人事評価を行う3つの目的とは?メリット・デメリットや評価基準も解説

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  • 人事評価を行う目的として、従業員に企業のビジョンを浸透させるためなどが挙げられる
  • 人事評価を行うことで、従業員のモチベーションアップによる生産性の向上に繋がる
  • 人事評価を失敗しないためには、人事評価を行う目的の周知やシステムの導入がおすすめ

人事評価とは、従業員の働きぶりを評価することを言います。人事評価を適切に行うことで、賞与や昇給などの処遇の決定や効率的な人事育成にも繋がります。本記事では、人事評価を行う目的やメリット・デメリット、運用を失敗しないためのポイントなどを解説しています。

目次

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  1. 人事評価とは
  2. 人事評価を行う目的
  3. 人事評価基準の種類
  4. 人事評価手法の種類
  5. 人事評価を行うメリット
  6. 人事評価を行うデメリット
  7. 人事評価制度を上手に運用するコツ
  8. まとめ

人事評価とは

人事評価とは、社員の行った業務の成果や会社への貢献度などを、会社の基準に沿って評価することを言います。バブルが崩壊した1990年以降の働き方の多様化にともない、年功序列型だった人事や給与体系を成果主義型に移行するために欠かせないものとなりました。

人事評価は本来、会社経営の円滑化を図るために行うものですが、適正さを欠くとかえって会社運営を阻害する原因にもなります。そのため、数ある種類や評価方法の中から自社に合った人事評価を選んで行うことが必要です。

人事評価とよく似たものに人事考課があります。人事考課は人事評価とほぼ同じ意味合いを持つ場合が多いですが、人事考課は社員の給与や昇進を判断するもので、人事評価は人材育成や能力開発などを行うものと捉える場合もあります

人事評価制度の構成要素

人事評価制度を適正に実施することで、給与や賞与の決定ばかりでなく社員の育成や定着、さらには会社の業績アップにつながります。そのような人事評価制度には等級制度・評価制度・報酬制度の3つの構成要素があります。

これらの3つの構成要素が相互に関係し合うことで、人事評価制度が成り立っています。

構成要素概要
等級制度社員を能力・職務・役割などで区別化する制度で、業務遂行のための権限や責任・処遇などの根拠となる
評価制度社員の業務遂行能力や会社への貢献度などを評価する制度で、社員の人材育成の指標とすると共に、等級制度や報酬制度と連動させるのが一般的
報酬制度等級制度と評価制度の結果に基づき、社員の給与・賞与・退職金・褒賞の根拠となる

人事評価を行う目的

現在の人事評価は単に人事や給与を決めるためのものでなく、以下の3つの目的を達成し、会社経営を円滑に行うための手段としても利用されています。

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昇給・賞与などの処遇の決定

人事評価の目的の一つに、公平性を保ちながら社員の昇給や賞与の決定をすることがあります。また、人事評価は昇進・昇格・異動のための根拠にもなります。社員にとっては自分の生活を支える給与や処遇にかかわる重要な問題です。

したがって、正当性のない人事評価は会社の信用を失うことになり、会社の運営基盤を揺るがしかねません。逆に、社員が納得できる人事評価は社員のモチベーションの向上につながり、会社の収益増や発展が期待できます

人材育成の効率化

少子高齢化が進み、各会社の人材不足が現実的になってきた現在、今いる社員の人材育成は会社にとって喫緊の課題です。適正な人事評価は、社員一人ひとりの能力や適性が見極められ、効率的な人材育成を可能にします。

人事評価で把握できた社員の特性を活かした適材適所の人材配置は、社員の特性を十分に発揮させ、さらなるスキルアップを可能にします。また、人事評価で把握された社員の不得意分野の研修や、実践を行う機会を与えることで、不得意分野の克服も可能です。

企業のビジョンや方針の共有

人事評価の目的は、単なる社員の評価だけに終始するのでなく、企業のビジョンや方針の共有に役立てることが重要です。経営者がどのような会社を目指し、どのような方針を持っているのかを社員に発信する機会は多くないため、人事評価はその絶好の機会となります。

人事評価は本来、ビジョンや方針の実現のためにあるものであり、それに基づいた評価でなくてはなりません。会社のビジョンや方針を共有した社員は、個人の業績ばかりでなく会社の将来を考えた行動が取れるようになり、会社の考える理想の組織づくりに役立ちます。

