BPOとBPRの違いとは?業務改革を成功に導く使い分けと進め方
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- 「BPO(業務の外部委託)」と「BPR(抜本的再設計)」の違いを理解し、自社の課題に合う手法を選択できているか
- 課題の対象は特定業務か全社プロセスか。目的に応じたBPOとBPRの使い分けや連携アプローチを把握しているか
- 経営層と現場の合意形成や明確なKPI設定など、業務改革プロジェクトを確実に成功へ導く3つのポイントを押さえたか
この記事では、自社の課題や目的に応じて最適な選択を行い、業務改革プロジェクトを成功に導くための具体的な判断基準と進め方を詳しく解説します。
業務改革を推進するマネージャーの皆様は、「BPOとBPR、どちらを導入すべきか」という課題に直面することも少なくないでしょう。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は、どちらも業務効率化を実現するための有効な手段です。しかし、その目的、対象範囲、アプローチは大きく異なります。
- BPOは、特定の業務を外部に委託することで効率化とコスト削減を図るアプローチです。
- BPRは、既存の業務プロセスを根本から見直し、再構築することで抜本的な改革を目指します。
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BPOとBPRの基本的な違いを1分で理解
多忙な業務改革担当者の皆様が、BPOとBPRの核心的な違いを一目で理解できるよう、両者を比較しながら簡潔に解説します。
BPOは「業務の外部委託」を通じて効率化やコスト削減を目指すのに対し、BPRは「業務の抜本的な再設計」により企業全体の競争力強化を図るものです。目的、対象、手法、期間、コストといった観点から両者を比較することで、それぞれの特性と適応範囲が明確になります。
| 観点 | BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング) | BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング) |
| 目的 | コスト削減、業務効率化、専門性活用、コア業務集中 | 業務プロセス全体の最適化、生産性・品質・速度の劇的改善、競争力強化 |
| 対象 | 給与計算、コールセンターなど、特定の定型業務プロセス | 営業、生産、経理など、複数部門にまたがる業務プロセス全体 |
| 手法 | 既存業務プロセスを外部に委託(現状維持+委託) | 既存業務プロセスをゼロベースで見直し、再設計 |
| 期間 | 比較的短期間での導入・効果発現が可能 | 中長期的な期間を要する大規模な改革 |
| コスト | 初期投資は比較的低いが、継続的な委託費用が発生 | 初期投資は大規模になるが、長期的な費用対効果は高い傾向 |
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは?業務の外部委託
BPOは、単なる業務の一部を外部に委託するアウトソーシングとは一線を画します。
これは、企画設計から始まり、実際の業務遂行、さらにはその後の改善活動までを一括して外部の専門企業に委託する、戦略的な経営手法です。
このアプローチにより、企業は自社の限られたリソースを核となる事業に集中させながら、専門性の高い業務領域で品質と効率の向上を図ることができます。
BPOの定義と目的
BPOは「Business Process Outsourcing」の略称で、特定の業務プロセス全体を外部の専門業者に継続的に委託する経営手法を指します。単発の業務委託ではなく、業務の企画から実行、管理、改善までを一貫して外部パートナーに任せる点が特徴です。
BPOを導入する主な目的は、以下の3点に集約されます。
- ノンコア業務の外部委託とコア業務への集中 企業が持つリソース(人材や時間、資金)は有限です。BPOを活用することで、直接的な競争力に結びつかない定型的なノンコア業務を外部に任せ、製品開発、マーケティング、戦略立案といった「コア業務」に集中させることができます。
