企業側からシフトを変更することはできる?リスクや注意点を解説

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  • 企業側が従業員の同意を得ずにシフト変更をすると、法的リスクに触れる可能性がある
  • 企業側から急なシフトを変更を依頼した場合には、休業手当や割増賃金などが発生する
  • シフト変更に柔軟に対応するためには、効果的なシフト管理システムの導入がおすすめ

企業側からシフトを変更する際には、法的リスクに該当してしまう場合があります。やむを得ない場合は注意点を考慮し、従業員からの合意を得る必要があります。本記事では、シフト変更のリスクや注意点、従業員からの急なシフト変更の申し出への対処などを解説しています。

目次

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  1. シフト管理とは
  2. シフト変更が起こる原因
  3. 企業側からシフト変更をする際の法的リスク
  4. 企業側からシフト変更をする際の注意点
  5. 企業側からシフト変更をする際の従業員への対応
  6. 従業員からシフト変更の申し出があった際の対処
  7. シフト変更に伴う調整には手間と負担がかかる
  8. シフト変更に柔軟に対応するポイント
  9. シフト管理システムを導入するメリット
  10. まとめ

シフト管理とは

シフト管理とは、企業や組織において従業員の勤務スケジュールを計画し、適切に調整する業務のことです。この業務は、従業員の能力や希望、業務の需要などを考慮しつつ、効率的な勤務体制を築く目的があります。

特に、多くの従業員が関わる業界では、シフトの最適化は業績向上につながります。シフトの調整や変更は、従業員の私的な事情や業務の変動、繁忙期と閑散期の違いなど、多岐にわたる要因によって変動します。

そのため、シフト管理は柔軟かつ迅速な対応が求められる一方で、公平性や効率性も考慮しなければいけません

シフト管理をする目的

適切なシフト管理により、人的リソースを最適に配置することで、業務の効率化や生産性の向上を実現し、結果的に企業の収益を増加させることが可能となります。

一方、従業員の視点から見ると、シフト管理の目的は各々の負担を軽減させることにあります。公平で均等なシフト配分は、従業員のモチベーションを維持し、過度なストレスや疲労を防ぐ役割を果たします。

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業務効率化で利益を上げるため

適切なシフト管理を行うことで、人的リソースを最適に活用し、業務の効率化や生産性の向上を実現することができます。例えば、ピーク時の業務量に合わせてスタッフを配置することで、顧客の待ち時間を減少させ、サービスの質を向上させることが可能です。

さらに、適切なシフト管理を行うことで、不要なオーバータイムや人員の過剰配置を避けながらコストを効果的に抑えられるため、無駄な人件費の削減にもつながります。

また、従業員の満足度の向上も期待できるため、長期的な人材の確保や離職率の低下にも貢献し、結果的に企業の利益増加が見込めます。

従業員の負担を軽減させるため

適切なシフト配分は、従業員のワークライフバランスを保つ手助けとなり、過度な労働や疲労の蓄積を防ぐことができます。特に、ピーク時や繁忙期における適切な人員配置は、業務の効率化だけでなく、従業員一人ひとりの業務量を適正に保つことができます。

さらに、シフト管理を通じて従業員の希望や生活スタイルを考慮することで、職場全体の満足度や個々のモチベーションを向上させることが期待できます。

シフト変更が起こる原因

企業におけるシフト変更での企業側の都合としては、急な業務の増加や人員不足、イベントやキャンペーンの実施など、業務運営上の必要性から変更を求めることがあります。

一方、従業員側の都合としては、急な体調不良や家庭の事情、学業や他のアルバイトとの兼ね合いなど、個人のライフイベントが影響することが考えられます。

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シフト変更が起こる原因

  1. 企業側の都合
  2. 従業員側の都合

企業側の都合

企業側の都合でシフトを変更する場合、時短営業や臨時休業が主な例です。時短営業は、外部環境の変化や法令の要請、店舗の状況などにより、通常の営業時間を短縮して行うものです。

また、臨時休業は、店舗の設備トラブルや自然災害、その他の緊急事態など、予期せぬ事態が発生した際に取られる措置です。このような場合、従業員の安全を確保するためや、事態の収束を待つために営業を休止することが求められることがあります。

従業員側の都合

従業員側の都合でシフト変更を求める際には、体調不良や家庭の事情、急なトラブルなど、多岐にわたる理由が存在します。体調不良の場合、従業員自身の健康を考慮し、無理をせずに休むことが重要です。

特に、他の従業員や顧客に影響を及ぼす可能性がある場合、早めの対応が求められます。なお、家庭の事情としては、子供の急な発熱や学校からの呼び出し、家族の病気・事故など、家庭内での緊急を要する事態が考えられます。

