人事データベースとは?目的や管理項目、構築するメリットを解説

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  • 人事データベースを構築する目的は、人事戦略のための情報収集や働き方改革の推進
  • 人事データベースを構築するメリットは、人事情報を可視化し人材発掘に活かせること
  • 人事データベースを運用するポイントは、データ更新時期を設定すること

人事データベースとは従業員の人事情報を集積したもので、その目的は、人事戦略のための情報収集を効率化し人材育成や人材発掘に活用することです。本記事では、人事データベースを構築するメリットや構築方法、運用ポイントなどをわかりやすく解説します。

目次

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  1. 人事データベースとは
  2. 人事データベースの目的
  3. 人事データベースで管理する項目
  4. 人事データベースを構築するメリット
  5. 人事データベースの作り方
  6. 人事データベース構築のためのシステム選定ポイント
  7. 人事データベースを運用する際のポイント
  8. まとめ

人事データベースとは

人事データベースとは、従業員のあらゆる情報が集約されたデータ群です。データベースは、主に情報の共有・分析を目的として運用されます。

人事データベースの構築によって、企業は全従業員の情報を一元的に管理できます。適切な人事評価や給与計算が可能になるほか、人材発掘や戦略的な人材配置にもつなげられます。

人事データベースの目的

人事データベースは、人事戦略・マネジメントの効率化・働き方改革・マスタ管理などを目的として構築されます。それぞれの内容を詳しくご紹介します。

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人事戦略のための情報収集

人事データベース構築の大きな目的の1つが、人事戦略のための情報収集です。人事データベースは、従業員の基本情報・スキル・給与・評価といったあらゆる人事データを可視化できるのが特徴です。

一人ひとりの属性や能力を一目で把握できるため、戦略的な人材発掘・配置が可能になるでしょう。限りある人的リソースを有効活用するためにも、人事データベースによる情報収集は重要です。

マネジメント

企業におけるマネジメントとは、各従業員の特性やスキルを見極めながら、その能力を最大限に発揮できるよう育成・配置することです。人事データベースは従業員のマネジメントにも大きく貢献します。

的確なマネジメントを行うには、従業員の個性・能力・得意分野・不得意分などを慎重かつ多角的に観察しなければなりません。しかし規模が大きな企業では、人事部だけで従業員一人ひとりに目を配るのはほぼ不可能です。

そこで役に立つのが人事データベースです。従業員に関する情報を一元的に集約できるため、それらを社内で共有することで従業員それぞれに適した育成・配置が容易に行えます。

働き方改革

人事データベースは、働き方改革を推進する上でも重要なシステムです。人事データベースには、全従業員の勤怠情報・実績などもすべて集約できるためです。

長時間労働が続いている従業員などをすぐにピックアップできるため、企業は適切なフォローやケアが可能になります。

たとえば、仕事の振り分けを見直す・産業医が診察を行うなどして、長時間労働による病気・ケガ・離職・過労死といった労務トラブルの回避につなげられます。

企業全体で働き方改革を推進するには、まず各従業員の働き方を見直す必要があります。そのためには従業員の日々の働き方の把握が必須であるため、勤怠情報の管理もできる人事データベースは大いに役立ちます。

社員のマスタ管理

人事データベースの運用は、社員のマスタ管理にも繋がります。マスタ管理とは、マスターデータを一元的に管理することです。社員マスタに関していえば、社員ID・氏名・年齢・性別・所属部署・役職がマスターデータに当たります。

紙ではなくデータとしてオンライン上で管理することで、情報の検索や更新もしやすく、正確な情報をスムーズに得ることができます。また、これらの情報は企業に義務付けられている労働者名簿の作成・更新にも役立ちます

人事データベースでは従業員に関するあらゆるデータを一元管理できるため、必要な従業員情報をいつでも取り出すことができます。

人事データベースで管理する項目

人事データベースで管理すべき項目は多岐にわたります。各項目を適切に管理し、適切な人事評価や育成、人材配置などにつなげていきましょう。

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基本属性

基本属性とは、従業員の基本的な情報を指します。たとえば次のような項目が基本属性にあたります。

  1. 氏名
  2. 年齢
  3. 性別
  4. 生年月日
  5. 家族構成
  6. 学歴
  7. 入社日
  8. 採用区分
  9. 家族情報
  10. 勤務地
  11. 所属
  12. 役職
  13. 従業員ID

基本属性は人事データベースの基盤となる情報であるため、正確な把握・管理が必要です。特に役職は変動が多い項目であるため、定期的に更新しましょう。

実績

実績は各従業員の経歴・成果であり、人材研究には欠かせない情報です。次のような項目を管理しましょう。

  1. 所属歴
  2. 成果
  3. 賞罰
  4. 経歴
  5. セミナー・研修などの受講歴

中途採用の従業員の場合は、入社前の職歴についても入力するのがベストです。人事データベースで実績を管理することで、どの人物がどのような経歴・スキルを有しているのか一目で把握でき、適切な育成・人材配置につなげられるでしょう。

