教育DXとは？推進のメリットや課題、おすすめのシステムも解説

教育DXとは、デジタル技術を活用して教員の業務効率化や教育現場の変革を目指す取り組みです。文部科学省も「GIGAスクール構想」などを通じて、教育DX施策を行っています。この記事では、教育DXを推進するメリットや課題などについて解説します。

目次

開く

閉じる

1. 教育DXとは
2. 文部科学省が進める教育DX施策
3. 教育DXを推進するメリット
4. 教育DXを推進する際の課題
5. 教育DX推進におすすめのシステム
6. まとめ

教育DXとは

教育DXとは、デジタル技術を活用して教育現場の学び方・教え方・学校運営を大きく変革していく取り組みのことです。単なるICT化やデジタル機器の導入にとどまらず、教育の質向上や教員の業務負担軽減、学習者に合わせた新しい学びを目的としています。

文部科学省も「GIGAスクール構想」により、1人1台端末や高速ネットワーク環境の整備を進め、全国的に教育DXを推進しています。

参考：教育ＤＸロードマップ｜デジタル庁・総務省・文部科学省・経済産業省

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

教育のデジタイゼーションとデジタライゼーション

DXは前段階としてデジタイゼーションとデジタライゼーショという二つの段階を踏む必要があります。教育現場におけるデジタイゼーションは、従来の紙・アナログの教材や業務の中身をデジタルデータに置き換える段階です。

次にデジタライゼーションでは、デジタル化したデータを活用して業務や学習の効率化を図ります。そして最終段階であるDXは、教育のあり方そのものをデジタル技術によって変革する段階です。以下は、教育現場における各段階の具体例です。

段階	具体例
デジタイゼーション	・教科書・プリントのデジタル化 ・過去の紙の成績表をデジタルで管理 ・授業資料をPDF化し共有
デジタライゼーション	・タブレット端末を使った授業運営 ・学習進捗をデジタルで可視化 ・オンライン会議ツールを使った遠隔授業 ・保護者面談
デジタルトランスフォーメーション	・AIが学習者の理解度を分析 ・データに基づいた教育改善 ・学校運営全体をクラウドで統合

教育DXが必要とされる背景

従来の一斉授業では、多様化する学習ニーズに十分に応えられなくなっており、教育の質向上と教員の負担軽減を両立する仕組みが求められています。これらのニーズに応えるためには、デジタル技術を活用して教育活動全体をアップデートする教育DXが必要です。

ニーズの背景として特に、ICT端末の普及、オンライン教育の拡大、そして学習者一人ひとりに寄り添う個別最適な学びの重視があります。

ICT教育の普及が進んでいるため

ICT教育とは、タブレット端末、電子黒板、学習アプリ、デジタル教材などを活用し、学習効果の向上や教員の負担軽減を図る教育手法のことです。文部科学省もICT活用を重点施策として掲げており、全国の学校で環境整備が急速に進んでいます。

ICT教育が普及することで、授業資料のデジタル化、課題提出のオンライン化、学習データの収集・分析が可能になりますが、これらを効果的に活用するには教育DXの推進が欠かせません。

デジタル化にとどまらず、学習方法・授業設計・学校運営そのものを変革する段階に移ることで、ICTの価値を最大限に引き出すことができます。

参考：第11章　ICTの活用の推進｜文部科学省

遠隔・オンライン教育を導入するため

遠隔・オンライン教育とはインターネットを介して授業を行う教育手法で、地理的条件や家庭の事情などに左右されずに学びの機会を確保できる点が特徴です。文部科学省もオンライン教育の活用を推進しており、特にコロナ禍以降、全国で導入が進みました。

オンライン授業を安定的に行うには、通信環境、デジタル教材、学習管理システムなどの整備が必要であり、教育DXの推進が前提となります。DXにより、学校内外の教育資源をつなぎ、誰でも質の高い教育を受けられる環境を構築できます。

参考：オンライン教育について｜文部科学省

「個別最適な学び」と「協働的な学び」の充実のため

文部科学省が掲げる教育改革の軸の一つに、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実があります。

子どもたちは一人ひとり得意なことや学ぶペースが違いますが、AIドリルや学習データの分析により、その子に合った問題や学び方を提示できるようになります。これが「個別最適な学び」です。

一方で、友達と一緒に考えたり意見を出し合ったりする協働的な学びも大切で、オンラインホワイトボードや共同編集ツールを使えば、教室にいなくても一緒に作業したり話し合ったりできます。