- 専門知識とノウハウの活用による業務品質・効率の向上 BPOベンダーは、深い専門知識と豊富な経験、最新のツールやシステムを持っています。経理処理や人事関連業務など、属人化しやすい業務において、自社で対応するよりも高品質かつ効率的な業務遂行が可能になります。
- コスト削減と変動費化 固定費となりがちな人件費やシステム費用などを変動費化する効果があります。自社で雇用・育成するコストを抑えつつ、必要な時に必要なだけサービスを利用することで、全体的な運営コストの最適化を図ることができます。
BPOと「アウトソーシング」の違い
BPOと「アウトソーシング」はしばしば混同されがちですが、明確な違いがあります。
- アウトソーシング(点の委託): 「業務単位」での外部委託です。資料作成、データ入力、SNS運用代行など、業務の一部または全部を外部業者に委託します。社内のリソース不足時などに、委託側が指示を出し、事業者がそれに従って作業を行う側面が強いです。
- BPO(線や面の委託): 「プロセス単位」での一括委託です。企画・設計から実行、品質管理、改善提案までを含む「業務プロセス全体」を委託します。単に手足を求めるのではなく、「頭脳」も含めて任せるという戦略的な位置づけです。
たとえば、人事部の「給与計算」だけを依頼するのがアウトソーシングだとすれば、「給与計算から社会保険手続き、年末調整、問い合わせ対応までの人事プロセス全体を委託し、改善まで任せる」のがBPOです。
BPOのメリット・デメリット
BPOの導入は企業に多くのメリットをもたらしますが、注意すべきデメリットも存在します。
BPOの主なメリット
- コア業務への集中:限られたリソースを、企業の成長に直結する戦略的なコア業務に集中できます。
- 専門性の高い業務遂行能力の獲得:自社では確保が難しい高度な専門性を享受し、業務品質の向上や処理速度の短縮が期待できます。
- コスト削減と変動費化:人件費や設備投資費用を変動費化し、コスト構造の柔軟性を高めます。
- 業務プロセスの標準化と効率化:専門ベンダーのノウハウにより、業務の標準化や最適化が進みます。
- リスク分散と事業継続(BCP)の強化:地理的分散や専門的な運用体制を活用することで、災害時にも事業を継続できるシステムを構築し、企業のリスク軽減に貢献します。
BPOの主なデメリットと対策
- 社内にノウハウが蓄積されないリスク:将来的に内製化したい場合に備え、定期的な情報共有やマニュアルの整備を怠らないことが重要です。
- 業務のブラックボックス化:何が行われているか不透明になるのを防ぐため、SLA(サービスレベル合意書)で業務内容や報告頻度を明確にし、定期的なミーティングで状況を把握することが不可欠です。
- 情報漏洩のリスク:ベンダー選定時に、ISMS認証などのセキュリティ体制を厳しく確認し、契約書に情報管理に関する詳細な条項を盛り込む必要があります。また、健全な競争環境を維持し特定ベンダーに依存しすぎないよう、複数ベンダーの比較検討も大切です。
- 従業員の抵抗やモチベーション低下:業務内容の変化に伴う不安を軽減するため、BPOの目的を丁寧に説明することが重要です。ノンコア業務から解放され、より付加価値の高い業務に集中できる機会として捉えてもらえるよう、合意形成を図りましょう。
BPOが適している業務例
BPOは、特に定型的で専門性が求められるノンコア業務において真価を発揮します。
- 人事部門:給与計算、採用代行(RPO)、社会保険手続き、年末調整など。
- 経理部門:請求書処理、経費精算、記帳代行、月次・年次決算業務など。
- 総務部門:受付、秘書業務、文書管理、設備管理など。
- カスタマーサポート部門:コールセンター、メール対応、FAQサイト運用など。
- 情報システム部門:ヘルプデスク、システム運用・保守など。
BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)とは?業務の抜本的改革
BPRは、既存の業務プロセスや組織体制に縛られず、根本から見直し再設計することで、企業全体の競争力を飛躍的に向上させるための大胆な改革手法です。
BPRの定義と目的
