iPaaSとは?意味や使い方、メリットなどをわかりやすく解説

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  • iPaaSとは、複数のクラウド上に分散しているシステムを統合・連携させるサービス
  • 複数のシステムを一箇所で管理できるため業務が円滑化し、データ分析もより正確になる
  • iPaaSを選ぶ際は、自社の目的に合っているかどうかやサポート体制の充実度を確認する

iPaaSとは、複数のクラウド上に分散しているシステムを統合・連携させるサービスのことです。ばらばらに管理されているシステムを一元化できるため、業務の効率化や生産性アップにつながります。この記事ではiPaaSの意味や使い方、メリット、選び方などについて解説します。

目次

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  1. iPaaSとは
  2. IaaS・PaaS・SaaSとの違い
  3. APIとの違い
  4. RPAとの違い
  5. iPaaSが注目される背景
  6. iPaaSの機能
  7. iPaaSの種類
  8. iPaaSの使い方
  9. iPaaSのメリット
  10. iPaaSのデメリット
  11. iPaaSを選ぶ際のポイント
  12. まとめ

iPaaSとは

iPaaS(Integration Platform as a Service)は、クラウドベースのサービスであり、異なるアプリケーションやシステムのデータ・機能を統合するプラットフォームです。

社内で使っている複数の業務アプリケーションや業務システムをクラウド上で統合することで、業務プロセスやデータを高度に連携することができます。クラウド環境とオンプレミス環境の連携なども可能で、業務効率化や生産性向上のために活用されています。

IaaS・PaaS・SaaSとの違い

iPaaSに似た名前のサービスとして、IaaS・PaaS・SaaSがあります。これらはクラウドサービスである部分が共通していますが、全く異なるカテゴリのクラウドコンピューティングサービスです。以下にそれぞれのサービスの特徴を簡単にまとめました。

サービス名特徴
IaaSサーバーやストレージなどのインフラを提供するサービス
PaaSアプリケーションの開発・実行に必要なプラットフォームを提供するサービス
SaaSアプリケーションをインストールせずにWeb上で使用できるサービス

これらは、クラウドコンピューティングの分野でそれぞれ異なるレベルでサービスを提供しており、システムの開発などにかかる負担を軽減できるようにサポートしています。

一方、iPaaS(Integration Platform as a Service)は、異なるアプリケーションやシステムをシームレスに統合するプラットフォームであり、別のカテゴリに属しています。

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APIとの違い

API(Application Programming Interface)とは、異なるソフトウェアやアプリケーションの間でその連携を担うインターフェースです。APIによる連携で、ソフトウェアやアプリケーションは互いに通信して、データや機能を共有できるようになります。

iPaaSは、このAPIを活用することで成り立っています。APIは通常、ソフトウェアやアプリケーションごとに提供、あるいは開発されるものですが、iPasSは複数のクラウドサービスをまとめて連携させることができるので、個別にAPI連携するよりも手間がかかりません。

RPAとの違い

iPaaSとRPAは混同されやすいですが、それぞれ異なる技術であり、活用の仕方も違います。iPaaSは異なるアプリケーションやシステムを連携することで、ビジネスプロセスの効率化を支援します。

一方、RPAはソフトウェアロボットを使用して繰り返しの作業やルーティンなタスクを自動化します。iPaaSはアプリケーション・システム同士の連携を目的としていますが、RPAはPC上で行う作業の自動化が目的です。

RPAでもデータの転記などはできますが、目的はあくまでも作業の自動化なので、iPaaSとは全く別のツールだと言えるでしょう。

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iPaaSが注目される背景

近年、クラウドサービスの利用が急増し、2022年には企業での利用率が72.2%に上りました。しかし、多くのクラウドサービスの登場により、企業が使うプラットフォームやアプリケーションは増加し、データの孤立化が生じています

iPaaSは、この問題を解決するために開発されました。iPaaSは異なるシステムのデータや機能を統合し、シームレスな連携を実現します。

高度なスキルを必要としないことが多く、設定や管理が容易なので企業にとって導入ハードルが低く、特にDXを推進しているから高い注目を集めています。複数のツールを使ってデジタル化を進めるうえで欠かせない、統合的な環境をつくりやすくなるのです。

