AI-OCRとは|機能やメリット・デメリット、比較ポイントを解説

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  • AI-OCRは、通常のOCRと比較して文字識字率が高いといった特徴がある
  • AI-OCRを利用すると作業効率が向上し、情報のデータベース化も促進される
  • AI-OCRを導入する際は、事前に自社の要件を把握してから製品の比較を行うべき

AI-OCRは、OCRの仕組みやサービスにAI技術を活用したもので、AIの学習能力によって文字認識率を高められます。本記事では、AI-OCRについてと、AI-OCRを利用するメリット・デメリットの他、導入のステップ・製品の比較ポイントについて、解説します。

目次

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  1. AI-OCRとは
  2. AI-OCRとOCRの違い
  3. AI-OCRの種類
  4. AI-OCRで効率化が見込める業界
  5. AI-OCRを利用するメリット
  6. AI-OCRを利用するデメリット
  7. AI-OCRの導入ステップ
  8. AI-OCR製品を比較する際のポイント
  9. まとめ

AI-OCRとは

OCRとは、Optical Character Recognition/Readerの略で、紙の書類を読み込みテキストデータとして保存する技術です。そのOCRにAIを活用したものがAI-OCRであり、読み方は「エーアイ・オーシーアール」です。

コンピュータにとって、人が書いた文字を認識するのは至難なことです。例えば、漢字の力(ちから)とカタカナのカ(か)を手書きした場合、機械には判別が困難です。そこで、AIの特徴であるディープラーニングや機械学習機能の活用で文字の認識力を高められます

現在、ペーパーレス化が進行しているものの、多くのビジネスシーンで手書きの文章が活用されています。AI-OCRによってこれらを高精度で電子化できれば、業務効率の大幅な改善が実現します。

AI-OCRとOCRの違い

AI-OCRは、OCRとAIが一体化された技術です。OCRと比較して、読み取り精度や作業効率面で機能が優れています。ここでは、AI-OCRとOCRでどのような違いがあるか解説します。

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文字情報の学習の違い

OCRは、紙やPDFファイルの書類を画像情報として読み込み、そこから文字情報を抜粋するといった使い方が一般的です。一方で、AI-OCRはこれまでのOCR処理をAI技術の一要素であるディープラーニング(深層学習)によって、向上させたツールです。

一般的なOCRは、読み込む項目の場所や範囲を特定するレイアウト識別と、文字自体の判別を行うための文字認識の2つの技術要素で構成されます。

AI-OCRはこの2つをディープラーニングで向上させ、従来型のOCRが不得意としていた状況であっても高い認識率を可能にしています

識字率の違い

識字率とは、文字の読み書きや文章の理解能力を持つ人の割合のことですが、AI-OCRにおいては読み取り精度の高さを指します。AI-OCRは人が手書きした文字や印刷された文字を高精度で認識できるため、文字の識字率が非常に高いといったメリットがあります。

これにより、これまでのOCR技術では読み込みにくかった手書き文字や機械的に印刷された文字の読み込みが可能になる上に、多言語にも対応できます。

そのため、従来の手作業による入力作業の大幅な削減が可能です。また、高精度であることから、読み取りの漏れや誤認識の発生リスクも低下します。

設定の違い

OCRでは帳票ごとに、帳票のどの部分を読み込むか・データをどの文字列に反映するかなど詳細な設定が必要です。

一方で、AI-OCRでは自身で設定する必要がなく、見積書など種類ごとにあらかじめ設定されたフォーマットを搭載しているものもあり、場所・項目に多少の違いがあっても自動で読み込むことができます

また、AI-OCRによっては、複数の種類が入り込んだ帳票でも、その特徴に応じて帳票を仕分け(見積書・発注書など)して、対応フォーマットを一瞬で照合して読み込んでくれるものもあります。そのため、帳票を事前に仕分ける手間が省けます

AI-OCRの種類

AI-OCRは、一般的に以下の3種別に大きく分けられます。読み込み対象となる帳票には、事前にレイアウトやフォーマットが決まった定型帳票と、フォーマットがフリーな非定型帳票があります。また、用途によって汎用型と業務特化型に分けることができます。

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種類メリットデメリット
汎用×定型フォーマット型さまざまな種別の帳票に対応可能・様式の定義づけが必要
・定義づけた様式のみ読み取り不可
汎用×非定型フォーマット型・さまざまな種別の帳票に対応可能
・さまざまな様式に対応可能
多様な様式対応のための事前学習が必要
業務特化×非定型フォーマット型・事前学習なしでも多様な様式に対応可能
・業務に必要なデータの意味づけが可能
特定業務や種別の帳票のみに対応