勤怠

勤怠とは、各従業員の勤務状況に関する情報です。主に次のような項目が勤怠に含まれます。

  1. 出退勤の時間
  2. 遅刻
  3. 早退
  4. 欠勤
  5. 残業時間
  6. 月労働時間
  7. 育休取得日
  8. 有給取得日数

勤怠データをもとに各従業員の働き方を適切に管理することで、1人あたりのパフォーマンス向上、ひいては企業全体での生産性向上を狙えます。また、勤怠データは休職率・離職率低減のための施策立案・実行にも役立ちます。

人事評価

各従業員がこれまでに受けた人事評価を一元管理します。人事評価の方法は企業によって異なりますが、一般的には次のような項目が人事評価にあたります。

  1. 評価内容
  2. 評価点数
  3. 評価時期
  4. 評価者名

人事データベースでは過去の人事評価をリスト化して管理できるため、どの人材がどのようなスキル・成果を有しているのか一目で把握できます。

なお、人事評価基準は個人によっても異なります。たとえば同一人物を評価する場合でも、評価者Aと評価者Bでは正反対の結果が出る恐れがあります。

公平性を担保するためには、評価内容だけでなく評価者名も記入しましょう。評価者を記録しておけば、評価の傾向が分析できるため、その従業員に対する評価が妥当かどうかを判断しやすくなります。

スキル

スキル管理は、各従業員の能力を把握するために必要です。たとえば次のような項目が該当します。

  1. スキルレベル
  2. 保有資格
  3. 語学力
  4. 最終学歴
  5. 前職

上記のような項目を可視化することで、的確な人材の育成・配置が可能になります。また、能力の高い従業員のスキルや経歴を研究することで、後進の育成にも役立てられます。

マインド

マインドとは、従業員の性格・モチベーション・エンゲージメントを表わすデータです。次のような項目が挙げられます。

  1. 適性検査の結果
  2. 従業員満足度調査の結果
  3. 面接履歴
  4. 上司からの評価・メモ
  5. キャリア志向
  6. 性格
  7. 趣味

上記のような項目を可視化することで、従業員の企業・職務への考え方や意欲が把握しやすくなります。意欲の低下が見られる場合、いち早くその原因の究明・解決に乗り出せるでしょう。

従業員の意欲を高めるような施策を立案・実行すれば、一人ひとりのパフォーマンス向上が期待できるほか、休職や離職も防止しやすくなります。

職務内容

職務内容は、従業員が今担当している業務を具体的にあらわしたものです。次のような項目が該当します。

  1. 業務内容
  2. 担当商材
  3. クライアント
  4. 目標
  5. ノルマ
  6. 進捗状況
  7. 目標達成度

職務内容を可視化することで、適切な人事評価や人材配置が可能になります。また、職務遂行における課題が発見しやすくなるため、適切なフィードバックやフォローも可能になるでしょう。

行動データ

行動データとは、勤怠といった表面的な行動情報よりも一歩踏み込んだデータのことで、たとえば次のような項目を指します。

  1. (会議・面談での)発言時間
  2. 位置情報
  3. 心拍数

行動データの収集にはウェアラブル端末の利用が一般的です。管理者の目が届かない外回り営業・リモートワークをしている従業員の行動も管理できるため、適切な人事評価やフィードバックが可能になります。

また、優秀な人材の行動パターンを分析し、後進の効率的な育成にも役立てられます。なお、収集したデータの分析には専門知識が求められるため、専任の人材を設置したり、外部機関に分析を依頼したりするのが望ましいでしょう。

人事データベースを構築するメリット

人事データベースの構築により、人事管理・人材育成・人材配置・人事評価といった業務が効率化します人事関連業務に課題がある企業は、人事データベースの構築を検討してみましょう。

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人事管理の業務効率化ができる

人事データベースの構築により、人事管理業務の効率化が図れます。従来の人事管理では、紙媒体で人事データを管理することも多くありました。

紙媒体で人事管理を行う場合、人事異動などの変更があった際には、すべての関連資料の情報を手作業で更新しなければなりません。また、他メンバーとの共有がしづらい点・情報の取り出しに時間がかかる点も難点でした。

一方、人事データベースを利用すれば、各従業員のあらゆる情報を1つのシステムに集約できます。人事情報に変更があった場合でも、データベースのみ更新すれば良いため、業務効率が大幅に向上します。

