DXにおけるERPの役割とは?DXを推進すべき理由も詳しく解説

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  • ビジネスにおけるDXは、データや技術を活用してビジネスモデルを変革することである
  • DXを進めるにあたり、ERPを導入することで業務の効率化や標準化を実現できる
  • DX推進の際は、内部統制の強化やテレワークに対応できるクラウドERP導入がおすすめ

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略であり、IT技術を用いてビジネスに変革を起こすことを言います。企業でDXを推進することで、2025年の崖への対策に繋がります。本記事では、DXの概要やERPがDXにおいて有効である理由などを解説しています。

目次

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  1. ビジネスにおけるDXとは
  2. 企業がDXを推進すべき理由
  3. DXにおけるERPの役割
  4. DXの推進にはクラウドERPがおすすめ
  5. ERPを活用してDXを進める際の注意点
  6. まとめ

ビジネスにおけるDXとは

DX(Digital Transformation)は、経済産業省が推進していることから、多くの企業が注目しています。DXの定義は、2018年に経済産業省が示した「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」に示されています。

それを簡単に要約すると、DXとは「デジタル技術を手段としてビジネスに変革を起こし、企業の競争力を高めること」となります。IT化が業務プロセスなどの効率化を目的とするのに対し、DXはそれに加えてビジネスの変革と企業競争力の強化が最終目的です。

経済産業省では2018年9月に出した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」から、2022年の出された「DXレポート2.2(概要)」まで4つのDXレポートでDXの現状や課題など提示しています。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省

参考:DXレポート2.2(概要)|経済産業省

DXの3段階

最終的にはビジネスの変革と企業競争力を高めることがDXの目的ですが、それの実現のために3つの段階があることを、2020年に経済産業省がまとめたDXレポート2が示しています。ここでは、その3つの段階について解説します。

参考:DXレポート2 中間取りまとめ(概要)|経済産業省

1. デジタイゼーション

デジタイゼーション(Digitization)とは、アナログデータをデジタルデータ化してコンピューターで扱えるようにすることです。デジタイゼーションは、現在紙媒体で業務処理を行っている企業がDX化を図るための第一段階として取り組むべきステップです。

請求書をエクセルなどの表計算ソフトを使って作成したり、領収書をスキャナーで取り込んで管理したりするのもデジタイゼーションの1つです。デジタイゼーションは、業務効率化やコスト削減に取り組む段階です。

2. デジタライゼーション

デジタライゼーション(Digitalization)は、特定の業務プロセスをデジタル化して業務の効率化を図ることです。この段階ではシステムツールの役割が大きく、今までの手入力を自動化して効率化とヒューマンエラーの防止につなげます。

そして、デジタライゼーションによってコンピューターにできる作業はコンピューターに任せ、そこで生まれた時間を分析や経営戦略の立案などの付加価値を生み出す時間に当てられます。この段階は個別業務のシステム化で、企業全体のシステム化には至っていません。

3. デジタルトランスフォーメーション

企業のDX化の最終段階であるデジタルトランスフォーメーションは、企業全体の業務プロセスのデジタル化で、ビジネスの変革を図る段階です。この段階では、企業内すべての業務プロセスのデジタル化・自動化を進め、データが一元管理できる状態を構築していきます。

これにより業務の効率化がさらに進み、生み出された時間とデータの一元管理で詳細なデータ分析が可能となり、DXの最終目的であるビジネスの変革と企業競争力の強化を図ります

企業がDXを推進すべき理由

日本の人口減少が進む中、企業の世界競争力を高めるには、DXの推進が欠かせません。ここでは、企業がDXを推進しなければならない理由を下の3つの観点から解説します。

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「2025年の崖」への対応

2025年の崖とは、2018年に経済産業省が発表したDXレポートで使われた言葉です。2025年の崖を要約すると、「現在多くの企業が運用するシステムは2025~2030年にかけてレガシー化が進み、刷新できないとDXが後退し世界競争力が弱まる」ということになります。

そして、2022年7月に発表された「DXレポート2.2」では、2025年の崖問題の克服状況は順調ではないとの指摘もありますが、自己診断に取り組む企業は増え、先行企業の割合も増加し続けている、としています。

