原価計算とは|原価計算の種類や目的、計算方法を分かりやすく解説

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  • 原価計算とは原価管理の中の1つであり、財務会計と管理会計を適切に行うために重要
  • 原価計算には原価の3要素や直接費・間接費などの基礎知識が必要であり、把握が大事
  • 原価計算は製造業以外の業種でも必要とされ、原価管理システムで生産性が向上する

原価計算とは、製品の製造やサービスを運営する上でかかる費用を算出することを指します。原価計算を行うことは、事業における正確な利益を知るために必要です。本記事では、原価計算を行う目的から、原価計算の基礎知識や種類、計算方法などを分かりやすく解説します。

目次

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  1. 原価計算とは
  2. 原価計算を行う目的
  3. 原価計算の基礎知識
  4. 原価計算の種類
  5. 原価計算の方法
  6. 製造業以外の業種でも必要な原価計算
  7. 原価率を簡単に算出できる原価管理システム
  8. まとめ

原価計算とは

原価計算とは、製品を製造するためにかかる費用・サービスを提供する上でかかる費用を計算し、製品やサービスの原価を算出することです。

製品の製造過程やサービスの提供過程では、材料費・加工費・労務費・原価償却費などが費用としてかかり、これらすべてが原価計算に含まれます。

原価計算を分かりやすく説明すると、「1つの商品の製造やサービスの提供過程でかかった費用の計算」になります。製品を作るための材料や部品の費用だけでなく、製品やサービスの生産や提供にかかった人件費や運搬費なども原価の計算に含まれるのが特徴です。

原価管理との違い

原価計算と間違えやすいものとして、原価管理が挙げられます。原価計算は製品やサービスの原価を算出する作業を表し、原価管理は原価計算で算出した結果を基に企業の利益につなげることを指します。

よって、原価計算は原価管理における1つの手段であるといえます。なお、原価計算を行っただけでは、原価管理を実行できているとはいえない点には留意しましょう。

原価計算を行う目的

原価計算を行う目的は、財務会計目的と管理会計目的の2種類があります。具体的には、外部に情報提供するために行う目的、自社の経営管理を行うための目的を指します。ここでは、財務会計上の目的と管理会計上の目的について詳しく解説します。

財務会計上の目的 

原価計算は、財務会計上の目的で算出されています。財務会計とは、企業の経営成績や財務状況を株主・取引先・銀行などに報告する社外向けの会計です。

企業は、貸借対照表や損益計算書などを用いて、財務会計を行うことが義務付けられています。財務会計の際に使われる財務諸表を適切に作成するためには、原価計算が必要不可欠です。

財務会計の情報は、融資の可否や株式の売却・保有などの判断を行う情報であることから、非常に重要な役割があります。原価計算によって、製品やサービスの原価が明らかになれば、どれだけの利益を生み出したかを外部に示すことが可能になります。

管理会計上の目的

原価計算は、管理会計上の目的でも使用されています。管理会計とは、商品やサービスの利益を把握・適性価格の設定・コストの見直しなど、企業の経営上の意思決定に必要な会計業務です。

例えば、原価計算によって企業が理想とする原価と実際の原価を比較できるため、「材料費のコストダウンができるか」「作業工程に無駄がないか」などの適切な判断が容易にできるようになります。

また、原価計算によって経営計画上の具体的な数値を算出できるため、経営計画の数値的な根拠を持たせる際にも活用が可能です。例えば、「1年後に利益の20%増加」を目標とする場合、原価計算によって具体的な数値を算出することが可能です。

原価計算の基礎知識

原価計算には、原価の3要素や直接費や間接費などの基礎知識が必要です。ここからは、それぞれの費用などの基礎知識について解説します。

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原価の3要素

原価を大きく分けると、材料費・労務費・経費の3要素に分けられます。これを「原価の3要素」と呼び、原価計算の基本となる費用です。以下で、それぞれの費用や費目例などについて解説します。

材料費

材料費とは、製品を製造する際に購入・消費した物品の原価のことです。製品の製造に必要な材料に加えて、製造過程で必要な消耗品・工具なども材料費に含まれます。

材料費の具体的な費目例は、以下のようなものが挙げられます。

  1. 主要材料費:製品の主たる素材となる材料の原価
  2. 補助材料費:燃料・塗料・接着剤など製品を製造する際に、補助的に消費するものの原価
  3. 買取部品費:外部から購入した製品の材料
  4. 消耗工具備品費:製品を製造する際に使用する10万円以下の工具や備品
  5. 工場消耗品費:製品を製造する際の消耗品の原価