人事評価基準の種類

人事評価の基準や評価項目は、各会社のビジョンにしたがって自由に設定できます。しかし、社員の適切な評価には「能力評価」「成果評価」「情意評価」の3種類を含めて行うのがおすすめです。ここでは、それぞれの評価について詳しく解説します。

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人事評価基準の種類

  1. 能力評価
  2. 成果評価
  3. 情意評価

能力評価

能力評価では、業務を行うために必要な知識や能力を評価します。現在の業務だけでなく、以前の部門で習得した知識や能力、または社員の持つ資格や潜在的能力・期待値も含まれています。したがって、能力評価は実績の評価ではないことに注意しなくてはなりません。

評価対象となる能力には、企画力・実行力・育成力・改善力などがあります。しかし、これらは数値化が難しく評価が曖昧になりがちです。成果評価との連携も図りながら、適切な評価を行う必要があります。また、社員自身も気付いてない潜在能力の発見にも繋がります。

成果評価

成果評価は業績評価とも呼ばれ、一定期間内の成果を評価します。数値化できる成果も多く、社員は数値化された目標に向けて意欲的な業務の遂行が可能になります。成果評価は会社の業績に直結する評価といえます。

ただし、個人の成果だけで評価するとチームワークが乱れ、個人主義的な雰囲気を作ってしまいます。それでは、長い目で見ると会社の利益にならないため、業務に取り組む姿勢やプロセス、またはチームでの成果なども考慮することが大切です。

情意評価

情意評価は、社員の業務に対する意欲や姿勢などを評価します。数値化が難しい評価で、評価者の主観が入りやすい評価なので細心の注意が必要です。そのため、評価項目の具体化や複数の評価者での評価など工夫した評価が必要になります。
情意評価の主な評価項目には、責任性・積極性・協調性などがあります。しかし、記憶を基にした評価は不適切な評価となる場合が多く、社員の不満の蓄積やエンゲージメントの低下につながります。そのため、社員の行動や面談の記録をしっかりと取ることが重要です。

人事評価手法の種類

人事評価手法には、「360度評価」「コンピテンシー評価」「目標管理制度」の3つの手法があります。ここでは、3つの手法について具体的に解説します。人事評価を効果的に行うためには、自社に最適な方法の選択が重要です。

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360度評価

通常は上司が部下を評価しますが、360度評価は上司や同僚・部下など複数の社員が評価者となり、一人の社員を評価します。異なる立場の人が複数人で行う評価なので、公平性・客観性のある多面的な評価が可能です。

ただし、評価者と被評価者の人間関係によっては主観が反映される恐れもあるので、評価者全体の傾向も見定め、それが正しい評価かどうかの見極めも重要になります。360度評価が上手く機能すれば、社内の人間関係の改善やチームワークの向上も期待できます。

コンピテンシー評価

コンピテンシーとは、高い成果や業績を上げる人材に共通して見られる行動特性のことで、コンピテンシー評価は、その社員がコンピテンシーを持っているかを評価します。コンピテンシー評価は、能力評価によく用いられる手法です。

会社が求める能力は会社によって異なるので、自社にとって有用なコンピテンシーの洗い出しが重要になります。しかし、コンピテンシー評価は、見えない部分の評価なので基準は慎重かつ明確で、客観性の高いものを定める必要があります

目標管理制度(MBO)

目標管理制度は英語で「Management by Objectives」と表記され、略してMBOと呼ばれます。第三者から与えられる目標でなく、社員自身が定めた目標に向かって業務に取り組む仕組みです。正確には人事評価の手法ではなく、マネジメントの手法を意味します。

ただし、自らが設定する目標は容易なものになる恐れもあるので、会社のビジョンや方針との擦り合わせが大切です。MBOで自ら定めた目標の達成への道筋を自分で管理することで、自発的な行動が生まれ、組織の活性化やチームワークの向上などが期待できます

人事評価を行うメリット

人事評価は評価者のためだけにあるのではありません。適正な人事評価を行うことで会社運営にもメリットが生まれます。ここでは、以下にあげた3つの会社運営におけるメリットを解説します。

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従業員のモチベーション向上に繋がる

適正な人事評価を行い、評価に見合った処遇を行えば、従業員のモチベーションの向上につながります。そして、社員は常日頃の努力が認められることで、会社への愛着が沸き、会社への貢献意欲が高まります。また、自発的行動の増加も期待できます。

