると、昨今の急激な経営環境の変化は、持続的な成長を実現するために事業ポートフォリオを見直す必要性を発生させています。しかし、多くの日本企業では適切な事業再編が行われていない現状があります。

国内でも、事業ポートフォリオは、持続的な成長や目標達成のための事業管理手段として推奨され、経済産業省では「事業再編実務指針」として具体的な手法を提供しています。

参考:事業再編実務指針~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~(事業再編ガイドライン)

M&Aとの関係

事業ポートフォリオは、M&A(買収・合併)においても重要な役割を担います。M&Aは、市場や社会情勢などの外部環境だけでなく、自社の内部事情も考慮して行うのが一般的です。

事業を売却する場合は、自社の強みや弱み・事業の特徴・成長性などを効果的に伝えるために、事業ポートフォリオが活用されます。また、事業を買収する場合は、自社の戦略・リソース・自社の事業との相性などを検討するために、事業ポートフォリオが活用されます。

事業継承では、継承する事業の特徴を把握した上で、自社の事業との整合性や相乗効果を検討するのに事業ポートフォリオが役立ちます。

事業ポートフォリオを作成するメリット

事業ポートフォリオの作成は、企業にさまざまなメリットをもたらします。変化に強い企業作り・新たなチャンスの発掘・リスク分散など、ここでは事業ポートフォリオを作成するメリットについて解説します。

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迅速な経営判断ができる

事業ポートフォリオは、迅速な経営判断の助けになります。経営資源を可視化するため、リスクとリターンの評価を可能にし、投資先の優先順位付けや資源の最適化を図れます。

事業の全体像を把握できると、パフォーマンスの変化や市場変動にも対応しやすいため、スピード感と効率性の向上にもつながります。そのため、迅速な経営判断ができ、戦略的な投資や資源の配分が可能です。

また、資源の迅速な調整や再配置は、国際市場やITを始めとする技術変化にも柔軟に対応しやすいため、変化に強い企業作りにも寄与します。

ビジネスチャンスが見極めやすい

事業ポートフォリオは、事業間で相互連携を図れるため、共通の資源・能力の活用や相乗効果によって、ビジネスチャンスを見極めやすくなります。また、異なる事業が別々の市場や地域に展開しているため、リスクを分散し、特定の市場や業界の変動に順応しやすいです。

さらに、新規事業や成長事業を組み入れることで、新たな市場や技術への進出が容易になります。そのため、既存の収益を基盤として、新たなビジネスチャンスを追求できます。

金融危機へのリスクヘッジができる

事業ポートフォリオは、異なる業種や市場に分散して事業を展開するため、金融危機を始めとするリスクを分散することができます。また、収益の多様化により、一部の事業の損失を他の事業がカバーできる可能性があります。

さらに、事業ポートフォリオの中に安定した収益を持つ事業があれば、資金調達の柔軟性も高まります。これにより、仮に金融危機が発生した際にもリスクを軽減し、安定した経営を実現することができます。

事業ポートフォリオは、不採算事業・収益性の低い事業を把握し、その原因の分析も可能なため、財務体質強化の改善策や撤退の判断にも役立ちます。なお、不採算事業の売却や収益性の高い事業の買収など、M&Aの判断も容易にし、安定した財務状態を確保できます。

競合相手を明確にできる

事業ポートフォリオは、企業の事業範囲や市場領域が明確にでき、各企業の収益性・成長性・強みや弱みも分析できます。そのため、競合相手を特定し、競争力の分析や戦略の立案が容易です。

自社の強みを明確にすれば、市場での競争優位性を築くことに役立ち、新たな事業の参入や既存事業の市場拡大の評価にも貢献します。競合相手を明確にすることで、市場の競争状況や成長の潜在性を把握し、効果的な競争戦略を立案することができます。

事業ポートフォリオを作成するデメリット

事業ポートフォリオの作成には、メリットだけでなくデメリットも存在します。特に、事業間・部署間に関することがほとんどです。ここでは、事業ポートフォリオを作成することによるデメリットを解説します。

