手書きでの年末調整のやり方|流れと手順、書類の書き方などを解説

Check!

  • 年末調整では、従業員から申告書用紙3種類と、該当者に必要な書類を提出してもらう
  • 年末調整を手書きで行う場合、記入には黒ボールペンが推奨されている
  • 手書きの年末調整書類を修正する場合は、修正テープは使わず二重線で取り消しをする

年末調整を行う際には、さまざまな書類が必要になります。本記事では、年末調整の流れと手順、税務署への提出が必要となる書類における手書きでの書き方・訂正方法について解説します。手書きの場合に推奨されていない筆記具などについても詳しく紹介します。

目次

開く

閉じる

  1. 年末調整は手書き申告と電子申告がある
  2. 年末調整の変更点も確認しておこう
  3. 年末調整の流れと手順
  4. 会社に提出する年末調整書類と書き方
  5. 記入事項の間違いを訂正する場合の書き方
  6. 申告書の内容に変更がある場合の書き方
  7. 年末調整書類を準備する際の注意点
  8. 年末調整を効率的に行う方法
  9. まとめ

年末調整は手書き申告と電子申告がある

年末調整とは、企業が従業員に対して1年間に支払った給与にかかる所得税額を清算する作業です。毎月、従業員の給与からは所得税が天引きされていますが、概算で行われているため、年末に改めて正しい徴収額を計算し、所得税額と比較する必要があります。

その際に行うのが年末調整です。適切な納税のためにも、年末調整によって正しい所得税額を確定することが大切です。

年末調整は、紙の書類に手書きするのが一般的でした。しかし、2020年10月より電子システム上での申告も可能になったことから、手書き以外でも年末調整を行えるようになり、現在はシステム上で対応をする企業が増加しています。

その一方で、手書きで年末調整を行う企業もまだまだ多いです。本記事では、手書きを前提に、年末調整の書き方がわからない方や担当者の方向けに、年末調整の流れや書類の書き方を解説します。

参考:年末調整手続の電子化の概要・メリット|国税庁

年末調整の対象となる人

年末調整の対象になるのは、原則として企業に勤めている方すべてです。なお、年末調整は12月に行うパターンと、年の途中に行うパターンの2種類があります。

企業が年末調整の対象者を誤ると、該当の従業員は個別に確定申告しなくてはなりません。従業員の負担を避けるためにも、企業の労務担当者は、次の2パターンに該当する従業員を確実に把握しておくことが大切です。

12月に年末調整が必要な方

正社員・非正規社員ともに、基本的には12月に年末調整を行います。より厳密には、次のような方が12月の年末調整の対象者です。

【対象者】

  1. 会社等に年間を通じて勤務している方
  2. 年の途中に就職して年末まで勤務している方(青色事業専従者も含む)

【非対称者】

  1. 1年間の給与が2,000万円以上ある方
  2. 副業があり、年末調整・確定申告を別途行う方
  3. 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人

参考:No.2665 年末調整の対象になる人|国税庁

年の途中に年末調整が必要な方

年の途中に年末調整が必要なのは、企業に勤務しており、かつ年の途中で退職または海外移住した方です。具体的には、次のような方が該当します。

【対象者】

  1. 海外支店等に転勤したことなどの理由により非居住者となった方
  2. 死亡によって退職した方
  3. 著しい心身の障害のために退職した方(退職した後に再就職をして給与を受け取る見込みのある方は除く)
  4. 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後、12月中に退職した方
  5. いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である方(退職後その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある方は除く)

【非対称者】

上記以外の理由で年の途中に退職した方

参考:No.2665 年末調整の対象になる人|国税庁

なお、令和7年度の税制改正により、配偶者特別控除が満額受けられる配偶者の給与水準が160万円に引き上げられました。

参考:いわゆる「年収の壁」対策|首相官邸

年末調整の変更点も確認しておこう

年末調整は、税制の改正などによって要件が変更になることがあります。ここからは、主な年末調整の変更点を解説していきます。ぜひ年末調整の際の参考にしてみてください。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

