電子契約の後文の書き方|文言例と必要性、書き方のポイントを解説

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  • 後文は、契約に関する補足情報を記載する文章で、基本的な構成要素がある
  • 電子契約における後文では、作成枚数や保有枚数の記載は不要である
  • 書面契約を電子契約に移行する際は、使用されている文言の変更に注意すること

後文とは、契約書の締結方法や保管方法について記す文章です。書面契約と電子契約では、後文に記載する内容が異なります。本記事では、後文の構成要素や、書面契約と電子契約での違い、書面契約を電子契約に移行する際に変更するべき文言について、解説します。

目次

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  1. 契約書の「後文」とは
  2. 電子契約と書面契約での後文の違い
  3. 電子契約における後文の例
  4. 紙の契約書を電子契約に移行する際に変更が必要な箇所
  5. 電子契約導入におけるその他の注意点
  6. まとめ

契約書の「後文」とは

契約書の「後文」とは、契約書の最後に記載される文のことを指します。後文は契約成立の証拠として、当事者同士が合意し、契約を締結したことを文書化します。契約締結日や契約書の保管方法が明記され、契約関係の整合性を保ちます。

また、後文には契約の運用に関する基本的なルールや規則も含まれ、当事者同士が予期せぬトラブルを回避する助けとなります。後文の明確な記載は、契約の信頼性を高め、契約関係の運用を円滑にします

電子契約と書面契約での後文の違い

電子契約と書面契約では後文の書き方に違いがあります。書面契約では、物理的な契約書に記載されるため、後文は紙上で明確に記載される必要があります。

一方、電子契約ではデジタル形式で契約が成立するため、後文もデジタルフォーマットに適した内容となるよう工夫する必要があります。以下に、電子契約と書面契約での後文を作成するポイントについて詳しく解説します。

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書面契約での後文に必要な構成要素

書面契約において後文は、重要な役割を果たします。契約締結日や当事者の同意、合意の証としての契約書の保管方法などが後文に記載されます。ここでは、書面契約の後文に必要な構成要素について解説します。

契約書作成の目的を記載する

契約書作成の目的を後文に記載することで、契約がなぜ締結される必要があるのかが明確に伝わります。たとえば、契約の内容や取引の背景を説明し、当事者間の合意に至る過程を示すことがあります。

この目的の記載により、将来の紛争や不明瞭な点を事前に防ぐことができます。また、後文に記載する目的によって契約書の性質や範囲が明確になり、双方の合意が適切に反映されることになります。

契約書作成の目的を後文に記載することは、契約の透明性と法的な正当性を確保するために重要なポイントです

契約書の作成通数を記載する

契約書の後文には、契約書を作成する通数を明記することが重要です。通常、契約書は当事者同士によって2通作成され、それぞれの当事者が1通を保有します。これにより、契約の締結事実と内容を双方が証明する手段となります。

また、契約書の作成通数は法的な効力を保証する上でも重要であり、双方の同意に基づく契約の有効性を確立します。このように、契約書の作成通数を後文に記載することで、契約の成立とその効力を示す役割を果たします

契約書の作成者・保有者を記載する

作成者とは、契約書を起草し作成した当事者を指し、保有者は契約書の原本を保管する当事者を指します。これにより、契約の当事者間での明確な役割分担と契約書の保管管理が確立されます

契約書の作成者と保有者の記載は、契約の成立や効力を裏付ける要素として重要であり、紛争時にも契約の信頼性と法的根拠を提供します。適切な作成者と保有者の指定は契約の透明性と実効性を確保するために必須です。

契約締結の方法を記載する

書面契約の後文には、契約の締結方法も記載されます。具体的な締結方法を示すことで、契約の成立手続きを明確にする役割があります。締結方法は、契約書の交付と受領、署名と捺印、郵送や配達の方法などが含まれます。

これにより、契約当事者がどのような手順で契約を確定させるのかが示され、後々の紛争を予防します。特に、契約書の正式な提供と受領、署名と捺印の適切な手順の明確化は、契約の有効性を確保する重要なポイントです。

契約締結日を記載する

契約締結日は、当事者が契約を成立させた日を明確に示す重要なポイントです。契約締結日の明記により、契約の効力発生日や法的なタイムラインが確定し、後の法的な取り決めの際に有益となります。

特に、契約による権利と義務の発生や履行期限の判断において、契約締結日の明確な証拠は不可欠です。この情報を明確に記載することで、契約がいつ成立したかを双方が理解しやすくなり、契約の解釈や実行における諸問題の解決が円滑に行われます。

電子契約における後文のポイント

ここでは、電子契約における後文のポイントを解説します。電子契約は、書面と異なる部分がいくつかあります。電子契約におけるポイントを理解し、適切な表現で後文を記載しましょう。

