工程管理とは?生産管理との違いや基本的な手順・方法を解説

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  • 工程管理とは、生産計画を実行するために必要な進捗・実績・納期などを管理すること
  • 工程管理では、計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルを回すことが重要になる
  • 工程管理の方法としては、紙面・Excelのほか生産管理システム利用もおすすめ

工程管理とは、生産計画を実行するために必要な進捗・実績・納期などを管理することです。納期や品質を担保し、生産性を向上させるために必要とされています。この記事では、工程管理と生産管理の違いを交え、工程管理の基本的な手順、方法などを詳しく解説します。

目次

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  1. 工程管理とは
  2. 工程管理を行うメリット
  3. 工程管理の基本手順
  4. 工程管理の方法
  5. まとめ

工程管理とは

工程管理とは、製造過程を管理することを指し、生産計画を実行するために必要な進捗や実績・納期を管理して、生産性と品質を向上させることを目的とする手法です。

材料の加工や運搬をはじめとした製造工程のすべてが対象となり、それぞれの工程を最適化して品質を保ちながら、作業時間を短縮したり製造中の在庫に無駄がないよう調整したりするため、作業の効率化やコスト削減といったメリットが得られます。

また、工程管理と似た言葉で「生産管理」があり、管理する業務範囲が異なります。以下では、工程管理の目的や重要性、生産管理との違い、工程管理表の概要などについて、具体的に解説します。

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工程管理の目的

工程管理の目的は、主に「生産性向上」「納期の遵守」「品質の維持」の3つです。工程管理の対象となるすべての製造工程の状況や生産計画をリアルタイムで管理し、常にメンバーと共有しあえる体制を整えることが、工程管理の最適化に繋がります。

具体的には、現状の生産プロセスを可視化して状況を把握することで、課題や改善点を見出せるため、人員の配置や各工程の段取りを最適化でき、生産性の向上が期待されます。また、それにより、安定した生産工程が確立され、納期の遵守にも繋がるでしょう。

さらに、製造工程を分析して品質のばらつきや不良品の原因を特定し、今後の生産計画に活かすことで、製造数が増加した場合にも品質の維持が可能になり、取引先や顧客からの信頼を獲得できます。

工程管理の重要性

製造業において、生産工程に関わる人数・工数・情報が多ければ多いほど、現場の進捗状況が把握できません。管理を適切に行わないと納期や品質の保持が難しい状況になります。そのため、適切な工程管理は製造においては非常に重要なプロセスです。

工程管理が品質を左右するといっても過言ではないでしょう。現場の現況を常に把握し、各工程で発見された課題を迅速に改善していくことが、作業の効率化やリードタイムの短縮にも繋がります。

生産管理との違い

工程管理は、納期や品質を担保として、生産計画を実行する過程を管理することに対し、生産管理は材料の調達から製造過程までの生産計画を基準とした生産業務全般を長期的に管理することを指します。

違いは管理を行う業務範囲で、工程管理は生産管理の一部に位置づけられています。生産管理は受注や仕掛の状況を把握しながら、生産スケジュールを各工程ごとの生産計画に従って管理します。生産管理も工程管理も、製造業にとっては重要なプロセスです。

工程管理表とは

工程管理表とは、生産計画から納品までの生産の各工程を時系列にまとめた表のことです。生産ラインにおける工程管理を行うために工程表を使用すると、全体の進捗が把握しやすくなるメリットがあります。

工程管理表に生産工程を落とし込むことで、納品までの工程が可視化できるため、スケジュール調整などの管理がしやすくなります。工程表にはいくつかの種類があり、Excelなどでも作成が可能です。

以下では、工程管理表に使われる工程表の種類を簡単な表にまとめました。

種類概要
ガントチャート・縦軸で作業名、横軸で進捗状況をまとめる 
・工程全体の進捗状況を表す
バーチャート・縦軸で作業名、横軸で時間をまとめる 
・各作業の予定工数を表す
グラフ式・縦軸で進捗率、横軸で日程をまとめる 
・各作業の進捗状況を表す
ネットワーク式・作業名・施行順序を番号・矢印で表示する 
・複数工程の進捗を表す

工程管理を行うメリット

工程管理は、納期・品質の保持やコスト削減、生産性の向上を目的としており、それによってさまざまなメリットが得られます。以下では、工程管理で得られるメリットについて解説します。

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納期・品質の保持による信頼性の維持

工程管理では、製品を生産するにあたって、納期を遵守することが鉄則です。また、納品する製品は顧客が満足する品質である必要があります。納期を守るためには、生産計画を立て、計画通りのスケジュール・工程で進めることが重要です。

しかし、生産過程でトラブルが発生し、計画通りに進められないケースも少なくありません。工程管理は、そういったトラブルが発生しても、状況に合わせて人員配置や工程の段取りを最適化し、納期までの過程を計画的に進められます。

また、常時適切な工程を経ることで、製品の品質も保持することが可能です。これにより、品質が保たれた製品を期日通りに納品することが可能になり、取引先や顧客からの信頼を維持できます。

コスト削減・生産性向上

工程管理では、製造段階の各工程における進捗状況を可視化して確認することができます。各工程で進捗状況を調整し、課題を改善していくことで、生産リードタイムを短縮することが可能です。

また、各工程における無駄な作業を発見しやすく、作業が効率化してコスト削減も望めます。無駄な作業を減らして重要な作業に時間を回せることにより、品質の向上や生産性の向上が実現可能です。

人為的なミスの防止

工程管理を適切に行うことは、人為的なミスの防止にも繋がります。製造工程では、機器のボタンを押し間違えたり必要な手順を飛ばしたりするなどといった、人為的なミスが起こりやすい傾向にあり、小さなミスでも大きな遅れやトラブルに繋がることがあります。

