固定資産とは?種類や流動資産との違い、減価償却についても解説

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  • 固定資産とは、企業が長期間保有する資産や1年を超えて現金化・費用化される資産
  • 固定資産は、有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つに分類される
  • 固定資産は取得金額によって、一括償却資産もしくは少額減価償却資産として計上する

固定資産とは、企業が長期間保有する資産および1年を超えて現金化・費用化される資産のことです。固定資産は種類や取得金額によって会計処理が変わるため、注意が必要です。本記事では、固定資産の種類や流動資産との違い、減価償却の計算方法、税金などについて解説します。

目次

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  1. 固定資産とは
  2. 固定資産の種類
  3. 固定資産の減価償却とは
  4. 償却資産の対象となるものの具体例
  5. 減価償却の計算方法
  6. 固定資産に課される税金
  7. 固定資産管理システムで業務効率化
  8. まとめ

固定資産とは

固定資産とは、主に企業が長期間に渡って保有する、流通や販売を目的としていない資産を指します。

具体的には、土地・建物・機械設備といった継続的に使用するものであり、その他の1年を超えて現金化・費用化される資産も含みます。また、一般的にソフトウェアや電話加入権など、法令で定められるものが固定資産とみなされます。

各企業の資産や負債などの財政状況は、貸借対照表でわかりやすく整理することができます。貸借対照表の左の欄には固定資産をはじめとした資産、右の欄には長期借入金などの負債を記載します。

参考:第1款 固定資産の取得価額|国税庁

固定資産管理の必要性

固定資産には、保有する者が毎年納めなければならない税金が関わってくるため、適切に管理をする必要があります。そして、管理において処分をしたはずの資産が記録として残っていたり、余分に登録していたりすると過剰な税金を支払うことになります。

また、固定資産は企業にとって重要な資産であるため、盗難や紛失などの被害を抑えながら管理していくことが求められます。さまざまなリスクを回避するためにも、常に正確かつ適切な固定資産管理が重要です。

流動資産との違い

長期間に渡る保有と継続的な使用を目的とした固定資産において、現金預金売掛金商品の在庫など、現金化につながりやすい流動性の高い資産を流動資産といいます。

また、流動資産は2つの基準によって固定資産と区別されています。1つは「1年基準(ワン・イヤー・ルール)」で、もう1つは「正常営業循環基準」です。

1年基準は、対象の資産が1年以内に現金化できるか否かを基準としています。基本的に、1年以内に現金化が可能なものを流動資産、そうでないものを固定資産と定めています。

ただし、流動資産の中には、商品・サービス内容によって販売開始から現金回収までが1年を超えるものもあります。その際に活用するのが、正常営業循環基準の考え方です。

正常営業循環基準とは、通常の仕入れ・販売による債権・債務などに焦点を当てたもので、これに該当する場合は現金回収期間に関係なく流動資産とみなされます。

参考:No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示|国税庁

固定資産の種類

固定資産は、有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つの種類に分けられます。それぞれについて、詳しく解説します。

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有形固定資産

有形固定資産とは、土地や建物などの形がある固有資産を指します。そして、各企業で所有する自動車・パソコン・機械設備なども含まれます。ただし、間借りをしているオフィスやリース中の自動車など、所有物でないものは固定資産には該当しません。

有形固定資産は、価償却資産と非減価償却資産とに分けられます。減価償却資産とは、経年による自然劣化を含め、使用を続けるうちに価値が下がっていくものを指します。一般に、建物やそれに附属する設備、機械類・車両などが該当します。

一方、土地を含めた骨董品など、時を経ても価値が減らない資産を非減価償却資産といいます。

種類内容
減価償却資産建物と附属設備、機械類、車両など
非減価償却資産土地、骨董品など

無形固定資産

無形固定資産とは、主に各企業が所有している特許や商標権などを指します。これらの権利は、形としての実体はないものの、利益を得られる資産として扱われます。また、無形固定資産も有形固定資産と同様に、減価償却資産と非減価償却資産に分けることができます。

特許や商標権は減価償却資産に該当し、その期間は特許が8年、商標権は10年が目安とされています。対して、電話加入権などは非減価償却資産に分類されます。

種類内容
減価償却資産特許、商標権など
非減価償却資産電話加入権など

投資その他の資産

固定資産には、有形固定資産・無形固定資産のいずれにも該当しない、投資その他の資産に分類されるものがあります。たとえば、投資有価証券や関連会社の株式、貸付金などです。ただし、短期での売買を目的としないものに限ります。

固定資産の減価償却とは

減価償却とは、建物や設備など固定資産の取得にかかった金額を、使用期間に合わせて配分するもので、各企業での資産購入費用をもとに計算されます。

なぜ使用期間に合わせて配分するかというと、使用していくうちに価値が下がっていく資産類を購入した年に全額計上すると、収支の関係が正しく反映されなくなってしまうからです。

また、減価償却を計上するタイミングは購入時ではなく、実際にその資産の使用を開始した時からとするのが一般的です。計上の際には固定資産の価値の減価を算出し、帳簿から差し引きします。

勘定科目は、固定資産を購入した際の金額(取得価額)によって、一括償却資産と少額減価償却資産に分かれます。以下、それぞれの特徴について解説します。

参考:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

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固定資産の減価償却とは

  1. 一括償却資産
  2. 少額減価償却資産

一括償却資産

1年を超えて使用する固定資産のうち、10万円以上・20万円未満のものは、一括償却資産として扱うことができます。個別での減価償却を行わず、使用開始時期から3年に渡って、固定資産の取得価額の3分の1ずつを必要経費として計上することが可能です。