例えば、衣類などの製造では、生地などが主要材料費に該当します。補助材料費は染料・接着剤、買取部品費はボタン・ファスナーなどが該当します。このように材料費にもさまざまな費目があるため、どれに費目に該当するのか確認しておきましょう。

労務費

労務費とは、製品を生産する上で必要な人件費の原価のことです。従業員の給料だけでなく、健康保険や雇用保険などの保険金の負担も労務費に含まれます。

労務費の具体的な費目例は、以下のようなものが挙げられます。

  1. 従業員の給与:製品の生産に関わる正社員・契約社員・アルバイトなどの賃金
  2. 従業員の賞与:従業員の賞与
  3. 法定福利費用:健康保険料や雇用保険料
  4. 福利厚生費:通勤交通費・扶養手当・家賃補助費
  5. 退職金積み立て:退職金制度の掛け金など

経費

経費とは、材料費と労務費以外のコストのことです。例えば、業務委託などの外注費や、設備機器の減価償却費などが挙げられます。

また、事務所や工場などの職場環境を維持するための水道光熱費なども経費として計上します。ただし、製造機器を動かす燃料など、製造に直接関わった燃料費などは材料費に分類されるため、分類にはくれぐれも注意しましょう。

直接費と間接費

原価の3要素は、さらに直接費と間接費に分けて計上を行います。ここからは、原価の直接費と間接費について解説します。

直接費

直接費とは、製品を生産する際に必要な材料や労務費などを指します。例えば、ホイールを製造する場合、スチールやアルミニウムなどの主な原料や、加工に必要な材料・道具、燃料などの材料費、作業工程にかかった人件費などが直接費となります。

つまり、1つの製品を製造をするために、使われたことが明らかな材料費や人件費などを直接費として分類します。

間接費

間接費とは、複数の製品の製造に関わる費用を表します。例えば、複数の製品を同時に製造している場合の人件費や、複数の製品で使う材料や工具などが間接費となります。

間接費は、直接費のように製品1つのためにかかった費用としては区別できない原価を表しています。ただし、企業で決めた基準に基づいて、費用を配賦(はいふ)して直接費として割り振る方法もあります。

配賦とは、企業独自の基準に基づいて費用を原価配分する処理のことです。なお、配賦基準は企業で決めることができますが、利益にかかわる数値となるため、慎重に決定することが重要です。

変動費と固定費

変動費とは、売上や生産量などの企業の経営状況によって増減する費用のことをいいます。例えば、原材料・加工費・外注費・販売手数料などが該当し、経営状況による企業の生産量などによって変動する費用が変動費に該当します。

一方、固定費は売上や生産量などの企業の経営状況などに関わらず、一定の期間で常に発生する費用のことです。売上がない場合でも変わらず発生する費用であり、工場の家賃・光熱費・従業員の給与・社会保険料といった支出が該当します。

固定費の支出が少ないほど、利益も多くなるのが特徴です。そのため、企業の経営分析を行う上では、変動費や固定費を把握することが大切です。

原価計算の種類

原価計算の種類は、目的別に「全部原価計算」と「部分原価計算」、生産方式別に「総合原価」と「個別原価計算」に分かれます。ここでは、原価計算の種類について解説します。

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全部原価計算

全部原価計算とは、製品の製造にかかるすべての原価を計算する方法です。また、全部原価計算は、標準原価計算と実際原価計算の2種類に分かれています。ここからは、2種類の原価計算について解説します。

標準原価計算

標準原価計算とは、製品を製造する際に目標とすべき原価を計算する方法で「目標原価」とも呼ばれています。あらかじめ製品の原価目標を定めることで、実際にかかった原価と比較し、コストダウンや工程の見直しなどに役立てることができます。

各費用の目標原価を算出する際は、過去の自社の実績を分析したり、市場調査を行ったりすることが必要になります。標準原価計算は、実際にかかった原価と目標の差異を分析するのに効果的で、次期の予算策定に役立つのが特徴です。

実際原価計算

実際原価計算とは、製品の生産で発生する材料費・労務費・経費といったすべての費用を計算する方法です。「全部原価計算」とも呼ばれていて、製品の生産でかかった全部の原価を把握できるのが特徴です。

しかし、費用が発生した際に計算を行う方法のため、算出に時間がかかるのが難点です。主な活用方法としては、標準原価計算額との差異を分析し、目標原価を達成できたのかを確認する目的で活用されています。

標準原価計算と実際原価計算の違い|原価差異の分析方法について解説

標準原価計算とは、原価を管理するための原価計算を指します。製造業では、利益を拡大させるために、原価を正確に計算し、分析することが必要です。本記事では、標準原価計算と実際原価計算の違いについてや、原価差異の分析方法について解説しています。

