ナレッジマネジメントとは?意味やメリットをわかりやすく解説

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  • ナレッジマネジメントとは、個人の知識やスキルなどを組織で共有し活用する経営手法
  • ナレッジマネジメントには、組織力の強化や業務効率化といった効果がある
  • ナレッジマネジメントには、暗黙知を形式知へ変換する「SECIモデル」が用いられる

ナレッジマネジメントとは、個人が持つ知識やスキルなどを組織で共有し活用する経営手法です。ナレッジマネジメントの実施により、組織力の強化や業務効率化といった効果が期待できます。この記事では、ナレッジマネジメントの意味やメリット、実践のステップなどを解説します。

目次

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  1. ナレッジマネジメントとは
  2. ナレッジマネジメントを行うメリット
  3. ナレッジマネジメントの手法
  4. ナレッジには「暗黙知」と「形式知」がある
  5. ナレッジマネジメントの「SECIモデル」
  6. ナレッジマネジメントを導入するステップ
  7. ナレッジマネジメントを導入する際のポイント
  8. まとめ

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントは、「知識管理」や「知識経営」などを意味し、わかりやすく言うと生産性の向上を図る経営手法の1つです。これは個々の従業員が持つ知識や経験を集め、組織全体で共有することで、業務効率化や問題解決に役立てる考え方です。

ナレッジとは、仕事に関する有益な情報や知識を指します。組織内で蓄積されたナレッジを整理して社員間でシェアすることで、トラブルが発生した際に素早く解決策を見つけ出すことが可能になります。

ナレッジマネジメント導入により、組織力の強化や業務効率化といった効果が期待できます。この記事ではナレッジマネジメントの意味やメリット、実践のステップなどを解説します。

ナレッジマネジメントが注目される背景

終身雇用制度の崩壊や働き方の多様化など、近年の労働環境の変化により、ナレッジマネジメントが注目されています。

昔は1つの企業で長く働くことが一般的でしたが、近年では転職やフリーランスとして働く人が増え、長期的な人材育成や経験・知識の継承が難しくなりました。また、ビジネス環境が大きく変化し、グローバル市場でも負けない競争力が求められています。

そのため、常に新しい情報やアイデアを取り入れ、変化に対応できる柔軟性を持った従業員を育てなければならず、組織内でのナレッジ共有が重要視されています。

ナレッジマネジメントは、組織全体で持つ知識やノウハウを意識的に集約し、新しいアイデアや技術革新を生み出す手段として期待されています。

ナレッジマネジメントを行うメリット

ナレッジマネジメントを行うことで、さまざまなメリットがあります。以下では、そのメリットに注目し、詳しく解説します。

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組織力が強化される

ナレッジマネジメントには、属人化の解消のメリットがあります。これまで一部の人にだけ集中していた重要な情報やスキルを全員で共有することで、その知識が個人の依存から解放され、組織全体で利用できるようになります。

これにより、誰が担当しても業務が円滑に進行し、社員の退職や休職による業務の中断を防ぐことができます。

人材育成の手間を削減できる

ナレッジマネジメントは、人材育成の手間を削減する効果もあります。組織内で個人が持つ知識やスキルを共有することで、人材育成が効果的に行えます

たとえば、営業や店舗展開などのノウハウを持つ社員が、その専門知識を他のメンバーと共有することで、組織内でのスキル伝達がスムーズになります。

人材育成に要していた時間やリソースを減らしながら、新たな知識やスキルをより多くの社員に伝えることが可能です。その結果、組織内での教育・指導のコストや時間を削減しつつ、社員全体のスキルアップや成長を促進できます。

業務を効率化できる

組織内で特定の知識やスキルが個人に限定されている場合、その人が不在だったり手が回らなかったりすると業務が滞ってしまいます。たとえば、Aさんだけが持っている特定のノウハウがあると、Aさんがいないと業務の進行に支障をきたす可能性があります。

しかし、ナレッジマネジメントの導入で、Aさんの持つ知識を全社員に共有できれば、誰もがその業務に対応できるようになります。これにより、業務の停滞や遅延を防げ、作業効率を飛躍的に向上させることができます。

顧客満足度が向上する

組織内でのナレッジ共有により、より迅速で正確な情報提供が可能となり、顧客からの問い合わせや要望にすばやく対応できます。迅速な対応はサービスの質に直結し、顧客満足度の向上も図れます。

ナレッジマネジメントを通じて、従業員が顧客に対する情報やサービス提供に関する知識を共有することで、誰が対応しても一貫性のあるサービスの提供が可能になります。顧客は統一されたレベルのサービスを受けることができ、その結果、満足度が向上します。