このように、デジタル技術・ツールを使うことで学びの幅が広がり、誰にとっても参加しやすく質の高い授業ができるようになります。こうした学びを学校全体で続けていくためには、ICT環境を整え、先生も使いこなせるようにするなど、教育DXの推進が必要です。

参考：１．本資料作成の趣旨｜文部科学省

文部科学省が進める教育DX施策

文部科学省は、教育の質向上と教員の働き方改革を実現するため、全国規模で教育DXを推進しています。ICT端末の整備やデジタル教材の活用、学習データの活用基盤の構築など、学校教育のデジタル化を支えるさまざまな施策が展開されています。

これらの施策は、上記で解説したようなICT端末の普及、オンライン教育の拡大、個別最適な学びや協働的な学びを促進するための重要な基盤となっています。以下では、文部科学省が進める主要な教育DX施策を紹介します。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

GIGAスクール構想

GIGAスクール構想とは全国すべての子どもに、平等で質の高い学びの環境を提供するための国の取り組みです。

文部科学省が進めているこの構想では、小中学生1人につき1台の学習用端末を配布し、学校のネットワーク環境を整えることで、デジタルツールを使った新しい学び方を実現することを目指しています。

GIGAスクール構想を実現するためには、単に端末を配布するだけでなく、学習を支えるデジタルツールを適切に活用することが欠かせません。そこで文部科学省は、授業・学習管理・評価を一体的に支える仕組みとして、さまざまな教育用ツールを整備しています。

以下では、GIGAスクール構想を推進する主要なツールについて、その役割と特徴をわかりやすく紹介します。

参考：GIGA スクール構想の実現へ｜文部科学省

学習eポータル

学習eポータルとは、児童生徒が利用するデジタル教材や学習アプリ、成績情報、提出物管理など、学習に必要なさまざまなサービスを一つにまとめて利用できるプラットフォームです。

日本の初等中等教育に適した共通の学習管理機能を備えており、複数のツールを行き来せずに、同じ画面から授業の課題提出・デジタル教材の閲覧・テストの受験・学習状況の確認ができます。

学習eポータルは、GIGAスクール構想を支える重要な基盤として全国の学校で導入が進められています。

参考：学習eポータルとはなんですか。｜文部科学省

MEXCBT（メクビット）

MEXCBT（メクビット）は、全国の学校で同じ形式のデジタルテストを受けられるようにした仕組みであり、学力調査や練習問題にタブレットなどで取り組めるようにするためのシステムです。紙のテストよりも利便性が高く効率的に学習できる点が特徴です。

生徒が回答を終えるとすぐに自動採点されるため、結果を素早く確認でき、どこが得意でどこが苦手なのかを自分で把握しやすくなります。また、先生が大量の答案を採点する必要がなくなり、授業準備などに時間を使えるようになる点も大きなメリットです。

このようにMEXCBTは、生徒の学びの質を高め、先生の負担も軽くする、教育DXを支える重要な仕組みです。

参考：文部科学省CBTシステム（MEXCBT:メクビット）について｜文部科学省

デジタル教科書

デジタル教科書とは、紙の教科書をそのまま電子化しただけでなく、教材をよりわかりやすく、便利にするための機能を追加した新しいタイプの教科書です。文字を拡大したり、音声で読み上げたり、わからない言葉を検索したりできます。

さらに、書き込みやハイライトをデジタル上で保存できるほか、学習履歴が自動で蓄積されるため、自分がどの単元でつまずいたか、どれくらい理解が進んでいるかが一目でわかります。

こうした機能により、一人ひとりの学び方に合わせた個別最適な学びを実現しやすくなることから、教育DXを支える重要なツールとして期待されています。

参考：学習者用デジタル教科書について｜文部科学省

デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン

デジタルを活用した大学・高専教育高度化プランとは、大学や高専での学びをより質の高いものにするため、デジタル技術を積極的に取り入れていく国の取り組みです。

具体的には、オンライン授業や対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型授業の推進、学習データの分析による学習支援、AIを活用した個別学習サポートなどが含まれます。

自分のペースで理解を深められる学習環境を整えることができ、大学や高専はより柔軟で効果的な教育ができるようになります。

社会で必要とされるデジタルスキルを学生が身につけられるようにすることも大きな目的で、これからの高等教育を大きく変える重要な施策となっています。

参考：デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン｜文部科学省

教育DXを推進するメリット

教育DXを推進することで、学校現場にはさまざまなメリットが生まれます。特に、教員にとっては業務の効率化や指導の質向上につながり、生徒や保護者にとってはより豊かな学びや安心できる環境が実現します。

ここでは、教育DXがもたらすメリットを、教員、生徒・保護者に分けてわかりやすく解説していきます。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