その結果として、個人の業績の向上はもちろん、チームのパフォーマンスも高まり、最終的に会社の業績アップや継続的発展につながります。ただし、社員が納得できる人事評価がなされることが前提条件です。

コミュニケーションの活性化

適正な人事評価を行うには、評価者は被評価者に事前に評価基準やその根拠を伝え、評価中には被評価者の行動や進捗状況を観察して、必要に応じて相談に乗ることも必要です。また、評価後は被評価者が納得できるように評価を伝える必要があります。

このように、人事評価にとって評価者と被評価者のコミュニケーションは必須です。また、被評価者も目標達成を目指して同僚やチームとのコミュニケーションをとるようになります。すなわち、適正な人事評価は、会社内のコミュニケーションを活発化させます。

人材配置の最適化

人材不足が加速化している現代の社会では、自社での人材育成や人材配置の適正化は重要な課題です。しかしその課題は、社員の特性を知り、どの社員のどの部分の成長を促せばいいのかを把握しなくては解決できません。その作業を担うのも人事評価の大きな役割です。

社員の適正配置は、社員が自己表現のできるやりがいのある場の提供となり、社員のモチベーションの向上にもつながります。また、人事評価で社員の新たな才能を発掘して伸ばしていく作業は、次世代リーダーの育成となり、会社の未来への投資にもなります。

人事評価を行うデメリット

人事評価はメリットが多い反面、デメリットもあります。一つは適正な運用ができないときに起こるデメリットで、もう一つは適正な運用で起きるデメリットです。ここでは、下の2つのデメリットについて解説します。

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運用を間違えると従業員から不満が出やすい

人事評価は、運用方法を間違えると従業員から不満が出てしまい、従業員のエンゲージメントの低下を招き、雰囲気の険悪な会社に陥ってしまいます。それは、新規の社員採用にも影響し、会社にとって重大な問題となり得ます。

そのために評価者は、人事評価は社員の欠点を見つけるためのものでないことを心しておかなくてはなりません。また、どのような人事評価でも、社員へのフィードバックとフォローアップで、社員が評価してもらって良かったと思えるようにすることが大切です。

人事評価の準備・実施に手間がかかる

適正な人事評価は、人事評価の手法や評価項目・評価基準などの準備から、実施する際の評価シートの作成・配布・回収をはじめ、進捗確認・データ管理・事前と事後の面談など大変手間のかかる業務です。しかし、その手間を省くと適正な人事評価ができません

準備段階の手間は何年かに1度の見直しですみますが、運用の手間は毎年です。そして、その手間には人的コストがかかります。少しでも手間と人的コストを抑えるには、人事評価システムの導入も視野に入ります

人事評価制度を上手に運用するコツ

人事評価制度を適正に運用するには、コツがあります。ここでは、人事評価制度を上手に運用するための8つのコツを解説します。

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制度構築前に現状を分析する

初めて人事評価を導入する場合は制度を構築する前に、自社の経営理念やビジョンの確認・把握を行い、それに基づいた自社の現状分析が大切です。それによって、自社の課題が明確になり、自社に合った人事評価制度の構築ができるようになります。

現状分析の始まりは、社員のモチベーションが低い、次期リーダーが育っていないなど、主観的な課題で構いません。そして、そう感じる事象を洗い出し、一歩進んだ客観的な分析を行います。そうすることで自社の課題が明らかになります。

人事評価を行う目的を周知する

会社の理念やビジョン、現状分析で洗い出された課題から、会社が求める社員像を検討し、人事評価を行う目的を設定します。ただし、目的は評価者の意向だけでなく、ヒアリングなどを通して社員の意向も考慮すると、運用がスムーズにできます。

そして、評価者や特別な社員だけでなく、評価の対象になる人全員への理解と周知が必要です。そのためには、説明会などを開催して、評価と処遇の関係や評価の方法、評価項目などの説明をし、社員の疑問を解決しておくことが大切です。

従業員が理解できる評価基準を設定する

評価基準が曖昧なままの人事評価は、社員の理解を得られずに不平や不満が蓄積する原因となります。そのため、具体的で従業員が理解しやすい評価基準でなくてはなりません。その上、達成可能な評価基準でなくては、社員のモチベーションの低下を招きます。

