債権管理とは?債権管理業務の仕事内容や流れ・ポイントを解説

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  • 債権管理とは、企業の売掛金や貸付金などの債権を管理する業務のこと
  • 企業の資金繰りを健全化するにあたって、債権の把握・回収は重要な業務である
  • 債権管理には、情報を一元管理し業務効率化できる債権管理システムの導入がおすすめ

債権管理とは、企業の売掛金や貸付金などの債権を管理する業務のことです。債権を漏れなく把握・回収することは、企業の健全な資金繰りに繋がります。この記事では債権管理の具体的な仕事内容や業務の流れ、ポイントなどをわかりやすく解説します。

目次

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  1. 債権管理とは
  2. 債権管理の仕事内容
  3. 債権管理が重要な理由
  4. 債権管理業務の流れ
  5. 債権管理業務を行う際のポイント
  6. 債権管理の課題
  7. 債権管理システムで業務効率化
  8. まとめ

債権管理とは

債権管理とは、企業の売掛金や貸付金などの債権を管理する業務のことです。わかりやすく言えば、後払いによる企業間の取引において、未回収の代金を管理することです。企業によっては個人に貸付を行う場合もあり、その際の貸付金も債権として扱います。

企業間の取引は継続的な取引になる場合が多く、都度入金では膨大なコストと手間が発生するため、売掛金として収益を記録するのが一般的です。売掛金とは、商品やサービスを提供した際に将来金銭を受け取る権利を指します。

売掛金などの債権を期限内に回収できない場合、資金繰りが苦しくなり、事業の継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。企業の資金繰りを健全化するには、債権を漏れなく把握・回収することが何よりも重要です。

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「債権」と「債務」の意味の違い

債権と債務は似た言葉として混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。債権とは、特定の相手に対して、金銭・物品・労力などの支払いを請求できる権利のことです多くの場合、企業が商品やサービスを提供した際に発生する「売掛金」を指します。

債務とは、特定の相手に対して、金品・物品・労力などを支払う義務がある状態を指します債権と債務は正反対の意味であるため、契約を結ぶ際は定義を正しく理解しておく必要があります。

「与信管理」との違い

与信管理とは、取引先の支払い能力を判断し、取引の上限額を設定・管理することです具体的には、取引先の情報収集を行い、信用力を分析した上で取引できる相手かどうかを判断し、どのくらいの金額まで取引できるかを決定します。

与信管理は取引の開始前から行うものであり、債権管理は取引後に発生する債権の管理を意味するため、両者のプロセスには明確な違いがあります。与信管理に誤りがあった場合は債権が未回収となる可能性があるため、債権管理を行う際は正確な与信管理が重要になります

債権管理の仕事内容

債権管理とは何をすることなのか、具体的な仕事内容を紹介します。ここでは、最も重要な仕事である債権の把握・回収、消滅時効の防止について解説していきます。

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債権を漏れなく把握する

債権管理で最も重要な仕事は、債権を漏れなく把握することです。取引先が多い企業ほど取引件数が増え、債権の種類や数も多くなります。管理する債権の数が多いと、把握漏れが発生する可能性があります。

債権の把握漏れがあれば、債権を期限通りに回収できなくなり、貸し倒れリスクが高まります。債権を漏れなく把握するためには、債権管理表を作成して債権を管理し、回収予定日を把握しておくことが重要です。

期限通りに債権を回収する

債権管理の目的は、債権を期限通りに回収することです。債権には支払い期日が設定されており、債務者は期日内に代金を支払う義務があります。期日内に支払われない場合は、遅延利息や遅延損害金の請求も検討しなければなりません。

債権を期限通りに回収するには、取引ごとの支払い期日を把握し、回収スケジュールを明確にしておく必要があります

消滅時効を防ぐ

支払い期日を過ぎた債権については、消滅時効を防ぐための取り組みが必要です。債権管理における消滅時効とは、一定期間を経過すると債権の権利を法的に無効とする制度です。

消滅時効による貸し倒れを防ぐには、消滅時効期間の満了日を把握しておく必要があります。消滅時効期間の満了日が近づいたら、内容証明郵便による催告や、場合によっては民事調停の申し立てを行い、消滅時効の成立を防ぐ対策を取りましょう。

消滅時効の期間

  1. 債権者がその権利を行使できることを知った時から5年
  2. 債権者がその権利を行使できる時から10年

債権管理が重要な理由

企業の事業において、債権管理がなぜ重要なのかを解説します。ここでは、債権管理による「資金繰りの健全化」「正確な経理・税務申告」に着目していきます。

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資金繰りを健全化できる

債権を漏れなく把握し、債権管理により期限通りに債権を回収できれば、資金繰りが健全化できます債権管理を怠り、期限通りに債権が回収できない場合、資金繰りが悪化し、事業の継続が危うくなる可能性もあります。

債権の未回収の情報が広まったり、資金繰りの悪化が明るみに出たりすると、企業の信用低下に繋がります。最悪の場合、取引先から取引継続を断られたり、金融機関から融資が受けられなくなる可能性もあります。

