労務管理・人事管理・勤怠管理の違い|業務内容や重要性について解説

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  • 人事管理は、人材の採用や育成・評価や配置に関わる業務である
  • 労務管理は、従業員の契約や労働環境を管理し、法令を遵守する業務である
  • 勤怠管理は、出退勤や休暇・有給など、労働時間管理に関する業務である

人事管理・労務管理・勤怠管理は、それぞれ企業の健全な運営に欠かすことができない、重要な業務ですが、それぞれの違いは何でしょうか。本記事では、人事管理・労務管理・勤怠管理の重要性や具体的な業務内容の違いの他、それぞれの業務を効率化するシステムについて解説します。

目次

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  1. 人事管理・労務管理・勤怠管理の違い
  2. 人事管理・労務管理・勤怠管理の重要性
  3. 人事管理・労務管理・勤怠管理の業務内容の違い
  4. 人事管理・労務管理・勤怠管理に共通した注意点
  5. 人事管理・労務管理・勤怠管理を効率化するシステム
  6. まとめ

人事管理・労務管理・勤怠管理の違い

人事管理・労務管理・勤怠管理はすべて、従業員が健全に働くために必要な業務です。実は労務管理や勤怠管理は人事管理の一環であり、業務範囲は人事管理・労務管理・勤怠管理の順番で狭くなります。

人事管理・労務管理・勤怠管理の重要性や役割を知るためにも、まずはそれぞれの概要を理解しておきましょう。

管理業務それぞれの違い
人事管理ヒトを管理して安定的な事業運営などを目指す
労務管理労働基準法や社内規則に沿って労働環境を管理する
勤怠管理各従業員の勤怠時間・労働状況を管理する

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人事管理・労務管理・勤怠管理の違い

  1. 人事管理とは
  2. 労務管理とは
  3. 勤怠管理とは

人事管理とは

人事管理とは、「ヒト」すなわち「従業員」に関わる管理を指します。代表的な業務には、採用・人員配置・人事評価などがあります。

人事管理の目的は、各従業員が能力を最大限に発揮できる環境を整えることで、自社を活性化させることです。

従業員は、企業にとって重要な経営資源の1つです。人事管理によって、適切な人員の採用・配置を行うことで、安定的な事業運営や組織全体での生産性の向上が見込めます。

労務管理とは

労務管理とは、労働基準法や社内規則に沿って労働環境を管理することです。例えば、従業員の入社・退社のほか、給与・社会保険・福利厚生などの各種手続きが労務管理に含まれます。

労務管理の目的は、従業員が安心して働ける環境を整備することです。健全な労働環境の維持は従業員の労働意欲の向上につながり、ひいては企業への定着率を高めます。

労務管理は、従業員が能力を発揮しやすい働き方を支援するという点において、人事管理と似ています。ただし、人事管理が「ヒト」を直接管理する業務であるのに対し、労務管理はヒトを取り巻く「環境」を対象とする点が異なります。

勤怠管理とは

勤怠管理とは、各従業員の労働状況を管理する業務です。例えば、出退勤時間・残業時間のほか、年次有給休暇の取得状況の把握などが勤怠管理に当たります。

勤怠管理の目的は、過重労働の防止正確な給与計算の支援です。過重労働とは、簡単にいえば法定労働時間を超過して働くことです。

これを防ぐには、従業員の月々の労働時間を正確に把握し、法定労働時間を超えないように管理する必要があります。そこで重視されるのが、勤怠管理となっています。

一方、給与計算は労務管理の範疇です。この点では勤怠管理も労務管理に含まれるものの、給与計算を正しく行うには、まず各従業員の労働時間を正確に把握することが大切です。