新たなサービス開発に繋がる

ナレッジマネジメントは、新しいサービス開発に革新をもたらします。組織内でのナレッジ共有は、成功した事例の共通点や成功要因を見つけ出し、新しいアイデアを育てやすい環境を作り出します。

この共有プロセスにより、新たなサービスや製品を開発する際の着想や方向性が明確になります。また、ナレッジの蓄積過程で業務の改善や社内規定の見直しといった改革が生まれることもあります。

新しいナレッジの創出や収集は企業の知的資産を豊かにし、それが企業の競争力を高める要素となります。

ナレッジマネジメントの手法

ナレッジマネジメントには、以下の4つの手法があります。ここからは、それぞれの手法について詳しく解説します。

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経営資本・戦略策定型

経営資本・戦略策定型のナレッジマネジメントは、組織全体の知識を経営戦略に結びつける手法です。この手法では、自社の業務を徹底的に調査・洗い出し、他社との比較や分析を行うことで、改善の余地や効率化のポイントを見つけます。

この分析を通じて、自社の業務やプロセスにおける課題や改善点を把握し、戦略に反映させます。この手法の利点は、企業の戦略的な意思決定に知識やノウハウを活かす点にあります。

他社との比較から得られる洞察や業務プロセスの改善を通じて、業務効率を向上させることができます。

顧客知識共有型

顧客知識共有型のナレッジマネジメントは、顧客との関係性を重視し、顧客から得られる知識や情報を組織内で共有し活用する手法です。この手法では、顧客からのフィードバックやクレーム、要望、過去の対応履歴などの情報をデータベース化し、組織全体で共有します。

顧客知識共有型のメリットは、より効果的な顧客対応が可能になる点です。顧客の声を収集・分析し、それを活かすことで、サービスの質や提供価値を向上させ、顧客満足度を高めることが期待できます。

ベストプラクティス共有型

ベストプラクティス共有型のナレッジマネジメントは、組織内で成功している方法やノウハウを抽出し共有することで、全体のスキルや業務効率を向上させる手法です。組織内で成功している実践例や良い結果を出す業務手法を集め、言語・ドキュメント化して共有します。

成功事例を共有することで、組織内で最適な方法や行動パターンを容易に取り入れられるというメリットがあります。新入社員や他部署のメンバーがベストプラクティスを学び、業務に適用することで、効果的な業務や行動が広がり、業務品質や効率が向上します。

専門知識型

専門知識型のナレッジマネジメントは、組織内外の専門的な知識をデータベース化し、必要な情報をすばやく提供する手法です。よくある質問や業界でのベストプラクティスなどの専門知識を集約し、整理されたデータベースとしてアクセスできるようにします。

たとえば、顧客からのよくある疑問や問題点をFAQ(よくある質問)としてまとめ、社内の知識ベースとして活用します。これにより、顧客の問い合わせに迅速かつ適切に対応し、顧客満足度を向上させます。同時に従業員の負担も軽減されます。

ナレッジには「暗黙知」と「形式知」がある

暗黙知と形式知は、ナレッジマネジメントにおいて重要な概念です。ナレッジマネジメントを実践するにあたっては、それぞれの2つの用語について理解しておく必要があります。ここでは、それぞれについて詳しく解説します。

暗黙知言葉にできない経験や直感から生まれる知識
形式知言語化された文書やデータベースに記録された知識

暗黙知とは

暗黙知とは、「職人の技」や「熟練の勘」などの主観的・感覚的な知識のことです。長年の経験も暗黙知に含まれ、言葉による説明だけでは獲得できないといった特徴があります。

暗黙知は人の手による生産業や製造業に多いですが、看護や美容の現場でも経験を積むことで獲得する技術が多く、暗黙知はあらゆる業界・業種に存在します。他にも、接客や営業も経験や感覚の影響が大きく、暗黙知が多いと言えます。

形式知とは

形式知は、マニュアルやデータベースとして言語化された知識を指します。PCの基本的な操作方法やシステムの使い方など、経験や感覚に左右されずに獲得できる知識であり、暗黙知の対義語に当たります。

知識の共有を行うナレッジマネジメントでは、あらゆる知識を言語化して形式知を増やす必要があります。暗黙知が多い場合は知識の共有がスムーズに行えないため、暗黙知を形式知に変換することが重要です。