教員のメリット

教育DXの実現は、教員にとって大きなメリットがあります。授業準備や校務の効率化、データを活用した指導の高度化、非常時における柔軟な授業運営など、教員の働き方を大きく改善する可能性を持っています。

校務の負担を軽減できる

教育DXが進むと教員の仕事量が大きく減り、本来の授業づくりに時間を使えるようになります。これまで学校では、成績の入力やプリントの作成、出欠確認、保護者連絡など、多くの事務作業が紙で行われてきました。

これらの作業は時間がかかるうえにミスも起こりやすく、教員が忙しくなる原因の一つになっていました。しかし、教育DXによってこれらの業務がデジタル化されると、出欠や成績のデータはオンラインで自動集計され、教材は共有フォルダに置くだけで配布できます。

保護者への連絡もアプリで簡単に送れるようになり、書類を持ち帰る必要もなくなります。こうした仕組みによって、教員は「作業に追われる毎日」から解放され、授業の質を高めたり、生徒の相談に向き合ったりする時間を増やせるようになります。

個々の生徒に寄り添った指導ができる

教育DXにより教員は生徒一人ひとりの理解度に合わせた授業やサポートがしやすくなります。これまでは、生徒がどこでつまずいているかを把握するのが難しく、勘や経験に頼らざるを得ない場面が多くありました。

しかし、デジタル教材や学習eポータル、MEXCBTといったツールを活用すると、生徒の学習履歴や解答状況が自動で蓄積され、グラフやレポートとして見える化されます。

教員はそのデータを見ながら、「どの単元が苦手なのか」「どの問題に時間がかかったのか」「どんな伸び方をしているのか」を素早く正確に把握できるため、より適切な指導ができます。

すぐにリモート授業に切り替えられる

ICT環境が普段から整っていれば、非常時でも学びを止めずに授業を続けやすくなります。災害、感染症の流行、突然の休校など、学校が対面授業を続けられなくなる状況はいつでも起こり得ます。

教育DXが進んでいれば、生徒はタブレット端末で授業に参加し、教員はオンライン会議システムやデジタル教材を使って、どこからでも授業を行うことができます。

普段からICTを使い慣れている学校ほど、急なオンライン授業への切り替えもスムーズで、生徒も戸惑うことなく学習を続けられるでしょう。また、課題提出やフィードバックもオンライン上で完結するため、学習の質を落とさずに指導することが可能です。

生徒・保護者のメリット

教育DXは、教員の働き方を改善するだけでなく、生徒や保護者にとっても大きなメリットをもたらします。

学習の質を高めるデジタル教材の活用、学習データに基づく個別最適な学び、家庭との連携のしやすさなど、教育の在り方そのものがより便利で豊かになる点が特徴です。

紙の教科書よりも多くの知識に触れられる

教育DXが進むと生徒は紙の教科書だけでは得られない多様な学びに触れられ、理解が深まりやすくなります。デジタル教材には、動画、音声、アニメーション、シミュレーション、リンク付き資料など、多くの体験を通じて学習できるコンテンツが豊富にそろっています。

紙の教科書では伝えきれない情報が、デジタルでは簡単に追加できるため、知識の幅が広がることが大きな魅力です。

さらに、デジタル教科書や学習アプリは学習履歴を自動で記録する機能を備えており、生徒自身が「どこを間違えたのか」「どれくらい進んだか」「得意な分野はどこか」をいつでも確認できます。

自分の進捗や弱点を理解して次の学習に活かせるため、学習効果が高まりやすい点も大きなメリットです。こうした豊富な教材と学習履歴の可視化によって、生徒はより深く、より自分に合った学び方を選べるようになります。

早い段階でITに関する知識が身につく

教育DXが実現された環境では、日常的にタブレット端末やクラウドサービス、オンラインツールに触れるため、生徒は早い段階でデジタルリテラシーを身につけやすくなります。

タイピングや情報検索の方法、資料作成、オンラインでのコミュニケーションなど、現代社会で必須となるスキルを自然と習得できるため、将来の学習・仕事にも大きく役立つでしょう。

ITスキルを持った人材の需要が高まる中で、教育DXは生徒のキャリア形成にも寄与する重要な要素となっています。

保護者は学校との連絡が楽になる

教育DXが進むと保護者は学校とのやり取りがスムーズになり、子どもの学習を家庭でサポートしやすくなります。これまで欠席連絡や伝達事項は連絡帳に書いたり、朝の忙しい時間に電話をかけたりする必要がありました。