つまり勤怠管理は、労務管理の中でも特に重要な業務にあたります。そのため労務管理の他の業務と一括りにせず、「勤怠管理」という名称で区別されています。

人事管理・労務管理・勤怠管理の重要性

人事管理・労務管理・勤怠管理は、いずれも企業の健全性を保つために欠かせない業務です。ここからは、各業務の意義や重要性について解説します。

管理業務それぞれの違い
人事管理企業の安定化・市場での競争力の維持において重要な役割を果たす
労務管理労働基準法や社内規定に沿った労働ルールの整備・監視に重要
勤怠管理過重労働の防止や正確な給与計算のために重要な役割を果たす

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人事管理・労務管理・勤怠管理の重要性

  1. 人事管理の重要性
  2. 労務管理の重要性
  3. 勤怠管理の重要性

人事管理の重要性

人事管理は、企業の安定化・市場での競争力の維持において重要な役割を果たします。人事管理は、効果的な人材を採用・確保・配置を目的としており、各部門のパフォーマンスアップひいては組織全体の生産性の向上を狙う業務です。

人事管理ができていない場合、従業員それぞれに適した人材配置ができません。例えば、デスクワークが得意な従業員が営業職になるといったミスマッチが起こります。能力が発揮できなければ、個人の実績が下がるだけでなく、その部門全体の業績も低下するでしょう。

一人ひとりに適切な人材配置を行うには、まず各従業員の能力やスキルを見極め、公正な人事評価を行うことが大切です。人事管理では、労働状況を中心にさまざまな面から適切な人事評価を行います。

また、各従業員が配置された場所で安心して心地よく働けるように環境を整えるのも、人事管理の範疇です。例えば、スキルアップやキャリア形成の制度整備・実績やスキルにあわせた昇給のほか、福利厚生の充実などが挙げられます。

特に、近年は価値観の多様化などにより、新卒入社した企業に定年まで勤めることが美徳ではなくなりました。今後、この傾向はますます増加すると予測されており、各企業は優秀な人材をつなぎとめるための施策を講じなければなりません。

そこで重視されるのが人事管理です。各従業員にやりがいのある働き場所を提供することで、優秀な人材の育成・確保を目指します。これにより組織全体での生産性の向上と事業の安定化、ひいては市場での競争力の維持が期待できるでしょう。

労務管理の重要性

労務管理は、健全な労働環境を整備するうえで重要な業務です。具体的には、労働基準法や社内規定に沿った労働ルールを整備し、かつルールに則った労働が行われているか監視します。

人事管理が適切でない場合、過重労働などの労務トラブルが発生する恐れがあります。すなわちコンプライアンスに違反することになるため、社内外からの信頼の低下が起こるでしょう。

例えば、社外からの信頼の低下は、商談や売上の機会損失を招きます。また、社内からの信頼性の低下は、従業員の労働意欲の低下や離職につながるでしょう。いずれにせよ、事業の存続に支障を来す要因です。

労務管理は、こういったリスクを回避するために重要です。健全な労働環境が維持されることで、従業員は安心して健康的に働けます。さらに対外的な信用度も高まるため、既存・新規を問わず顧客を確保しやすいでしょう。

また、ホワイトな企業というイメージが社会に広がれば、入社希望者の増加も見込めます。事業の安定化を図るためにも、労務管理は適切に行う必要があります。

勤怠管理の重要性

勤怠管理は、過重労働の防止や正確な給与計算のために重要な業務です。特に、近年は働き方改革を背景に、時間外労働を取り締まる法令が強化されています。法令違反を回避するためにも、勤怠管理によって各従業員の労働時間を適切に管理しなければなりません。

また、勤怠管理は給与計算にも大きく関わる業務です。従業員が労働に見合った報酬が受け取れない場合も、当然ながら法令違反にあたります。また、従業員の労働意欲が低下しやすくなるため、ひいては生産性の低下・離職率の増加も起こるでしょう。

勤怠管理は、こういったリスクを避けるためにも重要です。

人事管理・労務管理・勤怠管理の業務内容の違い

人事管理・労務管理・勤怠管理は、従業員が健全に働けるよう管理する業務ですが、カバーしている業務範囲が異なります。各業務を適切に遂行するためにも、業務内容の違いを理解しておきましょう。

