人事管理はエクセル（Excel）でもできる｜メリット・デメリットや注意点

企業での人事業務は採用・育成・労務など多岐に渡りますが、管理はエクセルで行うことも可能です。エクセルでの人事管理では無料のテンプレートも使えるため、コスト負担の削減に繋がります。本記事では、人事管理をエクセルで行うメリット・デメリット、注意点などを解説します。

目次

開く

閉じる

1. 人事管理はエクセル（Excel）でもできる
2. エクセルでできる人事管理の業務
3. エクセルで人事管理を行うメリット
4. エクセルで人事管理を行うデメリット
5. エクセルで人事管理を行う際の注意点
6. 業務を効率化するには人事管理システムの導入がおすすめ
7. まとめ

人事管理はエクセル（Excel）でもできる

人事管理とは、企業が従業員の基本情報や人事評価などの人事データを一元化して管理を行い、人材をより効果的に活用していくことを指します。

従業員の能力や部署のバランスを考慮し、配置を見直して最適化を図ったり、従業員のスキルアップのために研修や教育を行ったりすることも含まれ、さまざまな人材を有効活用して企業の業務品質や生産性をアップさせることを目的としています。

人事管理を行うには従業員情報をはじめとするデータの管理が必要ですが、データはエクセル（Excel）を利用して管理することも可能です。

エクセルでできる人事管理の業務

人事管理を行う際、エクセルで管理できる内容は、採用管理や勤怠管理・労働者名簿といった労務関係の情報や、給与明細、人事評価や保有資格の情報など多岐に渡ります。以下で、エクセルでできる業務内容について具体的に解説します。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

採用管理

求人を行う場合、採用選考に関する情報をエクセルに入力することで採用管理が可能です。応募者の基本情報やスキル、連絡状況・面接日・選考ステータスなどの項目を設定することで、進捗状況が把握できます。

また、応募者とのやりとりが多くなるため、連絡状況は伝達漏れのないように面接日連絡済・採否連絡済など、連絡ステータスを明記しておくと連絡漏れを防げます。

勤怠管理

従業員の始業・終業時刻をエクセルに入力することで、勤怠管理が行えます。計算式をあらかじめ設定しておくと、自動で勤怠時間のほかに残業時間も計算されます。手動で計算を行うことで正確性が高まり、効率的に管理ができます。

また、できるなら自社の労働時間制や労働形態に合わせて柔軟にカスタマイズができます。ただし、法律改正への対応は1つ1つ手動で行わなければならず、残業時間の改ざんリスクもある点には注意が必要です。

労働者名簿（人事台帳）の作成

労働者名簿（人事台帳）は、労働基準法により作成および保存が義務付けられている帳簿です。労働基準法で定められている記載項目を入力することで、労働者名簿をエクセルで作成できます。

保管方法については特段定めがないため、紙ベース・電子データのどちらでも可能です。ただし、紙ベースの場合は修正があった場合に二重線と訂正印が必要になるため、Excelデータのままで保存しておくと効率的です。

給与明細の作成

給与明細は所得税法で発行が義務付けられている書類です。必要項目を入力することにより、エクセルで給与明細を作成できます。

作成する際は残業時間・通勤手当・社会保険料・各種控除額を計算する必要がありますが、エクセルなら関数をあらかじめ設定しておくことで計算が効率化されるため、作成が比較的容易にできます。

また、自社の給与形態に合ったフォーマットに柔軟にカスタマイズすることも可能です。しかし、勤怠管理と同様、法改正や税率などの数値に変更が発生した場合は都度対応が必要になります。

目標・実績・評価の管理

人材の活用のためには、各チームや従業員の目標・実績・評価の管理が重要です。目標管理シートや人事評価シートをエクセルで作成することで、目標・実績・評価の管理ができます。

従業員の達成したい目標に対して、どのようなプロセスを経て実績を得たのかを評価し、シートに記録します。目標管理シートでは、目標達成に向けた進捗状況や課題も可視化され、従業員のモチベーション向上にも繋がりやすくなります。

また、人事評価の担当者としても目標・実績に対する評価がしやすくなり、フィードバックを行うための材料にも活用できます。

資格・研修履歴の管理

従業員が保有する資格や、受講した研修の履歴もエクセルで管理することが可能です。一覧表にすることで個々のスキルがすぐに把握でき、人材の育成状況が可視化されます。

属性を上手く整理できれば、部署別や入社年次などに分類して受講率などの分析を行うなどの管理がしやすいです。また、資格には更新や有効期限があります。エクセルで管理することにより、更新漏れや期限切れによる資格失効の防止にも役立ちます。

