固定資産台帳とは?記載する項目や注意したいポイントも解説

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  • 固定資産台帳とは、固定資産取得時の状況や減価償却の履歴などを管理するための帳簿
  • 固定資産台帳には、資産の名称・種類・取得年月日・耐用年数などを記載する
  • 固定資産台帳は誰が見てもわかるように記録し、購入時の資料も一緒に保管する

固定資産台帳とは、固定資産取得時の状況や減価償却の履歴などを記録・管理するための帳簿のことです。税務申告や決算書の作成などに必要となるため、企業にとって非常に重要な帳簿です。この記事では、固定資産台帳に記載する項目や作成する際のポイントを詳しく解説します。

目次

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  1. 固定資産台帳とは
  2. 固定資産台帳に記載する項目
  3. 固定資産台帳を作成する際のポイント
  4. 固定資産管理システムで効率化
  5. まとめ

固定資産台帳とは

固定資産台帳とは、固定資産取得時の状況や減価償却の履歴や、使用しなくなった固定資産の破棄・譲渡などを詳細に記録し管理するための帳簿です。固定資産台帳は税務申告や決算書の作成時に必要となり、企業にとって非常に重要な帳簿です。

固定資産台帳は国税関係帳簿の1つで、税法で7年・会社法で10年の保存が定められていますが、保存期間の長い10年が優先となるので注意が必要です。固定資産台帳は、電子データでの保存が認められています。

電子データで保存する場合は、固定資産管理システムを利用すると効率的に作業が行えます。しかし、固定資産管理システムを利用しても専門用語が多く、初めて固定資産台帳を記入する際は難しく感じる可能性があります。

そこで本記事では、固定資産台帳に記載する項目などをわかりやすく解説するとともに、作成する際のポイントも詳しく解説していきます。記載項目の解説の前に、まずは固定資産台帳の記入に必要な知識として「固定資産」と「減価償却」について解説します。

参考:資産評価及び固定資産台帳整備の手引き|総務省

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「固定資産」と「減価償却」について

  1. 固定資産とは
  2. 減価償却とは

固定資産とは

固定資産とは、企業が自社で使うために1年以上保有する資産のことをいいます。 使用を目的とした保有でなくてはならず、販売目的で保有しているものは固定資産に含みません。また、1商品の取得価額が10万円未満の場合は、消耗品として取り扱います。

固定資産は、有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つに分類されます。有形固定資産は形あるもので、機械設備や建物・土地・車・コピー機・デスクなどが該当します。無形固定資産は形がないもので、ソフトウェア・特許権・商標権などが含まれます。

投資その他の資産は企業が1年以上投資している資産のことで、投資有価証券・長期預金・長期前払費用・長期貸付金・破産債権など事業に直接使用されていないものが該当します。

参考:No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示 | 国税庁

減価償却とは

企業が保有する建物や車両・機械・器具備品などは、年数が経過するに従い価値が減少していきます。そのような価値が減少する資産を減価償却資産と呼び、取得時に全額を計上するのでなく、複数年に渡って費用計上します。

したがって、減価償却資産の計上には、当該年度の価値の減少額(減価償却額)を算出し、帳簿価額の引下げを行い、減少額を費用として計上する手続きが必要になります。この手続きを、減価償却と呼びます。

減価償却の期間はその資産の耐用年数で決まり、国税庁や各自治体から減価償却資産の耐用年数表が示されています。また、土地や借地権・無形固定資産などは減価償却資産ではないため、減価償却の対象にはなりません

ただし、減価償却は個人事業主の場合は所得税法で義務付けられていますが、法人は任意とされており、減価償却を行わない年度がある法人もあります。

20万円未満の減価償却資産は、取得価額の3分の1を3年間で償却することも可能であり、青色申告をする中小企業や個人事業主には、30万円未満の減価償却資産を取得年度に全額償却する特例があります。ただし、特例の適用には条件があるため、確認が必要です。

参考:No.2100 減価償却のあらまし | 国税庁

固定資産台帳に記載する項目

固定資産台帳には定型のものはなく、記入すべき項目に特に決まりはありません。ここでは、税務申告や決算書の作成のことも考慮した、一般的な項目を解説します。

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資産の名称・番号

資産の名称と番号から1つの現物が判定できるようにしておくと固定資産の管理がしやすいです。資産番号には英数字と記号なども使えるので、A-25-555-3など管理しやすい番号を付与します。

特に同じ名称の機器を複数所有する場合に注意が必要で、通し番号を付加するなどして同じ物であることがわかるようにしておきます。そして、現物に資産番号や名称などが記載された管理シールを貼っておくと棚卸しの際の現物照合が容易になります。

資産の種類・区分

資産の種類や区分には特に決まりはありませんが、管理しやすくしておくことが大切です。基本的には種類を償却資産申告書(償却資産課税台帳)に合わせてまとめることが多いです。

また、区分を貸借対照表の固定資産の科目に合わせて区分する方法を採用しているケースも多く見られます。

数量

基本的に資産の名称・番号と現物を1対1対応させるため、数値は基本「1」です。しかし、同じパソコンを複数購入した場合などは、まとめて名称・番号を登録して個数を記入しても構いません。