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事業ポートフォリオを作成するデメリット

  1. 各事業の現状が正確に反映されない
  2. 企業体制に影響されやすい

各事業の現状が正確に反映されない

事業ポートフォリオは、基本的に一つひとつ事業を独立させた単位で見るため、事業間の連携や相乗効果による結果などが把握しにくいという特徴があります。例えば、一見利益率が低く見える事業部でも、他事業部への支援によって利益率を上げているかもしれません。

また、各事業部がどのような施策を行っているのか、結果からしか判断できない事業ポートフォリオでは現状把握がしにくいです。このように、各事業の現状を細かく正確に反映できないのは、事業ポートフォリオのデメリットだといえるでしょう。

企業体制に影響されやすい

事業ポートフォリオを作成しても、経営側の人間がそれを見て行動に移さなければ、ただ分析しただけで終わってしまいます。そのため、大企業などで事業間での連携が希薄な場合、協力関係が築けずに、分析結果から経営判断を下すことができない場合があります

事業ポートフォリオを活用するためには、企業全体の事業間の連携を強化する必要があります。これからの企業目標達成に向けて事業ポートフォリオを活用するなら、まずは自社の企業体制の見直しや、新たな経営判断に関する説明を行うようにしましょう。

事業ポートフォリオの作成手順

事業ポートフォリオのメリットを最大限に発揮するためには、適切な分析を適切な手順で行うことが大切です。ここでは、事業ポートフォリオの作成手順を解説します。

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自社の現状を明確化する

事業ポートフォリオの作成では、最初に自社の現状を把握するためにPRM分析を活用するのが基本です。PRM(Product Portfolio Management)による経営分析は、リソースを効果的に各事業に配分します。

配分の仕方は、市場成長率と市場占有率から分類された「花形」「問題児」「金のなる木」「負け犬」に基づきます。以下に各分類について解説します。

花形

市場成長率・市場占有率の高い事業は、大きな成果を生み出す可能性がある「花形」に分類されます。リソース配分としては、成長を加速させるような配分が望ましく、例としては、販売促進活動・新製品やサービス開発への投資などが挙げられます。

また、競争力の維持や差別化・技術革新への投資・人材育成・リスク管理も重要です。ただし、花形に分類される事業は、市場成長率が落ち着くと後述する「金のなる木」になります。そのため、固定的ではなく、変化に合わせた流動的な判断が求められます。

問題児

市場成長率が高いものの、市場シェアが低い事業は「問題児」に分類され、経営上の課題解決が求められます。市場シェアを確立すれば、「花形」へと転換できる可能性がある一方で、激しい市場競争にさらされ、利益が見込めない時には撤退の決断も必要となります。

問題児へのリソース配分は、花形への転換を目指す上では、競合他社との差別化・顧客ニーズに応える投資などの、市場シェア拡大の基盤を築く必要があります。また、ブランドの認知向上や、顧客への訴求力の強化を目的とするマーケティング・販売促進活動も重要です。

問題児に対して、限られたリソースをどれだけ配分するかは、成長の可能性・企業にとってどれだけ重要な事業なのか、潜在リスクなどに左右されます。よって、それらを評価するための情報やデータを分析して、慎重に判断する必要があります。

金のなる木

市場成長率が低いものの、市場シェアが高い事業は「金のなる木」に分類され、競争優位性が高いため、安定した利益を生み出しやすい特徴を持っています。現状以上の利益獲得が難しい面もありますが、コスト削減やプロセスの効率化によって利益率向上を図れます。

リソース配分の観点では、金のなる木は事業全体のバランサーとしての役割を考慮する必要があります。問題児へのリソース投入や花形への投資をしたりなど、他の事業や新たな市場への投資を行うことで、企業としての成長性の追求とリスク分散が可能です。

なお、金のなる木の事業の安定性を維持するためのリソース配分も大切ですが、1つの事業にリソースを集中的に配分するのはリスクも大きくなります。そのため、コスト削減や効率化で安定性を維持する工夫も大切です。