BPRは「Business Process Re-engineering」の略称で、既存の組織構造やルール、業務フローといった現状のあり方をゼロベースで再検討し、ビジネスプロセス全体を抜本的に再設計する経営改革手法を指します。
主な目的は、コスト、品質、サービス、スピードといった複数の経営指標を劇的に改善し、企業の競争力を根本から強化することにあります。
BPRと「業務改善」の違い
BPRは「業務改善(カイゼン)」とは根本的に異なるアプローチです。
- 業務改善:既存のプロセスを前提とし、その中で「いかに効率を上げるか」「無駄をなくすか」を追求する継続的な改善活動です。漸進的な変化をもたらします。
- BPR:既存のやり方や前提そのものを疑い、「なぜこの業務が必要なのか」と問い直し、プロセス全体を対象にゼロから再設計します。複数部門にまたがる全社的なプロセス変革を目指す、抜本的・非連続的な改革です。経営層主導のトップダウン型で進められるのが一般的ですが、現場からのボトムアップによる意見の吸い上げも不可欠です。
BPRのメリット・デメリット
- メリット:プロセスを根本から見直すことで、全体として最適な業務フローを構築できます(全社的な業務可視化と最適化)。これにより、意思決定スピードの向上、顧客・従業員満足度の向上、大幅なコスト削減が期待できます。
- デメリット:導入に多大なコストと時間がかかります。また、これまでのやり方が大きく変わることで、従業員の抵抗や混乱を招く可能性があります。失敗した場合の企業への影響も大きいため、経営層の強力なリーダーシップと周到な計画、丁寧なコミュニケーションが不可欠です。
BPRが適しているケース
- 市場環境の激変により既存のビジネスモデルが通用しなくなった場合。
- M&A(合併・買収)において、シナジー効果を実現するために組織や業務プロセスを統合する必要がある場合。
- 老朽化した基幹システムを刷新し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したい場合。
- 部門間の連携不足や著しいサイロ化により、全体最適が阻害されている場合。
【実践編】BPOとBPRのどちらを選ぶ?目的別の使い分けガイド
BPOとBPRのどちらを選択すべきかという判断は、プロジェクトの成否を分ける重要な意思決定です。
課題から選ぶBPOとBPRの選択フロー
Q1. 解決したい課題は特定の業務に限定されていますか?
- はい:特定のノンコア業務の効率化やコスト削減が目的である場合、BPOの検討が適しています。
- いいえ:(Q2へ)
Q2. 課題は組織横断的で、根本的な仕組みやビジネスモデルに関わるものですか?
- はい:「市場環境の激変に対応したい」「部門間の連携が悪くリードタイムが長期化している」といったケースでは、BPRが求められます。
意思決定に役立つ5つの判断基準
- 改革の範囲:特定の単一業務ならBPO、複数部門にまたがるプロセス全体ならBPR。
- 目的:コスト削減やリソース確保が主目的ならBPO、ビジネスモデルの変革まで見据えるならBPR。
- 期間と緊急度:短期間での成果(数ヶ月以内など)を求めるならBPO、数年単位の中長期的な改革を目指すならBPR。
- コストとROI:初期投資を抑えて変動費化したいならBPO、大きな初期投資をして長期的に高いROIを狙うならBPR。
- リスク許容度:既存業務への影響を最小限にしたいならBPO、大きな変革のリスクを取ってでも差別化を図りたいならBPR。
BPOとBPRを連携させる戦略的アプローチ
これらは二者択一ではなく、組み合わせて活用することで効果を最大化できます。
- BPR推進のためのBPO活用:BPRを開始する前に定型業務をBPOに切り出し、社内の貴重なリソースをBPRプロジェクトに集中させるアプローチです。
- BPR後の新プロセスをBPOで安定運用する:BPRで最適化された新しい業務プロセスのうち、継続的な改善が必要な業務の運用をBPOベンダーに委託し、コスト効率と専門性を両立させるアプローチです。
業務改革を成功させるための具体的な進め方
BPO導入の4ステップ
- 課題整理と対象業務の選定:目的を具体化し、KPIを設定します。「コア業務」と「ノンコア業務」を分類し、BPOの対象とする業務を選定します。