企業側からシフト変更をする際の法的リスク

企業側からシフト変更する際、変形労働時間制を採用している場合や、従業員からの同意を得ずにシフトを変更する場合には法的リスクが生じます。よって、シフト変更を行う前に法的な基準をしっかりと理解し、従業員とのコミュニケーションを密に取ることが重要です。

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変形労働時間制を採用している場合

変形労働時間制は、繁忙期や閑散期の業務量の変動に対応するための柔軟な労働時間の制度です。この制度を採用することで、一定の期間内での労働時間の平均を取ることが可能となり、企業の業績や労働力の最適化が実現します。

しかし、企業側の都合のみでシフトを変更すると、労働基準法違反のリスクが高まるため、注意が必要です。つまり、企業側の都合だけで一方的にシフトを変更する行為は、変形労働として認められない可能性が高いです。

違反行為として認められると、超過労働時間に対する割増賃金の支払い義務が生じるなど、企業にとって経済的損失を招く場合があります。

参考:改正労働基準法の施行について|厚生労働省

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

変形労働時間制とは

通常の労働時間制度では、1日または1週間を単位として労働時間が定められていますが、変形労働時間制では、月単位や年単位での労働時間の平均を考慮します。そのため、業務の繁忙期や閑散期に応じて、労働時間を柔軟に調整することが可能です。

この制度の採用により、企業は労働力の最適化や労働コストの削減を図ることができます。一方、従業員にとっては生活リズムの安定や労働環境の向上が期待できます。

しかし、変形労働時間制の適切な運用を行わないと、労働基準法違反のリスクが生じるため、企業は変形労働時間制における正確な理解と適切な運用が求められます。

参考:変形労働時間制|厚生労働省

従業員からの同意を得ずにシフトを変更した場合

企業が経営難やその他の緊急の事情に直面した場合、勤務日程の変更を行いたいと考えることもあるかもしれません。しかし、既に決定した勤務日程を従業員の同意なしに一方的に変更する行為は、労働基準法において問題となる可能性が高いです。

労働基準法は労働者の権利を保護するための法律であり、勤務日程の変更は労働契約の変更とみなされるため、従業員の同意が必要とされます。仮に従業員からの同意を得ずにシフトを変更した場合、企業は労働基準法違反として罰せられるリスクがあります。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

企業側からシフト変更をする際の注意点

シフト変更を行うことで、労働基準法に抵触するリスクが高まることも無視できません。企業が休業を指示する場合、休業手当の支払いが義務付けられています。また、追加で勤務を依頼する場合は、割増賃金の支払いが必要となる可能性もあります。

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休業させる場合は休業手当を支払う必要がある

企業が従業員を休業させる場合、休業手当として平均賃金の6割以上の額を支払う必要があります。この休業手当は、天災事変を除く経営上の障害など、使用者側に起因するすべての場合に該当します。

また、平均賃金は、休業日の前日から3か月間の賃金総額をその期間の総日数で除した金額と定義されています。

参考:休業手当について|厚生労働省

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

所得の制限でシフト変更ができないことがある

従業員の所得が一定の範囲を超えると、税金控除の対象から外れる可能性があります。特に、扶養控除は所得税や住民税の計算において、影響を与える要素の1つです。扶養控除とは、税金を計算する際に所得から差し引かれる金額のことを指します。

しかし、所得が一定の額を超えると、この扶養控除の対象から外れる可能性が生じます。そのため、従業員が扶養家族を持っている場合や、所得の制限を超えないように働きたいと考えている場合、企業側の都合でシフト変更を行うことが難しくなることがあります。

参考:所得税のしくみ|国税庁

参考:家族と税

シフト変更で労働基準法に触れる可能性がある

労働基準法は、労働者の権利と安全を保護するための基本的な法律です。この法律の中には、労働者の労働時間、休憩、休日など、多くの重要な項目が定められています。

例えば、労働基準法では、1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間と定められています。これを超える労働をさせる場合、割増賃金の支払いが必要となります。また、6時間以上の勤務の場合、45分以上の休憩を取らせることが義務付けられています。

シフト変更によって労働基準法の基準を満たせない場合、企業は法的な問題に直面する可能性があります。そのため、シフトの調整や変更を行う際には、労働基準法の内容を十分に理解し、必ず遵守しましょう。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

時間外労働では割増賃金を支払うことがある

労働者が定められた労働時間や休日を超えて勤務する場合、割増賃金の支払いが必要となる場面があります。例えば、所定の労働時間を超えて勤務した場合や、休日に勤務を求められた場合などが該当します。