汎用×定型フォーマット型

汎用×定型フォーマット型とは、種類が「汎用」・フォーマットが「定型」の帳票を読み込むタイプを指します。帳票の種類は問わないものの、事前の手作業で帳票のフォーマットを定義づける必要があります。

抽出精度が高いのがメリットとして挙げられる一方で、フォーマット定義づけの作業にはある程度の時間を要するのがデメリットです。また、定義づけされたフォーマットの帳票のみを読み込むため、フォーマットごとに定義づけの作業を行わなければなりません。

汎用×非定型フォーマット型

汎用×非定型フォーマット型とは、帳票の種類が「汎用」・フォーマットが「非定型」の帳票を読み込むタイプを指します。帳票に記載する部分を人力で定義づける必要がなく、記載部分をAIが学習し判定をして情報を取り出します。

人による定義づけの作業が不要なのはメリットですが、新しいフォーマットを周知するまで時間を要し、それまでは精度が低いのがデメリットです。

業務特化×非定型フォーマット型

業務特化×非定型フォーマット型は、読み込む帳票の種類が「特定種別」・帳票のフォーマットが「非定型」の帳票を読み込むタイプを指します。特定業務に限定した帳票であれば、非定型フォーマット型も即座に使用可能です。

AI-OCRのベンダーがAIに前もって学習させておくことで、請求書や納品書などの帳票に特化できます。

また、業務に特化している特性を応用して、AIによる仕訳データの取り出しから作成までの自動化ができ、会計システムなどとの連携が行えます。

AI-OCRで効率化が見込める業界

企業において紙の読み取りはスキャナーなどで名刺を読み込むといったケースが多いですが、文字認識率の高いAI-OCRでは申込書やアンケートの読み取りが可能です。そのため、書面による申し込みが根付いている業界におすすめです。

金融機関や不動産業ではデジタル化が進んでいる現代でも紙の申込書を利用する機会が多いため、適しています。また、医療機関での問診票なども紙であることが多く、AI-OCRでの読み取りが向いています。

AI-OCRを利用するメリット

最近では、ディープラーニングによるAIの精度向上を図る動きが活発になっています。このような時代背景により、より一層の業務効率化を図るため、AI-OCRに注視する企業が増えています。ここでは、5つのメリットを取り上げて解説します。

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文字識字率が高い

これまでのOCRは、事前に設定されたロジックの範囲でしか文字識別ができないのがデメリットでした。しかし、AI-OCRを活用すれば、読み込んだ文字をデータとして蓄積することが可能です。そのデータによる学習で、文字の認識率が徐々に高まります

例えば、1回目の識別で文字の読み間違いがあっても、その結果を学習することで、今後の文字認識に生かせます。この作業の反復により識字率が向上するため、人の癖がある手書き文字への対応も行いやすくなります。

様々なフォーマットの帳票に対応できる

これまでのOCRでは、文字の読み込み位置や項目といった詳細を定義づけたうえで、読み込みを行う必要がありました。一方でAI-OCRは、文字の読み込み位置や項目を自動的に取り出せます

そのため、紙の資料をスキャンするだけで簡単に文字認識が行えます。請求書・発注書・納品書など、様式の異なるさまざまな紙書類を柔軟にスキャンでき、担当者の負担軽減にも結びつけられます。

作業効率が向上する

これまでのOCRでもある程度の業務効率化は実現できますが、定型のフォーマットの帳票しか利用できないため、状況に応じてフォーマットを準備する必要があります。この準備に時間を費やすと、業務効率の悪化も起こり得ます。

そこでAI-OCRを使用すれば、読み込んだ情報内容・業務システムへの入力に必要な情報内容も柔軟に取り出し、連携が可能になります。また、最近ではRPAや基幹システムと連携できるAI-OCRも増加傾向にあります。

その結果、これまでのOCRでは不可能だった抽出データを、業務システムに入力する作業の効率化・自動化まで可能になります。

ペーパーレス化を促進できる

ビジネスシーンでは、日々大量の文書がやり取りされています。例えば、契約書や請求書などの企業間取引文書・申請書や稟議書などの社内文書があります。これらの文書には、保存期間の定めも多く、紙媒体の運用だと累積的に増え続けます

AI-OCRの活用による紙文書の電子化でペーパーレス化が促進され、保管場所にかかるコストを削減できます。また、業務効率改善や検索性向上の効果により、人件費の削減も可能です。

情報のデータベース化が実現する

AI-OCRを利用する大きなメリットとして、データ活用の促進が挙げられます。保管されるだけだった紙文書の電子化で、データが情報資産として新しく誕生します。

紙情報のデータ化で分析の幅が広がり、これまで見えなかった課題やヒントを見つけられるかもしれません。また、郵送やFAXの手間を省略し、インターネットを通して迅速に情報共有が行えるため、組織全体におけるデータ活用の促進が図れます。

