電子帳簿保存法に基づいたPDF保存とは|注意すべき要件を解説

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  • 電子帳簿保存法の対象となる書類には、国税関係の帳簿・書類・電子取引が該当する
  • PDF保存を行う際には、決められた要件を満たすよう注意しなければならない
  • 電子帳簿保存法に対応したPDF保存を行うには、電子帳票システムがおすすめである

紙の帳簿による業務の手間やコストを削減することを目的に定められた電子帳簿保存法の要件緩和に伴い、多くの企業で帳簿書類の電子化が進んでいます。本記事では、電子帳簿保存法と改正事項の他、PDF保存で注意すべき要件などについて詳しく解説します。

目次

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  1. 電子帳簿保存法とは
  2. 電子帳簿保存法の対象となる書類
  3. 電子帳簿保存法で認められているファイル形式
  4. 電子帳簿保存法による保存方法について
  5. PDF保存で注意すべき要件
  6. 電子帳簿保存法に対応したPDF保存には電子帳票システムがおすすめ
  7. まとめ

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、総勘定元帳・決算書・請求書などの帳簿・書類を、電子データとして保存する方法を規定した法律を指します。従来、国税関係の帳簿や書類は紙媒体による保存方法が原則でした。

しかし、保管コストや事務的負担の軽減を目的として、1998年に施行された電子帳簿保存法に基づいた電子データによる保存が認可されました。

その後、時代の変遷とともに複数回の改正が行われています。2022年1月には、経理の電子化による生産性の向上・記帳水準の向上などに役立てることを目的として、新たに改正法が施行されています。

参考:電子帳簿保存法関係|国税庁

2023年の改正のポイント

電子帳簿保存法の要件は、これまで幾度か内容が見直されています。電子帳簿保存法は2023年度にも見直され、全体的に要件が緩和されました。主な改正事項は、以下の通りです。


参考:令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要|国税庁

電子帳簿等保存に関する主な改正事項

電子帳簿保存法が規定する電子的な保存について、不正が発覚した場合は罰則が与えられます。2022年以降は、この罰則が厳しくなりました。

スキャナ保存や電子取引に関する隠蔽や改ざんなどが発覚した場合、それによる申告漏れに対する重加算税が10%加算されます。隠蔽とは、二重帳簿の作成・帳簿類の隠匿・廃棄などの不正な行為です。

ただし、優良な電子帳簿の要件を満たしたうえで、申告漏れがあった場合には過少申告加算税が5%軽減されます。こちらは、前もって措置の適用を受ける旨の届出書を管轄の税務署に提出すること、隠蔽や改ざんがないことが前提です。

スキャナ保存に関する主な改正事項

1つ目の改正事項として、従来までは帳簿書類をスキャナ保存する際に、入力者・確認者・監督者の情報も併せて確認可能な状態にする必要がありました。その後は要件が緩和され、管理者の情報を保存する必要がなくなりました

2つ目は、従来までスキャナで読み取ったデータの解像度・階調・大きさの詳細な要件が設定されていましたが、改正後のスキャナ保存制度においては、上記の保存要件が撤廃されています。

3つ目は、従来までスキャナ保存した国税関係書類のデータと、帳簿書類との関連性に関して、お互いに確認できる状態にしておくことが要件とされていました。改正後は、重要書類だけが上記の対象となり、一般書類では対応が不要となりました。

電子取引データ保存に関する主な改正事項

1つ目の改正事項として、法人税・申告所得税において電子取引の取引情報を書面に出力して電子データの保存に切り替える措置は撤廃され、電子データのみの保存が義務化されました。しかし、消費税に関してはこれまで通り書面による保存ができます。

2つ目の改正事項として、検索要件に関して、取引年月日・取引先・取引金額に限定し、システム運用者の基準期間における売上高が1,000万円以下の場合、これまでの検索要件が全廃されました。

3つ目の改正事項は、電子データの改ざんなどによる不正行為に対しては、重加算税を10%加算する規定が整えられました。

電子帳簿保存法の対象となる書類

改正後の電子帳簿保存法における該当書類として挙げられるのは、国税関係帳簿・決済関係書類や取引関係書類などの国税関係書類・電子取引などです。

対象書類ごとの、電子帳簿保存法における電子的な保存は、3種類(電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引)によって行われます。ここでは、区分ごとに対象書類と保存方法についてそれぞれ詳しく解説します。

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電子帳簿保存法の対象となる書類

  1. 国税関係帳簿
  2. 国税関係書類
  3. 電子取引

国税関係帳簿

国税関係帳簿とは、税法の規定により備え付け・保存義務が定められた帳簿です。例えば、総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳・売上帳・仕入帳などが該当します。

電子保存の対象となるのは、自身が最初からパソコンで作成した帳簿です。手書きによる仕訳帳や総勘定元帳などの主要簿は対象外のため、紙の状態で保存することが定められています。