デジタルツールを導入すれば、アプリやオンラインから数タップで手続きできるようになります。連絡漏れや書き忘れも減り、保護者の負担が大きく軽くなる点が大きなメリットです。

また、従来は学校からの紙のプリントが多く、気づかずに紛失してしまったというトラブルもありましたが、デジタル化によって行事案内やお知らせがアプリでまとまり、必要な情報をいつでも確認できるようになります。

教育DXを推進する際の課題

教育DXは学習の質を高め、教員や学校業務の効率化にもつながる改革ですが、推進にあたってはさまざまな課題も存在します。設備投資や人員体制・ルールの整備など、多角的な視点で準備を進めなければなりません。

ここでは、教育DXを導入・運用する上で押さえておくべき主な課題を解説します。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

環境整備に費用がかかる

教育DXを進めるためには多くのデジタル設備が必要になるため、学校や自治体にとって費用の負担が大きいという課題があります。

教育DXでは、児童生徒が使うタブレットやパソコン、高速で安定したインターネット環境、クラウドサービス、デジタル教材などを整備しなければなりません。

これらは最初の購入費用だけでなく、維持費・更新費もかかります。たとえばタブレットが古くなれば買い替えが必要なほか、クラウドサービスの利用料金やセキュリティ対策の費用も継続して支払わなければいけません。

セキュリティ面の懸念がある

教育DXでは大事な情報をオンラインで扱うため、セキュリティが重要になります。学校では、生徒の名前・住所・成績・健康情報・学習履歴など、外部に漏れてはいけないデータをオンライン上で管理するようになります。

もしこれらが流出してしまうとトラブルにつながるため、強固なセキュリティ対策が必要です。しかし、安全にシステムを使うには、学校の設備だけではなく、生徒・保護者・教員それぞれがセキュリティに関するリテラシーを向上させる必要があります。

そのため、教育DXを安全に進めるには、端末やシステムを安全に管理する技術面の対策に加えて、生徒・保護者・教員が情報を守るためのルールやネットの正しい使い方を理解し、日常的に実践することが求められます。

ルールの構築が必要

教育DXを安全に進めるためには、生徒が安心して端末やインターネットを使えるよう、学校が明確なルールを作ることが必要です。

タブレットやPCの利用が広がると、ネット上の誹謗中傷、SNSトラブル、個人情報の流出、著作権侵害など、さまざまな問題が起きる可能性が高くなります。

便利な反面、正しい使い方を知らないまま利用すると、大きなトラブルにつながってしまうため、事前に守るべきルールを用意しておくことがとても大切です。

端末の扱い方、家庭に持ち帰る際の注意点、SNSの使い方や投稿のマナー、学校で禁止されている行為などを明確にしておく必要があります。また、トラブルが起きた際の対応フローも学校側があらかじめ整理しておきましょう。

教員の指導力が必要

教育DXを効果的に進めるためには、教員がICT機器やデジタル教材を授業の中で上手に活用できる力を身につけることが欠かせません。教員が特徴を理解し、どう使えば生徒の学びを深められるかを判断できるかどうかが、教育DXの成否を左右します。

たとえば、動画教材やシミュレーションを授業に組み込む方法、学習履歴データを使って生徒のつまずきを把握する方法、オンライン授業の運営の仕方といった、これまでにない新しい指導力が求められています。

一方で、教員のICTスキルには大きな個人差があり、慣れている人もいれば、パソコン操作などに不安を抱える人も少なくありません。そのため、学校全体で使いやすいICT環境を整え、わからないことを気軽に相談できる支援体制や研修制度を充実させることが必要です。

教育DX推進におすすめのシステム

おすすめの授業支援システム

おすすめの勤怠管理システム

まとめ

教育DXは、デジタル技術を活用して教員の負担を軽減し、生徒一人ひとりに最適化された学習環境を提供して教育の質を高めるために欠かせない取り組みです。

背景には、ICT教育の普及、オンライン教育の需要増加、個別最適な学びと協働的な学びの重視といった社会的な変化があります。文部科学省もGIGAスクール構想をはじめ、デジタル教科書、MEXCBT、学習eポータルなどさまざまな施策を進めています。

教育DXが進むことで、教員は校務負担の軽減や指導の質向上、生徒は多様なデジタル教材へのアクセスやITリテラシー向上などのメリットを得られます。一方で、環境整備にかかる費用、セキュリティ対策、ルールづくり、教員のICTスキルなどの課題も存在します。

これらを丁寧に解決しながら進めることで、安全性と教育の質を両立した教育DXを実現できます。本記事を参考に、各学校・地域にとって最適なDX推進の形を考えていきましょう。