暴力団排除条例で求められる企業での対応とは?禁止事項や罰則を解説
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- 暴力団排除条例では、暴力団に対する利益供与の禁止が定められている
- 企業は、反社との関係を速やかに解消できる仕組みを整備することが重要
- 反社会的勢力排除条項の作成や反社チェック体制の整備が求められる
暴力団排除条例は、暴力団の活動を抑制し、市民生活の安全を守ることを目的とした条例です。企業にも条例に基づく適切な対応が求められ、違反すると罰則対象となることもあります。本記事では、暴力団排除条例において企業が対応すべきことについて、わかりやすく解説します。
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暴力団排除条例では企業での対応が重視されている

暴力団排除条例(暴排条例)は、社会全体から暴力団を排除するために、自治体ごとに定められる条例です。各自治体において、企業や住民を暴力団の不当な介入から守り、安全で健全な社会経済活動の維持につなげる目的があります。
特に企業に対しては、暴力団やその関係者に対する利益供与の禁止をはじめ、さまざまな規定が設けられます。暴力団の活動を助長するような行動をしないために、条例に基づいた適切な対応をしなければなりません。
暴力団排除条例で企業が把握しておくべき内容

暴力団排除条例の内容は各自治体によって異なりますが、ほとんどの自治体に共通するのが暴力団およびその関係者に対する利益供与の禁止です。また、契約書における反社会的勢力排除条項(反社条項)の設置も、多くの条例に含まれています。
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暴力団排除条例で企業が把握しておくべき内容
規制対象者に対する利益供与の禁止
利益供与の禁止とは、企業が暴力団やその関係者に対して、暴力団の活動を助長するような行為を禁止するものです。例えば、金銭の支払いや便宜の提供などが利益供与と見なされます。
原則として利益供与の禁止の規制対象となるのは、暴力団員および暴力団員と変わらない者です。例えば、準構成員や極めて暴力団員に近い者、非暴力団員になってから3年未満の者も該当します。なお、具体的な規制対象は、自治体によって異なる場合があります。
利益供与違反になるケース
利益供与違反になるのは、暴力団や暴力団関係の活動であると知りながら、暴力団にとって有利になるような行為をした場合です。サービス業を営む事業者が、「みかじめ料」や「用心棒代」として金銭を支払うケースが代表的です。
また、暴力団の会合や行事のためと知りながらホテル・ゴルフ場・飲食店などがサービスを提供したり、暴力団事務所用に不動産会社が不動産を売却・賃貸したりすることも利益供与とみなされます。
契約書における反社条項の設置
暴力団やその関係者に対して利益供与しないための対策として多くの暴排条例で定められているのが、契約書における反社会的勢力排除条項の設置です。
反社条項は「暴力団排除条項」とも呼ばれており、事業取引において、自社・取引先の双方が反社との関係を断つ旨を明文化した条項を指します。この条項には、相手が暴力団関係者と発覚した場合に予告なしで即刻契約解除できる旨も含めるのが一般的です。
反社条項によって、規制対象者への利益供与を回避しつつ、暴力団からの不当な要求などのリスクも回避できます。
暴力団排除条例に基づいて企業が対応すべきこと

暴力団排除条例を遵守するために、企業には徹底した対応が求められます。ここでは、暴力団排除条例に基づいて企業が対応すべきことを解説します。
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暴力団排除条例に基づいて企業が対応すべきこと
反社チェック体制の整備
暴力団との関わりを避けるためには、関係構築を始める前にまず相手が暴力団やその関係者でないかどうかを確かめることが重要です。その取り組みとして有効なのが、「反社チェック」です。
反社チェックとは、新聞・官報・インターネットニュースなどのデータをもとに、取引先企業、新規採用者、株主など自社の関係者に反社会的勢力との関係がないかを調べることです。
契約前に反社チェックを行うことで、暴力団関係者の疑いがある相手との契約締結を回避しやすくなります。特に営業部門や人事部門など、新しい関係者との接点を持つことが多い部署では、契約前の反社チェックを制度化するべきでしょう。