また、登録された人事情報は組織全体で共有できるほか、検索機能を使えば必要な情報をすぐ呼び出せる点もメリットです。

人材育成や人材発掘に活用できる

人事データベースでは人事情報が可視化されるため、企業が求めるスキルや経歴を持つ人材を即座に引き当てられます。ポテンシャルの高い人材に育成コストを集中させることで、効率的にハイパフォーマーを育てられるでしょう。

また、各従業員のスキルや能力に合わせて適材適所に人材配置できる点も、人事データベースの大きなメリットの1つです。

適切な人事評価が行える

人事データベースにより、適切な人事評価が可能になります。人事データベースでは、各従業員の勤怠状況・実績・成果・スキルなどを一元的に管理できるためです。

これらの情報は、勤怠管理システム・SFAといった、それぞれ領域に特化したツールで管理することもありますが、情報が複数のシステムに分散するため、情報収集や分析に手間がかかります。また、情報の見落としが起こりやすく、適切な評価ができないこともあります。

一方、人事データベースには従業員の全情報が集約されるため、効率的な情報収集と分析が可能になります。情報の見落としも起きにくいため、幅広い情報をもとに総合的かつ的確な人事評価が行えます。

人事データベースの作り方

人事データベースの作り方には、次の2つのような方法があります。それぞれのメリット・デメリットを理解して、自社に適した構築方法を選択しましょう。

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自社で構築する

自社で人事データベースを構築する場合は、エクセルの利用が一般的ですExcelを利用する場合の人事データベースの構築方法は次の通りです。

  1. 項目を設定する
  2. データベース用の表を作成する
  3. 必要な情報を入力する
  4. 変更がある場合は手動で更新する

エクセルを利用しての人事データベース構築は、手軽で取り組みやすい点がメリットです。一方、デメリットとして、入力・更新は手動で行わなければならない点が挙げられます。

エクセルにはデータ量に制限がある点にも留意しなければなりません。データ量が大きくなるとシステム動作が重くなるため、シートを分けるなどの対策が必要です。しかし、この場合は人事情報が各シートに分散するため、一元的な人事管理は難しくなります。

また、セキュリティ対策も自社で行わなければなりません。人事情報には個人情報も含まれるため、適切な情報管理を行いましょう。

人事データベースを構築できるシステムを導入する

人事データベースの構築には、人事情報の管理に対応したシステムを導入するのも良い方法です。よく利用されているのは人事管理システムや労務管理システムです。

人事管理システムや労務管理システムを利用する場合は、人事データベースを一から構築する必要がないため、自社の人的リソースを節約できます。

人事管理システム

人事管理システムは、人事関連の情報を一元的に管理できるシステムです。たとえば各従業員の勤怠管理・人事評価・スキル・適性管理などが1つのシステムで管理できます。

人事管理システムには次のような機能が搭載されています。人事情報をほぼ全てカバーできるため、人事データベースとしても活用できるでしょう。

  1. 基本情報管理
  2. スキル管理
  3. 勤怠管理
  4. 給与計算
  5. 労務管理
  6. 人事評価
  7. 目標・進捗管理
  8. マイナンバー管理

人事管理システムとは?機能やメリット、選び方を解説

人事管理システムとは、従業員の情報や勤怠、労務などの人事業務に関する情報を一元管理できるシステムです。上手に活用することで業務効率化や人為的ミス防止に繋がります。本記事では、人事管理システムの機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。

労務管理システム

労務管理システムは、従業員の賃金・福利厚生を一元的に管理できるシステムです。主に次のような機能を備えています。

  1. 入退社管理
  2. 基本情報管理
  3. マイナンバー管理
  4. 年末調整
  5. 雇用契約の手続管理
  6. 電子申請管理
  7. 勤怠管理

搭載機能はシステムによって異なるものの、労務管理システムには人事管理機能も備えたものも多くあります。そのため、人事データベースの構築のために労務管理システムを導入している企業も少なくありません。

労務管理システムとは?メリット・デメリット、機能や選び方を解説

労務管理システムとは、従業員の労働時間や社会保険・労働保険などの管理、労務手続きが行えるシステムです。本記事では、労働管理システムをよく知らない方・導入を検討している方のために、システムの機能や選び方、メリット・デメリットを解説しています。

人事データベース構築のためのシステム選定ポイント

前述のように、人事データベースの構築にはシステムの導入も有効です。そこで、ここでは人事データベース構築のためのシステムを比較検討する際のポイントを解説します。

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人事データベース構築のためのシステム選定ポイント

  1. 導入形態と費用
  2. 搭載機能と操作性

導入形態と費用

人事管理システムや労務管理システムなどの導入形態は、大きくオンプレミス型とクラウド型に分かれます。オンプレミス型は自社のサーバーでシステムを運用する形態、クラウド型はインターネットを介してベンダー側のサーバーにアクセスし、利用する形態です。