人事管理業務労務管理業務勤怠管理業務
人材の採用就業規則の整備労働時間・残業時間の管理
人材の育成給与計算有給休暇の管理
人事評価・人材の配置社会保険・福利厚生の手続き
モチベーション
コンディション管理
労働安全衛生法に基づく
職場環境づくり
労災や労務トラブルへの対応

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人事管理・労務管理・勤怠管理の業務内容の違い

  1. 人事管理の業務内容
  2. 労務管理の業務内容
  3. 勤怠管理の業務内容

人事管理の業務内容

人事管理は、従業員一人ひとりを直接管理する業務です。具体的には、次のような業務を担当します。

人材の採用

新しい人材の採用は、人事管理の主要な業務の1つです。応募者の採用から入社に至るまでに発生するさまざまな業務を担当します。

  1. 採用計画の立案
  2. 応募者の募集
  3. 応募者への説明会
  4. 選考日程の調整
  5. 選考(書類審査・面接)
  6. 内定通知
  7. 内定式・内定者フォロー

人材の採用において重要なのは、企業を成長させるような優秀な人材を確保することです。そのためには、企業の経営戦略や事業方針に合致した物像を理解し、それに適合した人材を見極める必要があります。

なお、採用対象者は新卒だけでなく、中途採用・アルバイト・パートなど多岐にわたります。優秀な人材を確保するには、各雇用形態にあわせて、戦略的な採用計画を練らなければなりません。

人材の育成

採用した人材の育成も、人事管理部門が担当します。各内定者の能力や適性に合わせて、研修やセミナーなどを実施し、配属先で即戦力として活躍できるよう支援します。

人材育成の研修やセミナーには、次のようなものがあります。

  1. OJT:実際に職務に就きながら実践的に技能を学ぶ
  2. OFF-JT:講義形式で技能を学ぶ
  3. eラーニング:オンライン上で講義・研修を受ける

人材の育成度は、企業の生産性や業務効率を大きく左右するポイントです。個々のレベルが底上げされることで、組織全体のパフォーマンスもアップするでしょう。

また、新卒の場合は、職務に必要な技能だけでなく、一般的なビジネスマナーやコンプライアンスの研修も実施しなければなりません。育成目的に合わせて、最適な研修法を検討しましょう。

人事評価・人材の配置

個々の能力やスキルを見極め、最も能力を発揮できる場所に配置するのも、人事管理の重要な業務です。

特に重要なのは、適切な人事評価です。各従業員の勤務状況・実績・人柄などを考慮し、公正な評価を下すことが、公平な昇給や昇格につながります。さらに、能力を最大限に活かせる部門への配置も可能になるでしょう。

昇給・昇格ややりがいのある部署への配置は、従業員のモチベーションを左右する要素です。その基盤となる人事評価を適切に遂行するには、人事評価基準・制度の策定が重要です。人事管理部門は、不公平のない人事評価制度を作り上げましょう。

なお、人材配置は、自社の事業計画と従業員本人の希望を踏まえて行うことが大切です。たとえ能力的には優れていても、本人が希望しない職種では、労働意欲が低下する恐れがあるためです。

従業員と企業の配属希望がミスマッチを起こしている場合、間に立って交渉するのも、人事管理部門の大切な仕事です。

モチベーション・コンディション管理

各従業員のモチベーションやコンディションの管理も、人事管理業務に含まれます。具体的な施策としては、定期的な面談やアンケートの実施といった施策があります。勤怠情報も重要な指標です。

