内部通報制度とは?義務化や公益通報者保護法の改正について解説
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- 従業員301人以上の企業には、内部通報窓口の設置が義務化されている
- 令和8年施行の法改正では、取引先のフリーランスも公益通報者に追加される
- 内部通報制度を導入する際は、秘密保持を徹底し、経営陣から独立した窓口を設置する
公益通報者保護法によって、従業員301人以上の企業には内部通報窓口の設置が義務付けられています。また、令和8年には改正公益通報者保護法が施行される予定のため、整備の強化が必要です。この記事では、内部通報に関する法律上の要件や注意点などを解説します。
目次
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内部通報窓口の設置は義務化されている

内部通報制度とは、企業や組織の内部で発生した不正行為や法令違反、ハラスメントなどについて、従業員が安心して通報できる仕組みです。問題を早期に把握し、是正につなげることで、重大な不祥事や社会的信用の失墜を防ぐ役割を果たします。
公益通報者保護法では、従業員数301人以上の企業に対し、内部通報窓口の設置が義務付けられています。対象となる企業では、通報を受け付ける体制の整備だけでなく、通報者を保護するための適切な運用も求められます。
内部通報制度は、単なる制度対応ではなく、企業のコンプライアンス体制を支える重要な仕組みといえます。
内部通報制度の目的
内部通報制度の目的は、不正行為や法令違反を早期に発見し、是正することで、企業の健全な経営を守ることにあります。問題が表面化する前に内部で把握できれば、被害の拡大や社会的評価の低下を防ぎやすくなります。
また、従業員が声を上げやすい環境を整えることで、コンプライアンス意識の向上にもつながります。近年では、法律遵守のためだけでなく、不正リスクの低減や企業文化の改善を目的として、積極的に内部通報制度を導入・整備する企業も増えています。
参考:令和5年度 民間事業者等における内部通報制度の実態調査報告書|消費者庁
内閣府告示の11項目の指針
公益通報者保護法に基づき、事業者が内部通報制度を適切かつ有効に運用するための指針として、内閣府から11項目が示されています。これらは、制度の形だけでなく、実効性を確保するための具体的なポイントです。
| 指針 | 内容 |
|---|---|
| 従事者の定め | 内部通報対応に従事する担当者を明確にする |
| 受付窓口の設置 | 社内・社外を含めた通報窓口を設ける |
| 幹部からの独立性の確保 | 経営幹部の影響を受けない体制を整える |
| 是正に必要な措置の実施 | 通報内容に基づき適切な是正を行う |
| 利益相反の排除 | 調査担当者と利害関係が生じないよう配慮する |
| 不利益な取扱いの防止 | 通報者への不利益な扱いを禁止する |
| 範囲外共有等の防止 | 通報内容や個人情報が不要に共有されないよう管理する |
| 労働者・役員・退職者への教育 | 制度内容を周知して理解を促す |
| 是正措置等の通知 | 通報者に対して対応状況や結果を適切に通知する |
| 記録の保管 | 通報や対応の記録を適切に保管する |
| 内部規程の策定 | 制度運用のための規程を整備する |
参考:公益通報者保護法第 11 条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針|消費者庁
内部通報制度設置の義務を怠った場合のリスク

内部通報制度の設置義務を怠り、適切な体制を整備しなかった場合、企業はさまざまなリスクを抱えることになります。法令違反として行政指導の対象となる可能性があるほか、不正行為が外部に告発され、企業イメージが大きく損なわれる恐れもあります。
また、通報者保護が不十分な場合、従業員の不信感が高まり、組織全体のモラル低下にも繋がりかねません。内部通報制度は、問題発生後のリスク対応だけでなく、企業価値を守るための重要な仕組みであることを理解し、適切に整備・運用することが重要です。
令和8年施行の改正法の内容にも注意

