労働基準法に合わせた勤怠管理とは?重要性や法律上のルールを解説

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  • 企業には、労働基準法に合わせた正確な勤怠管理を行う義務がある
  • 労働基準法に合わせた勤怠管理を行うには、法改正の迅速な把握・対応が必要である
  • 労基法を守った勤怠管理を行うには、勤怠管理システムの導入が有効である

労働基準法に合わせた勤怠管理には、従業員の労働時間の正確な管理や法改正に伴う迅速な把握・対応が必要不可欠です。本記事では、労働基準法に合わせた勤怠管理の重要性や勤怠管理に関わる法律上のルール・勤怠管理システムの活用についても分かりやすく解説します。

目次

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  1. 勤怠管理とは
  2. 勤怠管理に関わる労働基準法とは
  3. 労働基準法改正について
  4. 勤怠管理で法律違反した場合の罰則とは
  5. 労基法に則った勤怠管理を行うためには
  6. 勤怠管理システムのできること
  7. まとめ

勤怠管理とは

勤怠管理とは、企業が従業員の出退勤・休暇・欠勤などを企業がデータで正確に把握し、適切な勤怠時間であるかを管理することです。企業が従業員の勤怠管理を行なうことは、労働基準法で義務づけられています

勤怠管理をする目的「適正な給与の支払い」「長時間労働の防止」および「従業員の心身の健康を守る」ことです。

従来からの勤怠管理方法は、タイムカード、ICカード、PCでの記録など、企業によりさまざまです。最近では、より簡単で正確に労働基準法を守った記録・管理ができる「勤怠管理システム」を導入する企業も増えています。

勤怠管理が法律で義務づけされている理由

2019年の働き方改革関連法により、労働基準法などが改正され、企業による従業員ひとり一人の正確な勤務状況の記録・保存が義務づけられるようになりました。ここでは、勤怠管理が法律で義務づけられた2つの理由を解説していきます。

労働者を守るため

勤怠管理の義務化は、長時間労働がまねく心身の不調から、従業員を保護する目的があります。これまでも、企業での勤怠管理・保管は義務付けられていました。

しかし、法改正以前は「給与を支払うための勤怠管理」との認識が一般的で、労働時間の客観的な把握方法については法律で明確にされていませんでした。そのため、過少申告による残業代の未払いや、長時間労働が見過ごされるといった問題がありました。

このような問題から従業員を保護するため、勤務時間を数字・データで客観的に記録できる体制を作り、企業でのより正確な管理が義務づけられるようになりました。

労使トラブルを避けるため

勤怠管理の義務化には、労使トラブルから企業を保護する目的もあります。勤怠管理が正確に把握できることは、残業代の未払いなどの賃金関係の問題を防ぐことに有効です。

さらに、正確な勤怠管理は過度の長時間労働を抑えられ、従業員の心身の健康を守ることになります。企業にとってダメージとなる過労死や心身の障害が残ることなどを、未然に防ぐことにもつながります。

働きやすい環境になることで、従業員の心身が整い、業務の効率化やコストカット、職場全体のよい雰囲気が業績へと反映されるなどプラスの効果が期待できます。

勤怠管理に関わる労働基準法とは

企業が把握しなければならない、勤怠管理に関わる労働基準法・労働安全衛生法については、どのような項目があるのでしょうか。ここでは、3つの項目について具体的に解説していきます。

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労働時間の管理

まず、労働安全衛生法に従った「労働時間の管理・把握の義務」があげられます。管理については「勤務状況の確認の義務」と「出勤状況の記録を5年間保存する義務」の2つがあり、以下にそれぞれについて解説します。

参考:労働安全衛生法|e-Gov法令検索

勤務状況の確認の義務

勤務時間を適正に確認するためには、タイムカード、ICカードやPCの使用時間などで客観的に記録・管理する必要があります。また、1日あたりの労働時間だけではなく、出退勤時刻も企業が把握しなければならず、自己申告は原則として推奨されません。

ただし、直行直帰が多い、リモートワーク環境などから、自己申告制が認められるケースもあります。自己申告が認められる条件として、あらかじめ従業員への細かなルールの説明と合意を得ること、企業側から定期的な勤怠管理チェックを行なうことなどがあります。

出勤状況の記録を5年間保存する義務

2020年4月に労働基準法が改正され、タイムカードなどの出勤簿の保存期間が5年間へ延長されました。正確には「従業員が最後に出勤してから5年間」ですが、現在は経過措置期間であり、当分は3年間での保存も可能です。

紙・電子データのどちらでも保存は可能ですが、客観的な資料であること、法令で決められた内容が記載されていること、すぐ出力できること保存方法の条件となります。

出勤簿を保存期間内に廃棄・紛失したときは、労働基準監督署から是正を求められ、さらに悪質とみなされる場合、法令違反により30万円以下の罰金が科されることもあります。

タイムカードのルールをおさらい

労働時間の明確化にあわせて、タイムカードのルールも今一度確認しましょう。よく目にする「15分単位」で計算される勤怠管理は違法となります。着替え時間が労働時間に含まれる条件など、詳細は以下の記事で解説しています。