正確な経理・税務申告ができる

正確な経理・税務申告には、適切な債権管理が必要です。売掛金などの債権は、売上が立った際に帳簿に金額・発生日時・取引相手などの情報を記載し、仕訳処理を行います。また、債権の回収時は消込処理を行いますが、未回収の場合は帳簿上で損失処理を行います。

これらの経理処理を正確に行うには、適切な債権管理が前提となります売掛金などの債権が回収された場合、その回収額は課税所得に含まれます。そのため、債権の回収スケジュールの管理は、税務申告において重要な業務です。

債権管理業務の流れ

債権管理は、適切なプロセスで進めていくことが大切です。ここからは、債権管理の業務フローを解説していきます。

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コーポレートチェックを行う

新しい取引相手と取引を始める際は、はじめにコーポレートチェックを行います。取引先が実在する企業であるかどうかは、商業登録名簿やネット検索などで確認できます。

取引先が実在することが分かれば、反社会的勢力に該当しないかもチェックしましょう。反社会的勢力との取引は、企業の社会的評価を低下させます。反社会的勢力に該当するかは、ネットや新聞記事のデータ検索、調査会社に依頼するなどして確認しましょう。

反社会的勢力と取引した場合、反社会的勢力排除条項により、他の取引先から取引を停止されたり、金融機関から融資を拒否、または早期返済を要求される場合がありますコンプライアンスの観点からも、コーポレートチェックは必ず行いましょう。

与信限度額を設定する

コーポレートチェックで問題がなければ、取引先の与信限度額を設定します。与信限度額は取引先の支払い能力・財務状況・過去の支払い状況・社会的評価などを考慮して、取引先ごとに設定します

取引先の支払い能力については、信用調査会社の与信情報を参考にするか、取引先に直接ヒアリングするなどして確認しましょう。

財務状況・過去の支払い状況・社会的評価については、公式HPやネット検索などで確認できます。与信限度額が決まったら、与信限度額を超えて取引しないよう社内に周知し、取引額を定期的にチェックする必要があります

取引書類を発行・送付する

債権を漏れなく管理・回収するには、取引内容を整理し、書類に記録しておきましょう。与信限度額や取引条件が決まったら、契約書を発行し、取引先に送付します。

取引を行う中で必要となる受発注書・請求書などの書類については、作成ルールとフォーマットを定めて、管理方法を社内で周知しておく必要があります。取引書類は速やかに発行・送付し、請求書は遅くても支払い期限の2〜3週間前までに送付しましょう。

債権管理表を作成する

債権の回収状況や取引先のデータは、いつでも確認できるようにしておくことが重要です。そのためには、債権管理表を作成して、債権の回収プロセスを管理する必要があります。債権管理表とは、売掛金などの債権の残高と回収状況を記録・管理するための表です。

売掛金の管理には、売掛金残高一覧表や売掛金年齢表が使われます売上金残高一覧表は、取引先ごとの売掛金の残高を確認するため、売掛金年齢表は、売掛金の滞留期間の状況を確認するために使われます。

上場企業の場合、会計監査で売掛金年齢表の提出を求められることが多いため、取引先ごとに売掛金発生月・売掛金額・回収期日・回収日・繰越金額を管理しておきましょう。

表の種類内容
売掛金残高一覧表売掛金残高を取引先ごとに管理する表
売掛金年齢表売上日や支払い期日を基準として、取引先ごとの売掛金残高を一定期間単位で管理する表

入金消込・催促を行う

取引先から売掛金が支払われた場合は入金消込を行い、遅延した場合は催促を行います。入金消込とは、取引先から入金があった際に、入金額と債権の残高を照らし合わせながら売掛金を帳簿上から消していく作業です。

売掛金が期限内に支払われず、滞留債権となった場合は、まず話し合いでの解決を図ります。話し合いの結果、支払いに応じない場合は書面や訪問による催促を行い、それでも支払われない場合は、裁判によって回収する方法があります。

滞留債権を放置すると資金繰りが悪化し、経営に悪影響を与えるだけでなく、会社の信用低下に繋がります。滞留債権を発生させないためには、債権の管理・回収を徹底することが重要です。

債権管理業務を行う際のポイント

債権管理をスムーズに行うには、社内体制を整備する必要があります。ここからは、債権管理業務を行う際のポイントを解説していきます。

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債権管理業務を行う際のポイント

  1. 管理者・管理方法を決める
  2. 社内規程を策定・周知する

管理者・管理方法を決める

債権管理を行うにあたり、まずは債権を管理する部門や担当者を決めましょう。大企業では債権管理の専門部署がある場合もありますが、事業規模が小さい会社では、総務・経理・法務部門などから担当者を選び、通常業務と兼務する場合もあります。

債権管理は正確性が求められる重要な業務のため、通常業務とのバランスを考えながら、仕事量の配分を調整していく必要があります。

債権管理の方法については、以下の項目に焦点を当て、社内ルールを作成しましょう。

  1. 債権管理の担当者に対する債権の回収状況の報告方法
  2. 債権リストの項目の設定
  3. 債権リストの保存先
  4. 債権リストへの閲覧・アクセス権
  5. 債権回収へ移行する際の手続き