反社チェックとは|どこまでやる?やり方は?対処法や注意点も解説
反社チェックとは、政府の指針や各都道府県の条例を基準に、取引先や従業員が反社会的勢力に当てはまらないかをチェックすることです。本記事では、反社チェックの必要性や方法を解説し、反社チェックをどうやって行うのか、引っかかる対象がいた場合はどうするかなどを解説します。
反社チェックツールの活用がおすすめ
反社チェックを行う方法はさまざまありますが、手軽かつ精度の高い手段として反社チェックツールの活用がおすすめです。
反社チェックツールでは、インターネット上の情報やメディアニュースなどの複数のデータベースと調査対象者の情報を自動照合し、反社会的勢力の疑いがないかを調査することができます。
チェック作業の自動化が進められるため、反社チェックにかかる時間を大幅に短縮しつつ、情報の見落としといった人的ミスの削減にもつなげられます。
反社会的勢力排除条項の整備
前述のように、契約書をかわす際には反社条項を設置することが求められます。具体的な文言は各企業が作成しなければならないため、あらかじめ自社で用いる条項を整備しておきましょう。
各都道府県の警察などが反社条項のモデル案を公表しているため、それらを参考に作成することをおすすめします。必要に応じて企業の顧問弁護士などに相談しても良いでしょう。
なお、反社条項が必要な契約書は、「売買契約書」「賃貸借契約書」「業務委託契約書」「雇用契約書」など多岐に渡ります。条項を記載すべき契約書についても確認が必要です。
反社との関係を速やかに解消できる仕組みづくり
取引先に反社会的勢力の疑いが生じた際は、早い段階で距離を取ることが大切です。できる限り穏便に関係を解消できるように、契約を交わす段階で、将来的な関係解消に必要な措置をできる限り多く講じておきましょう。
例えば、自動継続や長期契約は契約解消のタイミングを逃しやすいため、なるべく避けることが望ましいです。
また、契約書に解除・解約事由を多く設定すれば、合理的に契約を解消できる可能性が高まります。「自社の見込み利益に達しない」「契約の品質基準に達していない」といった、契約相手に不利益にならない範囲の解約・解除事由の設定が一例です。
反社会的勢力対応マニュアルの作成
上記の対策を含め、反社会的勢力に対する対応マニュアルを作成しておくと、企業として体制を整えやすいでしょう。暴力団との関係を持たないよう留意すること、そして万が一暴力団関係者が接触してきた場合の対処法についてがマニュアルの基礎となります。
例えば、会社に暴力団関係者と思われる人物が来訪した際に、誰がどのように応対するのか、どのようなことに気を付けるべきかなどをマニュアルとしてまとめます。
その内容についても、暴力団排除条例やその他関連する法令を前提として検討することが必要です。また、有事の際にスムーズに対処できるよう、定期的に社内研修や訓練も行っておくと安心です。
暴力団排除条例違反で罰則が課されることも

暴力団排除条例の内容は努力義務とされていることもありますが、中には違反すると罰則が課される内容もあります。その代表例が前述した「利益供与」です。ここでは、企業に課される罰則について解説します。
利益供与違反に対する制裁措置
利益供与違反が発覚した場合、企業には「勧告」「公表」「防止命令」「罰則」などの制裁措置が課されます。制裁措置は、上記の順番で段階的に行われることが多いです。
最初の段階である「勧告」では、警察などが勧告書を交付し、違反した事業者に是正を求めます。その後、再度の違反が認められた場合は、企業名を世間に公表する「公表」の措置が取られます。
さらに再度の違反があった場合は、「防止命令」が出されます。これは、暴力団の活動を助長する行為を禁止する命令です。防止命令に違反した場合は、「罰則」として1年以下の懲役または50万円以下の罰金といった罰則が課されることがあります。
参考:東京都暴力団排除条例
反社条項の設置を怠った場合の措置
反社条項の設置は暴力団排除条例における努力義務とされていますが、実質的には必ず設置すべきものと位置づけられています。その理由は、企業として社会的責任を果たすと共に、暴力団関係者と関係を持つことによるリスクを回避するためです。
また、万が一反社会的勢力と関わりを持って会社が損害を受けた場合、取締役は善管注意義務に違反したとして会社法第423条に基づく賠償損害責任などを求められる可能性も否めません。
反社条項の設置を怠った場合の明確な罰則規定はないものの、自社やその従業員に対する危険や何らかの法令違反につながる可能性が大きいことを覚えておきましょう。

反社チェックツールとは、個人や法人が反社会的勢力に関わっていないか、過去に不祥事はないかをチェックするツールです。反社チェックを行うことは、会社の信用を守ることや安全なビジネス運営に繋がります。本記事では、反社チェックツールのメリットや選び方を解説します。
まとめ

暴力団排除条例とは、暴力団の不当な介入から地域の企業・住民を守るために、自治体ごとに制定された条例です。特に企業に対する暴力団への利益供与禁止は、ほぼ全ての自治体での共通条項であり、違反した企業には罰則が課されます。
また、契約書における反社会的勢力排除条項の設置も、多くの条例で定められている内容の一つです。企業の安全を守り、社会的信頼を維持するためにも、何らかの契約を締結する前には入念な反社チェックと契約時の対策が求められます。
反社チェックツールといった業務ツールも上手く活用しながら、暴排条例を遵守しながら自社を暴力団関連のリスクから守る体制を整えましょう。
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