負け犬

市場成長率・市場占有率がどちらも低い事業は「負け犬」に分類され、成熟期から衰退期にある商品・サービス・事業が対象です。例えば、市場における競争激化・代替品の増加などは、市場が飽和状態であることを意味しますが、負け犬の事業では衰退の兆候が現れます。

なお、追加の投資や販売促進活動で、競争力を回復し、再成長する可能性もゼロではありません。しかし、縮小傾向の市場や代替品の影響によって、持続的な成長が困難と判断される場合は、早急な撤退を検討する必要があります。

企業の限られたリソースを有効に活用するためには、負け犬に割り当てたリソースを他の有望な事業に再配分する方が得策となる可能性が高いです。

メインにすべき事業を決定する

自社の各事業の現状分析ができたら、自社がどのような事業に注力すべきかを決めるのが大切です。メインにすべき事業を決定するために有効な方法には、CFT分析があります。

CFT分析は、「Customer(顧客)」「Function(機能)」「Technology(技術)」の3つの要素を分析して、自社のメインとなる事業の領域や分野を決定する手法です。

事業の領域は広すぎるとリソース不足に、狭すぎると成長不足に陥るリスクがあります。適切な領域を定めるためには、顧客軸・機能軸・技術軸の3つの視点からできるだけ正確に分析することが大切です。

顧客軸

顧客の分析は、事業の提供対象となる顧客を明確化することを目的とし、年齢・性別・趣味・嗜好・所得・ライフスタイルなどの属性や特性を考慮して分析します。自社の商品やサービスが、どのような顧客のニーズや要求を満たすことができるのかを把握します。

これらの分析によって、既存顧客の満足度の向上につなげたり、新規顧客の獲得に向けた事業戦略の立案にも効果を発揮したりします。

機能軸

機能の分析は、自社の提供する商品・サービスが顧客にとって、どんな機能を果たし、どんな課題やニーズを解決できるかを明確にします。そのためには、ニーズのヒアリング・マーケット調査・過去の売上データなどを用いて分析することが重要です。

顧客にとって価値が高いと感じる機能の選択は、競合他社と差別化した際の、競争上の優位性を確立することにつながります。そのため、3つの要素の中でも特に重要な要素です。

技術軸

技術の分析は、自社がどんな独自技術を持ち、その技術をどのように活用して顧客に商品・サービスを提供するかを明確にします。例えば、自社の技術・特許・製造方法・開発のノウハウなど、競合他社が真似しにくい独自の技術要素を把握します。

また、配送インフラが充実している場合は迅速な商品配送を、優れたデザイン技術がある場合は顧客体験やブランドイメージの向上などで、競合他社との差別化を図れます。

技術の分析においては、市場調査・自社技術と競合他社との比較・特許調査・技術が期待通りの結果につながるかの評価分析など、既存のデータを分析することが肝心です。

自社の強みを分析する

主力事業が決定したら、自社の強み(コア・コンピタンス)を分析して把握します。自社の強みを把握することは、強みを活かして競争優位性を築いたり、効果的な成果の追求に寄与します。

また、自社の強みを最大限に活かすためにどんなリソースが必要か、どのタイミングでどんな施策を行うかを判断するのにも役立ちます。なお、自社の強みの把握には、自己分析にも用いられるSWOT分析が有効です。

SWOT分析では、SWOT=「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」をそれぞれ洗い出します。そして、これらを洗い出すだけではなく、プラス面は活用策を、マイナス面は改善策の策定を行うのも大切です。

強み

SWOTの強み分析は、事業・商品・サービスの特長や技術的な優位性、優れた人材などを洗い出して整理します。さらに、競合他社と比較することも優位性を把握する上では有効です。

顧客のさまざまなニーズに対して、どのニーズに応えられているか、どのように応えているかも強みとなります。これらの強みは、市場の需要やトレンドとどのように関連しているかまで分析すると、より客観性の高い評価となります。

