インシデント管理ツールとは|機能やメリット・デメリットを解説

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  • インシデント管理ツールがあると、問題や障害が発生したとき、迅速に対応できる
  • インシデント管理ツールには、問い合わせ管理やメール管理機能などが搭載されている
  • インシデント管理ツールを導入することで、業務の属人化を防ぐことができる

インシデント管理ツールでは、インシデント発生から復旧までを、効率的に管理することができます。本記事では、インシデント管理ツールの目的や種類、主な機能について解説し、インシデント管理ツールを導入するメリット・デメリット、比較の際のポイントについても紹介します。

目次

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  1. インシデント管理ツールとは
  2. インシデント管理の目的
  3. インシデント管理ツールの種類
  4. インシデント管理ツールの主な機能
  5. インシデント管理ツールを導入するメリット
  6. インシデント管理ツールを導入するデメリット・注意点
  7. インシデント管理ツールの選び方
  8. インシデント管理ツールを比較する際のポイント
  9. まとめ

インシデント管理ツールとは

インシデント管理ツールとは、システムやセキュリティで発生した問題(インシデント)を適切に管理し、解決するためのツールです。インシデントの発生状況や対応状況を可視化できるため、迅速かつ効率的にトラブルの対処を行えます。

インシデント管理は、問題の発生から正確な情報収集、復旧作業や問い合わせ対応など様々なプロセスが発生します。インシデント管理ツールを利用することで、システム上での作業や管理ができるようになります。

インシデントの対応状況は、ステータスごとにタイムリーな共有がされるため、問い合わせの未対応や重複の対応を防ぐこともできます。ツールにより対応方法のフローが出来上がることで、インシデント対応の仕組みを作ることも可能です。

インシデントとは

インシデントとは出来事や事件を表す単語で、事故を意味するアクシデントの一歩手前の状況という意味合いになります。大惨事にはならなくても、迅速な解決が求められる状況と言えるでしょう。

社内システムにおけるインシデントは、システム障害や不具合などユーザーの困りごとからサイバー攻撃のような情報資産が脅かされる事態までを幅広く意味します。例えば不正アクセスが発生した場合、顧客情報が盗まれて金銭的な事件にまで発展する可能性もあります。

そのような事象を阻止するために、インシデントとして適切な管理がされることが求められています。

エクセルでインシデント管理を行うことは可能か

Microsoftが提供するエクセルでインシデント管理を行うことは可能ですが、あまりおすすめはできません。エクセルで行うインシデント管理は記録がメインになりがちで、情報の自動化や共有をしにくいデメリットがあります。

インシデントの件数が増えるにつれてシートの管理が煩雑になりやすく、発生日時やインシデントの内容、担当者、ステータスといった重要な情報を正しく把握することが難しいです。サービスデスク担当者の負担増加や入力ミスの発生にも繋がります。

このような状況では、インシデント管理の本来の目的である、システムの素早い復旧を実現することは難しいため、インシデント管理ツールなどを活用して効率化する企業が増えています。

インシデント管理の目的

インシデント管理の目的は、発生したインシデントに対してタイムリー且つ正確に対処し、業務を円滑に進めることです。インシデント管理ツールでは、インシデントの発生から復旧までに必要な一連のプロセスを管理できます。

従来であれば一つひとつのインシデントに対して個別で対応が必要なところを、システム上で対応状況や進捗状況を可視化して、一括管理が可能です。インシデント対応のフローとして仕組化が実現すれば業務を効率化でき、組織全体の生産性の向上につながるでしょう。

また、インシデント管理ツールでは、インシデントへの対処をノウハウとして蓄積できます。同じ事象が再度発生した際には同様の対応や応用する形で情報を活用し、速やかな解決ができます。