公益通報者保護法は、内部通報制度の実効性をさらに高めるために改正され、令和8年に施行される予定です。今回の改正では、事業者の責任がより明確化されるとともに、通報者の保護が一層強化されます。
ここでは、令和8年施行の法改正の内容の注意点について詳しく解説します。
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令和8年施行の法改正の内容の注意点
従事者指定義務に違反した場合の刑事罰の新設
改正法では、内部通報対応に対応する従事者を明確に指定する義務が法律として求められています。従事者とは、通報の受付や調査、是正対応などに関与する担当者を指し、守秘義務を負う立場として明確に定める必要があります。
適切に指定する義務に違反した場合、罰金などの刑事罰が科される点が大きな変更点です。これまでは体制が曖昧なまま運用されている企業もありましたが、今後は責任の所在を明確にした体制構築が不可欠です。
従事者の指定を怠ると、制度の信頼性が損なわれるだけでなく、法的リスクも高まるため、事前の見直しが重要となります。
正当な理由なく通報者を特定する行為・通報妨害の禁止
改正法では、正当な理由なく通報者を特定する行為や、通報を妨害する行為が明確に禁止されます。通報者の探索や詮索、圧力をかけるような言動は、通報を萎縮させる原因となり、制度の機能を損ないます。
そのため、匿名性の確保や情報管理の徹底がこれまで以上に求められます。通報を妨害する行為には、通報を控えるよう働きかけることや、不利益を示唆する言動も含まれるため注意が必要です。安心して通報できる環境整備が、制度運用の前提条件となります。
公益通報者に取引先のフリーランスも追加
改正法では、公益通報者の範囲が拡大され、取引先のフリーランスも保護対象に含まれるようになります。そのため、雇用関係がない場合であっても、業務上知り得た不正行為について通報したフリーランスが保護されます。
企業にとっては、社内の従業員だけでなく、外部人材からの通報にも適切に対応する体制が必要です。委託契約が理由による不利益な扱いは認められず、取引関係の見直しや契約解除についても慎重な判断が求められるため、外部との関係性を含めた制度設計が重要です。
通報から1年以内の解雇・懲戒は公益通報が理由と推定
改正法では、公益通報から1年以内に行われた解雇や懲戒処分について、原則として公益通報を理由としたものと推定されます。そのため、事業者側は処分が通報とは無関係であることを立証しなければなりません。
その結果、従来よりも企業側の説明責任は重くなり、人事処分の妥当性が厳しく問われます。安易な配置転換や評価の引き下げも、不利益取扱いと判断される可能性があるため、慎重な対応が必要です。
公益通報を理由に解雇・懲戒した場合の刑事罰
公益通報を理由として解雇や懲戒処分を行った場合、事業者や関係者に刑事罰が科される点も、今回の改正の大きなポイントです。これにより、通報者に対する報復行為への抑止力を高められるでしょう。
企業としては、通報を受けた後の対応を慎重に行い、感情的・恣意的な判断を避ける必要があります。内部通報制度は、不正を指摘した従業員を排除する仕組みではなく、組織改善のための制度であるという認識が重要です。
内部通報制度を導入するメリット

内部通報制度は、企業や組織の内部で発生した不正行為や法令違反、ハラスメントなどを早期に把握し、是正につなげるための重要な仕組みです。
近年は公益通報者保護法の整備・改正により、制度対応が求められるだけでなく、企業姿勢そのものが問われるようになっています。ここでは、内部通報制度を導入することで得られる主なメリットについて解説します。
外部への通報を防止できる
内部通報制度を導入する大きなメリットの一つは、不正行為を早期に発見し、行政機関やマスコミなど外部への通報を防止できる点です。社内に安心して相談・通報できる窓口がない場合、従業員は外部通報を選択せざるを得なくなります。
その結果、不正が公表され、企業の社会的評価が大きく損なわれる可能性があります。内部通報制度が整備されていれば、問題を社内で把握し、迅速に是正対応を行うことができます。
社会的な信頼が得られる
内部通報制度を適切に運用している企業は、不正や問題に対して自ら改善しようとする自浄作用のある企業として社会的に評価されやすくなります。透明性の高い経営姿勢は、顧客や取引先、投資家からの信頼につながります。
また、コンプライアンス体制が整っていることは、取引先選定や業務委託の判断材料として重視されるケースも増えています。内部通報制度の存在は、単なるリスク対策にとどまらず、企業価値を高める要素として機能します。
社会的信頼を得ることで、長期的な事業継続や安定した取引関係の構築にもつながる点が大きなメリットです。
内部通報制度を導入する際の注意点

