給与前払いサービスは賃金業に該当する?利用メリット・注意点も解説

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  • 給与前払いサービスは、従業員が希望するタイミングで給与を受け取れるサービスである
  • 金融庁の見解では賃金業に当たらないが、立替型サービスは貸付行為に当たる場合がある
  • 貸付行為に当たる立替型サービスを利用する場合、賃金業登録の有無の確認を必ず行う

給与前払いサービスとは、従業員が希望するタイミングで給与を受け取れるサービスのことです。立替型の給与前払いサービスは貸付行為にあたる可能性があり、利用時は注意が必要です。本記事では、給与前払いサービスが賃金業に該当するのかや選び方について解説しています。

目次

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  1. 給与前払いサービスとは
  2. 給与前払いサービスは賃金業に該当するのか
  3. 給与前払いサービスが広まった理由
  4. 給与前払いサービスを利用するメリット
  5. 給与前払いサービスを利用する際の注意点
  6. 給与前払いサービスを選ぶ際のポイント
  7. まとめ

給与前払いサービスとは

給与前払いサービスは、従業員が給料日前に給与を先払いしてもらえるサービスのことです。このサービスを利用するためには、従業員が先払いを希望する際に申請を行い、すでに働いた分の給与が給料日前に支払われるのが特徴です。

通常の給与支給日には、先払い分の金額を差し引いた残りの給与が振り込まれます。しかし、立替型の給与前払いサービスは貸付行為にあたる可能性があり、サービス利用時には注意が必要です。

本記事では、給与前払いサービスが賃金業に該当するのかや選び方について解説しています。

給与前払いサービスは賃金業に該当するのか

給与前払いサービスが賃金業に該当するかを確認するためには、このサービスの本質と法的な側面を考察する必要があります。給与前払いサービスは近年注目を集めており、従業員にとっては便利な手段となっています。

しかし、その法的位置づけは複雑であり、どのように見なされるかはあらゆる要因に依存します。以下では、給与前払いサービスが賃金業に該当するかどうかについて、詳細に解説していきます。

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金融庁の見解

給与前払いサービスが賃金業に該当するかについて、金融庁の見解が注目されています。金融庁は「グレーゾーンの解消制度」を基にしており、その見解によれば、給与前払いサービスは賃金業に当たらないとされています。

金融庁は、サービス提供企業が単なる貸金業者ではなく、賃金の立て替えを行っていると認識しており、これが賃金業には該当しないという見解です。

貸金業者が行うような貸し付けではなく、企業が従業員に支払うべき賃金を一時的に立て替えているという観点が、金融庁の見解の根拠とされています。

参考:確認の求めに対する回答の内容の公表|金融庁

https://www.fsa.go.jp/policy/kyousouryokukyouka/grayzone/02.pdf

立替型サービスは貸付行為にあたる場合がある

立替型給与前払いサービスは、貸付行為にあたる可能性があります。これは、企業の信用力によらず手数料が一定でないなど、一定の条件が整わない場合が貸付行為だと考えられます。具体的な運営や提供条件によって、貸付行為に該当するかどうかが決まります。

たとえば、手数料が企業の信用力によって変動するか、不透明な条件でサービスが提供される場合、それが貸付行為と見なされる可能性があります。

企業が給与前払いサービスを提供する際には、法令や規制に十分な注意を払い、透明かつ公正な条件でサービスを提供することが求められます。

参考:確認の求めに対する回答の内容の公表|金融庁

給与ファクタリングとの違い

給与ファクタリング(給料ファクタリング)とは、従業員個人の給与を債権とし、給与債権をファクタリング業者が買い取ることで規定の給料日よりも早く給与を受け取れるものです。

給与を早く受け取れるという点は給与前払いサービスと同じですが、給与ファクタリングは従業員個人とファクタリング業者間で行われるため、従業員を雇っている企業は関与しません。

給与前払いサービスを導入していない企業で働く従業員にとっては有用ですが、貸金登録をしていないファクタリング業者は違法の業者なため、利用前に違法業者でないか確認が必要です。

参考:無登録の給与ファクタリング業者に注意!|警視庁

給与前払いサービスが広まった理由

給与前払いサービスは、働き方の多様化や感染症の拡大により収入が不安定になったことなど、あらゆる要因で広がりを見せました。従来の月に1度の給与支払いでも、雇用主に直接前払いを申請することは可能でした。

しかし、制度として導入されているケースは少なく、申請がしにくい状況であり、現在の給与前払いサービスのように気軽に申請することは難しい状況です。

給与前払いサービスは福利厚生の1つとして導入され、従業員全員が平等に使用できます。気兼ねなく利用できるという点も、給与前払いサービスが広まった要因と言えます。

給与前払いサービスを利用するメリット

給与前払いサービスを利用するメリットは多岐にわたり、従業員にとっては特に便利な制度です。ここからは、給与前払いサービスを利用するメリットについて詳しく解説します。

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福利厚生の充実による人材の定着

給与前払いサービスは、福利厚生の充実による人材の定着に繋がるメリットがあります。近年の求職者は、給与の水準だけでなく、働きやすい職場環境を重視する傾向が強まっています。

企業が人手不足を解消し、優秀な人材を確保・定着させるためには、福利厚生の充実が重要です。給与前払いサービスの導入は、従業員にとって有益な福利厚生として注目されています。

求職者の中には急な支出に備えて給与を前借りしたいというニーズがあり、給与前払いサービスによって従業員の定着率を向上させることが期待されます。

求人応募数の増加に繋がる

給与前払いサービスは、求人応募数の増加に繋がるメリットがあります。企業に給与前払いサービスがあると、従業員は急な出費にも対応できるため、従業員が生活面での安心感を得られ、求人への応募意欲が高まることが期待できます。