部分原価計算

部分原価計算とは、その名の通り一部分のみを集計した原価計算の方法です。全部原価計算はすべての原価を計算するのに対し、部分原価計算は売上原価・販売費などに含まれる変動費のみを原価として、原価計算を行います

なお、変動費≒直接費であるため、「直接原価計算」とも呼ばれています。部分原価計算では、固定費は原価として計上せず、別の費用として計上を行います。部分原価計算は、変動費のみの原価が明確になるため、固定費の発生日基準で費用に計上できます。

したがって、利益や予算の計算が簡単に行えるようになり、損益分岐点も計算しやすくなるのがメリットです。

損益分岐点とは

損益分岐点とは、費用と売上高が一致する分岐点を指します。売上高が損益分岐点を下回る場合は赤字となり、上回る場合は黒字になるのが特徴です。

製品を販売する際は、商品の売上がそのまま利益になるのではなく、売上から材料費・人件費・家賃などの費用を引いた金額が利益となります。損益分岐点は、それらの費用を引いた後も、利益が残る場合の境目の金額を表しています。

例えば、固定費50万円、販売価格1,500円、直接原価500円の製品を売る場合を例とします。これでは1つあたり1,000円の利益を得られることになりますが、固定費と製品原価を回収するまでは赤字となってしまいます。

つまり、「1,500円の製品を何個売れば、固定費と直接原価をすべて回収できるのか」の分岐点を「損益分岐点」といいます。

損益分岐点の計算方法

損益分岐点の計算方法は、以下の通りです。

損益分岐点=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}

このうち「{1-(変動費÷売上高)}」の計算部分は、限界利益率を求める計算式となります。限界利益率とは、売上高のうち限界利益が占める割合のことで、売上の増減で限界利益がどれだけ変動するかを具体的に求めることができます。

例えば、売上が1,000万円あり、固定費が500万円、変動費が200万円かかったケースで計算をしてみましょう。限界利益率の計算に当てはめると、1-(200万÷1,000万円)=80%となります。

次に、損益分岐点の計算式に当てはめると、500万円÷80%=400万円となります。つまり、上記のケースの損益分岐点は、400万円と求めることができます。

また、別の計算方法として、「固定費÷(1-変動費率)」でも損益分岐点を求めることが可能です。変動費率とは、売上に対する変動費の比率を表しています。変動費を求める際は、「変動費÷売上高」で計算できます。

上記のケースだと、200万円÷1,000万円=20%となるため、500万円÷(1-20%)=400万円と同じ数値を求めることができます。

総合原価計算

総合原価計算とは、一定期間に発生した製品の原価を合計し、生産数で割って原価を計算する方法です。大量の製品を生産する企業に多く利用されている方法で、原価計算が簡単にできるのがメリットです。

主に1ヶ月単位の総製造原価を総生産数で割り、1製品あたりの平均原価を算出します。また、総合原価計算には、単純総合原価計算・組別総合原価計算・等級別総合原価計算・工程別総合原価計算などの種類があります。具体的な活用例は、以下の通りです。

  1. 単純総合原価計算:1つの製品を大量生産する場合など
  2. 組別総合原価計算:同じ製品でもデザインなどが違うものを生産する場合など
  3. 等級別総合原価計算:品質などによって等級分けする場合など
  4. 工程別総合原価計算:複数の製造工程を経て生産を行う場合など

上記のように自社の製造方法などに合った計算方法を活用することで、単一製品以外でも原価計算に対応できるようになります。

個別原価計算

個別原価計算とは、1つの製品やプロジェクトごとに原価を計算する方法です。顧客からの受注に応じて都度原価を計算するため、製品やプロジェクトごとの利益をタイムリーに把握しやすいのがメリットです。

個別原価計算は、原価を材料費・労務費などの費目別に分け、直接費と間接費を分類する作業が必要です。さらに製品やプロジェクトごとの稼働時間や人員比などによって、費用の配賦も行います。

このように、個別原価計算は計算の工程が煩雑なのが課題です。しかし、個別原価計算は細かい原価の算出が可能というメリットもあるため、適切に計算するには原価管理システムを利用して自動計算を行うのがおすすめです。

個別原価計算とは|総合原価計算との違いをわかりやすく解説

個別原価計算は、製品の生産コストを正確に把握する方法で、総合原価計算は企業全体の収益性や効率性を評価する手法です。本記事では、個別原価計算と総合原価計算の違いや、それぞれのメリット・デメリットを解説し、使い分け方について紹介します。