作成枚数・保有枚数は不要

電子契約においては、紙の契約書とは異なり、電子ファイルは簡単に複製可能であり、その複製は改ざん不能です。したがって、作成枚数や保有枚数の表示は不要です。

通常の契約書と異なり、電子契約では作成したファイルの複製や保有に制約がなく、複数の当事者が同じ内容の電子ファイルを保管できます。

また、電子契約では印紙税が不課税となるため、作成枚数や保有枚数を表示する必要はありません。これにより、契約の締結や保管が簡便でありながら、法的な効力を保つことができます。

契約締結の方法が異なる

電子契約における契約締結方法は、書面契約と異なります。書面契約では通常「記名押印により」「サインの上」などが用いられますが、電子契約では「電磁的記録を作成し、甲乙合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する」などと表現されます。

電子契約では合意内容が電子ファイルで表現され、電子署名が意思表示を示すため、これらの組み合わせが契約締結の方法となります。この方法は電子契約特有のプロセスを示し、契約の成立と電子署名の効力を明示します。

タイムスタンプを付与する場合

電子契約書では、タイムスタンプを付与することで契約締結日を確認できますが、その他の状況や文脈を考慮すると、契約締結日欄を省略することもあります。

しかし、契約の文脈や日付の重要性を考えると、電子契約書上に日付を記載することが望ましいです。これにより、契約が成立した日を明確に示し、紛争時の証拠としても有効となります。

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電子契約における後文の例

ここでは、紙契約と電子契約における後文の例について解説します。まず、紙契約の後文の定型文例は以下の通りです。

【紙契約の後文の定型文例】 

本契約の成立を証するため、本契約書2通を作成し、甲乙各自記名押印の上、各1通を保有する。

電子署名の契約書では、署名欄の代わりに電子署名を使用し、契約締結の過程や署名者の識別方法を明示します。電磁的記録の作成と電子署名の施行、保管方法を指定し、当事者の同意を確認します。

電子署名の法的効力を保障するため、適切な法的フレームワークと技術的安全性を確保することが重要です。以下は、電子契約における後文の例文です。

【電子契約における後文の定型文例】

 本契約の成立を証するため、本書の電磁的記録を作成し、甲乙合意の後電子署名を施し、各自その電磁的記録を保管する。

紙の契約書を電子契約に移行する際に変更が必要な箇所

紙の契約書を電子契約に移行する際には、いくつかの変更が必要です。ここでは、移行する際に変更が必要な箇所について解説します。以下の変更点に留意し、スムーズに電子契約に移行しましょう。

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紙の契約書を電子契約に移行する際に変更が必要な3つの箇所

  1. 「本書」「書面」の文言
  2. 作成通数・保有通数に関わる文言
  3. 署名・押印に関する文言

「本書」「書面」の文言

電子契約において、「本書」「書面」といった表現は適切でなく、電子的な性質に即した用語を用いる必要があります。代わりに「電磁的措置」や「電磁的記録」などの用語を選択します。

また、契約締結時には電子データを「原本」とし、印刷した文書を「写し」と呼ぶことで、電子契約の特性を的確に反映させます。こうした言葉選びと表現は、こうして契約書の内容を電子契約に適したものに変更することで、法的な正確性と適合性を確保します。

作成通数・保有通数に関わる文言

書面契約書では契約書を複製した場合、後文に「本書を2通作成し」といった記載がある場合が多いです。しかし、電子契約書では作成通数、保有通数の記載は不要です。なぜなら、電子契約書は事実上、改ざんを行うことができないファイルであるためです。

電子契約では、何通作成した場合でも、その全てが原本と一致することになります。そのため、電子契約書の後文には作成通数・保有通数の記載が不要となります。

署名・押印に関する文言

電子契約において、「記名」や「押印」といった表現は、電子形式では適切ではありません。電子契約においては、法的効力を持つ電子署名が使用されます。電子署名はデジタルな形式で契約当事者の意思を示し、契約の締結を証明します。

契約書に電子署名の使用を明示することは、契約当事者間での合意と法的な信頼性を確保するため重要です。これにより、紙の契約における「記名押印」と同等の効力を電子契約でも確保できます。

電子契約導入におけるその他の注意点

電子契約導入に際して、文言修正だけでなくいくつかの注意もあります。ここでは、電子契約導入におけるその他の注意点について解説します。以下の注意点に考慮しながら、電子契約を導入し、契約管理の効率化を図りましょう。

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電子契約導入におけるその他の注意点は3つ

  1. 社内の業務フローを見直す
  2. 法に対応する
  3. 相手方からの同意を得る

社内の業務フローを見直す

電子契約を導入する際は、社内の業務フローを見直し、電子契約に最適化したプロセスを構築することをおすすめします。紙ベースの手続きとは異なり、電子契約では文書の作成から署名、保存までを効率的に行えます。

