自治体DXとは?公務員が抱える課題やDX推進のメリットも解説

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  • 自治体の職員は減少傾向にあり、人手不足を解決するために自治体DXが求められている
  • 自治体でDXを進めることで、住民の利便性向上や職員の業務効率化が可能になる
  • 自治体DXを進める際は、職員からの理解を得た上で、小規模な施策から始めると良い

自治体DXとは、官公庁や地方自治体においてデジタル技術を活用し、公務員の業務改善や住民の利便性・行政サービス品質の向上を目指す取り組みです。この記事では、自治体にDXが求められている理由や推進のメリットなどについて解説します。

目次

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  1. 自治体DXとは
  2. 自治体DXを推進するメリット
  3. 総務省の「自治体DX推進計画」における重点取組事項
  4. 自治体DXを推進する際のステップ
  5. 自治体DXを推進する際のポイント
  6. 自治体DX推進におすすめのシステム
  7. まとめ

自治体DXとは

広義には、DXはデジタル技術を活用して人々の生活をより良い方向へ変革させる取り組みです。その中で自治体DXとは、デジタルツールやITツールを導入してアナログな自治体業務を改善し、住民の利便性や行政サービス品質の向上を図ることを指します。

現在は各自治体の人手不足が深刻化し、行政サービスの品質低下も懸念されているため、全国的に自治体DXの推進が急がれています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や必要性を解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデジタル技術によってレガシーシステムから脱却し、業務の効率化や新たなビジネスモデルの創出を実現することを指します。この記事では、DXの概要や意味、推進するメリット、進める際のポイントなどを解説します。

参考:自治体DXの推進|総務省

自治体DXが求められている背景

全国的に自治体DXが急がれている背景には、人手不足の常態化や行政サービスの品質低下の懸念があります。自治体DXが求められている背景とともに、自治体DXの重要性を確認していきましょう。

国家公務員・地方公務員ともに減少しているため

現在は国家公務員・地方公務員ともに減少傾向にあり、今後は少子化を背景に人手不足はさらに加速化する見込みです。

一方で、行政に求められる役割やサービスは多様化・複雑化しており、特に過疎地域など人手不足が深刻な自治体では行政サービスの提供そのものが難しくなる懸念もあります。

少ない人員でも安定的に行政サービスを提供するためには、最新技術を活用した自治体DXによって定型業務の自動化や業務プロセスの最適化を進めていく必要があります。

参考:⼀般職国家公務員在職状況統計表(令和6年7⽉1⽇現在)概要|内閣官房長

参考:1 地方公共団体の職員数の推移|総務省

現行の行政サービスを改善するため

現行の行政サービスにおいてデジタル技術による改善の余地が多いのも、自治体DXを推進すべき理由です。住民の価値観やライフスタイルが多様化している現在では、窓口中心のアナログな業務プロセスは住民ニーズに合致しているとはいえません

具体的には、インターネットやアプリを通じた申請・相談のニーズが高まっており、これらに対応するにはデジタル・ITツールの導入によるDX推進が不可欠です。オンライン手続きの導入によって窓口の人員を減らせるため、コスト削減や人手不足解消にもつながります。

自治体DXが進まない理由

自治体DXの重要性は年々高まる一方で、思うように進まない自治体は全国的に少なくありません。その原因として、アナログな業務プロセスからの制度変更の難しさが挙げられます。

業務フローの変更が難しい

自治体や官公庁は民間に比べても社会的責任が大きく、業務に高い正確性が求められます。一方、DX推進では業務フローの大幅な変更を伴うことも多く、切り替え後のミスの発生確率はゼロではありません

このリスクを懸念し、現場職員などがDXによる業務フローの変更に抵抗を示すケースは多々みられます。自治体DXを成功させるには、職員の理解と協力を得るとともに、徹底した新業務体制の整備が求められます

対面・押印などアナログな手続きが多い

行政手続きでは、稟議や承認のために書面への押印が法令・規則として定められていることも少なくありません。ルール上、1カ所でも業務フロー上にアナログな手続きが含まれている場合は、完全な業務のデジタル移行は難しいです。

つまり自治体DXを推進するには、まず法令や規則を改正し、アナログな業務プロセスを廃止するための取り組みが必要です。しかし、これらには莫大な手間がかかるため、現場から敬遠されやすく、結果として自治体DXの遅れにつながっています。