エクセルで人事管理を行うメリット

エクセルには、無料のテンプレートが使えるほか、さまざまなメリットがあります。以下では、エクセルで人事管理を行うメリットについて具体的に解説します。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

無料のテンプレートが使える

エクセルで人事管理を行う際、1から管理シートを作成するのは知識がないと難しいです。また、関数などを独自で設定した場合、操作が属人化する可能性が高くなり、結果的に共有しづらくなることもあります。

そこで、テンプレートの利用がおすすめされます。インターネット上には、さまざまな業務向けに作られたエクセル用テンプレートが多数あります。無料で使えるフリーテンプレートも多くあり、ダウンロード後は自社に合わせた作り込みも可能です。

すでにエクセルが利用できる環境であればコストをかけずに人事管理ができるため、負担が少ないのがメリットです。

操作に慣れている人が多い

エクセルは、多くの企業で導入されており、ビジネスだけでなく普段の生活でも利用している人が多いため、操作に慣れている人が多いツールです。そのため、人事管理へのエクセルの導入は受け入れやすく、操作に関する研修やサポートなどに時間もかからないでしょう。

また、エクセルに使い慣れている人は、関数やマクロなどを利用して自動計算を簡単に作り込むことが可能で、自社の仕様に合わせて柔軟にカスタマイズできるため、効率的な管理ができるといったメリットがあります。

他のシステムと連携できる

エクセルのデータを互換性の高いCSVで保存することにより、他システムと連携することができます。多くのシステムはCSVファイルの取り込み機能があり、人事管理の場合は勤怠管理システム・給与計算システム・経費精算システムなどと連携して活用することが可能です。

また、将来的にシステムへ移行する際も、CSVファイルを利用すればデータをスムーズに移行させることができるため、移行時の手間がかかりません。

エクセルで人事管理を行うデメリット

上記ではエクセルで人事管理を行うメリットについて解説しましたが、利用の仕方によってはデメリットが発生する可能性があります。エクセルで業務を行う際は、以下のような事項にも注意が必要です。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

セキュリティリスクがある

エクセルで人事管理を行う場合、セキュリティリスクが高いという点がデメリットとして挙げられます。エクセル自体のセキュリティ性能はそれほど高くないため、パスワード制限だけではセキュリティが万全ではありません。

また、人事管理では個人情報を多く扱うため、データへの不正アクセスや、誤送信などによる情報漏えい・改ざんには特に注意が必要です。そのため、社内でも取り扱いにはルールを定め、特定の人だけにアクセスを許可するなどして慎重に扱わなければなりません。

部署や職位ごとの権限管理がしにくい

セキュリティリスクに関連しますが、エクセルでは、簡易的なパスワード制限や閲覧者の制限をファイルに付与することができますが、部署ごとや職位ごとといった細かい権限管理を厳重に行うことができません。

つまり、上層部の者のみが閲覧したいものに対しても、人的なミスによって社内開示されてしまう可能性があります。その際、閲覧履歴などを遡って確認することも困難であるため、アクセス権限設定や共有範囲設定のしづらさは大きな欠点であるといえます。

データの整合性チェック・設定が不十分になる

エクセルには、数字や関数・マクロから作成する計算式などのエラーチェック機能はありますが、上書きされてしまった際などにデータの整合性をチェックするのは困難です。特に、人事管理では一人ひとり異なる情報を入力するため、整合性チェックが複雑化します。

また、間違いを発見する作業自体にも人的コスト・時間を要することになり、業務が属人化しやすいのも問題です。なお、管理する対象の従業員が多いほどにチェック体制は強固にしなければならず、管理だけで相当なコストを要することになる可能性があります。

入力・集計や社内での共有に手間がかかる

エクセルでの人事管理には、入力・集計に手間がかかるというデメリットもあります。入力では手作業で個別の数値などを入力する必要があり、1つのファイルではなく、複数のファイルを作成して集計するといった工程が必要な場合があります。

また、ファイルを共有できないため、リアルタイムでの情報が共有・確認できないといったデメリットもあります。データ更新も手作業で行う必要があり、ミスが発生する度に再度修正しなければならず、効率が悪くなることで結果的に手間がかかってしまいます。

人為的なミスや確認漏れが発生しやすい

エクセルは手入力やファイル管理の煩雑さなどから、人為的なミスや確認漏れが発生しやすいといったデメリットがあります。エクセルに関数やマクロを設定して情報の入力を自動化させても、基本情報の入力は手作業で行う必要があります。

また、ファイルは共有フォルダなどに入れておいても、個人のデスクトップにコピーして作業するなど、自由にファイルの複製をしやすいため、元のファイルが不明になるケースも少なくありません。