基本は1ではあるものの、自社にとっての管理しやすさを優先しましょう。数量のルールが定まっていないと棚卸しの際に混乱が生じるため、自社のルールを決める必要があります。

取得年月日・供用年月日

取得年月日は文字通り固定資産を取得した年月日で、供用年月日は本来の目的で使い始めた年月日で減価償却の開始日となります。取得した後、搬入・試運転などが行う必要がある場合は2つが異なる年月日となります。

また、固定資産を自社で制作した場合は、固定資産の完成がわかる客観的資料を固定資産台帳に添付します。内部検収記録などがよく使われます。

参考:No.5400-2 事業の用に供した日|国税庁

耐用年数

会計上は個々の耐用年数の定めはないため、その固定資産をさまざまな要因から耐用年数を見積もる必要があります。同じ機械でも使用頻度によって耐用年数が変動し、各企業で耐用年数が異なっていても問題はありません。

しかし、税法では税金の公平性を保つために耐用年数が決められています。したがって、同じ固定資産で2つの耐用年数を持つ煩雑さを防ぐために、固定資産台帳の耐用年数も国税庁の耐用年数表に沿って記入する場合が多いです。

参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

償却方法

償却方法に定額法・定率法・生産高比例法・リース機関定額法など、さまざまな方法があります。その中で税法に定められている法定償却方法は定額法と定率法で、法定償却方法以外で行う場合は、税務署への届出が必要になります。

法人であれば建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェア以外は原則定率法個人事業者であれば原則全て定額法で行うのが法定償却方法です。ここでは、定額法と定率法について解説します。

参考:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

定額法

定額法は毎年同じ額で償却していく方法で、平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産の場合は、「減価償却額=取得価額×定額法の償却率」で計算します。しかし、減価償却額は最終的に備忘価額として1円残さなければならないと定められています。

たとえば、100万円で耐用年数5年の機械を取得した場合の償却率は0.2で、減価償却額は100万円×0.2=20万円となります。そこで、5年間20万円を減額すると、5年目の帳簿価格が0円となります。そこで、5年目の減価償却額を199,999円として備忘価額1円を残します。

平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産の場合は旧定額法が適用されます。旧定額法では「減価償却=取得価額×90%×旧定額法の償却率」で計算されます。ただし、無形固定資産は90%を乗じる必要はありません。

個人事業主は基本的には定額法での計算が求められ、建物・建物付属設備・構築物・無形固定資産は個人・法人を問わず定額法でなくてはなりません。

参考:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁

旧定額法

平成19年3月31日より前に取得した固定資産に使用する償却方法で、条件に該当するものに関しては現在でも旧定額法で計算します。

旧定額法では「減価償却=取得価額×90%×旧定額法の償却率」で計算されます。ただし、無形固定資産は90%を乗じる必要はありません。

参考:No.2105 旧定額法と旧定率法による減価償却(平成19年3月31日以前に取得した場合)

定率法

定率法は毎年一定の割合で償却していく方法で、「減価償却額=未償却残高×定率法の償却率」で算出します。したがって、減価償却の額は年々減少していきます。しかし、この計算方法ではいつになっても償却後帳簿額は1円になりません。

そこで、定額法では定率法の償却率のほかに保証率と改定償却率が定められ、減価償却が償却保証額(取得価額×保証率)を下回る年度から、その年度の未償却残高を改定取得価格とみなして、「減価償却額=改定取得価格×改定償却率」で計算します。

令和4年に100万円で耐用年数5年の減価償却資産を購入した場合、定率法の償却率は0.4保証率は0.108改定償却率は0.5%と定められ、改定保証額は100万円×0.108=10.8万円となります。それを基に計算すると、1年目の減価償却額は100万円×0.4=40万円です。

そして、2年目の未償却残高は40万円差し引いた60万円となり、減価償却額は60万円×0.4=24万円です。この方法で計算していくと、4年目の減価償却額が改定保証額10.8万円を下回るため、4年目の未償却残高を改定取得価格とし計算式を変えます

4年目の改定取得価格(未償却残高)は21.6万円で、減価償却額は21.6万円×0.5=10.8万円となります。5年目も同様に計算すると償却後帳簿価格が0円になってしまいますが1円残さなければならないため、減価償却額を1,079,999円とします。

なお、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産は旧定率法が適用されます。また平成19年4月1日〜平成24年3月31日までに取得したものは250%償却法、平成24年4月1日以降に取得したものは200%償却法が適用されます。

定率法を用いるのは、法人の機械装置・車両運搬具・工具器具備品などのほかに、個人事業主で法定償却する場合の機械装置・工具器具備品・車両運搬具などです。

参考:No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)|国税庁

参考:No.2105 旧定額法と旧定率法による減価償却(平成19年3月31日以前に取得した場合)

旧定率法

旧定額法同様、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産には旧定率法が適用されます。ただし、定率法はさらに改定されており、平成19年4月1日〜平成24年3月31日までに取得したものは250%、平成24年4月1日以降に取得したものは200%で計算します。

