従業員満足度調査は匿名で行うべきか?メリット・デメリットを解説

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  • 従業員満足度調査は、匿名・実名どちらにもメリット・デメリットがある
  • 従業員満足度調査を匿名で行うと、率直な意見や正直な回答が得られやすい
  • 従業員満足度調査を匿名で行うと、適当に回答されたり忘れられたりするリスクがある

従業員満足度調査は、匿名でも実名でも実施できます。しかし、どちらを採用するか決めるのは難しいものです。この記事では、従業員満足度調査を匿名と実名で行うそれぞれのメリット・デメリットや注意点、調査を実施する際に知っておきたい流れなどを解説します。

目次

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  1. 従業員満足度調査は匿名・実名どちらで行うべきか
  2. 従業員満足度調査を匿名で行うメリット
  3. 従業員満足度調査を匿名で行うデメリット
  4. 従業員満足度調査を匿名で行う際の注意点
  5. 従業員満足度調査を実名で行うメリット
  6. 従業員満足度調査を実名で行うデメリット
  7. 従業員満足度調査を行う際のポイント
  8. 従業員満足度調査の流れ
  9. まとめ

従業員満足度調査は匿名・実名どちらで行うべきか

従業員満足度とは、職場環境・賃金体系・福利厚生・人間関係などに対しての満足度を表す指標で、ES(Employee Satisfaction)とも呼ばれています。従業員満足度を定量的に知るために従業員満足度調査は行われ、組織の課題や問題点の把握と改善を図ります。

少子高齢化による働き手不足が現実的になってきている昨今、企業にとって優秀な人材の確保は大きな課題となっています。そのために、各企業は従業員満足度調査を行い、新規採用者が魅力を感じ、採用後も長く働き続けられる労働環境づくりを行っています。

従業員満足度と似たものに、従業員エンゲージメントがあります。従業員満足度は労働条件に対する満足度であり、従業員エンゲージメントは企業への愛着や共感に対する満足度であるという違いがあります。

従業員満足度調査は、匿名で行う場合と実名で行う場合がありますが、双方にメリットやデメリットがあります。どちらのメリットがより活かせるか、ケースバイケースで選択して行うのがおすすめです。

従業員満足度調査とは?実施手順やメリット・デメリットを解説

従業員満足度調査とは、自社の従業員に対して会社の方針や制度、働きやすさなどの調査を行うことを言います。本記事では、従業員満足度調査をよく知らない方のために、実施手順やメリット・デメリット、顧客満足度調査ツールの機能や選び方を解説しています。

従業員満足度調査の意義

従業員満足度調査の目的は、組織の課題や問題点を特定しその改善を図ることです。また、その改善後にも従業員満足度調査を行えば、改善効果の測定もできます。企業にとっても従業員満足度調査で自社の強みや弱みの把握ができ、人材採用や定着の施策に活かせます。

そして、従業員満足度が高まれば企業イメージの向上にもつながり、就職活動をしている人たちにとって魅力ある企業となります。その結果として、より優秀な人材の確保につながります。

従業員満足度調査を行うに当たり、重要なのは信頼性です。信頼性のない調査で行われた改善施策の実施は、無駄なコストの発生につながります。より信頼性の高い調査にするために、調査の目的に合わせた実名調査・匿名調査の選択をしなくてはなりません。

従業員満足度調査を匿名で行うメリット

匿名で従業員満足度調査を行うメリットは、従業員の本音が集まりやすいことです。特に、人間関係・賃金や手当関係・人事関係など、センシティブな質問には匿名アンケートが有効です。実名調査では、自身の評価に影響することを恐れ、本音を書けないのが実情です。

従業員の本音がわかることは企業経営者にとっても貴重な機会であり、経営施策を立てるための重要な資料になります。時には辛辣な意見が書かれる場合もありますが、匿名の従業員満足度調査が正常に行われている証であり、経営者側は真剣に受け止めることが重要です。

従業員満足度調査を匿名で行うデメリット

匿名で行う社内アンケートは、個人への回答催促ができずに回答を集めきれないことがあります。この場合、母数の少ない集計となり、分析結果の信憑性が失われる可能性があります。

また、質問に対して深く考えずに回答されてしまう可能性があるのもデメリットの一つです。これも、分析結果の信憑性がなくなる原因となります。

3つ目のデメリットとしては、調査によって個別対応が必要な事案が出てきても個別の対応ができず、具体的なアプローチがしにくいことがあります。パワハラやセクハラなどによく見られ、個人特定に時間がかかってしまいます。