内部通報制度は、不正の早期発見やコンプライアンス強化に有効な仕組みですが、導入や運用を誤ると十分に機能しません。形式的に窓口を設置しただけでは、通報者の不安が解消されず、利用されない制度になってしまう可能性があります。
また、対応を誤れば、通報者保護違反や企業イメージの低下につながる恐れもあります。内部通報制度を実効性のあるものとするためには、制度設計や運用面で押さえておくべき注意点を理解することが重要です。
ここでは、導入時に特に注意すべきポイントを解説します。
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内部通報制度を導入する際の注意点
秘密保持を徹底する
内部通報制度において最も重要なポイントの一つが、秘密保持の徹底です。通報内容だけでなく、「誰が通報したか」「通報があった事実そのもの」についても、必要以上に共有しない配慮が求められます。
通報者が特定される可能性がある環境では、安心して通報することができません。そのため、通報者の氏名を伏せられる仕組みや、アクセス権限を限定した管理体制を整えましょう。
また、通報していることが外部や社内から分からないよう、専用窓口や外部ツールを活用するなど、物理的・運用面の両方で秘密保持を徹底する必要があります。
経営陣から独立した窓口を設置する
内部通報窓口は、経営陣から独立した体制で設置することが重要です。これは、経営層や幹部が関与する不正についても、安心して通報できる環境を確保するためです。経営陣と密接な関係にある部署が窓口となると、通報者が不安を感じて制度が利用されにくくなります。
外部の弁護士に窓口業務を委託する方法もありますが、その場合でも自社の顧問弁護士ではなく、利害関係のない第三者に依頼することが望ましいとされています。
通報者に不利益がないことを明確にする
内部通報制度を利用しても、通報者が解雇や降格、評価の引き下げなどの不利益を受けないことを、明確に示しておく必要があります。通報後に不利益が生じるのではないかという不安があると、制度は利用されません。
そのため、内部規程や社内ルールにおいて、通報者への不利益取扱いを禁止する旨を明文化し、周知することが重要です。また、実際の運用においても、通報後の人事対応には細心の注意を払う必要があります。
利用してもらえる体制を整える
内部通報制度は存在を知ってもらい、使いやすいと感じてもらわなければ意味がありません。制度の目的や通報方法、相談できる内容について、従業員に分かりやすく周知することが重要です。
入社時研修や定期的な社内研修、社内ポータルでの案内などを通じて、継続的に情報発信を行うことが望まれます。
また、通報の手順が複雑だったり、心理的なハードルが高かったりすると利用されにくくなるリスクがあります。そのため、匿名通報の可否や受付方法など、利用者目線で体制を整えることが大切です。
制度の趣旨に沿わない通報もあり得る
内部通報制度を運用していると、不正や法令違反とは関係の薄い内容や、制度の趣旨に沿わない通報が寄せられるケースもあります。すべての通報に社内で対応しようとすると、担当者の負担が大きくなり、制度運営が形骸化する恐れがあります。
そのため、対応範囲や判断基準をあらかじめ整理しておくことが重要です。また、受付や一次対応を外部に委託することで、担当者の負担軽減や公平性の確保につながる場合もあるため、運用負荷も考慮して体制を整えましょう。
内部通報システム・サービスで義務化に対応しよう

内部通報システム・サービスとは、社内外からの通報を受け付け、調査や是正対応までを支援する仕組みです。公益通報者保護法により、一定規模以上の企業には内部通報窓口の設置が義務付けられており、適切な体制整備が求められています。
システムや外部サービスを活用することで、窓口設置や秘密保持、通報者保護といった法令要件に対応しやすくなります。また、通報受付から対応履歴の管理までを一元化できるため、担当者の負担軽減にもつながるでしょう。
内部通報制度を形骸化させず、実効性のある運用を行うためにも、内部通報システム・サービスの活用は有効な選択肢といえます。