自治体DXを推進するメリット

自治体DXは、住民の利便性の向上や業務の効率化、働き方の多様化につながります。ここでは、自治体DXを推進するメリットを詳しく解説していきます。

住民の利便性を向上できる

デジタルツールやITツールの導入により、住民の利便性の向上が見込めます。具体的には、各種申請や届出、証明書発行などの行政手続きをオンライン上で完結できるようになり、平日の昼間に窓口を訪問する手間がかかりません。

移動にかかる時間や窓口での待ち時間を削減できるため、体の弱い人や高齢者などの身体的・精神的な負担の軽減にもつながります。

いつでもどこからでも行政サービスを利用できる体制を整えることで、住民の暮らしがより便利になり、自治体に対する満足度や信頼の向上も見込めるでしょう。

業務を効率化できる

自治体業務にRPAやAIなどのデジタル技術を活用すれば、データ入力や書類作成などの定型業務を中心に一定程度の自動化ができます。コンピューターに任せることで人的ミスを削減しつつ、作業時間の短縮にもつながるでしょう。

さらに、単純作業の削減によって、職員を政策立案や戦略策定などの創造的な業務に投入できるのもメリットです。少ない人員でも効率的な自治体業務が可能になり、人手不足の解消と生産性の向上を実現できます。

テレワークを導入しやすくなる

従来の自治体業務は窓口中心であったため、テレワークの導入は難しいとされてきました。しかし、自治体にクラウドなどのデジタルツールを導入すれば、職員は庁舎外からでも書類処理や稟議決裁などの業務に取り組めるため、テレワークの導入が可能になります。

その結果、通勤時間の削減により、コア業務に専念するゆとりが生まれるでしょう。また、ライフワークバランスを整えやすいため、プライベートな事情を理由にした離職防止だけでなく、優秀な求人応募者の増加にも期待できます。

総務省の「自治体DX推進計画」における重点取組事項

総務省が発表した「自治体DX推進計画」には、DXを推進するうえで自治体が重点的に取り組むべき事項や内容が取りまとめられています。ここでは、この「自治体DX推進計画」における重点取組事項について見ていきましょう。

参考:自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第 3.0 版】|総務省

自治体フロントヤード改革の推進

自治体フロントヤード改革とは、自治体と住民の接点(フロントヤード)業務を改善させる取り組みです。端的にいえば、オンライン手続きのような、非対面で行政サービスの申請ができるような体制の構築が求められています。

自治体フロントヤード改革の推進には、データのデジタル化やオンライン業務フローの構築など、バックヤード業務全般の変革が必要です。デジタルに不慣れな住民向けには個別対応のサポートなども用意しなければなりません。

「自治体DX推進計画」の中でも特に重要なテーマとなっており、実現すれば、各自治体の人手不足を解消しつつ、多様化する住民ニーズへの対応も容易になります。

情報システムの標準化・共通化

情報システムの標準化・共通化とは、各自治体でばらばらに運用している情報システムやデータ規格の統一化のことです。具体的には、住民サービスに直結する20の業務について、国の標準仕様に合わせてシステムを移行させる必要があります。

情報システムの標準化・共通化により、全国どの自治体でも同じ使用のシステム・データモデルを利用できるため、行政サービスの地域格差がなくなります

さらに、情報共有の際のフォーマット統一やデータ変換などの工程を削減できるため、自治体間の連携強化や業務の効率化にもつながるでしょう。

公金収納におけるeLTAXの活用 

公金収納におけるeLTAXの活用では、自治体に納める公金のキャッシュレス納付の普及を図ります。eLTAXとは、全国自治体が共同運営する地方税の電子申告・納税システムで、地方税の手続きをオンライン上で行えるものです。

eLTAXを活用したキャッシュレス納付の普及により、住民は24時間場所を問わずに税金を納付でき、自治体側はリアルタイムで収納状況の確認や処理が可能になります。

公金収納におけるeLATAXの活用は遅くとも2026年9月までの開始が予定されており、自治体には専用納付書の作成や業務フローの変更、システム構築といった対応が求められます。

マイナンバーカードの普及・利用の推進

デジタル社会の実現に向けた整備の一環として、マイナンバーカードの普及・利用の推進も「自治体DX推進計画」の重点事項に含まれています。

この取り組みの目的は、1枚のマイナンバーカードで本人認証やすべての行政サービスを利用できる状態にすることです。具体的には、健康保険や運転免許証の他、図書カードや公共施設の利用カードなど、さまざまな行政関連のカードをマイナンバーカードに集約します。