AI-OCRを利用するデメリット

AI-OCRを導入する際、十分な検討をせずに導入すると、思い通りの効果を得られない可能性もあります。そのため、導入については、メリットとデメリットを比較したうえで決定しましょう。ここでは、AI-OCRの導入における3つのデメリットを解説します。

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導入コストがかかる

AI-OCRの導入には、初期費用や維持費用がかかる場合があります。自社運用のオンプレミス型AI-OCRは初期費用が高く、オンラインで使うクラウド型は初期費用が安いものが多いと言えます。

維持費用には、例えばクラウド型では毎月決まった金額を支払う「月額利用料」や、使用量に応じた金額を支払う「従量利用料」などが含まれます。これらのコストを考慮する際は、導入前に費用対効果の正しい検証が重要です。

費用対効果の検証では、初期費用と維持費用を含めた総コストと、導入によるコスト削減額や効果を比較します。それにより、導入のメリットがコストを上回るかどうかを冷静に判断します。

100%読み取れるわけではない

今までのOCRと比べると、AI-OCRは文字の読み取り精度が大幅に向上したとはいえ、100%読み取れるわけではありません。学習によって精が高まるものの、手書き文字のすべてに対応するのは難しく、読み取り精度の100%実現は難しいと言えます。

そのため、人の目による確認や修正作業はある程度必要です。目視確認作業が必要であれば、AI-OCRを導入する意味がないと思われることもあります。

しかし、これまでの手作業による文字入力はAI-OCRが行い、人は目視の確認作業だけに集中できるため、手書き文字などのデジタル化にかかる時間の大幅な削減が可能です。

縦書きに弱い傾向がある

AI-OCRのテクノロジーは、主として横書き文字に対応した開発や最適化が行われています。それにより、縦書き文書は、一般的に横書きよりも認識精度が低下する傾向が見られます。

縦書き文字は、横書き文字とは異なる特徴があるため、AI-OCRが縦書きの対応に限界がある場合、正しい読み取りが困難になる場合があります。しかし、AI-OCRのテクノロジーは進歩しており、今後は縦書き文書の認識精度向上にも期待できます。

AI-OCRの導入ステップ

AI-OCRは多くのメリットを持ち、帳票のデータ化においてより良い効果をもたらします。とは言え、導入に失敗すれば後悔するかもしれません。ここからは、後悔しないためにはどのように導入していけばよいのか詳しく解説します。

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対象となる業務・帳票を決める

AI-OCRの導入において最初に行う作業が、AI-OCRを利用するための業務・帳票の確定です。ビジネスで利用する帳票には広範な種類があり、書いてある内容がある程度決まっているか否か・活字か手書き文字か・定期的か・大量にあるのかなどの特徴があります。

利用対象となる業務・帳票の決定で、その特徴に合ったAI-OCR製品を選べます。導入効果を最大限生かすためには、最初に導入する業務・帳票を明確にすることが重要です。

読み取る量・枚数を把握する

AI-OCRの課金体系は、製品による違いがあります。そのため、読み取る量と枚数がどの程度になるか推測したうえで、条件に合った課金体系のAI-OCR製品を選択しましょう。

読み取る量と枚数を理解しないままAI-OCRの導入を実行すると、利用頻度とそれに比例しない料金が発生する可能性もあるため十分に注意を払いましょう。

システムの連携性を考慮する

最近では、企業の状況に応じてRPAや基幹システムと連携できるAI-OCRも増えています。そのため、これまでのOCRでは実現できなかった、抽出データを業務システムに入力する作業の効率化・自動化も可能です。

RPAとはRobotic Process Automationの略語で、パソコンで行う事務作業の自動化が可能なソフトウェアロボット技術を指します。

また、販売管理・在庫管理・会計などの業務効率化を図るための基幹システムとAI-OCRを連携させることで、さらなる業務効率化が見込めます。

各サービスを比較する

現在はさまざまなAI-OCR運用サービスが存在しており、それぞれの料金・精度・サポート体制などには大きな違いがあるため、自社にとって最適なサービスを選択するためにしっかりとした比較や検討が大切です。

料金に関しては、項目単位で課金される製品や枚数単位で課金される製品も存在するため、それぞれを注意深く比較する必要があります。そのため、項目数と枚数を事前に整理したうえで比較すると、スムーズに決められます。

どれほど多くの機能が搭載されていても、料金が自社の予算と合わなければ価値がありません。費用対効果を踏まえて、最適な機能・サポートを提供してくれるサービスを選択することが重要です。