扶養控除の対象となる非居住者である扶養親族の範囲の見直し

2025年現在、扶養控除の対象となる非居住者である扶養親族の範囲は、国外居住者のうち16歳以上30歳未満、又は70歳以上の扶養親族です。ただし、30歳以上70歳未満でも次に該当する場合は、今まで通り控除の対象となっています。

  1. 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者
  2. 障がい者
  3. 扶養控除の適用を受けようとする居住者から、その年において、生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている者

扶養親族の控除を受ける場合は、年末調整書類である「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」のうち、「控除対象扶養家族」の該当欄にチェックが必要です。記入漏れのないようにしましょう。

参考:非居住者である親 族について扶養控除等の適用を受ける方へ|国税庁

国外居住扶養親族の送金証明書類に関する追加事項

2024年以降、従来の「外国送金依頼書」「家族カード利用明細」に加え、電子決済を行った際の書類も証明資料として認められるようになりました。主に、法定通貨と価値が連動し、同額で償還されるもの(ステーブルコインなど)が対象です。

以下の要件を満たす書類が送金関係書類として使えます。

  1. 電子決済手段等取引業者(内閣総理大臣登録済みの業者)から発行される書類または写し
  2. 依頼者(送金者)の氏名、受領者(扶養親族)の氏名、移転日(送金日)、移転価額(日本円換算)が記載
  3. 生活費または教育費に充てるためのものであることが明らか

非居住者扶養親族に対して支払があった年度すべての送金に関して、証明書類が必要です。また、同じ親族への送金が3回以上ある場合には、年初・年末の各1回ずつ証明書類の提示と、その他は明細書(氏名・日付・額など)で代用できます。

参考:令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)|国税庁

参考:令和5年1月以後に非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ|国税庁

参考:国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)|国税庁

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の簡略化

令和5年度税制改正により、令和7年1月1日以後に支払いを受けるべき給与等について提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出が簡略化されました。

記載すべき事項に前年の申告内容から変更がない場合、異動がない旨を記載した簡易な申告書の提出が可能です。令和7年1月1日以降、支払いを受けるべき給与等について提出する扶養控除等申告書から提出できます。

なお、チェックリストの中で1つでも該当する場合には、簡易な申告書の提出はできません。

参考:簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ(源泉所得税関係)|国税庁

参考:扶養控除等申告書の提出について|国税庁

住宅ローン控除区分の期間延長・変更

2023年から、住宅ローン控除区分の期間延長・変更への対応が求められています。具体的には、2022年から2025年までに入居した場合、控除期間・控除率・借入限度額について、次のような変更が生じています。

  1. 借入限度額:住宅性能・居住開始年別に変更
  2. 控除率:1%から0.7%へ変更
  3. 控除期間:新築住宅は13年に延長
  4. 震災再建住宅:控除率0.9%、控除期間13年に変更

さらに、住宅の性能に応じた借入限度額も設定されました。住宅の性能は細かく分類されているため、年末調整時に企業側・従業員の双方で確認することが大切です。

また、2023年の年末調整より、住宅ローン控除適用の所得要件が、1年間の合計所得額3,000万円以下から2,000万円以下へ引き下げられた点にも留意しましょう。給与以外の収入がある方は、特に注意が必要です。

参考:住宅ローン控除の見直し(令和4年度改正)|財務省

特例対象個人の住宅ローン控除拡充

子育て世代等の特例対象個人について、住宅ローンの借入限度額が上乗せされます。令和6年度改正により、令和6年12月31日以前に建築確認を受けた住宅を対象に、床面積が40㎡〜50㎡でも緩和措置が適用されるようになりました。

さらに、2024年1月以降の新規住宅ローンでは、金融機関が税務署へ「年末残高調書」を提出する方式に移行しています。そのため、年末調整では、借入限度額の変更と借入残高証明書の方式変更に注意が必要です。

なお、特例対象個人以外または令和7年入居に関しては、住宅ローン控除の縮小が行われています。以下は、子育て世代等の特例対象個人と住宅ローン控除拡充の内容についてのまとめです。