また、購入額が10万円未満のものや使用期間が1年未満のものについては、固定資産(償却資産)に含まれないため、消耗品費として計上します。

少額減価償却資産

少額減価償却資産は、主に固定資産の取得価額が10万円以上30万円未満のものに適応されます。これは青色申告をしている中小企業を対象に特例として出されたもので、一定の条件を満たすことで使用年に全額分を償却することができます。

償却資産の対象となるものの具体例

償却資産は企業が所有する固定資産のうち、土地や建物以外のものを指し、具体例としては以下が挙げられます。

  1. パソコンやコピー機などのOA機器
  2. 製造設備や梱包機などの機械設備
  3. 各種備品
  4. 車両や船舶など

耐用年数について

償却資産は会計上、固定資産ごとの耐用年数は定められていないものの、税法上では対象の材質や使用用途によって耐用年数が定められています。

たとえば、建物なら10〜50年程度、車両なら2〜5年といった具合です。会計上もこれに則って減価償却を行うのが一般的とされています。

参考:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

減価償却の計算方法

減価償却を計算するには、「定額法」と「定率法」の2種類があります。それぞれの方法について、詳しく解説します。

参考:No.2106 定額法と定率法による減価償却|国税庁

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減価償却の計算方法

  1. 定額法
  2. 定率法

定額法

定額法は年同じ額を減価償却費として計上する方法です。年間の減価償却費は「取得価額×定額法の償却率で示すことができます。なお、償却率は法令で定められた耐用年数から導き出します。

たとえば、80万円で購入した耐用年数5年の固定資産を償却するには、年間16万円ずつを費用として計上することになります。

定率法

定率法とは、1年目の償却費を最も多く計上し、年が経つごとに償却費を減少させていく計算方法です。経年によって価値が減少していく資産は、初年度に近いほど利用価値が高いという考えから適用されます。

定率法を用いた場合の年間の償却費は、未償却残高×改定償却率で表すことができます。なお、金額が償却保証額未満になった年以降は、改定取得価額×改定償却率で計算し、最後の年まで同じ額ずつ計上する形になります。

固定資産に課される税金

固定資産に課される税金として、主に固定資産税と償却資産税があります。それぞれどのような税金なのかを解説します。

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固定資産に課される税金

  1. 固定資産税
  2. 償却資産税

固定資産税

土地や建物をはじめとした、固定資産に対してかかる税金を固定資産税といいます。固定資産税は、地方税として地方公共団体対象の固定資産が所在する市町村に納めるもので、分類上の国税とは異なります。

固定資産の所有者として、毎年1月1日の時点で固定資産課税台帳に記されている者に納税の義務が発生します。支払い方法は、現金口座振替クレジットカード電子マネースマホ決済アプリなどから選択できます。

ただし、支払い方法によって、領収書の有無や納税証明書の発行期間、決済手数料などに違いがあるため、事前に確認しておくことがおすすめです。

参考:固定資産税(償却資産)|東京都主税局

固定資産税を納付する時期

固定資産税は決められた時期に納付する必要があります。多くの場合で、年内の6月・9月・12月・2月の年4回とされており、適切に支払いを行わなければなりません。

なお、一括払いもできるものの、特別な割引は用意されておらず、原則4回に分けた分割払いとなっています。仮に納付が遅れると、延滞金として最大で14.6%の支払が課されるだけでなく、差し押さえにも発展する恐れがあるため注意が必要です。

償却資産税

償却資産税は固定資産税の一種で、償却資産に対してかかる税金を指します。主に、企業が所有する土地や建物以外の設備・機材などが対象です。償却資産は毎年申告することが義務付けられており、その内容は償却資産台帳へと記載されます。

ただし、ソフトウェアなどの無形固定資産や、すでに自動車税が課せられている車両などは償却資産税の対象外です。

固定資産管理システムで業務効率化

固定資産管理システムは、固定資産管理業務を効率化することを目的としたITツールです。固定資産の計算は複雑な上、都度行われる税制改正によって経理作業が煩雑化する可能性があります。その負担を減らすために、管理システムを導入する企業が増えています。

固定資産管理システムを利用することで、手間と時間のかかる減価償却の計算や税務申告スムーズに行うことができます。また、固定資産の情報を記録していく固定資産台帳において効率的な作成が可能です。

固定資産管理システムとは?機能やメリット、選び方について解説!

固定資産管理システムは、企業が保有する固定資産の管理や会計上の処理などを行うためのシステムです。企業において、この固定資産の管理は欠かせない業務のひとつです。この記事では、固定資産管理システムの機能やメリット、選び方などを解説します。

まとめ

固定資産とは、土地や建物をはじめ企業が長期間にわたって保有する資産、または現金化するまでに1年を超える資産を指します。固定資産は、主に有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産の3つに分類されます。

そして、減価償却資産と非減価償却資産が存在し、減価償却資産はその取得金額によって、一括償却資産または少額減価償却資産の科目で勘定されます。減価償却資産の計算方法には、定額法と定率法の2種類があります。

これらの固定資産に関する業務の効率化を図るため、固定資産管理システムを取り入れる企業が増えています。システムを活用することで、減価償却の計算や税務申告、固定資産台帳の作成などをよりスムーズに行えるようになります。

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