社内規程を策定・周知する

債権管理の方法が決定したら、その内容を反映した社内規程を作成しましょう一般的に、社内規程は債権管理に詳しい法務部などが中心となって作成を進め、取締役会の決定を経て制定されます。

社内規程策定後は、社内周知を徹底しましょう。債権を適切に管理するには、債権管理の重要性を従業員全員に理解して貰う必要があります。債権管理の教育セミナーや研修を実施し、社内規程が全ての従業員に浸透するような取り組みを実施しましょう。

債権管理の課題

続いて、債権管理の課題を解説していきます。債権管理の課題を正しく理解し、対応策を考えておきましょう。

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管理が煩雑になる

債権管理を紙やExcelで行う場合、記入漏れなどの人為的ミスが発生しやすく、管理が煩雑になります加えて、手作業による管理は時間と手間がかかるため、人的コストが膨らみやすくなります。

また、事業規模が大きい企業ほど管理する債権の数も多くなり、ミスが発生する可能性が高くなります。債権管理の煩雑化を防ぐには、債権管理システムなどのツールを使って業務を自動化し、効率化を図る必要があります

債権管理に関する情報が分散している

複数の支店や事業所を展開する企業では、債権管理に関する情報が分散している場合があります。債権管理を支店・事業所ごとに管理するのは非効率なため、一元管理による効率化を図る必要があります

具体的には、全社共通のデータベースを作り、各事業所の債権管理の状況をリアルタイムで確認できるようにします。債権管理に関する情報の一元管理は、債権の未回収リスクの軽減にも繋がります。

スキルを持つ人材が必要になる

債権管理には、一定以上のスキルを持った人材が必要です。そのような人材が社内で確保できない場合は、アウトソーシングのための人件費もかかります。

債権管理は正確性・緻密性が求められるため、適任者を見つけるのに時間を要する場合もあります。適任者を見つけるのが難しい場合は、債権管理システムの導入を検討してみましょう。

債権管理システムで業務効率化

債権管理システムとは、債権の発生から入金までの情報を一元管理し、債権管理業務を効率化するためのシステムです債権管理システムの代表的な機能は以下の通りです。

  1. 売掛金の計上
  2. 入金消込
  3. 請求書発行
  4. 入金管理
  5. 書類作成

債権管理システムを活用することで、債権管理表の作成や入金消込業務の効率化が図れます。債権管理に必要な帳票も自動作成できるため、債権管理にかかる時間とコストを大幅に削減することができます

手作業で管理していた業務がシステムにより一元管理できるようになれば、業務効率が大幅に向上し、人為的ミスを防ぐことができます。その点を下記で説明します。

回収効率がアップする

債権管理システムの導入により、いつでも回収に必要なデータが手元で確認でき、営業担当は正確な回収状況が常に把握できるようになります。また、売掛債権のデータが管理システムに入っていれば、取引先ごとの売掛残高や入金状況を管理する煩雑さから解放されます。

さらに、入金予定日・金額が自動的に通知され、入金遅延や金額の違いもすぐにチェックできます。仮に未回収の売掛金が発生すると、債権管理システムがアラートで教えてくれます。

これにより、担当者はすぐに状況を把握でき、素早い対応が可能になります。未回収金が早期に回収でき、回収効率のアップに繋がるのも大きなメリットです。

人為的なミスが減少する

手作業で煩雑な債権の管理をしていると、売上高や請求額・入金額の間違いが起きやすくなりますまた、取引先との相違等があっても、担当が見落として処置が遅れる場合も十分に考えられます。

しかし、債権管理システムによる一括管理が導入されていれば、自動化によって手作業によるさまざまなミスは発生しません。万が一取引先サイドで人為的なミスが発生しても、アラートで知らせてくれるのもメリットです。

このように、債権管理システムでは、金額計算や入力作業・集計作業が自動化でき、人為的ミスは大幅に減らせます。なお、作業の精度や効率面でも、システムに任せて自動化するほうがより合理的です。

債権管理システムとは?主な機能や選ぶ際の比較ポイントも解説

債権管理システムとは、債権情報や入金情報などを一元管理することで債権を適切に把握し、管理を効率化するシステムです。この記事では、債権管理システムの主なタイプや機能、導入のメリット・デメリットや、比較すべきポイントなどについてわかりやすく解説します。

まとめ

債権管理とは、企業の売掛金や貸付金などの債権を管理する業務のことです。債権を漏れなく把握・回収することは、企業の資金繰りの健全化に繋がります。

債権管理をスムーズに行うには、債権管理の部門や担当者を決めて、社内規程を策定し、従業員への周知を徹底する必要がありますまた、債権の回収状況は、債権管理表で随時確認できるようにしておきましょう。

債権管理は煩雑になりやすく、事業所ごとに情報が分散するといった課題もあります。これらの課題を解決するには、債権管理の情報を一元管理し、業務の効率化が図れる債権管理システムの導入がおすすめです

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