有形固定資産とは?無形固定資産との違いや減価償却の方法も解説

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  • 有形固定資産とは、営業活動で長期的に使用する目的で所有する固定資産のこと
  • 有形固定資産の例として、土地・建物・構築物・機械および装置などがある
  • 有形固定資産の減価償却には、定額法もしくは定率法を使うのが一般的である

有形固定資産とは、長期にわたって使用する目的で所有する物理的に存在する固定資産のことで、土地・建物・機械などが含まれます。この記事では、有形固定資産と無形固定資産の違い、会計処理で必要となる減価償却、仕訳方法や勘定科目などについてわかりやすく解説します。

目次

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  1. 有形固定資産とは
  2. 有形固定資産の種類
  3. 有形固定資産の減価償却
  4. 有形固定資産の仕訳
  5. 有形固定資産の回転率
  6. 固定資産管理システムで減価償却や税務申告を効率化
  7. まとめ

有形固定資産とは

有形固定資産(読み方:ゆうけいこていしさん)とは、わかりやすく言えば、目に見えて触れることができる資産のことを指します。これには、土地、建物、機械、車両など、企業が営業活動を行う上で長期的に使用するために取得した物的な資産が含まれます。

しかし、会計基準において「有形固定資産」という言葉に明確な定義が設けられているわけではありません。そのため、具体的な内容や範囲は、企業や業界、国や地域によって異なる場合があります。

無形固定資産との違い

無形固定資産とは、物理的な形を持たないが、企業の活動において価値を持つ資産のことを指します。例えば、特許権は独自の技術や製品を保護し、競合他社との差別化を図るためのものであり、商標権は企業のブランドや商品を識別するためのものです。

このように、有形固定資産と無形固定資産では、その「形の有無」に違いがあります。有形固定資産は物理的に存在し、直接触れることができるのに対し、無形固定資産は触れることはできませんが、企業の価値を形成する上で重要な役割を果たします。

有形固定資産についてより理解するために、無形固定資産について理解しましょう。下記で種類や減価償却について説明します。

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無形固定資産との違いとは

  1. 無形固定資産の種類
  2. 無形固定資産の減価償却

無形固定資産の種類

無形固定資産の主な種類には、特許権・実用新案権やソフトウェア、のれん(M&Aの営業権)があります。特許権とは、特許法に基づき登録した発明を独占・排他的に行使できる権利です。

実用新案権は、実用新案法に基づき「物品の形状・構造または組合せにかかるもの」を保護する権利を指します。

ソフトウェアとは、コンピュータを動かすためのプログラムのことです。のれんは、ノウハウやブランド力など将来的な収益力の元となる材料を指します。

無形固定資産の減価償却

減価償却とは対象の費用を一定期間に配分する会計処理のことです。無形固定資産を減価償却する際には、一般的に取得費用を耐用年数で割って計算します。また、ソフトウェアの場合、耐用年数は3年です。

尚、無形固定資産の種類によっては、税務上耐用年数が定められていないものもあります。

参考:国税庁 No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数

有形固定資産の種類

有形固定資産は、企業が活動を行う上で長期的に使用するために取得した物的な資産です。これらの資産は、企業の活動を支える基盤として日々の業務に欠かせないものとなっています。下記は、有形固定資産の主な種類とその具体例です。

種類詳細
土地事業所の敷地、駐車場、農地
建物および付属設備事務所ビル、工場、倉庫、エアコンやエレベーターなどの設備
構築物道路、橋、トンネル、ダム
機械および装置製造ラインの機械、コンピュータ、プリンター
車両および陸上運搬具トラック、フォークリフト、営業車
船舶および水上運搬具貨物船、漁船、フェリー

有形固定資産の減価償却

有形固定資産の減価償却とは、資産の価値が経時的に減少することを会計上で反映させる方法です。これは、企業の財務状況を正確に反映させるために必要な会計処理の一つであり、企業の収益性や資産の効果的な使用を評価する際の基盤となります。

具体的には、資産を取得した際の原価を一定の期間にわたって経費として計上することで、その資産の経済的な消耗を表現します。土地を除くほとんどの有形固定資産が対象となり、その計算方法には「定額法」と「定率法」の2つが主流として用いられます。

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有形固定資産の減価償却

  1. 定額法
  2. 定率法

定額法

定額法は、有形固定資産の原価を取得してからの耐用年数で均等に分けて計上する方法です。この方法の特徴は、毎年一定の金額を減価償却費として計上する点にあります。

例えば、1000万円の機械を10年間使用すると想定した場合、毎年100万円を減価償却費として計上します。この方法は計算がシンプルであり、初年度から一定の費用を計上できるため、予算の組みやすさや財務諸表の安定性が求められる場合に適しています。