評価基準は、会社の特性によってさまざまで、自社独自の評価基準を作成する必要があります。同業他社の評価基準は参考にはなりますが、そのまま利用しては適切な人事評価はできません。また社内でも、役職や職種によって評価項目や評価基準が異なります。

評価者が評価エラーを理解しておく

評価エラーとは、評価者の思考や価値観などの主観に左右され、偏った評価に陥る現象を指します。1つの良い印象・悪い印象に引っ張られて、他の部分も良い評価・悪い評価をつけてしまう「ハロー効果」などがその例です。
このような評価エラーは、適切な評価とは言えないため、従業員に不満を感じさせる可能性があります。そのため、評価者が評価エラーの具体例などを明確に把握して避ける必要があり、評価者に対する研修の実施などが効果的です。

絶対評価を重視する

人事評価は、ほかの社員と比べる相対評価でなく、評価基準をどの程度達成しているかの絶対評価を主として行います。絶対評価は、評価基準の作成が難しい面はありますが、個人の努力や成果を正当に評価でき、社員から理解が得られやすいことがメリットです。

評価基準は数値で表せるものであると評価しやすいですが、数値化できないものもあります。数値化できないものは、社員の行動記録などを綿密に取って残しておくと、客観的な評価となり、社員が納得できる評価になります。

評価結果のフィードバックを行う

人が人を評価するのは難しく、社員が納得できなければ不満が溜まる原因になります。それを防ぐためにも、評価結果のフィードバックは大変重要なステップです。フィードバックは紙面で行うのでなく、必ず一人ひとり面談して行います。

面談は、評価結果を伝えることが目的ではありません。個人の努力を認め、その取り組みの中での社員の成長や、どこを改善すればより高い評価を得られるようになるかを示唆し、社員に新たな目標を与え、モチベーションの向上につながるようにすることが大切です。

人事評価システムを導入する

適確な人事評価を行うには、社員の納得できる人事評価や人材育成につながる人事評価、会社経営の力となる人事評価など、多くの要求を満たす必要があります。そのためには慎重な準備と運営が必要で、多くのステップを踏まなくてはならず大変手間がかかります

その手間と人的コストの削減に役立つのが人事評価システムです。人事評価システムを利用すれば、評価シートの作成から配布・回収・データの管理・集計・分析などをシステム上で行えて、それにより生まれた時間をより丁寧なフィードバックに使えます

人事評価システムには、さまざまな評価制度対応のテンプレートが準備され、進捗状況の管理や評価分布・分析・調整の機能、中には従業員の個人情報や職務経歴・異動履歴・スキルなどの一元管理や異動シミュレーションなどができるものもあります。

人事評価システムには、さまざまな評価制度対応のテンプレートが準備され、進捗状況の管理や評価分布・分析・調整の機能、中には従業員の個人情報や職務経歴・異動履歴・スキルなどの一元管理や異動シミュレーションなどができるものもあります。

人事評価システムとは?機能やメリット・デメリット、選び方を解説

人事評価システムとは、人事評価業務に関するデータ管理や評価シートの作成を自動化できるシステムです。本記事では、人事評価システムをよく知らない方や導入を検討している方のために、人事評価システムの機能や選び方、メリット・デメリットを解説しています。

国や自治体の助成金制度を活用する

企業が人事評価制度の整備を行う場合、国や自治体の助成金制度を活用できる場合があります。厚生労働省により公表されている「人事評価改善等助成金」もその一つであり、人材不足の解消を目標として実施されています。

企業により対象となる助成金の種類は異なるため、まずは自社が活用できる制度を調べてみましょう。このような助成金制度を活用できれば、自社の金銭的な負担を軽減できるため、よりスムーズに人事評価制度を導入できます。

参考:人事評価改善等助成金のご案内|厚生労働省

まとめ

人事評価制度とは、従業員の働きぶりを評価することです。適切に行うことで賞与や昇給などの処遇の決定や、効率的な人材育成にもつながります。しかし、適正な運用がされないと社員の反発を受けるだけなく、社員の業務に対するモチベーションの低下を招きます。

そのため、人事評価を行う場合には、社員の理解と納得を得るための丁寧な説明が重要です。そして、丁寧な運用には時間と手間がかかるので、人事評価システムの導入で効率化を図り、生まれた時間を社員への丁寧なフィードバックに当てるのがおすすめです。

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