【特例対象個人】※以下のいずれかに該当する者

  1. 年齢40歳未満で配偶者を有する者
  2. 年齢40歳以上で年齢40歳未満の配偶者を有する者
  3. 年齢19歳未満の扶養親族を有する者

【住宅ローン控除拡充の内容】

令和4・5年入居令和6年入居令和7年入居
・認定長期優良住宅
・認定低炭素住宅
5,000万円4,500万円→5,000万円4,500万円
ZEH水準省エネ住宅4,500万円3,500万円→4,500万円3,500万円
省エネ基準適合住宅4,000万円3,000万円→4,000万円3,000万円

参考:住宅ローン控除の拡充(令和6年度改正)|財務省

参考:住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について|国税庁

【令和7年度】年末調整の主な変更点

令和7年度(2025年)の年末調整の大きな変更点としては、基礎控除と給与所得控除の引き上げと、新たな控除枠の新設が挙げられます。これらは、令和7年12月1日に施行され、令和7年分以降の所得税に適用されるため、正確に理解しておくことが大切です。

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)|国税庁

基礎控除の引き上げ

令和7年度の税制改正によって、基礎控除額に変更点がありました。基礎控除では、改正前は基礎控除額が一律で48万円だったのに対し、合計所得金額に応じて以下のように基礎控除額が改正されます。

今回は、合計所得金額2,350万円超の場合の基礎控除額に改正はありません。また、令和9年度以降は、特定の合計所得額を除いて一律58万円に見直されます。

年末調整で基礎控除の適用を受けるには、基礎控除申告書が必要ですが、令和7年度以降はより細かい所得区分に応じた申告が求められるため留意しておきましょう。

合計所得額基礎控除額
132万円以下
(給与収入200万3,999円以下)
【令和7,8年度】95万円
【令和9年度以降】95万円
【改正前】48万円
132万円超336万円以下
(給与収入200万3,999円超
475万1,999円以下)
【令和7,8年度】88万円
【令和9年度以降】58万円
【改正前】48万円
336万円超489万円以下
(給与収入475万1,999円超
665万5,556円以下)
【令和7,8年度】68万円
【令和9年度以降】58万円
【改正前】48万円
489万円超655万円以下
(給与収入665万円5,556円超
850万円以下)
【令和7,8年度】63万円
【令和9年度以降】58万円
【改正前】48万円
655万円超2,350万円以下
(給与収入850万円超
2,545万円以下)
【令和7,8年度】58万円
【令和9年度以降】58万円
【改正前】48万円

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)|国税庁

給与所得控除の引き上げ

給与所得控除では、給与の収入金額190万円以下の場合、最低保障額が55万円だったのに対し、65万円に引き上げられました。なお、給与の収入金額が190万円以上の場合は改正はありません。

これによって年収200万円以下の場合、基礎控除と合わせた所得税非課税ラインは160万円(給与所得控除65万円+基礎控除95万円)となるため、いわゆる「103万円の壁」から大きく引き上げられます。

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)|国税庁

特定親族特別控除の新設

居住者に特定親族がいる場合、その居住者の合計所得金額に応じて控除する「特定親族特別控除」が創設されます。特定親族とは、居住者と生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円超123万円以下の人が対象で、里子も含まれます。

特定親族1人につき控除され、特定親族の合計所得金額に応じて3万円から63万円まで控除額が設定されます。また、特定親族特別控除の適用を受けるには、給与所得者の特定親族特別控除申告書を提出する必要があります。

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)|国税庁

年末調整の流れと手順

年末調整業務は、「各種申告書の配布・回収」「年末調整の計算」「法定調書の作成・提出」の3段階に大別できます。ここでは、それぞれの業務の概要と、各業務の遂行におすすめの時期を解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

各種申告書の配布・回収

年末調整業務では、年末調整に必要な書類を従業員から提出してもらう必要があります。必要に応じ、次のような書類を配布・回収しましょう。

  1. 扶養控除等(異動)申告書
  2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  3. 保険料控除申告書・住宅借⼊⾦等特別控除申告書・親族関連書類など