これにより、契約プロセスの迅速化やコスト削減が可能です。社内関係者の役割や承認フローを再定義し、電子署名の採用やデータの安全性の高い管理を組み込むことで、信頼性とセキュリティが向上します。

電子契約に合わせた業務フローは、正確な情報共有と納期遵守を促進し、効率的なビジネス運営に貢献します。

法に対応する

電子契約導入時には、電子署名法、電子帳簿保存法、e-文書法などの関連法に考慮する必要があります。これらの法律は、電子契約の有効性や保存方法、取引記録の法的性格などを規定しています。業務フローの見直しにおいて、これらの法律を考慮することが重要です。

業務フローの見直しにおいて、法に対応するためには法律の要件を理解し、電子契約の作成、署名、保存、証拠の取得などを適切に行うプロセスを構築する必要があります。

顧問弁護士などのアドバイスを得ながら、法的コンプライアンスを確保し、信頼性と法的効力を持つ電子契約システムを導入することが重要です。以下、電子署名法、電子帳簿保存法、e-文書法の3つの法律について解説します。

電子署名法

電子署名法は、電子文書における電子署名の有効性や法的効力を規定する法律です。電子署名は書面署名と同等の法的効力を持ち、真正性と整合性を保証します。公的認証機関の信頼性ある署名提供や異なる署名方式の選択が認められ、国際基準にも合致します。

電子契約の効力保証や紛争解決手段も提供し、ビジネス取引の信頼性とセキュリティを確保します。個人や企業は電子署名を活用し、合意の確認や契約の実効性を高めることができます。法律の遵守と適切な技術の導入により、安全性の高い電子取引環境の構築が可能です。

参考:電子署名法の概要と認定制度について|法務省

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存するルールを定めた法律です。対象は仕訳帳や決算書から領収書まで多岐にわたり、法定保存期間内であれば電子データでの保管が可能です。

電子帳簿保存法は、効率的な経理プロセスを支援し、紙媒体と同等の法的効力を持つ電子データを認めています。電子契約に関する書類も電子帳簿保存法に基づいて適切に保存する必要があります。

電子契約に関する書類も電子データで保存が求められ、これにより契約の信頼性が確保されます。電子契約導入時には、電子帳簿保存法の規定に基づいて適切なデータ管理体制を整えることが重要です。

参考:電子帳簿保存法関係|国税庁

e-文書法

e-文書法は、電子文書の作成・保存・送信などに関する法律です。主な特徴として、電子文書における契約の成立や通知の効力を認め、電子署名を法的な手段として導入しています。

これにより、電子文書が紙の文書と同等の法的効力を持つことが保障され、ビジネスプロセスの効率化が促進されます。法律に基づく電子署名は、証拠能力も認められ、行政手続や契約の遂行、紛争解決において信頼性を提供します。

また、電子文書の保存や提出についても要件を定め、長期間の信頼性を確保します。e-文書法は、デジタル社会における文書の取り扱いを法的に支援し、ビジネスのDX化をサポートする役割を果たしています。

参考:e-文書法|e-Gov法令検索

相手方からの同意を得る

電子契約を導入する際は、相手方の同意を得ることが重要です。まず、電子契約の利点やセキュリティについて説明し、メリットを明示します。相手方が電子契約の利便性や効率性を理解することで同意が得やすくなります。

次に、信頼性を高めるために信頼できる電子契約サービスを選ぶことが重要です。業界で評判の良いサービスを選ぶことで、相手方に安心感を与えます。また、セキュリティ対策やデータ保護策についての説明も行い、情報漏洩のリスクを低減することが求められます。

同意を得るためには相手方とのコミュニケーションが欠かせません。電子契約導入の背景や目的を共有し、相手方の疑問や懸念に真摯に応えることが重要です。

相手方の意向や状況に配慮することも大切です。電子契約の導入が相手方の業務やプロセスに適合しているかを確認し、適切な調整を行うことでスムーズな同意が得られます。

まとめ

後文は契約書の締結を確認し文書化する重要な部分です。電子契約における後文では、紙と異なる要点を考慮する必要があります。まず、後文では作成枚数や保有枚数の記載は不要です。

紙の契約では、複製や写しを考慮して必要でしたが、電子契約ではデータの複製が容易であるため、そのような記載は省略されます。

また、契約締結の方法も異なります。紙の契約では物理的な場所で署名や押印が行われますが、電子契約では電子データを交換することで契約が成立します。この際、電子署名を使用して各当事者の同意が確認されます。

さらに、タイムスタンプを付与することも重要です。タイムスタンプは契約の成立日時を証明し、改ざんのリスクを低減します。電子契約の信頼性と法的保護を高めるためには、正確なタイムスタンプの付与が欠かせません。

正確な後文によって契約の信頼性が高まり、スムーズなビジネスプロセスが可能となります。適切な注意と手続きを踏まえ、効果的な電子契約を実現しましょう。

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