また、パワハラやセクハラの実態についての回答があった場合、回答者を特定する際に話が広まり、犯人探しのような状態になるケースもあります。この場合、回答者は居心地が悪くなってしまい、離職の原因になりかねません。

従業員満足度調査を匿名で行う際の注意点

匿名であっても、性別・所属部署・雇用形態・入社年次などの記入欄がある場合は、個人が特定されてしまうのではないか、などの思いがあり、本音が書けないこともあります。また、回答したログを取得され個人が特定されるのではないか、と心配する従業員もいます。

そのような不安を少しでも払拭するために、従業員満足度調査を行う目的や重要性・手法をしっかりと従業員に説明する必要があります。また、回収率向上のためには、調査の時間を設け一斉に回答してもらったり、グループチャットを利用したりする方法もあります。

従業員に「回答しても何も変わらない」という意識があると、回収率が低くなったり適当な回答が多くなったりする可能性が高まります。そのため、調査結果の公表を約束し、改善を図る熱意を伝えることが大切です。そして、改善したことを周知しましょう。

従業員満足度調査を実名で行うメリット

実名で従業員満足度調査を行うメリットには、高い回収率が見込めることや、個人を特定する手間が不要な点などが挙げられます。ここでは、実名で従業員満足度調査を行う2つのメリットを解説します。

未提出者に提出を促せる

実名で従業員満足度調査を行う場合、提出者と未提出者を明確に把握できます。そのため、未提出者にのみリマインドするなどで提出を促すことができ、回答の回収率を上げられます。

従業員満足度調査を行っても回収率が低ければ、一部の従業員の意見に偏ってしまい、組織全体の改善は実現しにくいです。回収率を簡単に向上させられるのは、実名で調査を行う大きなメリットと言えます。

個別の問題にも対応できる

従業員満足度調査で回答者に確認が必要な回答があった場合、実名での調査であれば個人を特定する作業なしで本人に話を聞けます。そのため、組織全体ではなく個人的な問題が発覚した場合でも、素早く対処できます。

また、調査から新たな一面に気付くこともあり、より適したポジションにキャリアチェンジするきっかけになる可能性もあります。これらは匿名での調査では困難であり、実名だからこそのメリットです。

従業員満足度調査を実名で行うデメリット

実名で従業員満足度調査を行うデメリットとして、当たり障りのない回答が増え、従業員の本音が出にくいことがあります。

本心ではない嘘の回答をする従業員が増えれば、調査の信頼性がなくなるとともに、従業員の働きやすい職場づくりに対する意欲の減衰にもつながります。

当たり障りのない回答が増える原因の一つに、回答内容の漏えいを従業員が恐れることがあります。回答者と回答内容の紐づけは、担当者の中でもごく一部に限られるような仕組みが必要です。従業員が実名でも本音で答えられる信頼できる調査にしていきましょう。

従業員満足度調査を行う際のポイント

従業員満足度調査を行う際には、デメリットをできる限り抑えて行うことが重要です。そのためにも下記の6つのポイントを押さえて実施するのがおすすめです。

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目的・閲覧範囲を明示する

従業員満足度調査の前提条件として、調査の重要性に対する従業員の理解と心理的安全性の確保があります。まず、重要性の理解では、従業員に対して調査の目的を丁寧に説明し、理解してもらいましょう。これにより、責任感のある回答が得られるようになります。

心理的安全性の確保では、調査結果を閲覧できる範囲を具体的に示すことが大切です。閲覧範囲は最小限にとどめ、閲覧できる者には調査の重要性と情報漏えいのリスクについて理解を深める教育が必要です。これらの取り組みにより、本音が引き出せる調査になります。

回答期日や期日前日にリマインドする

調査が始まっても仕事に追われ、回答を忘れてしまう従業員もいます。そのような従業員に対して、回答期日や期日前日にリマインドすると回答の回収率が上がります。多くの企業ではメール等で行われますが、部内の打ち合わせ時に口頭で行われる場合もあります。

匿名調査の場合は未提出者が特定できないため、提出した従業員も含めて全員にリマインドしますが、実名で行う場合は未提出者のみにリマインドメールを送るようにします。毎日メールを確認する習慣のある企業には、メールでのリマインドは確実で効率的な方法です。

フィードバックの日程や方法を知らせておく

従業員満足度調査は、1度の調査で終わるものではありません。何回か繰り返す中で従業員の満足度の変化と、講じた対策との関係を明らかにすることが大切です。調査結果を従業員にフィードバックしないと、次回の調査への意欲の低下につながる可能性があります。