2025年の崖への対策としては、経済産業省のDX推進指標でのDX化推進状況の把握や、老朽化したITシステムの刷新、正しくDXの推進を図るための人材育成などが考えられます。2025年はもう間近に迫っており、自社の現状を把握し早急な対応が必要です。

参考:DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜|経済産業省

働き方改革への対応

2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され、労働基準法を始めとする関連法案が順次改正されました。働き方改革は、現在では大企業ばかりでなく中小企業にとっても大きな経営課題となっています。

ビジネスの変革の一つとして働き方の変革があると捉えれば、DXで働き方改革の実現が可能になります。たとえば、業務の効率化を図ることで、業務時間を短縮して従業員の残業時間を減らし、テレワークの推進が図れます。また、労働力不足の対応にもなります。

参考:働き方改革関連法等について|厚生労働省

生産性の向上

DX推進における最大のメリットは、生産性の向上だといわれています。DXによる業務フローのデジタル化は、一つひとつの業務フローがスピード感を持って進められるようになり、各業務のPDCAサイクルを早く回すことができるようになります。

その結果として、企業の最大目標である生産性の向上が期待できます。また、データが一元化されるため、より多くのデータを集めてより詳細なデータ分析が可能となり、リアルタイムでの経営戦略が立てられることも生産性の向上につながっています。

DXにおけるERPの役割

ERPシステムの利用は、DXの最終段階であるデジタルトランスフォーメーションの実現に効果的です。ここでは、DXにおけるERPの役割を解説していきます。

ERPとは

ERPは「Enterprise Resources Planning」の略で、ヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源を一元的に管理し効率的に活用するという考え方です。それを実現するのがERPシステムで、各部門の基幹システムをすべて統合して一元管理できるシステムです。

以前は自社用にカスタマイズしたERPシステムが多く、導入に多額の費用が必要でしたが、近年では一般的仕様で作成された低コストで導入できるERPパッケージの開発もあり、中小企業でも導入しやすくなっています

DXを進める際にERPを導入する効果

DXの3段階に当てはめれば、基幹システムの活用は第2段階のデジタイゼーションの段階にあたり、ERPシステムの活用は最終段階であるデジタルトランスフォーメーションの始まりの段階にあたります。ここでは、DXを進める際のERPの効果について解説します。

業務の標準化

業務標準化とは、企業内で作業方法を統一し、従業員すべてが同じルールで業務が行えるようにすることです。基幹システムでは各部署で利用するシステムが異なるため、部署ごとに作業方法が異なる場合があり、部署異動の際には新しい作業方法を覚える必要があります。

しかし、ERPシステムではすべての部署で同じシステムを使うため、どこの部署でも作業方法は基本同じです。それにより、誰でも同じ手順で作業が進められ、スムーズな業務とヒューマンエラーの減少が期待できます。

業務の効率化

業務の効率化の遅れた企業では、各部署でよく同じようなデータを入力していたり、外部データと連携が図れずに手入力に頼っていたりする部分が多く見られます。しかし、ERPシステムは他部署のデータを利用でき、自動化される業務も多くあります

また、法改正で電子帳簿や電子契約の要件緩和も進んだため、ERPシステムを利用したペーパーレス化を推進すれば、帳簿整理や帳簿管理の業務も軽減され、大幅な業務の効率化と働き方改革を進められます。

経営判断の迅速化

社会の変化が激しい現代社会では、DXの目標である企業競争力の強化と迅速な経営判断は密接な関係を持っています。そして、経営判断には幅広い視点からのデータ収集とリアルタイムな現状把握が欠かせません。

データが分散していると、データ収集に時間がかかります。しかし、ERPシステムではすべてのデータが一元管理され、いつでも利用できる状態で保管されています。また、各部署で入力されたデータはすぐに反映されるため、リアルタイムなデータを確認できます。

幅広くリアルタイムなデータでの分析結果は、説得力があり信頼性が高いために、正しい経営判断をするのに時間を要しません。すなわち、ERPシステムの導入は、迅速なデータ取集と迅速な分析で迅速な経営判断を可能にします

DXの推進にはクラウドERPがおすすめ

クラウドERPは、自社にシステムやデータを置かず、EPRシステムを提供するベンダーに置いてインターネット上で運用する導入形態です。導入費用が抑えられ、システム管理はベンダーが行うために手軽に導入できる方法として、現在主流となっている導入方法です。