参考:令和5年版 情報通信白書 データ集 8. 企業におけるクラウドサービスの利用状況|総務省

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iPaaSの市場規模は拡大傾向

さまざまな企業がクラウドサービスを導入するようになると同時に、iPaaSの需要は高まりつつあります。特に近年は働き方改革などの影響で、従業員の負担軽減と業務効率化が重視されているため、ツール同士の自動連携は大きな意味を持っています。

そして、先ほども述べたようにDXの流れもiPaaSが注目される要因となっています。AIやIoTとの連携も期待されており、今後さらに活用の幅が広がる見込みです

こうした背景から、これまで海外製品が主流だったiPaaSも日本製のものが登場し、iPaaS市場は今後も拡大していく見込みです。

iPaaSの機能

iPaaSは、企業が運用している複数のシステムやそのデータを連携させて、業務の自動化や業務フローの効率化、データの一元管理を実現するシステムです。その機能は「連携」に特化しており、各システムの孤立化を防ぎます

機能特徴
サービス間の連携APIにより、複数のシステム同士を安全かつ確実に連携させる
データの連携連携させたシステム同士で、データをリアルタイムに共有する
業務フローの連携データの連携により部門間の連携を強化し、業務フローを改善する

システム同士の連携により、データがリアルタイムで共有され、部門間の連携を強化します。例えば、営業部がSFAに顧客情報を登録した時、リアルタイムで関連するシステムにデータが自動転記されるため、他の部門でもデータを即座に閲覧・活用可能です。

また、情報共有にかかる打ち合わせ時間を短縮でき、複数のシステムに別々にデータを登録するといった業務フローも自動化できるため、大幅な業務効率化やリードタイム短縮が見込めます。

iPaaSの種類

iPaaSは、レシピ型、ETL/ELT型、EAI型、ESB型の4つの種類に分類されます。レシピ型はノーコード/ローコードアプローチを用いることで、シンプルな連携タスクを効率的に統合します。

ETL/ELT型ではデータの抽出、変換、ロードを行うことができ、データウェアハウスやデータレイクへのデータ取り込みに適しています。EAI型は、いわゆる「ハブ」として機能するiPaaSで、メッセージブローカーを使用してデータの受け渡しを行います。

ESB型はデータの通信路である「バス」を構築するタイプで、サービス指向アーキテクチャ(SOA)に基づくシステムに適しています。それぞれの種類は異なる特徴を持ち、企業のニーズや要件に合わせて選択されます。

タイプ特徴
レシピ型・ビジュアルなインターフェースを使用
・ノーコード/ローコードアプローチなど シンプルなタスクの統合に適している
ETL/ELT型・データの抽出、変換、ロードを行う
・データウェアハウスやデータレイクへのデータ取り込みに適していて、分析に強い
EAI型・「ハブ」として企業内のアプリケーション間でデータや機能の連携・統合を行う
・メッセージブローカーを使用
ESB型・通信路である「バス」を構築する
・サービス指向アーキテクチャ (SOA) に基づくシステムに適している

iPaaSの使い方

iPaaSでは、API連携によりアプリケーション間のリアルタイムな連携が可能になります。また、データ変換も担ってくれるので、異なるデータ形式を採用しているアプリケーション同士の連携も可能です。

スケジュールを設定して定期的にデータを取得・送信することなどもできるので、今まで手作業でデータを転記していた場合などに有用です。以下で、iPaaSを使った連携の例を3つ紹介します。

例1:チャットツールとCRM(顧客管理システム)を連携

チャットツールとCRM(顧客管理システム)間での顧客情報の共有により、カスタマーサポート担当者は問い合わせ時に顧客の履歴を把握でき、より個別化されたサービスを提供できます。

自動的な連携により、顧客の問い合わせに素早く正確に対応できるため、顧客満足度が向上します。さらに、タスクの自動化により業務の効率化が実現し、スタッフの負担軽減が可能です。

また、チャットツールだけでなくその他の分析ツールなどとも顧客情報、および問い合わせ情報の共有をすることで、データの一元化によってレポート作成や分析が容易となります。