各種申告書の回収は、遅くとも11月下旬までに終わらせておくのが望ましいです。次の「年末調整の計算の実施」のステップでは、回収した申告書をもとに年末調整の計算を行う必要があり、作業には時間がかかります。

また、年末調整の書類は記入の仕方が複雑で、種類も多岐に渡ります。記入ミスや回収漏れなどのトラブルにゆとりをもって対処するためにも、書類の回収は11月下旬までに完了させましょう。

なお、従業員数の多い企業では、書類の配布・回収に時間がかかることが一般的です。そのため、回収完了までにかかる期間を逆算して、書類の配布時期を決める必要があります。ことが一般的です。そのため、回収完了までにかかる期間を逆算して、書類の配布時期を決める必要があります。

年末調整の計算の実施

従業員から回収した書類をもとに、年末調整の計算を行います。計算の手順は、大まかに次のようになっています。

  1. 課税所得金額の計算
  2. 年調所得税額の計算
  3. 年調年税額の計算

年末調整の計算の完了後は、その内容をもとに、従業員ごとに源泉徴収票を作成します。なお、源泉徴収票は、次の3種で構成されています。

  1. 税務署への提出用
  2. 従業員本人への交付用
  3. 市区町村へ提出する給与支払報告書(個人別明細書)用

このうち、税務署・市区町村への提出は翌年1月31日まで、従業員本人への交付は12月の給与支給時に行うのが一般的です。年末調整の計算と源泉徴収票の作成は、12月下旬を目途に行う必要があるため、スケジュールにゆとりを持つことが大切です。

法定調書の作成・提出

年末調整の計算の完了後は、その内容をもとに、行政機関に提出する法定調書の作成・提出を行います。以下は代表的な法定調書であり、それぞれ提出先が異なる点に留意しましょう。

【管轄の税務署に提出する書類】

  1. 支払調書
  2. 法定調書合計表
  3. 源泉徴収票

【市区町村に提出する書類】

  1. 給与⽀払報告書

各法定調書の提出期限は、「年末調整を行った翌年の1月31日まで」です。よって、法定調書の作成・提出は、年末調整を行った翌年の1月下旬までに遂行しなければなりません。

支払調書

支払調書は、源泉徴収義務者である企業が「誰に」「どのような内容で」「いくら支払ったのか」を申告するための書類です。企業は従業員への給与のほかに、弁護士や税理士などへの報酬、広告宣伝費、外注費などにおいても所得税を引いた額で支払いをしています。

こういった支払いに関して、支払先への年間支払いがすべて終わった時点で調書を作成する必要があります。支払先が個人の場合は、マイナンバーの記載が必要になります。また、支払調書は税務署への提出と併せて、支払先にも送付するのが通例です。

法定調書合計票

法定調書合計票とは、税務署に提出する各種法定調書を集計した表のことです。従業員に渡した「給与所得の源泉徴収票」「退職所得の源泉徴収票」、支払先に発行した「報酬、料金、契約及び賞金の支払調書」「不動産の使用料等の支払調書」などをとりまとめます。

それぞれ人員数や支払い額、源泉徴収税の各合計などを記載して、税務署に提出することになっています。

源泉徴収票

源泉徴収票は、年末調整の計算によって明らかになった年間所得額や控除額の合計、源泉徴収税額などをすべて記載したもので、従業員ごとに作成します。源泉徴収票は、次の3種で構成されています。

  1. 税務署への提出用
  2. 従業員本人への交付用
  3. 市区町村へ提出する給与支払報告書(個人別明細書)用

このうち、税務署・市区町村への提出は翌年1月31日まで、そして従業員本人への交付は12月の給与支給時に行うのが一般的です。そのため、年末調整の計算と源泉徴収票の作成は、12月下旬を目途に遂行する必要があります。