タイムカードの打刻ルールの必要性|具体例や問題点も解説

従業員の労働時間を客観的に把握することは、企業側の義務になっています。そのため、打刻ルールを定め、それを従業員に徹底していくことが必要です。本記事では、打刻ルールの必要性と具体例・従業員への周知の仕方の他、タイムカードによる打刻の問題点についても解説します。

労働基準法改正について

2019年4月から施行された働き方改革関連法により、労働基準法、労働安全衛生法などが法改正されました。法改正において、新たに企業が注意しなければならないことは、以下の3点となります。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

時間外労働の上限規制

本来、労働基準法では1日8時間・1週間40時間以内が法定労働時間と決められています。そのため、従業員が時間外労働・休日労働を行うには、36協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。

これまでは、特別条項付きの36協定を締結することで、法律上での残業時間の上限がありませんでした。働き方改革による法改正により時間外労働の上限規制ができ、臨時的な特別な事情をのぞき、原則は月45時間・年360時間までと定められました。

たとえ臨時的な特別な事情があり労使の合意のうえでも、複数月平均80時間以上、月100時間以上、年720時間以上の残業は、法律で認められなくなりました。

年次有給休暇の5日間の取得義務化

2019年4月の労働基準法改正から、年次有給休暇を10日以上の従業員に対して、企業が「有給休暇を年5日間取得」させることが義務化されました。違反した場合、1人あたり30万円の罰金が科されることになります。

さらに「年次有給休暇の時季指定」も定められました。これは、年5日間の年次有給休暇の取得がむずかしい状況の従業員に対して、企業側から、従業員の意見を尊重しながら取得時季を指定して、有給休暇の取得をうながす目的があります。

今まで休みの申し出がしづらい環境・立場にあった従業員についても、年次有給休暇の5日間の取得がしやすい環境へと変わってきました。

客観的な労働時間の把握の義務化

2019年4月の労働安全衛生法の改正から、企業による従業員の客観的な労働時間の把握が義務化されました。これまでの労働時間の記録・管理方法についてはあいまいな点も多く、長時間労働からの心身の不調や、残業代未払いなどの問題も多く発生してきました。

客観的な労働時間の把握は、以下のガイドラインに沿った管理をするとともに、自社の勤怠管理ルールを見直すことも大切です。Excel入力などで、出退勤時刻を自己申告としている場合でも、退勤の打刻後にも業務を行うことが慣例化していないかの確認も必要でしょう。

参考:労働時間の適正な把握のために – 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省

働き方改革に対応した勤怠管理システムとは?勤怠管理のポイントも解説

働き方改革に伴う労働基準法の改正で、企業には働き方改革に沿った勤怠管理を行う義務が課せられています。働き方改革の背景には、生産年齢人口の減少など日本の企業にとって無視できない重要な課題があります。本記事では、働き方改革に対応した勤怠管理について解説します。

最新の法改正について

働き方改革に関連して、2023年4月1日にも改正労働基準法が施行されました。今まで、労働基準法の改正はおもに大企業が対象でしたが、最近は、中小企業を対象とした法改正が行なわれるようになってきました。以下に、具体的な変更点を解説します。

時間外労働の割増賃金引き上げ

2023年4月の法改正では、月60時間を超える残業割増賃金率が、企業の規模を問わず一律50%に統一されました。これまで、割増賃金率50%の適用は大企業のみでしたが、中小企業での割増賃金率も25%から50%まで引き上げられることになりました。

割増賃金とは、時間外・休日・深夜勤務において、通常賃金に上乗せされて支払う賃金のことです。

今回の法改正が行なわれる背景には、人件費を抑えるため、企業が必要以上の時間外労働を削減できるよう、社内体制の見直しをうながす目的があります。

参考:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省

勤怠管理で法律違反した場合の罰則とは

勤怠管理において、法律違反が認められたときは是正勧告が行われ、違反が悪質とみなされた場合は罰金などが科せられることがあります。

まず、労働基準法などへの違反を疑われた場合、労働基準監督署から企業に訪問して、企業と労働者の双方から聞き取りを行います。違反が認められたときでも、是正勧告を受けて改善があれば、実刑が科せられるケースはほとんどありません。

ですが、時間外労働の違反、賃金面での差別などの重い法律違反が発覚した場合、罰金および懲役の実刑を受けることになります。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

参考:労働時間の適正な把握のために – 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省

労基法に則った勤怠管理を行うためには

これまで、勤怠管理はExcelやシステムで作成した出勤簿やタイムカードなどを使用して行なわれてきましたが、日々正確に勤務管理を行うためには相当な工数が必要でした。

勤怠管理の効率化を進めるため、最近では勤怠管理システムを導入する企業も増えています。ここからは、勤怠管理システムの概要とできることを解説します。

勤怠管理システムとは

勤怠管理システムとは、従業員の勤怠管理ができるシステムで、出退勤管理・残業時間の計算の効率化ができます。また、勤怠がリアルタイムで把握ができるうえ、人的ミスを減らすことものぞめます。