弱み

SWOTの弱み分析は、事業・商品・サービスの不足点や技術的な制約に加え、組織の弱点などの情報を整理します。強みと同様に競合他社との比較によって、競争上の不利を客観的に把握できます。

分析の際には、顧客のニーズについて満たせていない部分を、顧客からの評価やフィードバックから分析することも重要です。洗い出した弱みは、市場における競合他社の強みや市場のトレンドを考慮しながら評価して活用します。

機会

SWOTの機会分析は、市場の成長率やトレンドを分析した上で、自社がどのような成長の機会を持っているかを考察します。競合他社の弱点や市場での空白を見つけられれば、自社が新たな機会を追求できる可能性があります。

また、自社の強みやリソースが市場の機会とマッチングするかについて、必要なリソースを整理して、不足している部分には対策することも重要です。

脅威

SWOTの脅威分析は、競合他社の活動や市場での地位を分析して、脅威となる競合他社を特定します。また、市場の変化やトレンドから、新規企業の参入・技術の進歩・規制の変更など、脅威となる要素を洗い出すことも大切です。

さらに、自社の弱点が脅威からどのようなマイナスの影響を受けるのか、あるいは自社の弱点のうち、致命的なリスクとなるものがあるかについても検討する必要があります。

ビジネスモデルを確立する

PRM分析・CFT分析・SWOT分析によって、自社の現状に基づくメイン事業の決定と、コア・コンピタンスに基づく戦略まで整理できたら、ビジネスモデルを確立します。

例えば、顧客に対する価値の明確化・競合との差別化ポイント・リソースやパートナーシップの確保・収益モデルの設計などを、より具体的に行います。事業ポートフォリオ作成の最終段階となりますが、重要な点は企業理念に基づいたビジネスモデルかどうかです。

目先の利益だけではなく、顧客との信頼関係・社会的責任・環境への配慮も含めて、長期的に持続させるためには、企業理念は無視できません。企業としての一貫性を示すことは、顧客ロイヤルティの構築やブランド価値の向上にもつながります。

事業ポートフォリオを最適化するポイント

事業ポートフォリオをより良いものにすることは、自社が保有する事業の中から、経営資源の効果的な配分を行い、最大の収益性・成長性を追求するために重要です。ここでは、事業ポートフォリオを最適化するためのポイントを解説します。

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優先順位を決める

経営リソースには限りがあるため、どの事業に優先的に投資を行うかが重要です。収益性・成長性の高い事業には、集中的に投資して全体のパフォーマンスを向上させます。しかし、投資の集中は、リスク分散が制限される可能性も高まるため注意が必要です。

そのため、一部の事業に投資を集中させる際には、経営上の戦略的な判断をしなければなりません。企業としてのビジョン・リスクとリターンのバランス・経済状況や市場トレンドなどが判断のポイントです。

また、可能な限り、情報やデータを集めて、総合的に投資する事業の優先順位を決めるのが大切です。なお、無駄なコストの削減や効率改善も重要ですが、これらについても、商品のライフサイクルや市場変化など、総合的かつ長期的な視野で判断することが求められます。

資本効率を意識する

資本効率とは、会社が調達した資金をどれだけ効率的に活用しているかを示す考え方で、資本効率の向上が長期的なリターンを得る上で重要です。資本効率の判断には、ROEやROICなどの財務指標が用いられます。計算式は以下の通りです。

ROE(自己資本利益率) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
ROIC(投下資本利益率) = 税引後営業利益 ÷ 投下資本(株式資本 + 有利子負債) × 100

ROE・ROICの指標が高いほど、資本を効率的に活用していることを示し、資本効率が高いほど、資金提供を受けられる可能性があります。

つまり、投資家や銀行にとっては、目先の利益よりも、中長期的にリターンを生み出せるかどうかが大事であり、資金提供においてはこの資本効率を重視しています。

事業撤退も視野に入れる

RPM分析・SWOT分析などで、撤退あるいは再編すべき事業が明確になっている場合は、事業への愛着や感情的なつながりを排除してでも、適切な時期に決断する覚悟が必要です。事業の撤退や再編を遅らせることは、損失を継続させるリスクを高めてしまいます。