オンプレミス型の場合はカスタマイズ性やセキュリティ性が高いですが、初期費用が高額になりやすい点に留意しましょう。

一方、クラウド型は初期費用は低いものの、月々のシステム利用料が発生します。料金プランは、機能数や企業規模に応じて複数用意されていることが多いです。中には無料のシステムもありますが、機能は限られます。

また、クラウド型のシステムを利用する場合、セキュリティ・メンテナンス・システムトラブル対応はベンダーに委託できます。導入の際は、導入形態ごとのメリットとデメリットを十分に比較検討しましょう。

搭載機能と操作性

システムを導入する場合、人事データベース関連の機能はもちろん、それ以外の機能についても確認する必要があります。自社の業務上の課題やシステムに求める要件を洗い出し、機能の過不足がないか、自社で効果的に運用できそうか、確認しましょう。
操作性についても確認しておくと、システムを選定しやすくなります。画面が見やすいか、初心者でも客観的に操作できるか、などに着目してシステムを比較しましょう。システムによっては無料トライアルが提供されていることもあるので、活用をおすすめします。

人事データベースを運用する際のポイント

人事データベースは、ただ構築するだけでは、その効果は実感できません。効果を最大限に引き出すためにも、次のようなポイントを押さえて構築・運用しましょう。

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目的を明確にする

まずは人事データベースの構築・運用の目的を明確にしましょう。目的によって、必要な機能・入力すべきデータが変わってくるためです。

たとえば働き方改革を推進したい場合は、勤怠管理機能を充実させる必要があります。人材の育成を図りたい場合は、スキル管理・適正管理・職歴管理機能が重要になります。

このように、構築・導入の目的を明確にすることで、自社にとって必要な人事データベースの「形」が見えてきます。システムの形骸化を防ぐためにも、まずは構築・導入の目的を明確にしましょう。

データ量と拡張性を重視する

人事データベースは、登録されたデータが多ければ多いほど有効活用できます。さまざまな情報から多角的な人事判断が可能になるためです。

よって人事データベースは、莫大かつ幅広い分野のデータ保存に耐えうるものが望ましいです。しかし大掛かりなデータベースの構築には時間や手間のコストがかかります。

また、操作が難しいシステムの場合、導入したものの上手に活用できないといった事態にもなりかねません。

そこで重要となるのが、拡張性のあるシステムの構築です。まずは小規模なデータベースでスタートを切り、徐々に機能を拡大していくことで、トラブルや混乱が起きにくくなります。

人事データベースは、将来カスタマイズすることを前提にし、更新しやすい設計・拡張性のある設計にすることが望ましいでしょう。機能拡張に伴う容量不足を避けるために、最初からある程度の容量を備えたシステムを構築することも大切です。

入力ルールや項目ごとの権限を設定する

人事データベースに登録される情報には個人情報も含まれます。情報管理を適切に行うためにも、人事データベースの運用ルールは厳格に定めておきましょう

たとえば入力すべき情報項目・システムへのアクセス方法・情報の追加や変更のやり方については、人事部全体でルールを共有する必要があります。情報の漏洩や悪用を防ぐには、入力情報の重要度別に、アクセス権限や閲覧制限を行うのも良い方法です。

データ更新時期を設定する

人事データベースでは最新情報をすぐに閲覧できるよう、定期的な更新を行いましょう。最新の情報が取得できない場合、人材育成や人材配置に失敗する恐れが高くなります。

データの更新時期をあらかじめ設定しておけば、更新し忘れを防げるでしょう。3ヶ月に1度・半年に1度など、自社の状況にあわせて更新時期を設定しておくのがおすすめです。

まとめ

人事データベースとは、全従業員の人事データを一元管理するものです。人事データの一元管理により、人材の発掘や育成・適切な人材配置・人事業務効率の改善・働き方改革の推進といった効果が見込めます。

人事データベースは、エクセルなどを使って自社で一から構築するほか、人事管理システムや労務管理システムを応用して構築する方法もあります。システムを利用すると、データベース構築にかかるリソースを節約できるというメリットがあります。

人事データベースで管理すべき項目は多岐に渡ります。まずは構築の目的を明確にすることで、集中的に管理すべき項目や必要な機能が絞り込めます。将来のカスタマイズを見越して、データベースは拡張性が高いものを設計することも大切です。

また、人事データベースに入力する情報の管理は適切に行いましょう。厳格な運用ルールの設定や更新時期の設定が重要です。
人事データベースの構築により、適切な人材配置・働き方改革による生産性の向上・業務効率の向上が狙えます。人事関連業務に課題がある企業は、人事データベースの構築を検討しましょう。

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