さらに、勤怠管理システムは過重労働や法改正の把握・管理へも迅速な対応ができるため、今後も労働基準法に沿った勤怠管理が必要になることからも、導入をおすすめします。マルチデバイス対応のサービスも多く、場所を選ばずにリアルタイムな記録ができます。

勤怠管理システムのできること

勤怠管理システムは、労働についてのさまざまな課題を解決する多くの機能を持っています。以下に、システム導入によりできることを解説していきます。

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勤怠がリアルタイムで把握できる

勤怠管理システムの導入で、リアルタイムでの勤怠管理ができるようになります。勤怠管理システムにアクセスした時間をWebで共有する方法となり、PC、スマートフォン、生体認証での打刻や、専用端末からICカードを使用するものもあります。

従来のタイムカードなどでは事後確認になっていた有給休暇・代休なども、勤怠管理システムではリアルタイムで把握・管理ができるようになります。また、都度の確認ができるため業務への余裕ができ、勤怠管理する際の負荷や人的ミスを減らすことにもつながります。

勤怠管理業務の効率化ができる

勤怠管理システムを導入することで、勤怠管理業務における効率化がのぞめます。今までは、勤怠状況を月末にまとめて確認することも多く、業務が月末月初に集中してしまい、担当者の確認漏れやミスへとつながる原因のひとつでもありました。

勤怠計算に「打刻の丸め」を採用している場合も、勤怠管理システムで一括計算できますので、大幅な時間短縮になります。打刻丸めとは、出退勤時刻を15分単位などで調整する(切り上げ・切り捨て)ことです。

また、日々の打刻管理や有給申請の管理・承認手続きへの手間もかかりがちであることも課題でした。勤怠管理システムでは、日々の管理や月次処理も自動で行え、管理・承認手続きもペーパーレス化が可能になるため、勤怠管理業務の効率化アップがのぞめます。

過重労働や有給休暇を通知できる

勤怠管理システムの搭載されている機能のひとつとして、一定の値で過不足があったとき通知されるアラート機能があります。アラート表示されるのは、残業時間の超過・休日出勤日数などです。アラート機能を効果的に活用することで、過重労働を防ぐことにもなります。

また、アラート機能は打刻忘れや有給休暇管理にも役立ちます。有給取得の申請から承認までをWebで完結でき、有給休暇の取得日数について年に5日間が義務化されたことへの法令順守も、あらかじめ失効日を設定しておくことで、無理なく管理が行なえます。

出勤状況をデータで保存できる

2020年4月に労働基準法改正があり、出勤簿などの出勤状況が分かる勤怠データの保存期間が5年間へ延長されたことから、さらに保管場所の確保が必要になりました。勤怠管理システムで、

出勤簿の保管方法は紙・データのどちらでも可能なため、勤怠管理システムで出勤簿を自動保存していくことで、保管場所の確保する必要もなくなります。紙の出勤簿を配布・回収するための工数と時間を短縮もできます。

法改正にも対応ができる

従来の勤怠管理方法では、労働基準法に沿った割増賃金などへの計算ミスが発生するリスクがありました。勤怠管理システムの導入で、残業時間や有給取得日数をより正確に把握ができ、割増賃金も自動計算されるため、法令を守った勤怠管理を行うのにも役立ちます

クラウド型の勤怠管理システムでは、今後、労働基準法などの法改正があるときも、自動で最新のデータが反映されるため、担当者が手計算を行う必要がなく、スムーズに法改正への対応ができます。

給与システムなどと連携ができる

勤怠管理システムは、多くのサービスが出退勤データをCSV出力やAPI連携ができます。ですので、勤怠管理システムでCSV出力した勤怠情報を給与システムと連携ができるなどから、給与計算の負荷を軽減し、さらに効率的な処理が可能になるでしょう。

他にも、経費精算システムや労務管理システムと連携できるサービスも多数あります。たとえば、経費精算システムと連携すると出張先からでも交通費精算ができます。自社で運用中のシステムと連携できる勤怠システムを選ぶと、より業務の効率化がかなうでしょう。

まとめ

勤怠管理とは、企業が従業員の勤務状況を客観的に記録して管理することで、企業が従業員の勤怠管理を行なうことは、労働基準法で義務づけられています。勤怠管理をする目的「適正な給与の支払い」「長時間労働の防止」「従業員の心身の健康を守る」です。

ここ数年間で、労働基準法などの法改正が続いており、時間外労働の割増賃金や、年次有給休暇の年5日間取得の義務化など、法令遵守のための勤務管理は年々煩雑になってきて、法令違反の企業に対しては、是正勧告や罰金が科されるケースもあります。

勤怠管理システムを導入することで、過重労働や法改正の把握・管理へも迅速な対応が可能です。今後も労働基準法に沿った勤怠管理が必要になることからも、導入する企業が増えています。自社の状況に合ったシステムを導入することで業務の効率化がのぞめるでしょう。

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