退職者には「退職所得の源泉徴収票」を使用する点に注意しましょう。なお、年末調整で精算した源泉所得税の納付期限は、翌年1月10日となっています。

給与支払報告書

給与支払報告書は市区町村へ提出する書類で、従業員ごとに給与をまとめた「個人別明細書」と事業所全体の個人別明細書をまとめた「総括表」の2種類があります。

給与支払報告書は従業員の居住区となる市区町村に提出するもので、総括表では従業員の居住区ごとに分類して作成します。市区町村はこの報告書をもとに、次年度の住民税額を決定します。

個人別明細書の内容は源泉徴収票と同じで、紙の場合は下記の給与⽀払報告書とセットになった複写式もあるため、手書きする際には便利です。

会社に提出する年末調整書類と書き方

年末調整を行うために、従業員は以下の書類を会社に提出する必要があります。適用される控除によっても提出書類が異なるため、企業・従業員の双方で必要な提出書類を確認することが大切です。

特に2025年は税制改正によって、基礎控除・給与所得控除が見直されたり、新たな控除枠が設けられ、原則として12月1日に施行されます。書類作成においてはミスが生じる可能性もあるため、各種書類を作成する際は、国税庁のHPをよく確認しながら進めましょう

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

参考:A2 源泉所得税関係|国税庁

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

書類名受けられる控除
扶養控除等(異動)申告書・配偶者控除
・扶養控除
・障害者控除
・勤労学生控除
・寡婦控除
・ひとり親控除
基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書・基礎控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・特定親族特別控除
・所得金額調整控除
保険料控除申告書・生命保険料控除
・地震保険料控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除
住宅借入金等特別控除申告書住宅借入金等特別控除

扶養控除等(異動)申告書

扶養控除等(異動)申告書は、該当年の12月31日時点において、給与所得者が扶養している親族の情報を記すための書類です。配偶者控除・扶養控除・障害者控除・勤労学生控除・寡婦控除・ひとり親控除の適用可否及び扶養控除額の確認のために必要になります。

扶養控除等(異動)申告書の記載項目は、複雑かつ膨大な点にも留意しておきましょう。記入ミスをなくすためにも、あらかじめ扶養親族の範囲・年間所得額を正確に把握しておく必要があります。

申告書に記載する金額は、扶養親族の年収から給与所得控除を差し引いたものです。令和7年度税制改正によって、給与所得控除額の最低保障額が55 万円から65万円に引き上げられ、扶養親族及び同一生計配偶者の所得要件が48万円から58万円に見直しされました。

また、扶養控除等(異動)申告書に記載すべき事項が、前年の申告内容から変更がない場合、異動がない旨を記載した簡易な申告書を提出できます。そのため、書類の作成時は国税庁のホームページも参考にして、ミスがないように十分に注意しましょう。

参考:令和7年分扶養控除等(異動)申告書|国税庁

参考:1-7 改正の概要(扶養親族及び同一生計配偶者)|国税庁

参考:簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ(源泉所得税関係)|国税庁

基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書

基基礎控除は、年間の合計所得金額が2,500万円以下の給与所得者に適用されます。一般的な企業であれば、ほぼすべての従業員が基礎控除を利用できます。そのため、基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書は、全従業員の提出が必要です。

給与所得者の基礎控除申告書

基礎控除申告書に記入するのは、「給与所得収入額」ではなく「給与所得額」である点に留意しましょう。なお、令和7年度税制改正によって、合計所得金額に応じて基礎控除額が見直しされました。

これに伴って令和7,8年度は、特例措置により合計所得金額が低いほど、控除が適用される額は大きくなっています。給与所得額は、国税庁のHPなどに掲載されている「給与所得の金額の計算」を参考に、従業員が各自で計算する必要があります。

また、この改正と合わせて、令和8年分以後の「源泉徴収税額表」も変更されているため注意が必要です。

参考:令和7年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書|国税庁

参考:令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A|国税庁

給与所得者の配偶者控除等申告書

給与所得者の配偶者控除は、合計所得金額が1,000万円以下、または配偶者の合計所得金額が133万円(給与所得だけの場合は、給与の収入金額が2,015,999円)以下の従業員に対し、一定の所得控除が受けられるものです。