例2:名刺データの自動転記

名刺データの自動転記によるiPaaSの導入では、受け取った名刺の情報をスマートフォンやスキャナーで読み取ると、即座に別のシステムにも同じ内容が反映されます。

従来の手動入力作業の手間やヒューマンエラーを削減し、営業担当者は本来の業務に充てる時間を確保できます。自動的なデータ転記により、顧客情報は一元管理され、情報の一貫性を保つことも可能です。

また、名刺情報が即座にCRMなどのシステムに反映されることで、営業活動の効率化と顧客サービスの向上が実現されます。iPaaSの導入によって、営業担当者の業務効率が向上し、顧客関係の強化に貢献することが期待されます。

例3:自社サービスにマップを導入

APIを使用して自社サービスにマップを組み込むことにより、位置情報や地図情報を自社アプリケーションに連携させることが可能となります。

たとえば、位置情報サービスでは配送アプリで顧客の荷物追跡や最適ルート案内、観光案内アプリで観光地情報や周辺スポット提供、不動産検索サービスで物件位置の可視化などが実現します。

iPaaSの活用によって、自社サービスは多様な情報を地図上で可視化し、ユーザーにより便利な体験を提供することが期待されます。

iPaaSのメリット

iPaaSは、異なるアプリケーションやシステム間でデータや機能をシームレスに統合する革新的なクラウドサービスです。iPaaSを導入することにより、企業は多くのメリットを得ることができます。

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複数のシステム連携により業務フローを円滑化

iPaaSの導入により、企業は個別のシステムでばらばらに管理されていたデータを一元化できます。これにより、異なるアプリケーション間でのデータの孤立化が解消され、シームレスなデータ連携が実現されます。

一元化されたデータは、複数の部門やチームによって容易に共有・アクセスできるため、情報の取得や更新がスムーズに行われ、業務効率が飛躍的に向上します。

また、データの一元管理により重複作業やエラーが減少し、正確性が高まるため、ビジネスプロセスの品質向上にも寄与します。

さらに、ビジネスデータに対するリアルタイムの洞察を得られるため、迅速な意思決定や戦略の立案が可能となり、企業の競争力を強化します。

ノーコード・ローコードで開発できる

iPaaSは、ノーコード・ローコードの開発アプローチを提供しており、ビジネス専門家や非技術的なユーザーでも迅速にアプリケーション連携の仕組みを開発できる優れたクラウドサービスです。

ノーコードの利用により、プログラミングの知識がなくてもビジュアルなインターフェースを使い、ドラッグアンドドロップなど設定だけで連携システムを構築できます。

一方、ローコードでは一定程度のプログラミング知識が必要ですが、高度な開発スキルを持たない開発者でもアプリケーション開発が可能です。

クラウドネイティブで使える

iPaaSはクラウドネイティブなアプローチを採用し、クラウドコンピューティングの特性を最大限に活用します。クラウドネイティブとは、クラウドでアプリケーションを実行したり、ソフトウェアを開発したりすることを前提とした考え方です。

クラウドネイティブな環境への対応により、リソース効率化やスケーラビリティの向上が可能となります。

また、継続的なデプロイメントの自動化により、開発サイクルが迅速化し、エラープルーフな運用が実現します。柔軟性と拡張性に優れ、マイクロサービスアーキテクチャによる独立したコンポーネントの開発が可能です。

さらに、オーケストレーションツールとの連携により、自動スケーリングや負荷分散を効率的に管理し、高い可用性と信頼性を確保します。

自社サーバーへの負担が減る

自社サーバー上で行っていた業務をクラウドに移行することで、サーバーメンテナンスの負担が軽減され、スケーラビリティが向上します。クラウドは必要なリソースだけを使用して従量課金されるため、コスト削減が実現します。

地理的な制約も克服でき、全世界のユーザーに一貫したサービスを提供可能です。また、クラウドプロバイダーによるセキュリティ対策とバックアップにより、データやアプリケーションの安全性が強化されます。

これらのメリットにより、クラウドへの移行によって自社サーバーへの負担が減り、効率的で安定したシステム運用が実現可能です。企業は柔軟な環境を活用し、ビジネスの成長に対応し、競争力を向上させられます。