おすすめの内部通報システム・サービス9選|選ぶ際のポイントも解説
内部通報システムとは、企業で起こる不正行為やハラスメントについて、従業員が安心して内部通報できるようサポートするサービスです。この記事では、おすすめの内部通報システム・サービスや選ぶ際のポイント、利用時の注意点などを解説します。
おすすめの内部通報システム・サービス9選
株式会社サザンクルー
NHホットライン
ここがおすすめ!
- 複数の通報手段に対応し、相談・通報しやすい体制に
- 一次受付により、社内担当者の対応コスト削減が可能
- クレジットカード払いによる迅速かつ簡単な申込み
ここが少し気になる…
- サポート体制や多言語への対応可否は問い合わせで確認
NEC VALWAY株式会社
内部通報窓口代行サービス
ここがおすすめ!
- メンタルヘルスやハラスメント防止コンテンツにも対応
- 有資格者の女性カウンセラーによる電話対応で安心して使える
- NECのセキュア運用ルールにより、機密性を担保
ここが少し気になる…
- プランにより、メンタル相談の有無が異なる
弁護士法人Nexill&Partners
内部通報窓口代行サービス
ここがおすすめ!
- 士業5法人のグループ体制による総合的なサポート
- 再発防止・予防の観点から、改善案を踏まえたレポートの納品
- コンプライアンス体制の準備方法のアドバイスにも対応
ここが少し気になる…
- 対応した時間に応じて加算料金が発生
アトム法律事務所弁護士法人
コンプラチェッカー
ここがおすすめ!
- 月1回のメルマガで内部通報を促進し、不正の早期発見と予防が可能
- 法律事務所のサイト内にフォームを設置し匿名性を担保
- わかりやすい料金体系と低価格で導入ハードルが低い
ここが少し気になる…
- レポート作成やサポート体制などは問い合わせで確認
株式会社リンクファシリティーズ
完全匿名ヘルプライン
ここがおすすめ!
- 通報者の保護を大前提としてWEBフォームのみを設置
- 低価格で導入でき、内部通報窓口を即時に設置
- 手間のかかる報告書もワンクリックで作成可能
ここが少し気になる…
- 専門家によるサポートは初回のみ無料
株式会社エス・ピー・ネットワーク
リスクホットライン®
ここがおすすめ!
- 通報者と複数回やり取りするため、すぐに調査体制に入れる
- 通報1件1件に対して「リスクレポート」がつく
- 案件が終結するまで、通報者と企業の間に立って伴走
ここが少し気になる…
- 従業員数や内容などにより費用が変わるため、問い合わせで確認
株式会社Zation
Zation 内部通報窓口
ここがおすすめ!
- 中小企業にも優しい価格と明瞭な料金プランで導入ハードルが低い
- 通報手段が5種類もあり、自分のタイミングで相談できる
- 英語や場合によっては中国語のフォームにも対応
ここが少し気になる…
- 初期費用が一律5万円かかり、カスタマイズについては問い合わせで確認
株式会社ディー・クエスト
DQヘルプライン
ここがおすすめ!
- 外部窓口のパイオニアとしての歴史・実績が豊富で安心
- 24時間365日の通報に対応し、多様な働き方にあわせて使える
- 各種トレーニングや研修といったサポートやセキュリティ対策が充実
ここが少し気になる…
- 導入費用や各種サポートは問い合わせで確認
NAVEX
WhistleB
ここがおすすめ!
- グローバル規制に遵守し、内部通報者の報告を管理
- 直感的なデザインと専門家によるガイダンスで初心者も安心
- 最大150言語での通報に対応し、Web・モバイルどちらでも使える
ここが少し気になる…
- プランにより言語や管理者ユーザー数などの制限がある
内部通報システム・サービスの選び方

内部通報システム・サービスを選ぶ際には、自社の体制や目的に合ったものを見極めることが重要です。特に法令対応を確実に行えるか、通報者が安心して利用できる仕組みが整っているかといった点は欠かせません。
サービスごとに機能や対応範囲、運用方法は異なるため、複数の観点から比較検討する必要があります。ここでは、選定時に押さえておきたい主なポイントを整理します。
【重要なポイント3つ】
- サービスのタイプを確認
- 匿名性は担保されるか
- 専門性は高いか
【その他の比較ポイント】
- 通報チャネルや受付時間を確認
- 多言語に対応しているか
- 費用は適正か
まとめ

内部通報制度の義務化に適切に対応するためには、内部通報システム・サービスの活用が有効です。法令要件への対応に加え、秘密保持の徹底や通報者保護、担当者の運用負担軽減といった面でも多くのメリットがあります。
サービスを選定する際は、匿名性や独立性、専門性を重視し、自社の体制や規模に合った仕組みを選ぶことが重要です。本記事を参考に、形式的な対応にとどまらない、実効性の高い内部通報体制の構築を検討していきましょう。