具体的には、夜間勤務や休日勤務、所定外労働などのケースで割増賃金が発生することが一般的です。この割増賃金は、労働基準法に基づき、労働者の権利として保障されています。企業側はこの法律を遵守し、正しく割増賃金を計算して支払う必要があります。

参考:しっかりマスター 割増賃金編|厚生労働省

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

企業側からシフト変更をする際の従業員への対応

シフト変更を行う前には、従業員からの合意を得ることが基本となります。突然の変更は従業員の生活や心理的な負担を増大させる可能性があるため、十分な説明と理解を求めなければいけません。

また、シフト変更に伴う手当の計算や説明も不可欠です。特に、休日出勤や延長勤務といった場合には、割増賃金が発生する場合があります。その詳細な計算方法や、支払い時期などを明確に伝えることが必要です。

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企業側からシフト変更をする際の従業員への対応

  1. 従業員からの合意を得る
  2. 手当の計算や説明を行う

従業員からの合意を得る

現代の労働環境では、企業と従業員との関係は単なる雇用者と雇用される者という関係を超え、パートナーシップのような関係が求められています。背景としては、従業員の満足度やモチベーションが、企業の生産性や業績に直結するという認識が広がっているからです。

そのため、企業側がシフト変更や業務内容の変更を行う際には、従業員からの合意を得ることが重要です。従業員の理解や協力を得ることで、スムーズな業務の運営が可能となり、従業員のモチベーションの維持や向上にもつながります。

手当の計算や説明を行う

企業がシフト変更を行うことで、休業や時間外労働が発生する場合、従業員に対して適切な手当を支払う必要があります。休業手当は、企業側の都合で従業員を休業させる場合に支払われるものです。

一方、時間外労働が発生した場合、割増賃金が発生します。これは、定められた労働時間を超えて、労働を行った場合に支払われるものです。このような手当は、労働基準法に基づいて定められており、企業は法律を遵守する義務があります。

従業員からシフト変更の申し出があった際の対処

従業員からシフト変更の申し出があった際、まず第一に「自店舗内での解決」を試みることが多いです。しかし、自店舗内だけでの調整が難しい場合、「他の店舗にヘルプをお願いする」方法もあります。

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従業員からシフト変更の申し出があった際の対処

  1. 自店舗内で解決する
  2. 他の店舗にヘルプをお願いする

自店舗内で解決する

自店舗内での解決を試みる場合、まずは他の従業員とのシフト交換ができるかを確認しましょう。シフト交換が可能な場合、双方の合意のもとで変更を行い、業務運営に支障が出ないよう調整します。

交換が難しい場合は、シフトの再調整を検討しなければいけません。例えば、短時間勤務や分割勤務といった方法を提案し、従業員の要望と業務の進行を両立させる方向で調整を行います。

他の店舗にヘルプをお願いする

自店舗内での調整が難しい場合、他の店舗にヘルプを求める方法もあります。まず、同じエリアや近隣の店舗に対して、一時的な人員の貸し借りの可否を確認しましょう。この際、ヘルプを求める期間や時間、必要な人数を明確に伝える必要があります。

また、他店舗からの応援が決まった場合、業務内容や店舗の運営ルールを事前に共有し、応援してくれる従業員が迷わずに業務へ取り組めるように心掛ける必要があります。

急なヘルプにも対応できるように、普段から他店舗との連携を深めることで、一時的な人員不足にも迅速に対応し、店舗運営を円滑に進めることができます。

シフト変更に伴う調整には手間と負担がかかる

店舗運営や業務進行中にシフトの変更や調整を行う場合、他の業務と並行してシフトを管理しなければならず、管理者の手間とストレスが増加します。

さらに、従業員それぞれの経験やスキルを考慮してシフトを組む必要があるため、単純な人数調整だけでなく、質の面でもバランスを取ることが求められます。

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他業務と並行してシフトを管理しなければならない

シフト管理は、店長やマネージャーが他の業務と並行して行うことが一般的です。例えば、日々の業績分析や商品の発注、接客、従業員の教育といった多岐にわたる業務を担当しながら、シフトの調整も行わなければなりません

また、突然の従業員の欠勤や季節の変わり目、キャンペーン期間など、繁忙期で業務量が変動する期間には、シフトの再調整が頻繁に必要となります。

ただし、バランスよくシフトを組むことは店舗の運営をスムーズに行うためにも重要ですが、多くの労力と時間がかかっているのが現実です。

従業員の経験やスキルを考慮してシフトを組む必要がある

多様な業務を持つ店舗や企業において、従業員一人ひとりの経験やスキルは、業務の質や効率に大きく影響します。例えば、レストランにおいて経験豊富なシェフが特定の日に不在の場合、その日のメニューの提供やキッチンの運営に影響が出る可能性が高まります。