例えば、欠勤・遅刻が多い従業員は、企業への愛着・労働への意欲が低下している可能性が高いです。もしくは、身体的・精神的な不調を抱えている可能性があります。

こういった不調を素早く察知することで、個別に適切なフォローを行えます。ひいては、モチベーションやコンディションの悪化による離職を阻止できるでしょう。

特に精神面の不調は外部からは分りづらいものです。さまざまなツールを駆使し、各従業員の内面を可視化できるような取り組みを行いましょう。

労務管理の業務内容

労務管理は、従業員が安心して働ける環境を整えるための業務です。具体的な業務には、次のようなものがあります。

就業規則の整備

就業規則とは、労働時間・賃金・退職に関する事項を定めたもので、常時10人以上の従業員を雇用する企業は整備が義務づけられています。

就業規則の作成後は所轄の税務署署長への提出が必要で、これも労務管理部門の業務範囲に含まれます。就業規則の変更時も、同様に税務署への届出が必要です。

なお、就業規則の作成時には、労働者の代表者の意見を聴取することが義務づけられています。また、作成した就業規則は従業員全員への周知も必要です。

労務管理部門は、こういった就業規則作成に関わる業務全般を行います。就業規則は社内において強い効力を持つものであるため、従業員に不公平が起こらないよう、中身を慎重に検討する必要があります。

給与計算

従業員の給与計算も労務管理部門の業務です。時間外労働の割増賃金や、各種手当・賞与の計算も含まれます。

給与体系は雇用形態や終業時間帯によって異なり、これらの計算には労働基準法や租税法の知識が必要です。専門性が高く、かつ複雑な計算が求められるため、労務管理の中でも特に慎重に行われるべき業務といえるでしょう。

給与支給ミスは労務トラブルの原因でもあるため、抜け漏れなく業務を遂行する必要があります。一般的に給与計算は、給与計算ソフトを利用する企業が多く、複雑な計算もある程度は自動化されています。

ただし、給与額などが変更になった際は、その設定を行わなければなりません。この業務についても、労務管理部門が責任を持ちます。

社会保険・福利厚生の手続き

各種の社会保険の加入手続きや福利厚生の手続きも、労務管理業務に含まれます。なお、福利厚生には「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があり、社会保険はこのうちの法定福利厚生にあたります。

【法定福利厚生:法律で定められた福利厚生】

  1. 雇用保険
  2. 健康保険
  3. 介護保険
  4. 厚生年金保険
  5. 労災保険

【法定外福利厚生:企業が独自に行う福利厚生】

  1. 特別休暇
  2. 社宅
  3. 育児支援
  4. 社員食堂の運営

労務管理部門は、従業員の採用時または退社時に、各種社会保険の加入・脱退の手続きを行います。具体的には、所轄の年金事務所や加入健康保険組合への届出が必要です。

また、福利厚生の中には、従業員に加えその家族に供与されるものがあり、これに伴う手続きも労務管理の範疇に含まれます。

なお、福利厚生とはやや異なるものの、職場環境や業務改善も労務管理の大切な業務です。例えば、各種ハラスメントの防止・コンプライアンスの向上につながるような施策を行いましょう。

福利厚生は、従業員が安心して働けるために供与されるものです。また、職場への満足度を左右するポイントでもあるため、事業内容や企業形態にあわせて内容を充実させることが大切です。

労働安全衛生法に基づく職場環境づくり

労働安全衛生法に基づく職場環境づくりとは、簡単にいえば、従業員が安全かつ健康に働けるような環境作りです。具体的には、職場の安全性の担保や従業員の健康管理が必要です。

例えば、雇入れ時の健康診断のほか、最低年1回の定期健康診断の実施が代表的です。そのほか、職場環境の整備・産業医や衛生管理者の設置、安全衛生に関する従業員教育などが含まれます。

また、2015年12月から、50人以上の従業員を抱える企業には、1年ごとのストレスチェックが義務づけられました。

不適切な安全衛生や健康管理は、労災・過労死の原因となります。また、従業員の心身の不調を招くこともあります。コンディションの悪化が原因で休職・離職となれば、組織全体の生産性の低下につながります。