また、事前に未来の減価償却費が明確になるため、将来のキャッシュフローや利益計算が容易になります。さらに、一定の減価償却費を毎年計上することで、収益性の分析や業績の評価がしやすくなります。

定率法

定率法は、有形固定資産の帳簿上の価値(原価からこれまでの減価償却額を差し引いたもの)に一定の率を乗じて、減価償却費を計算する方法です。この方法の特徴は、初年度は大きな金額が減価償却費として計上され、年々その金額は減少していく点にあります。

これは、資産の価値が時間とともに急速に減少する場合や、初年度に大きな経費を計上したい場合に特に適しています。また、国税庁の「減価償却資産の償却率等表」では、各種資産の償却率や耐用年数を確認し、正確な減価償却額を計算することができます。

参考:減価償却資産の償却率等表|国税庁

有形固定資産の仕訳

有形固定資産の購入は、企業の成長や業務の効率化を目的として行われることが多いです。これらの資産は、企業の基盤となるものであり、長期的なビジョンや戦略の一環として取得されることが一般的です。購入方法や支払い方法によって、仕訳の方法も異なります。

仕訳は、企業の経済活動を数字として正確に記録するための手段です。ここでは、有形固定資産を購入した際の代表的な仕訳例を取り上げ、それぞれのケースにおける仕訳のポイントと、その勘定科目などを詳しく解説していきます。

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現金で購入した場合

パソコンを現金で購入する場合、資産の増加と現金の減少を反映する仕訳が必要となります。現金は流動資産の一部であり、手元に保有する現金量の減少を示さなければいけません。例えば、30万円のパソコンを現金で購入すると、仕訳は以下のようになります。

借方貸方
勘定科目:パソコン勘定科目:現金
金額:30万円金額:30万円

この仕訳により、有形固定資産としてのパソコンの取得と、それに伴う現金の支出を会計上で表現しています。現金での購入は、企業の流動性を維持する上で、注意が必要なポイントとなります。

小切手で購入した場合

建物を小切手で購入する場合、資産の増加と小切手の支払い義務を反映する仕訳が行われます。小切手は、銀行や金融機関との取引を示す手段の一つです。例として、1億円の建物を小切手で購入した場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
勘定科目:建物勘定科目:当座預金
金額:1億円金額:1億円

この仕訳により、有形固定資産としての建物の取得と、それに伴う手形による支払い義務を会計上で表現しています。小切手や手形を使用することで、企業は資金繰りを効率的に行うことができるため、長期的な経営戦略の一つとして活用されることが多いです。

有形固定資産の回転率

有形固定資産の回転率は、企業が保有する有形固定資産をどれだけ効果的に活用しているかを示す指標の一つです。この指標は売上高と有形固定資産の関係を示しており、高い値を示すことは、少ない資産で高い売上を上げていることを意味します。

回転率は、売上高を平均有形固定資産(期初と期末の有形固定資産の平均)で割ることで求められます。この指標を用いることで、企業の資産の効率的な利用状況や投資の回収能力を評価することができます。

固定資産管理システムで減価償却や税務申告を効率化

固定資産管理システムとは、企業が保有する固定資産の情報を一元的に管理・運用するためのシステムのことを指します。これにより、固定資産の取得、廃棄などの履歴や、減価償却の計算、税務申告のためのデータの作成などの業務を効率的に行うことができます。

また、業務を自動化できるため、ミスのリスクを低減することができます。さらに、このシステムには、固定資産の現状や履歴を一覧で確認できる機能も備えており、企業の資産管理をより透明性の高いものとすることができます。

固定資産管理システムとは?機能やメリット、選び方について解説!

固定資産管理システムは、企業が保有する固定資産の管理や会計上の処理などを行うためのシステムです。企業において、この固定資産の管理は欠かせない業務のひとつです。この記事では、固定資産管理システムの機能やメリット、選び方などを解説します。

まとめ

有形固定資産は、無形固定資産とは異なり、「形」のあるものです。これは、企業の成長や業務効率化の基盤としての役割を果たしており、その価値や特性を理解することは、適切な会計処理や経営判断の土台となります。

有形固定資産は、減価償却の方法や仕訳・勘定科目などを理解し、適切に管理する必要があります。固定資産管理システムを導入することで管理の自動化ができるため、ミスの低減や業務の効率化も見込めます。自社のニーズに合わせて、管理方法を明確にしましょう。

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