原価計算の方法

原価計算は、一般的に費目別原価計算・部門別原価計算・製品別原価計算の流れで行います。ここでは、それぞれの原価計算の方法について順番に解説します。

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費目別原価計算

費目別原価計算とは、材料費・労務費・経費を分類し、そこから費用を直接費と間接費に分けて計算する方法です。費用を分類する際は細分化しすぎず、計算しやすい形で集計すると処理が楽になります。

直接費と間接費を分けて計算することで、製品を生産するにあたって必要となった直接的な経費」と「それ以外の経費」を把握できるのが特徴です。

部門別原価計算

部門別原価計算とは、費用別原価計算で算出した間接費を各部門に配賦する工程です。間接費に分類される費用が、「どの部門でいくら原価がかかったのか」を把握するために行われます。

配賦する際は、稼働時間・工程比率・電力使用料などを基に、適正な割合で配分が行われます。配賦基準は利益にかかわる数値となるため、自社に合った配賦の方法を慎重に決定することが重要です。

製品別原価計算

製品別原価計算とは、費目別原価計算で算出した直接費と、部門別原価計算を行った間接費を合わせる最後の工程です。部門別原価計算で各部門に配賦した間接費を、企業の配賦基準に応じて製品別にさらに振り分けを行います。

製品別原価計算では、「1つの製品に対してどれだけのコストがかかっているのか」を具体的に可視化できます。このように、費用別原価計算・部門別原価計算・製品別原価計算の段階を踏むことによって、損益をより具体的に把握できるという特徴があります。

原価率とは

原価率とは、総売上高の原価の割合を表します。販売者側は、原価率が高いほど製品の利益が少なくなるのが特徴です。そして、消費者側は原価率が高いほど良い商品を安く手に入れられるのがメリットです。

原価率を分かりやすく説明すると、「売上を100%とした場合、原価が何%占めるか」を求めます。原価率の計算式は、以下の通りです。

原価率=売上原価(製造原価)÷売上高

また、売上原価(製造原価)は、以下の計算式によって求めます。

売上原価(製造原価)=仕入高+期首棚卸高-期末棚卸高

期首棚卸高は、期首時点の商品の在庫の単価を算出した金額を当てはめます。一方で、期末棚卸高は、決算当期に残った在庫の単価を算出した金額を当てはめます。

原価率によっては、消費者が「高すぎる」「安すぎる」といった不満を抱く場合もあるため、適切に設定する必要があります。

製造業以外の業種でも必要な原価計算

原価計算は、製造業以外のサービス業や、病院・農業などあらゆる業種で必要とされます。なぜなら、製造業では「製品を売ること」が中心となりますが、サービスを提供する際も「サービスを売る」という形となるため、本質的な意味には違いがないからです。

つまり、原価計算はさまざまな業界・業種の利益や原価の把握に必要であり、財務諸表などの作成にも役立ちます。

その他にも、適正な製品やサービスの適正な値段を設定したり、無駄を省くための原価管理を行ったり、ありとあらゆる業界の原価管理や経営判断に役立つ重要な役割を持っています。

原価率を簡単に算出できる原価管理システム

原価管理システムとは、複雑な原価率の計算などを簡単に算出できる便利なシステムです。原価計算以外にも、原価シミュレーションや損益の分析、予実の比較など原価管理に必要な業務が効率化できるのがメリットです。

特に、原価に対する売上と費用分析を正確に行いたい企業や、財務会計・管理会計を効率的に行いたい場合におすすめです。

迅速な経営判断で生産性が向上する

原価管理システムでは、原価をタイムリーに把握できるため、迅速な経営判断が可能になります。原価計算にかかるあらゆる工程を短縮できるため、人件費などのコスト削減につながり、利益の最大化を図ることができます

個別原価計算など複雑な集計や計算も自動化できるため、生産性を高めたい企業はぜひ原価管理システムの導入を検討しましょう。

まとめ

原価計算とは、製品を製造するためにかかる費用や、サービスを提供する上でかかる費用を計算し、製品やサービスの原価を算出することをいいます。

原価計算は、銀行・株主・取引先などの社外に財務状況報告する財務会計上の目的や、経営の意思決定などの管理会計上の目的で行われ、非常に重要な役割を果たしています。

原価計算の種類には、全部原価計算・部分原価計算といったいくつもの種類があります。原価計算は、手動で計算するのは工程や手間が非常に多いため、原価管理システムの導入を検討するのがおすすめです。

原価管理システムでは、複雑な計算も自動化し、予実の比較などもタイムリーに把握できるため、迅速な経営判断に役立ちます。さらに、原価管理の労働負担軽減にも貢献します。企業の利益を最大化したい場合には、原価管理システムの導入を検討してみましょう。

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