PoC検証する

PoC(Proof of Concept)は、新技術やアイデアが実現可能か、十分な効果を得られるかなどを確認するために実施される一連の検証工程を指します。特に、IT業界ではPoCが行われる機会が多いです。

大企業では、導入するシステムが億単位の投資になるケースも少なくありません。高額な投資ゆえに、導入後の効果を検証し、具体的な予測を立ててから投資の判断を行います。AI-OCRの導入を推進するうえでも、PoCは非常に重要なファクターと言えます。

AI-OCR製品を比較する際のポイント

AI-OCRは、紙の情報をデジタル化できる強力なツールであるものの、単なる導入だけでは十分な業務改善の効果は得られません。AI-OCRの導入効果を得るためには、適切なAI-OCR製品の選択と、業務プロセスの立案が重要です。

ここでは、業務改善に結びつくAI-OCRを比較する際の6つのポイントに関してそれぞれ解説します。

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読み取りタイプが適しているか

AI-OCR製品の比較ポイントとして、読み取りタイプが挙げられます。AI-OCR製品には、印字文字の読み取りを得意とするタイプ、手書き文字の読み取りが得意なタイプがあります。

印字文字の読み取りが得意なタイプは手書きの読み取り精度が落ちるため、手書きの資料の読み取りが多い企業は手書きの読み取りが得意なタイプを選びましょう。

また、導入時点では手書き資料が多くても今後印字資料が増えるといった予定があるのであれば、将来性も考慮した選定が求められます。

読み取り精度は高いか

読み取りタイプも関わりますが、AI-OCR自体の精度が高いか確認しましょう。読み取り精度が低く誤字が多い場合は、データの修正に時間を要し、かえって業務負担が増えてしまいます。

AI-OCRは効率的にデータ化することを目的として導入されることが多いため、負担が増えてしまっては意味がありません。そのため、事前に読み取りテストを行い、業務の効率化が実現できる読み取り精度であるかどうかを確認しましょう。

対応言語が適しているか

AI-OCR製品には、それぞれに対応言語の違いがあります。導入対象となる業務においてどの言語が必要とされるのかを踏まえたうえで、それぞれの製品における対応言語を確認しましょう。

日本国内での展開に特化している企業であれば、日本語対応のみの製品でも問題はありません。しかし、海外取引をしている場合やグローバル企業を取引先としている場合は、多言語対応の製品が要求されます

どの言語に対応しているのかも確認・比較することで、自社業務に適した製品の選定が可能です。

操作性は優れているか

AI-OCRの操作性も、重要な比較ポイントです。AI-OCRの導入は業務効率化を大きな目的としているため、現場の社員にとって使いやすさが要求されます。社員がスムーズに使いこなせて、業務効率化につながるかどうかの比較検討が重要です。

できる限りシンプルで直感的に操作しやすい製品のほうが、スムーズに導入できます。無料のトライアル期間を用意している製品も多いため、実際に使用したうえで比較しましょう。

既存システムと連携できるか

AI-OCR製品を比較する際には、ほかのシステムと連携可能かについて確認しましょう。自社の既存システムとうまく連携ができなければ、業務効率化につながりにくいです。

会計や顧客管理などの既存システムとの連携で無駄が発生せず、より広範囲な業務の効率化に期待が持てます。また、比較する際は連携できるかどうかだけでなく、連携方法や連携のしやすさも確認しましょう。

連携時には、APIと呼ばれる通信システムを利用するのが通例です。そのため、複数のAPIに対応しているほうが、既存システムとの連携を取りやすい可能性があります。

サポート体制は十分か

製品自体の機能性や特徴だけではなく、AI-OCR提供元ベンダーのサポート体制も重要な要素と言えます。AI-OCRは導入だけで終わるのではなく、その後も継続的に利用します。そのため、トラブル発生時にサポートを受けられないと、業務に支障が出ます。

また、使用方法についてのフォローも、重要なサポート要素の1つです。本来の業務に費やす時間をなるべく減らさないように、スムーズな導入ができるかどうかを比較しましょう。

まとめ

AI-OCRはAIの学習能力をもった書類を読み取る技術のことで、導入により文書データの効率的なデジタル化が可能です。AI-OCRは通常のOCRと比較して文字識字率が高く、ほかのITサービスより導入しやすいといった特徴があります。

AI-OCRは、RPAや基幹システムとの連携で、ほかの業務の効率化を図ることも可能です。また、文字識字率が高い・さまざまなフォーマットの帳票への対応・作業効率の向上・ペーパーレス化の促進・情報のデータベース化などさまざまなメリットを備えています

従来のOCRでは読み取れなかった請求書なども読み取ることができるため、自社に適した種類のAI-OCRを導入し、入力作業の効率化を図りましょう。

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