このような課題には、適切な工程管理により生産プロセスを可視化して、複数メンバーでの共有を行い、いち早くミスに気づける体制を作ることが大切です。また、工程管理システムの活用で手作業を減らすことによる、人為的なミスの防止も望めます。

工程管理の基本手順

工程管理の手順は、生産計画を立て、計画を実行し、評価を行い改善策を実施するといったPDCAサイクルを回すことをベースに行います。以下では工程管理の基本手順について、プロセスごとに解説します。

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1. 生産計画を立てる

生産計画はPDCAにおけるPlan(計画)です。生産計画を立て、製造全体の工程表を作成します。工程は期間を設定し、担当者・作業内容を工程表に落とし込みます。生産計画は工程管理において、ベースとなる重要なプロセスです。

生産計画では、目標を明確にすることも重要です。目標と進捗にギャップが生まれた場合の、ギャップを埋めるための仮説ベースでの対応もここで設定する必要があります。また、予算なども計画段階で設定しなければなりません。

2. 計画を実行する

計画を実行するのは、PDCAにおけるDo(実行)です。各工程に割り当てた担当者を中心に、スケジュール通りの生産計画を実行します。担当者は進捗状況を常に把握し、計画を滞りなく実行しなければなりません。

計画通りの材料調達・製造を行い、作業内容は担当者に従う必要があります。現場での不満などが挙がる場合もありますが、担当者は改善の指示があるまでは計画通りに実行しなければなりません。問題点などが発生した場合は、人員配置などを工夫しながら調整します。

3. 評価する

生産計画通りに生産できたか現状と比較して評価を行うのは、PDCAにおけるCheck(評価)です。各工程の進捗状況を確認し、工程表の計画通り生産ラインが進んでいるか確認を行います。

生産計画の段階で設定した工程表と大きくずれている工程がある場合は、どこに原因があるのか突き止めなければなりません。予定より遅延している工程だけでなく、早く完了した工程の原因も把握する必要があります。

4. 改善策を実施する

PDCAのCで見つけた問題点を改善するのが、Action(実施)です。各工程の進捗状況に遅延がある場合は、発見した課題を改善するための対策を立てて実施します。また、工程の効率化が必要な場合は、無駄な作業を排除して効率化する対策を立て、実施しましょう。

さらに、予定より早く工程が完了したものは、評価すべき点を見つけて改善策へと取り入れます。上記のように取り入れたPDCAを回して繰り返すことで、適切な工程管理ができ、生産性と品質の向上が期待できます。

工程管理の方法

工程管理を行う方法は複数あります。紙面で管理したりExcelで作成したりする方法はコストをかけずに管理ができます。また、工程管理を効率化できる生産管理システムもあり、取り入れる企業が増えています。以下では工程管理の方法を具体的に解説します。

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紙面で管理する

工程表を紙面で管理する方法は、少人数や工数が少ない生産ラインに有効です。自由なデザインで工程表を作成できるのがメリットで、自社でわかりやすいように柔軟にカスタマイズできます。

しかし、紙面は紛失するケースがあるほか、工程に変更が生じた際の書き足しで見づらくなるといったデメリットもあります。紙面で工程管理を行う場合は、紛失や書き直しに対応するためにもPDFデータなどでバックアップを取っておくのがおすすめです。

Excelを使う

工程管理は、Excelで工程表を作成して行うことが可能です。Excelで作成した工程表はグラフなどを使うと見やすく、コストをかけずに管理できるのがメリットです。関数を組むと、工程における修正などが発生した場合に変更を行いやすい仕様にできます。

しかし、複雑なファイルは作成者だけが把握しているケースが多いため共有が難しく、メンテナンスができなくなるといったデメリットがあります。Excelの場合は多くのテンプレートもあるため、使いやすいものを活用するのもひとつの手段です。

生産管理システムを利用する

上記で解説した紙面やExcelでの工程管理は、柔軟にカスタマイズできて汎用性もあるため、さまざまなフォーマットに対応します。しかし、工程管理を効率的に行うには生産管理システムを導入するのがおすすめです。

生産管理システムは、製造業における各工程を一元管理するツールを指します。生産における計画・生産・販売・在庫・原価・計算・品質などすべてをシステムで管理できるため、作業の効率化やコスト削減が可能になり、生産性や品質の向上が望めます。

工程管理を生産管理システムで行った場合、各工程の進捗を可視化することにより、遅延工程の効率化や無駄な作業への対処方法を迅速に行うサポートをしてくれます。

ただし、生産管理システムの導入にはコストが発生するため、生産ラインの規模に対して費用対効果が高いかどうかを考慮することが重要です。

生産管理システムとは?メリットや選び方をわかりやすく解説

生産管理システムとは、生産・販売・原価など製造に関する情報を一元管理でき、課題を解決できるシステムです。業務の効率化や生産性の向上に期待でき、中小製造業でも導入している企業は多いです。本記事では、生産管理システムの主な機能やメリット、選び方のポイントを解説します。

まとめ

工程管理とは、生産計画を実行するために必要な進捗・実績・納期を管理することを指します。工程管理を行うことで、納期や品質の向上を保持します。

工程管理は、ガントチャート・バーチャートなどさまざまな種類の工程表を紙面やエクセルで作成・管理し、コストをかけずに実施できます。しかし、すべての工程を効率化させるには生産管理システムで工程の進捗を可視化し、分析を行うのがもっとも効率的な方法です。

生産システムの導入にはコストが発生しますが、生産ラインとの費用対効果を考慮し、自社に合った方法で工程管理を行いましょう。

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