一般的に「旧定率法」は旧定額法とセットで平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産の償却方法を指しますが、定額法のような二分化ではなく三分化である点に注意が必要です。旧定率法は、「減価償却額=未償却残高×旧定率法の償却率」で計算します。

参考:No.2105 旧定額法と旧定率法による減価償却(平成19年3月31日以前に取得した場合)

償却率

償却率は、減価償却資産の耐用年数によって定められています。定額法の場合は「耐用年数分の1」で求められます。しかし、実際には国税庁の「減価償却資産の償却率等表」から調べて記入します。

価償却資産の償却率等表では、定額法・定率法・旧定額法・旧定率法・250%定率法・200%定率法の償却率が該当する取得期間も示した見やすい一覧表になっています。

参考:減価償却資産の償却率等表|国税庁

取得価格

取得価格には固定資産を購入した価格に、輸送にかかった費用や輸送保険料・手数料・関税を加えた額を記入します。もちろん、これら以外にもその固定資産を取得するためにかかった費用であれば、取得価格に含まれます。

減価償却額

償却方法の定額法・定率法で定められた計算式で求められた減価償却額を記入します。定額法の場合は基本「取得金額×償却率」、定率法の場合は「未償却残高×償却率」減価償却が償却保証額を下回る場合は基本「改定取得価格×改定償却率」で計算できます。

前述の通り資産を取得した時期によって計算方法が異なるため、適切な方法で計算して記入しましょう。

帳簿価額

帳簿価格は、未償却の残高を指します。前年の未償却残高から減価償却累計額を差し引いたものが帳簿価額です。

新たに取得した資産の場合は、取得価額から減価償却累計額を差し引いた額が帳簿価額となります。不動産などの減価償却資産でないものは、取得価格が毎年の帳簿価格になります。

固定資産台帳を作成する際のポイント

固定資産台帳は税務申告や決算書の作成に必要な帳簿ですが、自社の固定資産の有効活用や適正管理にも活用できる帳簿にすることが大切です。そのために下の3つのポイントを抑えて作成するのがおすすめです。

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誰が見てもわかるよう工夫する

担当者が交代しても、固定資産台帳を見れば設置場所や品名がわかるように記録することが大切です。同時に同じ製品を複数取得し異なる場所で使用する場合は、台帳と1対1になるようにすると、管理がしやすいです。

現担当者しかわからないような属人化が進んだ管理では、急な退職や異動があった際に大きな混乱が起きるため、誰が見てもわかるという点を意識しましょう。

購入した経緯がわかる資料も残しておく

固定資産を除却・売却する際に、帳簿価格の再計算が必要になる場合があるため、購入に至った経緯などの情報を残しておくのも重要です。また、新規購入の際の検討資料として使われる場合も多く、購入した際の見積書や稟議書なども保管しておくのがおすすめです。

特に新たな資産の購入を検討する際は過去の見積書などが非常に役立つため、適切に保管しましょう。

実際の資産と台帳の内容を定期的に照合する

実際にある固定資産が固定資産台帳に記入されていなかったり、固定資産台帳にある固定資産の現物がなかったりしてはいけません。最低でも年に1回は、実際の資産と台帳の資産の照合を行う必要があります

そのために、有形資産には資産の名称と番号を記したシールの添付がおすすめです。現物照合することで、台帳への記入漏れや除却漏れの早期発見ができます。除却漏れの発見は節税対策にもつながります。また、紛失や盗難の発見も可能です。

固定資産管理システムで効率化

固定資産台帳の作成には、減価償却の計算や資産の仕訳など複雑な作業が伴います。その上、償却方法の計算は取得年月日によっても異なり、誤入力も増えやすいです。しかし、固定資産管理システムの利用で、それらの問題の解決ができます。

固定資産管理システムは、初めから減価償却資産の耐用年数や償却率などのデータを持ち、固定資産データから自動的に減価償却額を計算してくれます。そのため、業務の効率化とともに、ヒューマンエラーの防止にもつながり、正しい台帳の作成が可能です。

固定資産管理システムでは面倒なリース資産管理も行えます。また、企業で現在利用しているシステムとの連携を図れば、さらに多くの業務の効率化も可能になります。

固定資産管理システムとは?機能やメリット、選び方について解説!

固定資産管理システムは、企業が保有する固定資産の管理や会計上の処理などを行うためのシステムです。企業において、この固定資産の管理は欠かせない業務のひとつです。この記事では、固定資産管理システムの機能やメリット、選び方などを解説します。

まとめ

固定資産台帳とは、固定資産取得時の状況や減価償却の履歴などを記録・管理するための帳簿で、税務申告や決算書の作成などに必要な大変な帳簿です。固定資産台帳に定型はありませんが、資産の名称・種類・取得年月日・耐用年数・減価償却額などを記載していきます。

しかし、減価償却額の計算は複雑で手間がかかります。その上、税法の改正があれば、それを理解して計算方法を変更しなくてはならない場合もあります。そのような手間を省き、業務効率の向上を実現できる、固定資産管理システムの利用がおすすめです。

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