なお、現在はすでに2人に1人がマイナンバーカードを保有している状況であるため、今後はマイナンバーカードの利用機会を増やすような取り組みを進めることが重要です。例えば、より便利な機能の搭載や自治体独自ポイントの付加などが挙げられます。

セキュリティ対策の徹底

自治体DXではあらゆる行政手続きのオンライン化を目指すため、セキュリティ対策の徹底も重視されています。これにより、自治体に集約された機密性の高い情報をインターネット上で安全に保管・運用できます。

特に近年はサイバーセキュリティリスクが高まっているため、情報漏洩や不正利用を防止するためにも、各自治体には万全のセキュリティ対策が求められます。

国が提唱する情報ガイドラインを踏まえつつ、最新セキュリティ技術やガバメントクラウドの導入を検討することが重要です。

AI・RPAの利用推進 

AIはコンピューターが人間のような知的行動をする技術、対してRPAは決まったルールに従ってデータを自動処理する技術です。相違点はあるものの、いずれも人間に代わって定型業務などを行うことに長けています。

従来の基幹システムよりも高度な入力・データ処理を実現できるため、自治体DXでは各自治体における積極的なAI・RPAの導入が推奨されています。

これらを活用した業務の削減により、職員は政策の策定や行政サービスの設計などコア業務に専念するゆとりが生まれるでしょう。その結果、自治体業務の効率化とサービス品質の向上が見込めます。

テレワークの推進 

「自治体DX推進計画」では、テレワークの推進も重要取組事項の1つに数えられています。クラウド型のシステム・ツールを活用し、庁舎外でも基幹システムへのアクセスや他職員とコミュニケーションができる体制を整えることが重要です。

職員はライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能になるため、介護や育児などを理由とした離職を防止でき、人手不足の解消にもつながります。魅力的な労働環境の整備は、優秀な人材を確保する上でもメリットが大きいでしょう。

また、テレワークによる業務体制の確立は、災害・疫病発生時の対策強化にもつながります。庁舎への通勤が困難なときでも、職員はオンライン上で自治体業務に取り組めるため、住民への継続的な行政サービスの提供が可能です。

自治体DXを推進する際のステップ

DXでは業務プロセスの根本的な変革を伴うため、特に正確性が求められる自治体業務においては、慎重に進めていく必要があります。ここでは、自治体DXを推進する際のステップを見ていきましょう。

1. 現状の課題を洗い出す

DXは一気に推し進めるとコスト高額化の恐れがあるうえ、大きな混乱も生じやすいです。まずは、優先的に解決すべき課題・領域からDXを推進していかなければなりません。そのためにも、現状の自治体業務における課題を明確にする必要があります。

具体的には、行政サービスを受ける上で住民が不便・不満に感じていることを聞き出し、住民にとって最適な仕組みやサービスがどのようなものかを検討しましょう。これによってDXを進めるべき領域が分かり、DXの方向性や導入すべきシステムも定めやすくなります。

2. 職員からの理解を得る

自治体DXを推進するには、現場職員の理解と協力が欠かせません。しかし自治体は民間企業とは異なり、他社との競合がないため、DX推進の必要性を感じにくい傾向にあります。

例えば、ITリテラシーが乏しい職員の割合が多い場合は、新しい業務フローや最新技術に馴染めず、従来のアナログな手法での業務からスムーズに移行できない懸念があります。これでは、DX実現を遅らせるだけでなく、コストも無駄になりかねません。

円滑にDXを進めるためにも、DXの意義や重要性を職員全体で共有しましょう。DX達成後に得られる効果やメリットなどの具体的な提示は、職員の理解・協力を得やすくなります。

3. 小規模な施策から始める

先にも触れたように、一気にDXを進めるのはリスクが大きいため、まずは狭い範囲でスモールスタートを切ることが大切です。特に課題が多い部署や領域からDX施策を実施し、効果が感じられたら段階的に実施範囲を拡大していきましょう。

スモールスタートを切ることで、自治体ごとのDXの課題の傾向が分かり、有効な対策を講じやすくなります。特に自治体業務には正確性が求められるため、最適なDXの在り方を模索・確立する意味でも、限定的な範囲で成功体験を積み重ねることが大切です。