従業員が安全で健康に働ける環境を整えることは、事業の安定化や生産性の向上に欠かせないポイントです。また、安全衛生管理違反は法令違反として罰則の対象となるため、リスク回避のためにも、労務管理部門には徹底した安全衛生管理が求められます。

参考:労働安全衛生法|厚生労働省

労災や労務トラブルへの対応

労災や労務トラブルは未然に防止しなければなりませんが、万が一、実際に起こった場合の対応も労務管理部門が行います。

例えば労災の発生時には、労災の証明証の発行や労災申請の支援、労働基準監督者への「労働者死傷病報告書」の提出、さらに休業手当の手続き・支給などを行わなければなりません。

また、賃金未払いなどの労務トラブルについては、トラブルの内容に合わせて適切かつ真摯な対応が求められます。

労災や労務トラブルは、時に大きな損害賠償に発展する可能性があるほか、労災保険料の値上げ・社内外からの信頼を失う原因です。すでに起こったトラブルについては、真摯に対応することで、こういったリスクを回避しやすくなるでしょう。

労務管理部門には、そもそも労災・労務トラブルが起こらないよう、安全衛生管理などを徹底して行うことが求められます。

勤怠管理の業務内容

勤怠管理は、従業員の労働時間を管理する業務です。労務管理の範囲に含まれる業務ですが、給与計算や法定労働時間の遵守といった特に重要な事柄に関連することから、「勤怠管理」として区別されることが一般的です。

ここからは勤怠管理の主な業務内容をご紹介します。

労働時間・残業時間の管理

ICカードやタイムカードを利用して、各従業員の始業時刻・終業時刻のほか、遅刻・早退・欠勤などを把握し、ひと月の実労働時間を集計します。残業や休日出勤などの時間外労働時間の管理も、勤怠管理に含まれます。

実労働時間の集計は、正確な給与計算に必要な業務です。例えば、深夜労働や休日出勤は給与が割り増しになるため、残業時間を正しく集計し、計算しなければなりません。

また、残業時間については法律で上限が定められているため、上限を超えそうな従業員に対しては事前の通知が必要です。

時間外労働時間の超過は労働基準法違反となります。法令違反を回避するためにも、各従業員の労働時間を適切に把握しましょう。

有給休暇の管理

有給休暇の管理も勤怠管理に含まれます。働き方改革を受け、最低でも年5日の取得が義務づけられました。取得日数が規定に達していない場合は、法令違反と見なされるため、各人の取得状況を把握し、未達成の従業員には取得を促しましょう。

人事管理・労務管理・勤怠管理に共通した注意点

人事管理・労務管理・勤怠管理の遂行にあたっては、情報管理意識や業務改善意識の向上・法令遵守といった注意点があります。

ここからは、それぞれの内容をご紹介します。

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人事管理・労務管理・勤怠管理に共通した注意点

  1. 情報管理意識
  2. 法令遵守
  3. 業務改善意識

情報管理意識

人事管理・労務管理・勤怠管理の部門関係者は、情報管理意識を持つことが大切です。情報管理意識はセキュリティ意識とも言い換えられます。

いずれの業務でも、従業員の氏名・住所や給与といった個人情報を頻繁に扱います。こういった情報を軽々しく部外者に話すことは、たとえ悪意はなくとも、個人情報保護法違反にあたります。

また、他愛もない噂話が外部への情報漏洩、ひいては企業への甚大な損失を招くこともあります。こういったリスクを回避するためにも、業務で知り得た情報は絶対に外部に漏らさないという意識を持つことが大切です。

意識改革だけでなく、具体的な施策も必要です。例えば、システム上で情報管理を行っている企業は、サイバー攻撃対策・ウイルス駆除ソフトの導入といったセキュリティ対策を行いましょう。

法令遵守

人事・労務・勤怠の管理には、各種の法令の知識が求められます。これらに違反した場合は罰則が課されるため、法令に則って業務を遂行しなければなりません。

各業務と関連性が深い法律には、次のようなものがあります。

労働基準法

労働基準法は「労働三法」の1つで、労働者の労働条件の最低基準を定めた法律です。使用者(経営者)から立場が弱い労働者を守り、ヒトとして最低限の生活を保障するために設けられました。