クラウドERPの中には、すでにプログラム化されているシステムをパッケージにしたERPパッケージもあり、さらにランニングコストが抑えられ、DX化が遅れている中小企業でも比較的導入しやすくなっています。ここではクラウドERPのメリットを解説します。

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バックオフィス業務のペーパーレス化

企業の最前線の業務を支える、経理・会計・総務・庶務などのバックオフィス業務もDXにとって重要な部門です。今までのバックオフィス業務は紙媒体での業務が多かったですが、これらのペーパーレス化でDXを進め、バックオフィス業務の変革が期待されます

バックオフィス業務では、法的に保管義務がある帳簿が多くあります。しかし、2022年1月に改正・施行された電子帳簿保存法では、各帳簿の保管要件が大幅に緩和され、今まで紙媒体で保管していた帳簿類を、電子帳簿にするハードルが低くなりました

帳簿の電子化で、各帳簿の綴り・保管庫・保管場所が必要なくなり、保管整理業務の削減と保管のための備品や消耗品にかかるコストの削減が図れます。また、電子契約も法改正で行いやすくなり、さらにペーパーレス化とDX化の環境が整備されてきています。

参考:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁

内部統制の強化

会社法や金融商品取引法などで、上場企業や取締役会のある企業の内部統制の整備は義務となっています。しかし、企業の危機管理として、整備義務のない企業でも内部統制の強化は必要です。EPRシステムの導入は、そのような内部統制の強化につながります。

ERPシステムでは、データ変更のログ記録を残すなど、改ざん・なりすまし・情報喪失・情報漏えいなどに対して、内部統制のためのさまざまな対策が施されています。しかし、クラウドERPの場合、それらの対策はベンダーに依存するため、事前の確認が重要です。

常に最新のシステムが利用可能

自社のサーバー上にあるシステムであれば、OSやシステムのバージョンアップは自社での対応が必要です。しかし、クラウドERPでは、それらの作業を含めてシステムのメンテナンスはベンダーが行います。したがって、企業は常に最新のシステムでの利用が可能です。

また、さまざまな法改正により、システムの仕様を変更しなければならない場合もあります。それら変更も多くのクラウドERPでは、ベンダーが無料で行うため、企業側は法改正を理解するだけで対応できます。

ERPを活用してDXを進める際の注意点

ERPの導入はDXを推進しますが、ただ導入するだけではDX化は実現しません。ここでは、ERPを活用してDXを推進する際の注意点を2つ解説します。

現状を正しく把握する

DXには「DX推進指標」が定義されており、DXの成熟度ごとに0〜5の合計6レベルに分けられています。レベル0はDXに無関心、もしくは関心はあるが行動に移せていない状態を指し、最高のレベル5はグローバル市場において優位性を確立している状態のことです。

もちろんレベル5を目指すべきではありますが、レベル0の企業はまずレベル1に到達することを目標とし、少しずつ確実にDXを推進していくべきといえます。

そのためには、現状自社がどのレベルに該当するかを正確に把握し、どのようなERPを導入すればDXを推進できるのかを検討する必要があります。

参考:DX推進指標|経済産業省

人材の育成に注力する

ERPの導入はあらゆる業務に影響を与えるため、人材の育成が欠かせません。業務の効率化を図る目的でERPを導入する場合は、技術を持ち合わせた人員を補充すれば事足ります。

しかし、DXの推進は技術だけでなく経営的視点と現場への深い理解をもった人材が必要になります。

現場職員は現状の問題点は把握できているものの経営的視点が足りず、成果やコストに対する意識が欠けることが多く、経営者は現場への理解が足りないことが多いです。そのため、どちらも持ち合わせた人材が必要であり、育成が欠かせません。

まとめ

ビジネスにおけるDXでは、電子データを活用してビジネスを変革し、企業競争力を高めることを目標にしています。したがって、DX化にとってIT化による業務の効率化は手段であり、目標ではないことを常に念頭に置いてDX化を推進しなくてはいけません。

企業のDX化推進には、ERPシステムの導入が有効で、業務の自動化・効率化や標準化が図れ、ビジネスの変革実現の一助とすることが期待されています。特に中小企業では、内部統制の強化やテレワークに対応できるクラウドERPの導入がおすすめです。

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