正確で有用なデータを分析できる

データクレンジングとエンリッチングにより、正確で有用なデータが得られ、データ分析のメリットが大幅に向上します。クレンジングとは、データ群に含まれる不正確なデータ、不完全なデータ、重複データを洗い出し、修正または削除することです。

エンリッチングとは、データに新しい情報や属性を加えて、より充実したものにする手法です。豊富なデータにより戦略的な意思決定が強化され、ビジネスリーダーやマネージャーは迅速な対応と競争力の強化につながる戦略を立案できます。

既存システムとの連携が簡単

iPaaSのメリットの一つは、新しいシステムと既存システムとの連携が簡単に実現できる点です。プリ・ビルトのコネクターを活用することで、主要なシステムとのシームレスな連携が可能です。

新しいシステムを導入する際には、導入工数が大きくなることもありますが、連携におけるカスタム開発の手間が省けることで、スムーズなシステム運用が実現されます。

iPaaSのデメリット

iPaaSのデメリットとして、APIが公開されていないツールとの連携が難しい点が挙げられます。一部のツールやシステムではAPIが公開されていないため、iPaaSを利用してこれらのツールとの連携を行うことが難しい場合があります。

また、運用に専門知識が必要となる可能性もあります。複雑な設定や連携作業を必要とする場合があり、特に高度なデータマッピングやセキュリティ設定は専門知識を要することがあります。そのため、専門的なスキルを持つスタッフの確保が重要です。

しかし、これらのデメリットにもかかわらず、iPaaSは効果的な統合プラットフォームとして多くの企業で利用されています。

デメリットを適切に理解し、適切な運用と活用が行われることで、企業はiPaaSの利点を最大限に活かし、効率的な統合とビジネスプロセスの最適化を実現できるでしょう。

iPaaSを選ぶ際のポイント

iPaaSを選ぶ際には、企業のニーズや要件に合った最適なプラットフォームを選択することが重要です。以下のポイントを考慮することで、効果的なiPaaSの導入が可能となります。

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目的に適した種類か

iPaaSを選ぶ際は、導入目的を明確にした上で種類を決めましょう。たとえば、データの統合よりも分析に重点を置く場合は、分析に強みを持つETL/ELT型を選ぶことで導入によるメリットを得やすくなります。

反対に、さまざまなシステムの連携が目的でETL/ELT型を導入すると機能不足を感じる可能性があるため、目的に適した種類を選びましょう。

既存のアプリと連携できるか

iPaaSを選ぶ際は、連携したいアプリやサービスに対応しているかを確認することが重要です。主要なSaaSアプリケーションやクラウドサービスに対応するコネクタが提供されているか、またAPIをサポートしているかをチェックしましょう。

カスタムコネクタの作成機能やデータフォーマットのサポートも重要で、企業独自のアプリやフォーマットにも対応可能かを確認します。

さらに、特定のアプリやサービスに合わせたカスタム処理が必要な場合は、iPaaSがこれをサポートしているかを見極めることが大切です。

サポート体制が充実しているか

iPaaSを選ぶ際には、サポート体制が十分かを確認しましょう。特に海外製のiPaaSの場合は、日本語のサポート提供やサポート時間帯が日本の営業時間内にあるか確認が必要です。

また、問い合わせ方法や対応時間、問題解決までの所要時間など、提供元がどのようなサポートを提供しているかを検討しましょう。

トレーニング資料やドキュメンテーションの充実も重要なポイントであり、ITの知識がない場合でも十分な情報にアクセスできることが望まれます。さらに、カスタマーサクセスやコミュニティ、フォーラムの提供があるかどうかもチェックすべきです。

まとめ

iPaaS(Integration Platform as a Service)は、クラウドベースの統合プラットフォームで、異なるアプリやサービスをシームレスに連携させ、効率的なビジネスプロセスを実現する革新的なサービスです。

そのメリットとしては、ノーコード/ローコードアプローチによる使いやすさ、クラウドネイティブでの柔軟性と拡張性、正確なデータ分析、既存システムとの簡単な連携などが挙げられます。

iPaaSを適切に活用することで、効率的なビジネスプロセスの実現が可能となります。ビジネス環境の変化に迅速に適応し、競争力を高めるためにも、iPaaSの導入は効果的です。

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