- ベンダー選定と要件定義:RFP(提案依頼書)を作成し、実績、専門性、セキュリティ体制、柔軟性を総合的に評価してベンダーを選定します。契約時にはSLA(サービスレベル合意書)を詳細に定義します。
- 業務の引き継ぎと体制構築:マニュアルを整備し、一定期間の並行稼働(トライアル)を経て業務を移行します。社内の管理体制やエスカレーションフローも構築します。
- 運用開始と効果測定:定期的にKPIをモニタリングし、ベンダーと連携して継続的な業務改善(PDCAサイクル)を行います。
BPR推進の5ステップ
- 目的と範囲の明確化:経営戦略と連動した目標数値を掲げ、全社的か特定部門かなどの対象範囲を決定します。
- 現状業務の分析と課題特定:現状の業務プロセス(As-Isモデル)を可視化し、ヒアリングやデータ分析を通じて構造的な課題を洗い出します。
- 新業務プロセスの設計:ゼロベースで理想的な業務プロセス(To-Beモデル)を設計します。プロセスの簡素化、統合、自動化などを検討します。
- 実行計画の策定と試験導入:詳細なスケジュールを作成し、まずは特定の部門で試験導入(パイロットテスト)を行い、有効性や問題点を検証します。
- 全社展開と継続的な改善:十分な研修やマニュアル整備を行った上で全社に展開します。導入後も効果を定期的にモニタリングし、継続的に改善します。
BPO・BPRを成功に導く3つのポイント
ポイント1:経営層と現場を巻き込む合意形成
経営層に対してはROIや戦略的意義を提示し、「トップダウンのコミットメント」を取り付けます。同時に、現場の従業員に対しては改革の目的やメリットを丁寧に説明し、不安を取り除きます。意見を吸い上げるボトムアップのアプローチも取り入れ、現場の当事者意識を高めることが重要です。
ポイント2:明確なKPI設定と効果の可視化
漠然とした目標ではなく、「コスト削減額」「処理時間の短縮率」「リードタイムの短縮」など、具体的なKPIを設定します。これを定期的に測定・報告することで、関係者全員が納得感を持って改革を進めることができます。
ポイント3:信頼できるパートナー(ベンダー)の選定
外部パートナー選びはプロジェクトの成否を大きく左右します。専門知識や実績、セキュリティ対策はもちろんのこと、対等な立場で意見を交わし、長期的な視点で協力できる「真のパートナー」を選定することが成功の鍵です。
【補足】混同しやすい関連用語との違い
BPO/BPRとRPAの違い
- RPA(Robotic Process Automation)は、PC上の定型業務をソフトウェアロボットが自動化する「ツール・技術」です。
- これに対し、BPOは業務の外部委託という「戦略」、BPRはプロセス全体の「再設計の手法」です。BPRで再設計したプロセスの自動化にRPAを用いたり、BPOベンダーが業務効率化のためにRPAを活用したりと、連携することで相乗効果を生み出します。
BPRとDX(デジタルトランスフォーメーション)の関係
- DXは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化までを変革し、競争優位性を確立する取り組みです。
- 古い業務プロセスを残したままデジタルツールを導入しても効果は薄いため、DXの成功にはBPRによるプロセスの抜本的な刷新が不可欠です。BPRは、DXという大きな目標を達成するための重要な手段の一つと言えます。
まとめ
BPOは特定のノンコア業務を委託して効率化を図る戦略であり、BPRは業務プロセスをゼロベースで見直して抜本的な改革を目指す手法です。
特定の業務の効率化が課題であればBPOが適しており、企業全体の構造的課題の解決やビジネスモデル変革を目指すならBPRが有効です。両者を戦略的に組み合わせることで、改革の効果を最大化することも可能です。
明確な目的設定とKPIの可視化、経営層と現場の合意形成、そして信頼できるパートナーの選定を押さえることで、業務改革は企業の持続的な成長を支える強力な推進力となるでしょう。
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