よって、事業の継続性を高めるためにも、経営側の人間には適切なタイミングでの判断が求められます。

ガバナンスの強化を行う

ガバナンスとは組織の意思決定と統制の仕組みを指します。事業ポートフォリオの最適化におけるガバナンスの重要性は、健全な意思決定とリスク管理を促進し、組織の長期的な成長を支えるところにあります。

ガバナンス強化のためには、意思決定の透明性と責任を明確にし、組織内のルールと規範を確立します。仮に、従業員が組織のルールや責任を無視して自己判断すると、事業の実態把握が困難になります。

そのため、リスク管理を強化し、事業ポートフォリオに関わるリスクを評価し、適切に管理することも大切です。

定期的な分析・評価を行う

市場動向や競合他社の状況は時間と共に変化しているため、事業ポートフォリオもまた、定期的な分析と評価によって最適な状態に更新することが重要です。

定期的な分析・評価では、ビジネス環境の変化や事業の成果を把握し、経営リソースの最適な配分を行います。また、リスクの管理とヘッジも重要であり、リスク要因を特定し適切な対策を講じることで、ポートフォリオ全体のリスクを管理します。

ただし、自社の現状把握は正確に行う必要がありますが、外部環境の変化はより的確に捉えなければいけません。技術の進歩・社会的価値観の変容・法制度や規制の変更など、情報収集の充実や競合他社の動向に注目することが重要です。

事業ポートフォリオにおける日本企業の課題

ここまで事業ポートフォリオの概要やメリットなどを解説してきましたが、日本企業においては事業ポートフォリオを取り巻く課題が大きい現状があります。ここでは、日本企業が抱える課題やその対策について解説します。

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ポートフォリオマネジメントを導入していない

そもそも日本企業では、事業ポートフォリオを活用したマネジメントが進んでいません。その原因として、各事業部門の権限が強く、一元的な経営ができないことがあります。この状態は、各事業部門間での情報共有やリソースの最適配分を困難にします。

経営が一元化できないことは、ガバナンスの低下を招き、経営者が各事業の相互関係や戦略的な位置づけを把握できないことにもつながります。そして、事業の実態が把握できないことにより、適切な時期に適切な施策を行う決断力も乏しくなります。

これらの課題解決には経営の一元化が望ましいですが、効率的に事業全体を管理する仕組みを整えることが有効な場合があります。また、経営的視点を持つための研修・教育的プログラムの実施や、適切な判断のためのデータ収集や分析ができる環境整備も効果的です。

事業撤退や売却には消極的

経済産業省の「日本企業のコーポレートガバナンスに関する実態調査報告書」は、日本企業が事業撤退や売却に消極的な傾向にあることをデータで示しています。これは、判断基準が不明瞭であることや企業規模縮小への対策がないことなどが関係しています。

売却基準は形式でなくとも、自社の強みや弱み・競合他社の状況を基準とすることができます。また、市場や競合状況などのデータを効率的に収集・分析できる環境を作ることで、売却や撤退の必要性やリスクの把握に役立ちます。

事業ポートフォリオを活用すれば、企業規模縮小のリスクを最小限に抑えるためのリソースの再配分や、他の事業での利益を最大化する戦略も立てやすくなります。そのため、今後の日本企業には、なるべく早急な事業のポートフォリオの有効活用が求められます

参考:コーポレートガバナンスに関する各種委託調査について|経済産業省

まとめ

事業ポートフォリオは、自社の事業群を戦略的に組み合わせ、リスクとリターンのバランスを最適化する手法です。経営資源を活用して持続的な成長を実現します。

ビジネス環境の変化に対応しながら成長するために、リソース配分や収益性を最適化するポートフォリオマネジメントを導入し、市場に柔軟に対応して競争力を強化しましょう。

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