また、新人スタッフが多く出勤する日には、熟練スタッフのサポートが必要となることも考えられます。よって、シフトを組む際には、従業員の経験やスキルを適切に配分しなければいけません。

しかし、そのためには、マネージャーや店長が従業員の能力を正確に把握し、柔軟にシフト調整を行う必要があります。

シフト変更に柔軟に対応するポイント

シフト管理においては気を付けるべきポイントも多いですが、管理者は急なシフト変更が起きた際にも柔軟に対応しなければなりません。特に、以下のようなポイントを意識しましょう。

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シフト提出の期限を決めて適切に管理する

シフト変更が起こる原因にはさまざまな理由があり、すべてを未然に防ぐことは不可能に近いです。しかし、管理者がシフト提出の期限がいつまでかを決めておき、基本的には変更はできないことを周知しておけば、個人的な理由によるシフト変更が起きにくくなります。

ただし、あまりにも厳重に管理しすぎると返って従業員からの不満にもつながるため、日頃からコミュニケーションをしっかりと取り、嘘の申告などがないような環境づくりの徹底も求められます。

その結果、急なシフト変更が発生したとしても、他の従業員からの協力をスムーズに得ることができるでしょう。

効果的なシフト管理システムを活用する

従来まで、紙やExcel(エクセル)によるシフト作成・管理を行っていた場合、シフト変更が起こる度に変更しなければならず、全体への周知のための印刷なども新たに必要でした。そこで、シフト管理システムを活用すれば、効果的なシフト管理が行えるようになります。

シフト管理システムの中には、手持ちのスマートフォンやタブレット端末から利用できるものもあり、シフト変更への素早い対応が可能です。また、従業員からしても簡単にシフトの提出・変更が行えるため、負担やストレスの軽減にもつながります。

シフト管理システムを導入するメリット

近年、多くの企業や店舗がシフト管理の効率化を目指し、専用のシフト管理システムを導入しています。エクセルをはじめとした手動での管理も一般的ですが、シフトの変更や調整の手間を考慮すると、システムの導入がおすすめです。

オンライン上での一括管理により、どこからでもアクセスが可能となり、シフトの確認や変更が容易になります。さらに、シフト申請の忘れを防ぐ通知機能や、自動でのシフト作成機能が備わっていることも多く、管理者の手間が大幅に削減されます。

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オンライン上でシフトを一括管理できる

シフト管理システムでは、オンライン上でシフトを一括管理することができます。例えば、シフト変更が生じた際、従来の紙ベースやエクセル管理では、確認や調整が複雑となって時間がかかることが少なくありません。

しかし、オンラインシステムを利用することで、変更情報がリアルタイムで共有されるため、関連するスタッフや管理者が即座に対応できるようになります。

通知機能でシフト申請忘れを防止できる

シフト管理の中で、従業員からの申請忘れは頻繁に発生する問題の1つです。そこで、シフト管理システムには、シフトの申請期限が近づくと、従業員に自動でリマインダーを送信する機能が備わっているものが多くあります。

この自動通知により、従業員はシフト申請を常に意識することができ、申請忘れを減少させることが可能です。また、管理者側からしても、未申請者の確認やリマインド作業の手間を省くことができます

自動でシフトが作成されるため、ミスを防げる

シフト作成では、従業員の希望や能力、業務のピーク時間など、さまざまな要素をバランスよく組み合わせる必要があります。さらに、手動でのシフト作成では、全てを考慮するのは困難であり、ミスが生じるリスクも高いです。

しかし、シフト管理システムには自動生成機能が備わっているため、従業員のスキルや経験を考慮して、適切に業務を割り当てることが可能です。

また、従業員が重複してシフトに入ってしまったり、シフトが空白になってしまうといったミスを防ぐこともできます。

まとめ

シフト管理は、従業員の希望や業務の要件を考慮しながら、効率的かつ公平に行われるべき重要な業務です。特に、シフト変更や調整が必要となる場面では、従業員の合意を得ることや、法的要件を確認することが不可欠です。

しかし、従来のExcelなどでの管理では、シフト管理のために多くの労力や時間が必要でした。シフト管理システムでは、オンライン上での一括管理や自動シフト作成、通知機能を活用することが可能となり、ミスを防ぎつつ、手間を大幅に削減することができます。

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