労働基準法では、例えば次のような事柄について言及されています。

  1. 賃金の支払の原則
  2. 労働時間の原則
  3. 時間外・休日労働
  4. 割増賃金
  5. 解雇予告
  6. 有期労働契約

労働基準法は、特に労務管理や勤怠管理と関連が深い法律です。人事担当者も、法律の内容を正しく理解する必要があります。

参考:労働基準法 | 厚生労働省

労働組合法

労働組合法も「労働三法」の1つにあたります。労働組合と使用者の対等な交渉を実現するためのルールがまとめられています。

労働組合とは、労働者が結成する組織です。労働者が団結し、個々人では難しい賃金の値上げ・福利厚生などの要求を行います。

ただし、使用者のほうが立場が強いことに変わりはありません。この格差を調整するために定められたのが労働組合法です。

労働組合と使用者の対等性を担保することで、協力して職場の課題に取り組み、労働者にとって働きやすい環境を整備することを促すための法律といえます。

参考:労働組合法|厚生労働省

労働関係調整法

労働関係調整法は、労働者と使用者の間に紛争(労働争議)が起こった場合、その早期解決を目指すための法律です。労働基準法・労働組合法と並び、労働三法の1つに数えられています。

労働関係調整法では、労働委員会による「斡旋」「調停」「仲裁」のやり方などが定められています。なお、労働委員会とは、労働組合法に基づいて設置される行政組織で、労働争議の円満な解決を支援します。

労働者の使用者の紛争は未然に回避するのがベストです。ただし、必ずしも防げるわけではありません。万が一の場合には、紛争を早期解決に導くためにも、人事や労務部門の関係者は、労働関係調整法の内容をあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。

参考:労働関係調整法|厚生労働省

労働安全衛生法

労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康を守り、快適で働きやすい労働環境を整備するための法律です。例えば、定期的な健康診断の実施・ストレスチェックなどの施策が規定されています。

また、現場での事故(労災)を防ぐために、労働現場の設備の確認・修繕などについても言及されています。

労働安全衛生法に違反すると、罰則の対象になります。また、安全・衛生は従業員のモチベーションにも関わることから、人事・労務関係者は内容を正しく理解しておく必要があります。

参考:労働安全衛生法|厚生労働省

労働契約法

労働契約法は、労働者の雇い入れ・雇い止めや契約の変更に関して基本的なルールをまとめた法律です。

労働契約法の目的は、立場が弱い労働者が不利な労働条件を押しつけられないよう、保護することです。また、不当な労働契約による争議の防止も、目的の1つです。

近年は就業形態の多様化を受け、個々の労働契約の内容が複雑化しています。すなわち労働争議の発生リスクが上昇したことから、これを未然に防ぐために労働契約法が施行されました。

雇用に関する細かなルールが定められているため、特に人事関係者は内容を理解しておく必要があります。

参考:労働契約法|厚生労働省

業務改善意識

人事・労務・勤怠管理においては、業務上の課題や改善点を見つけようとする意識を常に持つことが大切です。具体的には、各部門における業務状況を分析し、無駄な作業や効率の悪いフローがないか、常に目を配りましょう。

特に、紙やExcelを使った手動での業務は効率が悪く、入力ミスなどのヒューマンエラーのリスクも高いです。こういった課題をクリアするには、業務フローの抜本的な見直し・改善が必要になることも多いです。

人事・労務・勤怠関連の業務改善法としてよく利用されているのが、各種の業務システムの導入です。従来は手動で行っていた業務をある程度自動化できるため、業務担当者の負担を軽減するとともに、業務の効率化を図れます。