4. データを活用して改善を繰り返す

自治体DXは、計画通りに実施しても、想定していたような結果が得られないケースも珍しくありません。なぜ・どの場所がDXの成功を阻んでいるのかを把握するためにも、DX開始後は定期的な効果測定と改善を繰り返しましょう

新しいシステムに蓄積されたデータの活用により、客観的な見地からDXの達成状況や課題を可視化できるようになります。適切なKPI(中間目標)やKGI(最終目標)を設定し、効果測定を繰り返しながら、より良い施策へと改善を重ねましょう。

自治体DXを推進する際のポイント

自治体DXを成功させるには、デジタル人材の確保や地域包括的なデジタル化、デジタルデバイド対策、手順書の活用などが求められます。自治体DXを推進する際のポイントを具体的に見ていきましょう。

デジタル人材を確保・育成する

DXは最新デジタルツールを活用しながら推進していくため、これらの知識・スキルを持ったデジタル人材を確保しなければなりません。ノウハウがないと、せっかくデジタルツールを導入しても活用しきれず、DXも進まないためです。

しかし、自治体では職員採用に公務員試験が課されることなどから、デジタル知識を持った専門人材の確保が難しい傾向にあります。

そのため自治体がデジタル人材を確保するには、「自治体DX推進手順書」の人材登用方針を踏まえた、自治体向けの人材シェアリングネットや第三セクターを活用した外部人材の取込みが重要です。

あわせて、既存の職員をデジタル人材に育成するための体制も整備しましょう。

地域社会全体のデジタル化を目指す

自治体DXはデジタルデータに基づいて進めていくため、地域全体でその基盤を整えることが大切です。行政サービスだけでなく、インフラに関わる各種サービスも含めて、地域社会全体でデジタル化を目指しましょう。

例えば、インフラサービスの一部がデジタル非対応の場合は、個別にアナログな手法で対応しなければならず、結果として自治体業務全体の最適化は実現できません。そのため地域の企業やサービスと協力し、包括的なデジタル化を進める必要があります。

さらに、地域住民がデジタル技術に親しむ機会を積極的に提供することも大切です。これにより、DXへの抵抗がなくなり、自治体の取り組みに協力してもらいやすくなります。

オンラインでの申請・相談といった行政サービスのほか、公共施設でのWi-Fi提供などを通じて、地域社会全体での意識の変革を図りましょう。

デジタルデバイド対策を行う

デジタルデバイドとは、デジタル化によって利益を享受できる人・できない人の間で生じる「情報格差」です。例えば行政サービス用のアプリを配信した際に、スマートフォンやアプリを使い慣れている人にとっては、さほど大きな問題を感じにくいでしょう。

一方、使い慣れていない人はインストールや操作方法が分からず、結果として行政サービスを受けられなくなる懸念があります。このように、デジタル技術に慣れている人と慣れていない人の間で、受けられる行政サービスに大きな格差が生じかねません。

自治体サービスには公平性が求められるため、民間企業に比べても万全のデジタルバイド対策が必要です。ツール操作に関する相談窓口の設置や研修・セミナーなどを通して、地域住民全員が平等にデジタル化の恩恵を受けられる環境を整えましょう。

すべての行政サービスを一律にデジタル化するのではなく、人が対応する窓口サービスを残すなど、デジタル化と人によるサービスのバランスを取ることも大切です。

「自治体DX推進手順書」を活用する

自治体DXは、総務省が作成した「自治体DX推進手順書」を参考にして進めましょう。「自治体DX推進手順書」には、自治体が効率的かつ着実にDXを進めるための手順が取りまとめられており、これらを踏まえることでスムーズなDXの実施につなげられます。

最小限の期間とコストで自治体DXを実現するために、「自治体DX推進手順書」の積極的な活用が求められます。

参考:自治体 DX 全体手順書【第 4.0 版】|総務省

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まとめ

自治体DXは、デジタルツールを活用し、自治体業務の効率化や行政サービスの品質向上を図る取り組みです。特に現在は、人手不足や住民ニーズと行政サービスのズレといった課題が全国的にみられるため、自治体DXによる業務プロセスの変革は急務になっています。

着実に自治体DXを進めるために、総務省が作成した「自治体DX推進書」や「自治体推進手順書」などを積極的に活用しましょう。さらに、自治体DXの成功には、職員・住民の合意形成や地域社会全体でのデジタル化などが欠かせません。

本記事で解説した重要取組事項や推進のポイントを参考に、最小限の時間・コストで自治体DXを実現させましょう。

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