インシデント管理ツールの種類

インシデント管理ツールには、管理する対象の違いなどによりいくつかの種類があります。ここでは、インシデント管理ツールの種類を詳しく解説します。

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問い合わせ管理システムタイプ

問い合わせ管理システムタイプのものは、社内外からの問い合わせ内容を一元管理できるツールです。電話やメール、問い合わせフォームやチャットなど様々な手段を通して寄せられた問い合わせの内容をまとめて管理し、対応状況をリアルタイムで可視化できます。

また、AIによる自動回答など、質問者が自己解決できるような機能も備わっています。ツールを利用して問い合わせ内容の集計や分析を行い、ナレッジとして蓄積されたデータをもとに解決方法を引き出すことが可能です。

スピーディー且つ正確に対処できる機能が搭載されたツールと言えるでしょう。

プロジェクト管理ツールタイプ

プロジェクト管理ツールタイプは、プロジェクト管理にも使用できるインシデント管理ツールです。タスク管理や商談の進捗状況などをプロジェクトに関わるメンバーで確認できます。

インシデント対応に関しては、システム上で登録された問題に対して担当者や期限などを設定して、全員で情報共有することが可能です。特に大人数のプロジェクトではデータ管理が複雑化しがちなため、インシデント管理ツールによる漏れのない対処が求められます。

インシデント管理ツールの主な機能

インシデント管理ツールには、業務を効率化するための様々な機能が搭載されています。ここでは、インシデント管理ツールの主な機能を解説します。

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インシデント管理ツールの主な機能

  1. 問い合わせ管理機能
  2. プロジェクト管理機能
  3. メール管理機能

問い合わせ管理機能

問い合わせ管理機能は、社内外からの問い合わせの管理や分析を行う機能です。インシデントが発生した場合、電話やメール、チャットなど様々な問い合わせを受けますが、全ての問い合わせ内容をシステム上で一元管理できます。

問い合わせ内容は分析したりデータ化したりして、ユーザーへの情報提供にも活用できます。また、解決までの手順をナレッジとして蓄積することで、今後のトラブル対応に活かすこともできるでしょう。

プロジェクト管理機能

プロジェクト管理機能では、プロジェクトを管理しながらインシデントを防止できます。スケジュールやタスクの管理、案件の進捗状況などあらゆる情報を共有することで、発生しうるインシデントの早期発見や未然防止につなげることが可能です。

プロジェクト管理機能の中に含まれる通知機能は、対応が必要な事項のリマインドにもなります。定められたタスクが実行できているかなどを全員で確認し、確実性の高い業務を遂行できることが期待されます。

メール管理機能

メール管理機能は、サポート部門が受け取ったメールやチャットなど、テキストベースの問い合わせ内容をまとめて管理する機能です。対応状況の管理はもちろん、担当者や他の従業員に引き継ぐ際にはコメント機能で注意喚起ができます。

また、問い合わせの返信を承認制にすることもできるため、誤った内容の送信や重複した返信を防ぎ、トラブルの発生を防ぐことが可能です。Webを使用したツールに比べて安価で、導入しやすい傾向にあります。

インシデント管理ツールを導入するメリット

インシデント管理ツールを導入することで、業務の最適化に役立つ様々なメリットが得られます。ここでは、インシデント管理ツールを導入するメリットを解説します。

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インシデント管理ツールを導入するメリット

  1. 情報を可視化できる
  2. 属人化を防げる
  3. データを蓄積できる

情報を可視化できる

インシデント管理ツールは情報を可視化できるため、リアルタイムで状況把握が可能です。そのため、問題が発生している場所の特定や必要な対応に優先順位をつけ、復旧に向けたスムーズな対処ができます。

仮にユーザーが作業しているシステム上で不具合が発生した際、ツール内で共有されている情報を参考に自己解決できたり、必要な対処方法を考えたりできるでしょう。タイムリーな情報の可視化により、円滑な業務の遂行ができるようになります。