国税関係書類

国税関係書類は、決算関係書類と取引関係書類に区分されます。決算関係書類は、貸借対照表・損益計算書・棚卸表・財産目録・事業報告書などがあります。

取引関係書類は、 見積書・契約書・請求書・領収書・小切手・納品書・送り状・注文書・見積書・入庫報告書などです。これらは、自身で作成した書類と取引先から受領した書類の両方を指します。

保存方法は、自身で作成した書類を電子データのまま保存する「電子帳簿等保存」、紙で受領した書類を画像データで保存する「スキャナ保存」、メールやネット上で発行・受領した取引情報をデータで保存する「電子取引データ保存」の3種類があります。

電子取引

電子取引として挙げられる書類には、電子メール・EDI・クラウドサービスなどにより授受された請求書・領収書・納品書・注文書・見積書などがあります。

電子取引とは、電子的に授受した取引データを電子のまま保存することを義務づけた制度です。電子帳簿等保存やスキャナ保存が任意であるのに対し、電子取引は義務化されているという違いがあります。

電子取引情報をデータ保存する場合は、4つの保存要件(タイムスタンプの付与・関連書類の備え付け・見読性の確保・検索機能の確保)を満たす必要があります。

電子帳簿保存法で認められているファイル形式

電子データはPDF形式で保存されることが多いですが、電子帳簿保存法ではファイル形式についての指定はありません。そのため、JPEGなどの画像ファイルをPDFに変換せずにそのまま保存することが可能です。

ただし、あくまでもファイル形式の指定がないだけで、要件は満たしていなければならない点に注意が必要です。

電子帳簿保存法による保存方法について

電子帳簿保存法に対応するうえで重要なのは、不正や第三者の関与を防ぐために、真実性の確保・可視性の確保の2つです。基本的に重要なのは、この2点だと理解するとわかりやすいでしょう。

上述したように、電子帳簿保存法における保存方法は以下の3つに定められています。

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電子帳簿保存法による保存方法について

  1. 電子帳簿等保存
  2. スキャナ保存
  3. 電子取引の保存

電子帳簿等保存

電子帳簿等保存は、電子的に作成された帳簿や書類を電子データそのままの状態で保存することを指します。2022年1月1日から要件が緩和され、最低3つの要件をクリアすることで電子データ保存が認められる形で法改正されました。

最低限の要件とは、システム関係書類などの備え・見読可能性の確保・税務職員による電子データのダウンロードへの対応が可能の3つです。

また、最低限の要件以外に整備されている要件をクリアすることで、優良電子帳簿として認可されます。優良電子帳簿は、確定申告時に本来の納税額と申告納税額の差額を支払う際に義務づけられる過少申告加算税の5%が免税されます。

スキャナ保存

スキャナ保存は、書面で受領した書類を画像データで保存することです。領収書や契約書など、国税関係書類に該当するほとんどの書類が対象です。

電子帳簿等保存と同じように法改正が行われたため、2022年1月1日以降の書類を電子保存する場合は、税務署長から承認を受けるなどの手続きが不要です。

スキャナ保存については、重要書類と一般書類で保存要件が異なります。重要書類は、契約書や請求書などの資金や品物の流れに直結する重要な書類のことです。一般書類は、検収書や見積書など資金や品物の流れに直結しない重要性の低い書類を指します。

電子取引の保存

電子取引は、電子メール・インターネット・クラウド上などを通して行う取引を指します。電子帳簿保存法においての電子取引とは、電子メールやインターネットなどで受領した書類を電子データ保存することです。

従来は任意だったのが、電子帳簿保存法の改正により、すべての事業者が電子取引による書類の電子保存を義務づけられました。しかし、2023年12月31日までの間は、経過措置として、印刷した書面で保存することも認可されています。

また、電子取引の保存には4つの要件があり、以下の通りです。

  1. タイムスタンプの付与
  2. 関連書類の備え付け
  3. 見読性の確保
  4. 検索機能の確保

参考:電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】Ⅱ 適用要件【基本的事項】|国税庁

タイムスタンプの付与

電子データを保存する際は、真実性確保のため、いつ保存したのかを証明する必要があります。そのため、第三者機関による正確な時間を証明するタイムスタンプの付与が必要です。

また、タイムスタンプの付与ができない場合は、電子書類を適正に訂正・削除するための社内規定を設定しなければなりません。しかし、スキャン保存の場合は認定されたタイムスタンプ付与を受ける必要があります。

前述した通り、法改正によりタイムスタンプの付与がなくても要件を満たす場合があります。電子書類の訂正や削除履歴の確認が可能なシステム、訂正・加工・削除ができないシステムの利用によって、タイムスタンプの付与は省略できます。

関連書類の備え付け

関連書類としては、主にシステムに関するものと業務に関するものがあり、備え付けが必須とされています。システムに関する書類は、以下の3通りです。

  1. 電子計算機処理システムの概略を記載した書類(システム概要書・システム基本設計書・フロー図など)
  2. 電子計算機処理システムの開発段階において作成した書類(システム仕様書・システム設計書など)
  3. 電子計算機処理システムの操作説明資料(操作マニュアル・運用マニュアルなど)