特に求人の応募数を高めたい企業にとっては、給与前払いサービスは差別化のポイントとなります。給与前払いサービスがあることで、従業員は給与日前に必要な資金を確保できるため、企業の魅力を高め、応募者数の増加につながります。

前払い業務による担当者の負担軽減

給与前払いサービスは、前払い業務による担当者の負担軽減が可能となります。給与前払いは従業員にとって便利な一方で、その利用が増加すると経理担当者の業務負担が増大します。具体的には、勤怠管理や給与計算、振込手続きなどの事務作業が煩雑になります。

しかし、給与前払いサービスはこれらの手続きを代行してくれるため、人事や経理担当者の作業負担を軽減できます。給与前払いサービスが申請から処理、振込までを一括で行うことで、手間のかかる業務を最小限に抑えられます。

給与前払いサービスを利用する際の注意点

給与前払いサービスを利用する際には、注意が必要なポイントがいくつか存在します。ここからは、給与前払いサービスを利用する際の注意点について詳しく解説します。

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給与前払いサービスを利用する際の注意点

  1. 賃金業登録をしているか確認
  2. 手数料が負担になる場合がある

賃金業登録をしているか確認

給与前払いサービスを利用する際には、賃金業者登録の有無が重要です。これは、企業が提供会社からの前払い分を借金として受け取るためであり、貸金法に基づく貸金業登録が必要です。

貸付行為にあたる立替型サービスは賃金業であるため、賃金業者登録をしていないと違法となります。そのため、預託金型か立替型かを把握することが大切です。

手数料が負担になる場合がある

給与前払いサービスを利用する際に留意すべきなのは、サービス利用に伴う手数料の負担です。サービスを利用するたびに、システム利用料や振込手数料などがかかることがあります。

手数料が従業員の給与から引かれる形となると、労働基準法第24条の「全額払いの原則」に反する可能性があります。従業員が手数料の支払いによって本来の給与を受け取れない状況は法的に問題があります。

全額払いの原則は、給料は全額支払わなければならないという内容です。「企業が従業員に対して貸し付けている金額と給料を相殺することは認められていない」という意味になります。

参考:労働基準法第24条|e-Gov法令検索

給与前払いサービスを選ぶ際のポイント

給与前払いサービスを選ぶ際には、検討すべきポイントがいくつかあります。ここからは、給与前払いサービスを選ぶ際のポイントについて詳しく見ていきましょう。

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サービスのタイプを確認

給与前払いサービスは、従業員にとって経済的な余裕を提供し、企業にとっては人材の定着やモチベーション向上に寄与する重要な手段となっています。しかし、その種類や特徴はさまざまで、企業が最適なサービスを選択するためには理解が必要です。

ここでは、異なる給与前払いサービスのタイプについて解説します。自社はどちらが適しているか見極めましょう。

立替型

立替型の給与前払いサービスは、従業員が給料日前に必要な分をサービス提供企業が立て替えてくれる仕組みです。立て替えた分の給与は後日まとめて請求・清算されるため、企業は事前に振込資金を用意する必要がありません。

このタイプの給与前払いサービスを利用することで、従業員は迅速に資金を受け取ることができ、企業も労務管理の負担が軽減されます。ただし、サービスごとに手数料や利用条件が異なるため、企業は注意深く選択する必要があります。

自社払い型

自社払い型の給与前払いサービスは、企業が前払い分の資金を自社で用意し、従業員へ支払う仕組みです。このサービスは法的リスクを排除しながら、安全性の高い環境下で利用できるのが特徴です。

支払い方法は様々で、自社の口座から従業員の口座への振り込み業務を代行するサービスや、従業員がATMから引き出せるようにするサービスがあります。この方式の導入は、企業と従業員の双方にメリットがあり、従業員の利便性向上と企業の人材確保に寄与します。

企業は従業員にとって魅力的な労働環境を提供し、同時に法的なコンプライアンスを守りながら給与前払いサービスを展開することが重要です。

提携している銀行の種類・数を確認

給与前払いサービスを選ぶ際のポイントは、提携している銀行の種類や数を確認することです。

従業員が利用する銀行が限られている場合、振込手続きや口座への入金がスムーズに行えないことがあるため、提携している銀行が多いほど、従業員がそのサービスを利用しやすくなります。

企業がサービスを導入する際には、提携銀行の情報を詳しく確認し、従業員全体にとって利便性の高いサービスを選ぶことがポイントです。

従業員が使いやすいか

給与前払いサービスが使いやすいかは、従業員が円滑に利用できるかどうかに大きく関わります。具体的には、給与前払いの申請手続きがシンプルで分かりやすいか、アプリやWebサイトを介した利用が容易かどうかを確認します。

また、サービス提供企業が提供する情報やFAQが充実しているかも重要です。従業員が使いやすいサービスは、組織内での利用を促進し、効果的に給与前払い制度を導入できます。

企業がサービスを選ぶ際には、従業員の立場に立って使い勝手を検討し、簡単で分かりやすいサービスを導入することが重要です。

まとめ

給与前払いサービスは、従業員が給与日前に必要な資金を受け取る制度です。このサービスは、従業員の生活の安定や急な支出に対応するために導入されています。従業員は自身の給与を給料日前に受け取ることができ、これが給与前払いと呼ばれる仕組みです。

立替型と自社払い型の2つのタイプがあり、それぞれ特徴があります。一方で、このサービスが貸金業に該当するかどうかについては議論があり、金融庁の見解により一定の解釈が示されています。

貸金業登録が必要な場合もあり、企業は法令を遵守しつつ、従業員の利便性向上や生活の安定に寄与するようなサービスを提供することが求められています。従業員への福利厚生を充実させるためには、給与前払いサービスの導入がおすすめです。

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