記入する際は、従業員本人と配偶者の給与所得収入額をもとに給与所得額を計算する必要があります。

なお、基礎控除と同様に令和7年度税制改正によって、給与所得控除が引き上げられたことで、年末調整で使用する給与所得控除後の金額計算表も新しくなります。そのため、書類作成の際は、最新の情報かを確認してから計算を行うことが重要です。

参考:令和7年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書|国税庁

参考:No.1410 給与所得控除|国税庁

給与所得者の所得金額調整控除申告書

所得金額調整控除は、令和2年から適用になった控除で、給与の年間合計額が850万円以上の従業員を対象としています。

また、夫婦共働き世帯など同じ世帯に所得者が2人以上いる場合に、23歳未満の扶養親族がいるか、従業員本人あるいは配偶者・扶養親族が特別障がい者である場合に控除が受けられます。

参考:令和7年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書|国税庁

給与所得者の特定親族特別控除申告書

給与所得者の特定親族特別控除申告書は、上述したように令和7年度税制改正によって、新たに設けられた「特定親族特別控除」の適用を受ける際に必要です。

「給与所得者の基礎控除申告書」、「給与所得者の配偶者控除等申告書」および「所得金額調整控除申告書」と兼用の書類であるため、該当する欄に必要事項を記載しましょう。記載する事項は以下の通りです。

  1. 特定親族の氏名、個人番号、続柄、生年月日、住所・居所(特定親族の住所・居所が異なる場合)
  2. 特定親族の合計所得金額の見積額
  3. 特定親族特別控除の額

なお、控除額は記入欄下にある早見表にもとづいて計算し、記入が必要です。また、非居住者である親族の控除を受ける場合は、「非居住者である特定親族」欄に◯をし、「生計を一にする事実」欄に1年間でその親族に送金した金額を記載しましょう。

参考:令和7年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書|国税庁

参考:令和7年分の年末調整における留意事項|国税庁

保険料控除申告書

保険料控除申告書は、「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」「小規模共済等掛金控除」を受けるために必要な書類です。これらの提出が必要なのは、保険料控除の適用を希望する従業員のみです。

以下では、各控除の内容や記入のポイントなどを解説します。

参考:令和7年分 給与所得者の保険料控除申告書|国税庁

生命保険料控除

生命保険料控除とは、年間で支払った生命保険料・介護医療保険料に応じて、控除が受けられる制度です。生命保険料控除の申告書には、保険会社の名称・保険の種類・保険期間・契約者名など、契約した内容に関する情報を漏らさず記入する必要があります。

正確な情報を記す必要があるため、記入は保険料控除証明書や契約証を確認しながら行うのがおすすめです。保険料控除証明書は、11月~12月にかけて、契約している保険会社から送付されることが一般的です。

また、申告した内容の証拠として、保険料控除証明書は原本を提出する必要があります。提出方法は、申告書の裏面にのり付けするのが通例です。

なお、令和7年度の税制改正により、新生命保険料に係る一般生命保険料控除について、23歳未満の扶養親族を持つ場合の控除額の計算が変更され、適用限度額も引き上げられます。現時点では令和8年限定の改正ですが、2026年の年末調整に備えて頭に入れおきましょう。

参考:3子育て支援に関する政策税制|財務省

地震保険料控除

地震保険料控除は、火災保険に地震保険特約を付随して加入した従業員のうち、支払った保険料に応じて、控除を受けられる制度です。ただし、対象となるのは、従業員本人もしくはその本人と同一生計の親族が所持した居住用の建物・家財です。

地震保険料控除の申告書も、生命保険料控除の申告書と同様、契約内容について詳細に記す必要があります。

転記ミスが起こらないよう、地震保険料控除証明書を確認しながら記入するのがおすすめです。また、地震保険料控除証明書の原本そのものも、申告書の裏にのり付けして提出しなければなりません。