また、業務に関する書類は、以下の3通りです。

  1. 電子計算機処理や電磁的記録の保存に関する事務手続を明確にした資料(事務処理フローなど)
  2. 国税関係書類の作成・受領から入力までの事務処理における規程(適正事務処理規程・事務分掌細則・スキャナによる電子化保存規程など)
  3. 文書管理に関する規程(文書管理規程など)

見読性の確保

見読性とは、電子化されたデータ確認が簡単に行える状態を指します。電子契約における見読性の確保とは、保存場所へアクセスして電子データの確認がスピーディーに行えるように、パソコンやディスプレイを備えておくことです。

パソコンやディスプレイの台数・大きさに関しては、要件が規定されていません。少なくとも必要なときに、データを確認して簡単に読める状態を確保しておかなければなりません。

検索機能の確保

検索機能の確保とは、保存している電子取引データを検索するための要件を指します。検索機能を確保するためには、以下の3点に対応しているのが条件です。

  1. 日付・金額・取引先で検索が可能
  2. 日付または金額に関しての記録項目について、範囲の指定で検索が可能
  3. 2つ以上の記録項目を任意に組み合わせて検索が可能

※税務職員の要求に応じて一括ダウンロードが可能な場合には(2)(3)の要件は不要

上述の検索機能を確保するには、電子取引システムなどを導入する方法がもっとも手っ取り早いです。システムを導入せずに検索機能を確保する場合、規則的なファイル名設定や、別途作成した索引簿との関連づけなどの対応が必須です。

PDF保存で注意すべき要件

ここでは、重要書類・一般書類・電子取引の取引情報をPDF保存する際に注意すべき要件を2つ解説します。決算書類については、最初の作成段階で電子データによる作成をすることでほとんどの要件がクリアされるため、省略します。

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PDF保存で注意すべき要件

  1. タイムスタンプ
  2. 検索機能の要件

タイムスタンプ

タイムスタンプとは、PDFを含めた文書ファイルに文書の作成時刻を記録する仕組みを指します。TSA(時刻認証局)と呼ばれる第三者機関との通信で、認証された時刻の記録を文書に付与します。

その後、一定条件をクリアすれば、タイムスタンプを省略できる形で2022年の法改正で要件が緩和されました。例として、時刻証明機能を搭載したクラウドシステムなどに保存し、時刻証明や改ざんのないことが立証できれば、タイムスタンプの付与は省略できます。

検索機能の要件

スキャン保存の要件として、契約書の検索ができる機能を満たしておくことが必要不可欠です。例えば、クラウド契約管理システムやExcel上において検索ができるようにしておけば、要件を満たせます。

しかし、電子帳簿保存法施行規則の検索機能に関する規定によって、検索機能は以下のような設定が可能なものでなければならないとされています。

  1. 取引年月日・勘定科目・取引金額・契約書の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定ができる
  2. 日付または金額に関する記録項目については、範囲を指定して条件設定ができる
  3. 二つ以上の記録項目を任意に組み合わせて条件設定ができる

台帳などを使用して、契約の締結日・契約終了日・更新日・金額・日付などを基準に契約書を整理し、これらの項目をシステムやExcel上で条件を指定して検索を可能にする必要があります。

電子帳簿保存法に対応したPDF保存には電子帳票システムがおすすめ

電子帳票システムとは、企業間で授受する帳票の作成から管理までを電子化し、効率化を図るシステムを指します。2022年1月施行の電子帳簿保存法の改正において、電子取引で受領した電子データはそのままの状態で保存することが必須とされています。

そのため、メール・PDF・システムなどで届けられた請求書・契約書・注文書のデータは、電子データそのままの状態で保存しなければなりません。

これまでは、Excelなどで作成した帳票を手作業でPDF化してメールに添付したり、印刷して郵送したりするのが通例でしたが、電子帳票システムを活用することで、これらの手作業をシステム上で半自動化することが可能となるため、大幅な業務効率化に結びつきます。

電子帳票システムとは?機能や選び方、メリット・デメリットを解説

電子帳票システムとは、請求書や注文書などの帳票の作成や送付を電子化して管理できるシステムです。電子帳簿保存法の浸透などにより広く普及しています。本記事では、電子帳票システムをよく知らない方のために、機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。

まとめ

この記事では、電子帳簿保存法の対象となる書類国税関係の帳簿・書類・電子取引の概要と保存方法について解説しました。

さまざまな場面で書類のPDF化が要求される現在では、PDF化した書類の管理にも配慮する必要があります。特に、国税関係の書類については電子帳簿保存法の要件を満たした方法で保存しなければならないため、注意が必要です。

電子帳簿保存法に対応した電子帳票システムを利用すると、メールで受け取ったPDFの請求書や領収書を簡単に電子データとして自動保存が可能です。そのため、電子化の流れにのるためには、電子帳票システムの導入がおすすめです。

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