このように、複数の人の手によって入力を行ったりファイルが増えたりすると、人為的ミスや確認漏れが起きやすくなるといった傾向が強くなります。

エクセルで人事管理を行う際の注意点

エクセルで人事管理を行う際は、いくつかの注意点があります。デメリットが発生しないように、以下のような取り決めを行うことが重要です。

＼気になる項目をクリックで詳細へジャンプ／

管理する担当者を決める

エクセルで人事管理を行う際は、管理する担当者を決めることが重要です。誰でも編集できるようにすると、編集履歴がないため更新箇所が不明になったり、ミスに気付かなかったりします。

例えば、関数やマクロの数式が消えて自動計算が行えなくなると、再度設定しなければならないため、手間がかかります。さらに、誰でも編集できるようにすると書き換えなどの改ざんリスクが高まります。
特に、従業員への給与支払いに関わる勤怠管理・給与管理については担当者だけで編集する必要があるでしょう。

持ち出し・メール添付に関するルールを決める

前述したようにエクセルはセキュリティが弱く、個人情報を多く取り扱う人事管理では同時にセキュリティリスクが懸念されます。特に、ファイルの持ち出し・メール添付に関するルールの取り決めを行わないと、情報漏えいや改ざんのリスクが高まります。

エクセルのファイルは複製しやすく、外部に簡単に流出してしまいます。また、メール添付でファイルを送信する際、宛先を誤ったり違うファイルを添付したりすると、即座に情報流出へと繋がります。

したがって、個人情報の取り扱い、特にデータを他の場所で扱う作業に関しては厳重なルール設定が求められます。

必要な機能を明確にしてから設計する

エクセルで人事管理を行う際は、必要な機能を明確にしてからフォーマットの設計やテンプレートの選定を行いましょう。

特に、テンプレートを利用する際は不要な機能がデフォルトで設定されているケースがあります。自社に合わせた作り込みをするためには、何が必要かあらかじめピックアップし、不要な機能は排除すると良いでしょう。

不要な機能を持たせても、かえって使いづらくなるだけです。業務を効率化するには、できるだけシンプルな設計をおすすめします。

業務を効率化するには人事管理システムの導入がおすすめ

人事管理システムとは、採用から育成・評価、給与や勤怠などの人事や労務に関する人材データを一元管理するツールを指します。人材管理システムを利用することで、エクセル管理における複数のデメリットをカバーすることが可能です。

システムを使えばデータ入力などを自動化できる範囲も広がるため、入力作業の多い人事管理業務をシステム化することで、業務負担や人為的ミスを大幅に軽減したりすることが可能です。また、セキュリティ対策機能も備わっていることにより、安心して利用できます。

また、近年ではクラウド型のシステムが主流となっており、アクセス権限のある人は社外からでもアクセスできることから、リモートワークなどにも対応しやすいです。

ベンダーのサポートが受けられるのもメリット

人事管理システムを導入する際は、多くの場合ベンダーからのサポートを受けられます。具体的には、システムの初期設定や運用中の疑問やトラブルへの対応などです。エクセル管理の場合は自社で解決しなければならないことも、ベンダーの助けを借りることができます。

サポート体制が充実しているベンダーの場合は、人事管理業務の見直しや改善についてアドバイスをくれることもあります。ベンダーの力を借りながらシステム化を進めることで、より質の高い管理ができることに期待できます。

人事管理業務の規模が大きくなったらシステム化の検討を

エクセルでの人事管理は、特に小規模な企業に向いています。従業員数が増えて管理項目が増加してくると、どうしてもエクセル管理のデメリットの方が目立ってきてしまいます。

システムの導入にはある程度のコストがかかりますが、そのぶん業務効率化や安全性の面ではメリットが大きいです。そのため、一定程度以上の規模の企業では、システム化をした方がコスト削減に繋がることも多いです。

人事管理システムにもさまざまな種類があるので、比較検討をしながら自社のニーズにぴったり合うシステムを導入してみましょう。

まとめ

人事管理は、採用・育成・労務などの多岐に渡る人材データを管理する業務のことで、エクセル（Excel）で行うことも可能です。エクセルはすでに導入している企業が多く、無料のテンプレートも多くあるため、コストをかけずに管理の効率化を図れます。

そんな手軽に使えるエクセルですが、人為的ミスやセキュリティ面の弱さから、情報漏えいや改ざんのリスクは低くありません。また、エクセルで行う入力作業はそれぞれ手作業で実施するため、手間がかかります。

このようなエクセルのデメリットは人事管理システムを利用することで解決します。特にある程度の従業員規模を持つ企業には、システムの導入がおすすめです。この記事の内容を踏まえて、ツールを使った人事管理をより適切なものにしていきましょう。