ナレッジマネジメントの「SECIモデル」

SECIモデルは、知識を共有し、組織内で新たな知識を生み出すためのモデルです。このモデルは、経営学者の野中郁次郎氏らによって提唱されました。SECIとは、4つのプロセスを示す頭文字を取ったものです。

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Socialization(共同化)

Socialization(共同化)は、暗黙知を他者に伝えるプロセスです。言葉だけでなく、体験や経験を通じて暗黙知を他人に移転させます。これには、ベテラン社員や職人の仕事を見て覚える、一緒に作業を行うなどの方法があります。

この段階では、暗黙知を暗黙知として伝えることが重要です。言葉や書面で完全に表現することが難しい暗黙知を身体や五感を使って表現し、他者との相互理解を深めます。

感覚や勘、経験を共有することで暗黙知が他者に伝わり、それによって相互の理解が深まります。

共同化に必要な「創発の場」

共同化における創発の場は、知識や経験の交換が行われる場所を指します。この場所では、業務や経験に関する話を自由に共有し合える空間が大切です。

たとえば、業務中の出来事についてランチ会や飲み会などの社内外でのイベントで話すことや、休憩室や廊下でのちょっとした会話などが挙げられます。

これらの場がフラットで気軽なコミュニケーションを促すことで、知識共有や新しいアイデアが生まれる機会を提供します。

Externalization(表出化)

Externalization(表出化)プロセスは、個人が持つ暗黙知を、形式的な知識へと変換する段階です。この段階では、個人が抱えている勘やノウハウなどの暗黙知を、言葉や図解などを用いて他者と共有します。

具体的には、上司や同僚への報告や、業務の手順やノウハウをまとめたマニュアルの作成などがその例です。たとえば、プロジェクトでの新たなアイデアやスキルは、そのままでは他者に伝わりづらい場合があります。

表出化プロセスでは、そのアイデアやスキルを文章や図にして表現し、共有可能な形に変えます。これによって、個人が持つ暗黙知が形式的な情報になり、他の人がそれを理解しやすくなります。

表出化に必要な「対話の場」

対話の場は、表出化プロセスにおいて暗黙知を形式知に変換するための重要な場です。これは通常の業務や会議の中で行われ、マニュアルや資料作成といった形で、暗黙知を形式化していくプロセスです。

対話の場では、プロジェクトの進行状況やアイデアをディスカッションなどをしながら共有します。会話の中で、個人が持つ暗黙知や経験を言葉や図にして整理し、他のメンバーと共有可能な形に変えていくことが重要です。

Combination(連結化)

Combination(連結化)は、先ほどの表出化で形式知化された知識を他の知識と組み合わせることで、新しい知識を生み出す段階です。

他者が持つ知識や業務手法を自分の仕事に組み込むことで、新たなアプローチやアイデアを見つけたり、業務を効率化したりすることができます。

たとえば、営業チームがマーケティングチームのデータ解析手法を取り入れることで、より効果的な販売戦略を展開することが可能になります。

連結化に必要な「システムの場」

システムの場は、結合化において形式知が組み合わさる重要な場です。ここでは、直接の対話よりも、各個人が持つ形式知を集約しやすいオンラインの環境が求められます。

たとえば、チャットツールを利用することで、議事録を残すことや参加者同士でURLやデータを共有することができます。これにより、情報をテキスト化し、URLやテキストを簡単に共有できます。

Internalization(内面化)

Internalization(内面化)は、結合化で生まれた新たな知識を個々の人が自分のものにする段階です。ここでは、新しい形式知を自分の経験や理解として取り入れるために、反復練習や実践を行います。

たとえば、新しいソフトウェアの操作を繰り返し行うことで、使い方を熟知し、マニュアルを見ずに効率的に操作する技術が身につくでしょう。それに加えて、個人ならではの工夫やノウハウも生まれます。

このプロセスは、組織全体で繰り返されることで、個人の知識や技術が進化し、組織の知識として蓄積されていきます。

内面化に必要な「実践の場」

内面化に必要なのが、実践の場です。実践の場では、形式知を個人のものとして取り入れ、反復練習や実際の業務によって再び暗黙知に変換されます。具体的には、新しい業務やスキルを個々の社員が身につける段階です。

それぞれの社員が通常業務を行うデスクや作業場が実践の場に該当します。最近では、テレワークの増加に伴い、自宅が実践の場になるケースも多いです。

個人が日々の業務を行う場所が、形式知を暗黙知へ変換する場となり、ここでの実践が、個人のスキルや知識を豊かにします。

ナレッジマネジメントを導入するステップ

ナレッジマネジメントを導入する際は、以下の流れに沿って行いましょう。ここでは、ナレッジマネジメントを導入する手順を詳しく紹介します。

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目的を明確にする

ナレッジマネジメントを導入する際には、まず何を達成したいのか、目指すゴールは何かをしっかりと定めることが重要です。目標を設定することで、導入の方向性や成果を見極めるための基準を持つことができます。