社会保険料控除

社会保険料控除は、従業員またはその本人と同一生計の親族が、国民健康保険・国民年金などの社会保険料を支払っている場合に、控除を受けられる制度です。

申告書には、社会保険の種類・保険料支払先の名称・支払った保険料・保険料を支払った者の氏名などの記入が必要です。控除額を算出するには、支払った保険料を単純に合算しましょう。

なお、毎月の給与から天引きされた社会保険料については、年末調整の対象外です。記入しないように注意しましょう。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済等掛金控除は、次のような小規模企業共済等掛金を従業員本人が支払っている場合に、控除を受けられる制度です。

  1. 独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金
  2. 確定拠出年金法に規定する企業型または個人型年金加入者掛金
  3. 心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金

控除額の欄には、支払った掛け金を単純に合算した金額を記入します。各種の控除証明書は、他の控除と同じように、申告書の裏に貼付して提出しましょう。

住宅借入金等特別控除申告書

住宅借入金等特別控除は、住宅ローンを利用して、マイホームの購入・新築・増改築をした従業員が適用を受けられます。住宅を購入などした初年度は、従業員本人が確定申告する必要がありますが、2年目以降は年末調整で対応できます。

住宅借入金等特別控除申告書には、管轄税務署名・給与の支払者の情報・申告者の情報・住宅借入金等の年末残高や特定増改築等の費用などの記入が必要です。

正確な情報を記入するためにも、金融機関が発行する「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」、住宅⾦融⽀援機構が発⾏する「融資額残⾼証明書」などを確認しながら作成するのがおすすめです。なお、これらの証明書は申告書と併せた原本の提出が必須です。

参考:給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書|国税庁

参考:年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請書|国税庁

源泉徴収票

源泉徴収票は、当該年に会社から支払われた給与額と、納付した所得税の金額を記載した書類です。企業が作成した源泉徴収票は、税務署・従業員本人・市区町村にそれぞれ提出しなければなりません。

なお、転職で中途入社した従業員は、前の職場でも給与天引きで源泉徴収されているため、退職した職場の源泉徴収票を転職先の企業に提出します。転職先で年末調整を適切に行うには、前の職場と今の職場での源泉徴収額を合算しなければなりません。

確認のために、中途入社の従業員は退職した職場の源泉徴収票の提出が必要です。退職した職場の源泉徴収票は、退職後1ヶ月以内に送付されるのが一般的です。送付されない場合は、前の職場に確認しましょう。

記入事項の間違いを訂正する場合の書き方

手書きの年末調整で記入ミスなどがあった場合、訂正は次の手順で行いましょう。

  1. 訂正したい箇所に二重線を引く
  2. 二重線の上部または下部に正しい内容を書く
  3. 二重線に重なるように訂正印を押す

なお、令和3年度より、税務官庁への提出書類への押印は、訂正印を含めて原則として不要となりました。ただし、企業によっては、引続き押印を必要とする場合もあるため、押印の有無については、自社のルールに従いましょう。

また、修正箇所が膨大な場合は、すべてに二重線を引くと見づらくなってしまいます。見づらい年末調整書類は受理されない恐れがあるため、修正箇所が多い際は、新しい年末調整を作成し直すことが望ましいです。

参考:申告書の記載例|国税庁

参考:税務署窓口における押印の取扱いについて|国税庁

申告書の内容に変更がある場合の書き方

申告した年末調整の内容に変更が生じる場合もあるでしょう。例えば、申告書の提出後に新しい子供ができ、扶養親族の人数が変動したケースが代表的です。

扶養親族の人数が変わった場合、修正が必要になる可能性があるのは、「扶養控除等(異動)申告書」と「所得金額調整控除申告書」の2種類です。

2023年の年末調整から扶養親族の範囲が見直され、16歳未満の子供については控除の対象外になりました。そのため、生児(0歳)の扶養親族が増えた場合、扶養控除についての修正は不要です。