調査前にフィードバックの日程や方法を従業員に周知しておくようにしましょう。従業員も調査結果を見ることで、新たな発想や考え方に触れることができ、より広く深い視野で物事を考えられるようになるきっかけになる場合も多いです。

人事評価に影響しないことを説明しておく

従業員満足度調査内容の中には、人事評価に対する内容が含まれる場合も多いです。しかし、従業員の回答が人事評価に影響してはなりません。特に実名調査の場合、従業員は回答内容が評価に影響することを恐れ、無難な回答をしてしまう場合が多くあります。

従業員の心理的安全性を確保するためにも、回答内容が人事評価に影響しないことや、結果の活用方法などを事前に説明しておくことが大切です。調査側も調査目的にしたがって調査結果を運用し、それ以外には利用しない態度を示すことが大切です。

中央評価を撤廃する

調査の回答で選択肢が奇数の場合、選択肢の中央に「普通」や「どちらともいえない」などの中央評価が入ります。中央評価は、回答者の心理的な負担の軽減などのメリットはありますが、中央評価に回答が集まりがちになります。

不特定多数の回答を回収する場合は、中央評価が用いられますが、従業員満足度調査のように回答数に限りがある社内調査で、正しい結果を導き出すには適当であるとはいえません。中央評価のない偶数の選択肢にする方が効果的です。

相談窓口を用意する

人間関係やセクハラ・パワハラ・LGBTなどの問題を抱えた従業員がいると、一定の質問事項に対して極端に低い評価になる場合があります。実名調査の場合はその個人にヒヤリングできますが、匿名調査の場合はそれができません。

そのような従業員が調査をきっかけに、誰かに相談したいと思うようになる場合も多いです。悩んでいる従業員のためにも、希望で個別相談ができる窓口を用意しておくようにするのがおすすめです。窓口の担当者には、少なくとも男性と女性の2人が必要です。

従業員満足度調査の流れ

実名・匿名どちらの調査にするか決定し、従業員への周知が十分深まったら、実際の調査に入ります。ここでは、質問内容の策定から改善策の検討までの大まかな流れを解説します。

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質問内容の策定

質問内容の策定で重要なことは、調査目的に沿った回答しやすい質問文であるということです。加えて、適度な質問量と結果分析のしやすさも考慮する必要があります。

質問文は、従業員が同じ場面を想定できる質問であることが大切です。また、回答に時間がかかると従業員の集中力が落ちるため、5〜10分が適当で長くても15分程度に抑えましょう。また、それぞれの項目でどのような分析手法を使うのかを想定した策定も重要です。

アンケートの配布・回収・集計

設問が策定できたら、配布し回答期限までに回収して集計・分析を行います。調査中に従業員からの質問が来る場合もあるため、丁寧に対応し、他の従業員にも周知すべきことであれば周知しましょう。また、常時回収率をチェックし、適時リマインドを行います。

アンケートの配布・回収・集計の方法は、各企業のIT化の進捗状況によっても異なります。特に集計や分析は手作業で行うと時間がかかります。各企業では自社のIT化の状況に合わせて、より効率的な方法が取られています

昨今では、配布・回収・集計・分析が効率的に行えるツールの導入も進んでいます。ツールには、従業員満足度調査に特化したものや、アンケート全般を効率化するもの、人事情報管理ツールの1つの機能として利用できるものなど、さまざまなタイプがあります。

フィードバック・改善策の検討

従業員満足度調査において、従業員へのフィードバックと改善策の検討は大変重要なステップです。調査によって複数の課題や問題点が出てくるのが正常な調査です。しかし、一度に多くの改善策を実施するのは無理がある場合もあります。

そのため、発見された課題や問題点の大きさや緊急性を基に、優先順位を付けて解決策を検討することが大切です。すぐに改善策が見つからない事項でも放置はせず、管理者側の率直な感想や今後の方針について発信しましょう。

まとめ

従業員満足度調査は、職場環境・賃金体系・福利厚生・人間関係などに対しての満足度を表す指標で、匿名でも実名でも実施できます。匿名で行えば、率直な意見や正直な回答が得られる反面、適当に回答されたり忘れられたりするリスクがあります。

匿名・実名の選択はケースバイケースで、調査の内容や従業員の意識などを鑑みて決定する必要があります。特に匿名調査では、従業員の調査に対する重要性の理解と心理的安全性の確保が重要です。そして、結果に沿った職場の改善がなされなくてはなりません。

調査によって改善されたことが従業員に目に見えるようにすることが、次回調査のモチベーションの向上につながります。そして、調査の集計・分析は大変手間暇のかかる作業です。ツールの活用など各企業に適した効率的な方法で行いましょう。

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