また、ヒトの介在を最低限に抑えられるため、ヒューマンエラーの防止効果も期待できます。人事・労務・勤怠の管理におすすめなシステムについては、次項でご紹介します。

人事管理・労務管理・勤怠管理を効率化するシステム

手動での人事・労務・勤怠管理は工程数が多いため、どうしても時間がかかります。また、ヒトが多く関わるためヒューマンエラーのリスクも捨てきれません。

こういった課題のクリアに役立つのが、各業務に特化したITシステムの導入です。ここからは、人事管理・労務管理・勤怠管理に役立つシステムについて解説します。

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人事管理・労務管理・勤怠管理を効率化するシステム

  1. 人事管理システムとは 
  2. 労務管理システムとは
  3. 勤怠管理システムとは

人事管理システムとは 

人事管理システムとは、人事関連業務を一元管理できるシステムです。従来は手動で行っていた人事情報・人事評価・給与の計算のほか、採用活動や人材配置もシステム上で完結できます。

煩雑な人事業務をある程度自動化できるため、部門全体での業務の効率化を狙えます。カバーできる業務範囲はシステムによって異なるため、自社が求める機能を備えているか確認しましょう。

人事管理システムとは?機能やメリット、選び方を解説

人事管理システムとは、従業員の情報や勤怠、労務などの人事業務に関する情報を一元管理できるシステムです。上手に活用することで業務効率化や人為的ミス防止に繋がります。本記事では、人事管理システムの機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。

労務管理システムとは

労務管理システムは、労務関連業務をコンピュータ上で完結できるシステムです。従業員の入退社や社会保険の手続きのほか、給与の管理などを一貫して行えます。年末調整などの納税関連業務をカバーできるものもあります。

従来は紙やExcelで行っていた労務管理をデジタル化でき、担当者の業務負担を大きく軽減できるでしょう。また、複雑な給与計算も自動化できるため、計算ミスといったヒューマンエラーの防止も期待できます。

労務管理システムとは?メリット・デメリット、機能や選び方を解説

労務管理システムとは、従業員の労働時間や社会保険・労働保険などの管理、労務手続きが行えるシステムです。本記事では、労働管理システムをよく知らない方・導入を検討している方のために、システムの機能や選び方、メリット・デメリットを解説しています。

勤怠管理システムとは

勤怠管理システムとは、勤怠管理をデジタル上で行えるシステムです。ICカードやタイムカードと連携させ、出退勤時刻を自動で記録するものが一般的です。

従来の勤怠管理は、月末にタイムカードを回収して手動で実働時間を計算する必要がありました。勤怠管理システムでは、毎日の出退勤時刻から実働時間を自動で集計するため、業務を効率化できます。また、集計ミスなどのヒューマンエラーも回避できるでしょう。

勤怠管理システムの中には、給与計算ソフトや労務管理システムと連携できるものも多いです。給与の計算や有給休暇の取得状況の把握も簡単に行えるため、法令違反の回避にもつながるでしょう。

勤怠管理システムとは?機能やメリット・デメリット、導入手順も解説

勤怠管理システムは、従業員の出退勤の時間や労働時間を適切に管理できるシステムです。給与計算など他システムとも連携でき、業務の効率化や不正打刻の防止にも役立ちます。本記事では、勤怠管理システムの機能やメリット・デメリット、選び方などを解説しています。

まとめ

人事管理・労務管理・勤怠管理は、従業員が安全で健康に働けるよう管理する業務です。ただし、カバーする業務がそれぞれ異なるため、各業務の範囲を正しく理解しておくことが大切です。

各業務では機密性の高い情報を扱うことが多いため、関係者は情報管理意識やセキュリティ意識を持つことが求められます。また、法令違反を回避するためには、関連する法律の内容をある程度理解しておく必要があります。

人事や労務管理は手動でも遂行できますが、効率が悪くヒューマンエラーのリスクもあることから、近年は業務システムを導入する企業が増えています。

自社に適した人事管理・労務管理・勤怠管理システムを導入し、各業務を効率かつ正確に遂行しましょう。

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