一方で再婚などによって、16歳以上の子供が扶養親族になった場合、扶養控除等(異動)申告書修正が必要です。また、所得金額調整控除の修正が必要になるのは、23歳未満の扶養親族が増え、かつ、夫婦それぞれの年収が850万円以上の場合です。

いずれの申告書であっても、修正する際は前項の「間違いを訂正する方法」と同じく、二重線と訂正印を利用して行います。修正液・修正テープの利用は控えましょう。

年末調整書類を準備する際の注意点

年末調整書類を準備する際には、提出期限や添付書類の有無、記入ミス・漏れなどに注意しなければなりません。ここでは、年末調整書類を準備する際の注意点について解説します。

提出期限を厳守する

年末調整書類の提出において、特に注意すべきなのは提出期限を厳守することです。企業として守るべき年末調整関連書類の提出期限は、翌年1月31日となります。多くの企業は、提出期限に間に合うように社内で各書類の提出期限を定めています。

企業に迷惑をかけないためにも、各従業員は社内で設定された提出期限内に必要書類を提出しましょう。仮に年末調整の書類の提出が遅れると、企業や従業員個人に罰金などのペナルティが課される可能性があります。

また、年末調整の書類を期限までに提出していない従業員は、個人で確定申告しなければなりません。

最新の様式を使って記入ミス・漏れをなくす

毎年、申告書の様式はわずかに変更されることがあります。例えば、令和6年分から定額減税に関する欄が追加され、定額減税の対象者となる従業員の場合、扶養親族を含む居住者1人あたりの家族構成を確認し、源泉所得税額から定額減税額を控除しなければなりません。

さらに、「令和7年分扶養控除等(異動)申告書」では、前年から扶養親族等に変更がない場合、氏名・住所・個人番号の記入と「前年から異動なし」の旨を余白に書くことで、申告書の記入が済みます。

このように、手書きでの記入が大幅に簡素化される様式も新設されているため、毎年最新の様式を使って記入ミス・漏れをなくすようにしましょう。

参考:令和6年分所得税の定額減税について(給与所得者の方へ)

参考:簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ(源泉所得税関係)

年末調整を効率的に行う方法

年末調整を効率的に行うには、年末調整ソフトを導入するのもおすすめです。年末調整ソフトとは、年末調整に必要なデータの収集・計算と、年末調整関連書類の作成を電子上で完結できるツールです。

面倒な計算や書類作成も自動で実行されるため、煩雑な年末調整業務を大幅に効率化できます。また、手書きの書類を廃止することで、労務担当者・従業員ともに書類の作成・確認の負担を軽減できるでしょう。

年末調整ソフトによっては、作成した年末調整関連書類を電子上でそのまま提出することも可能です。作成から提出までを一気通貫に行えることから、多くの企業で年末調整ソフトの導入・利用が進んでいます。

年末調整ソフトのおすすめ8選|選ぶ際の比較ポイントも解説

年末調整ソフトとは、必要な計算や書類作成を自動化し、年末調整業務を効率化するものです。しかし、さまざまな製品があるため、どれを選ぶべきか迷うことも多いでしょう。この記事ではおすすめの年末調整ソフトや失敗しない選び方・比較ポイントを解説します。

まとめ

年末調整とは、企業が従業員に支払った給与をもとに、納付すべき税額を確定する作業です。年末調整の対象者は、企業に勤務する従業員すべてです。提出すべき書類は適用される控除によって異なるため、企業・従業員双方で提出書類を確認することが大切です。

これまでの年末調整は、紙に手書きで行うことが一般的でした。しかし、膨大な書類を手書きするのは多くの労力と時間を費やし、記入漏れや計算ミスなどヒューマンエラーのリスクもあります。

2022年10月から、電子上での年末調整が認められるようになった結果、年末調整の計算から書類の作成・送付まで一貫できる年末調整ソフトを利用する企業が増えています。面倒な年末調整業務の効率化を狙う企業は、年末調整ソフトの導入がおすすめです。

Share

同じカテゴリの記事を探す

同じタグの記事を探す

同じタグの記事はありません

top