属人化を防げる

ツールの活用によりインシデント管理のフローを標準化できるため、属人化の防止が可能です。管理されているデータをもとに従業員同士で同じ情報を共有できるため、担当者のみに情報が偏るということがありません。

情報に偏りがある場合、担当者が不在のときに対応が遅れたり、引継ぎに時間を要したりするというデメリットが発生します。従業員が同じ情報を持っていれば、問い合わせに対する柔軟な対応ができ、スムーズな解決が可能です。

データを蓄積できる

インシデント管理ツールには、過去のインシデント対応記録をデータとして蓄積し、ナレッジ化できる機能があります。新しいインシデントが発生した場合に、システム上で蓄積されているナレッジをもとにスムーズな解決が可能です。

過去にはない事例であったとしても、記録されたデータをもとに関連する対応方法を紐づけ、応用する形で問題の解決に活かすことができるでしょう。また、蓄積したデータから自社の課題を洗い出し、顧客対応や業務の質を改善するための施策を考えることができます。

インシデント管理ツールを導入するデメリット・注意点

インシデント管理ツールには、デメリットもあります。デメリットに対する対策を行った上での導入が大切です。ここでは、インシデント管理ツールを導入する際のデメリットを解説します。

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運用までに準備が必要

インシデント管理ツールは導入から運用まで、多くの準備が必要とされます。まず導入にあたっては、従業員に向けて導入目的やフローの変更点などの周知を行い、理解を得ておく必要があるでしょう。

導入してから運用に慣れるまでは、操作性の習得や業務フローの定着などに時間を要することが懸念されます。事前の研修やマニュアル化による操作方法の説明などを用いて、従業員がツールの使用になじめる環境づくりが必要です。

コストに見合わない可能性もある

インシデント管理ツールは機能が充実しているぶん、コストも上がります。搭載された機能を使いこなせなかったり使う機会がなかったりすると、コストに見合わないと感じる可能性もあるでしょう。

コストに見合うツールを導入するためには、自社に合ったツールを見極めることが大切です。自社の課題やニーズ、既存のシステムや組織体制など様々な角度から検証し、必要な機能を備えたインシデント管理ツールを導入することがおすすめです。

専門性の高い業種には向かない場合がある

専門性の高い業種には、インシデント管理ツールが向かないというデメリットもあります。扱うシステムが高度で複雑な場合が多く、ツールでは対応しきれない可能性が高いためです。

高度な専門知識を必要とする場合、AIによる分析や自動回答に頼れない部分もあるでしょう。無料トライアルなどを活用し、自社のシステムに対応しているかどうかなど使い勝手を確認した上で導入を検討する必要があります。

インシデント管理ツールの選び方

インシデント管理ツールは、自社に合ったものを選ぶことが大切です。ここでは、インシデント管理ツールの選び方を解説します。

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導入・運用が容易であるか

インシデント管理ツールは導入や運用が簡単なものがおすすめです。多くの従業員が日常的に使用することになるため、使い勝手がよく操作・メンテナンスが簡単に行えるものが最適と言えます。

機能性が高い製品の中には、高度な操作スキルが必要とされるものもあります。そうなると、作業やメンテナンスに専門知識が必要となったり時間がかかったりして、コストや時間の無駄になることも懸念されます。

業務の効率化やスピード感のある対応をするために、導入や運用の容易さは必要不可欠です。

自社の目的に沿った自動化ができるか

インシデント管理ツールが自社の必要とする作業を自動化できるかという点も、選ぶ上で注目したいポイントです。自動化したい内容により必要とする機能が変わり、選ぶべきツールも絞られるためです。

コスト面とのバランスも大切であるため、必要な機能とそれに見合った費用であるかも確認する必要があります。自社が抱える課題や目的を明らかにし、適合性のある機能を備えたツールを選びましょう。