たとえば、「業務効率化を図る」という目標は、作業の効率性を向上させ、時間やリソースの有効活用を実現することを意味します。これにより、組織全体の生産性が向上し、業務の手順やフローを最適化することが期待されます。

具体的な目標を設定することで、ナレッジマネジメント導入の方針が明確になり、組織全体が共通の目標に向かって取り組めるようになります。

共有する情報を検討する

目的を明確化したら、次に考えるのが共有する情報とその形式です。まず、全ての情報を共有するのではなく、重要な情報や有益な知識に焦点を絞りましょう。情報が過剰だと、必要な情報が埋もれてしまう恐れがあるからです。

重要な情報や役立つ知識を優先的に整理し、それを共有することで、従業員が必要な情報に迅速にアクセスできるようになります。

情報共有を業務プロセスに組み込む

情報共有を業務プロセスに組み込むステップでは、業務に関連する情報が共有されることが焦点です。すべての情報を共有するのではなく、業務上の課題解決や意思決定に関わる重要な情報を重点的に共有することがポイントです。

適切な情報を適切なタイミングで共有することで、業務の効率性が向上し、意思決定が迅速に行えるようになります。

定期的な見直し・改善を行う

ナレッジマネジメントを導入した後の定期的な見直しは、導入後の成果や問題点を評価するために重要です。このプロセスでは、成果を定量的に評価する必要があります。

数字やデータを用いて成果を測定し、同時にナレッジ共有の効果や情報の利用状況を把握することで、取り組みの効果を客観的に評価します。もし問題点が見つかれば、それを特定し、改善すべきポイントを明確に把握します。

ただし、見直しは数字だけでなく、参加者のフィードバックや意見を収集することも欠かせません。これによって、参加者の実際の体験や感想を踏まえて、改善点を見つけることが可能になります。

ナレッジマネジメントを導入する際のポイント

効果的なナレッジマネジメントを導入するためには、いくつかのポイントを押さえることが必要です。以下では、そのポイントについて紹介します。

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ナレッジを共有しやすい環境を作る

ナレッジを共有しやすい環境を作るためには、社内の文化や評価制度を見直すことが重要です。たとえば、ナレッジを共有してくれた社員を評価する制度を導入することで、情報提供者への感謝や評価を示すことができます。

また、新しいアイデアや成功事例を公表する場を設けることも有効で、業務プロセスの改善を求める会議や定期的な情報共有の場を設けることで、従業員は自然にナレッジを共有する文化が醸成されます。

こうした取り組みは、ナレッジ共有を当たり前の行動として浸透させ、組織全体で効果的な情報共有を促進するために役立ちます。

ナレッジマネジメントツールを活用する

ナレッジマネジメントツールは、組織内での知識共有を促進するプラットフォームです。従業員が持つ貴重なノウハウや専門知識を簡単に共有し、企業全体のスキル向上や成果の最大化を目指します。

このツールを使うことで、ベテラン従業員が持つ専門知識を効率的に広めることが可能になります。共有されたナレッジは、組織全体で共有され、新しいアイデアや問題解決策を生み出す源となります。

また、これによって同じ問題に何度も直面することを避け、素早く適切な解決策を見つけ出すことができます。ナレッジマネジメントツールの導入は、企業内のナレッジを保護し、育成するために非常におすすめです。

ナレッジマネジメントツールとは?導入のメリットや選び方を解説

ナレッジマネジメントツールとは、社員が持つ知識や経験などを社内で共有するためのツールです。本記事では、ナレッジマネジメントツールをよく知らない方・導入を検討している方のために、ナレッジマネジメントツールの機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。

まとめ

ナレッジマネジメントは、組織内での知識共有を通じて、業務の効率化や人材育成を目指す重要な取り組みです。個々の従業員が持つ貴重な知識を組織全体で共有し、それを生かして業務をよりスムーズに進めたり、新しいアイデアを生み出したりすることが可能です。

ナレッジマネジメントツールを導入する際には、自社の目的やニーズに合ったツールを選択し、従業員一人ひとりの知識や経験を最大限に活用することが重要です。

従業員一人ひとりの知識や経験を活かし、組織全体の成長と業務の進化を促進していくために、積極的に取り組んでいきましょう。

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