クラウド型かオンプレミス型か

インシデント管理ツールはクラウド型とオンプレミス型があり、導入方法や難易度、コスト面などで違いがあります。

クラウド型は、インターネット上でアカウントを作成することで利用できるツールです。導入はアカウントの作成や登録のみである点やメンテナンスをベンダーに任せられる点で、運用に手間がかかりません。専門知識がなくても利用したい場合におすすめです。

オンプレミス型は、自社のサーバーやデバイスにシステムをインストールして利用するタイプです。カスタマイズ性が高いため、自社のニーズに合わせたシステムを構築したい場合におすすめです。ただ、導入やメンテナンスに専門知識が必要とされます。

費用対効果が見合っているか

インシデント管理ツールを選定する際は、機能性とコストのバランスが取れた費用対効果が高いものがおすすめです。基本的に機能性が豊富になるほどコストも高くなる傾向にあるため、自社に必要な機能を明確にして絞り込みましょう。

コストをかけて機能性の豊富さを追求したとしても、システムが複雑になるため、従業員が全ての機能を使いこなせなかったり、使いにくさを感じてスムーズに定着しなかったりして、かえって成果を得られない可能性も考えられます。

インシデント管理ツールは長期的に活用していくツールであるため、必要十分な機能性かつ負担のない価格帯の両方の特徴を兼ね備えたシステムを選定することが重要です。

インシデント管理ツールを比較する際のポイント

インシデント管理ツールは、自社のニーズに合わせて様々な角度から比較して見極めることが大切です。ここでは、インシデント管理ツールの比較ポイントを解説します。

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問い合わせ対応を強化したいなら

問い合わせ対応を強化したい場合、問い合わせ内容を一元管理できる機能を備えたツールがおすすめです。問い合わせ内容や対応状況をステータスごとに一覧表示できるツールであれば、対応漏れや対応の重複を防ぐことができます。

また、問い合わせ内容の分析が可能なものやデータとして蓄積できるものであれば、従業員同士でナレッジとして共有し、全ての従業員が問い合わせに対して適切な対応が可能になります。さらに、自己解決のためのFAQの作成やチャットボットの構築もできます。

プロジェクト管理を強化したいなら

プロジェクト管理を強化したい場合は、タスク管理や進捗状況の把握、社内のコミュニケーションツールと連携して円滑に作業が進められる機能を搭載したツールがおすすめです。プロジェクト全体をシステム上で可視化できれば、トラブルへの早期対応が可能になります。

特に大型のプロジェクトでは多数の従業員や事柄が関わるため、進捗状況をデータ化できる機能が備わったツールを選びましょう。

運用の改善を継続的に行いたいなら

インシデント管理ツールを活用して運用の改善を継続したい場合、ITILに準拠した管理ツールの利用がおすすめです。ITILとは、ITサービスマネジメントの成功事例をまとめたガイドラインのようなものです。

ITILに則った適切な方法で運用することで、ITサービスの品質が保持しやすく、顧客満足度の向上やインシデントの対応力の強化が継続できます。

他部門への展開の可能性があるなら

他部門でも使用する可能性がある場合、管理部門や経営者にとっても使いやすいツールであることが求められます。状況に合わせて権限を付与できる機能も効果的です。

実際に使わないと気が付かない操作性の悪さなどもあるため、社内で利用する範囲を想定した上で、無料トライアルやデモによるテスト運用が役に立ちます。

まとめ

インシデント管理ツールは幅広い規模のインシデントを適切に管理し、解決するためのツールです。インシデントの発生から問い合わせ対応、システムの復旧など、解決のために必要な作業をツール上で管理して、業務の効率化や最適化を図ります。

問い合わせ対応の記録のナレッジ化や従業員への幅広い情報共有により、スピーディーな問題解決や属人化の防止にもつながります。

インシデント管理ツールを導入する際は、目的を明確にして従業員への周知や費用対効果を見極めることが大切です。この記事で紹介した内容をもとに適切なツールを選び、従業員の対応力強化や生産性の向上を目指しましょう。

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