文書管理システムの運用が上手くいかない原因|対策のポイントを解説

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  • 文書管理システムを定着させるには、組織内の体制と制度を整えることが大切である
  • システムの運用ルールは、利用者全員がシステムを適切に利用するために求められる
  • 導入効果を得るためには、課題に優先順位をつけて必要な機能を選定することが重要

文書管理システムは文書管理を効率的に行えるシステムです。しかし、自社の課題が明確になっていなかったり、体制・制度が整っていなかったりすると、運用が上手くいかない場合もあります。本記事では、運用が上手くいかない原因と対策・運用のポイントを合わせて解説します。

目次

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  1. 文書管理システムの運用で文書管理を効率化
  2. 文書管理システム運用が上手くいかない原因と対策
  3. 文書管理システムを運用する際のその他のポイント
  4. まとめ

文書管理システムの運用で文書管理を効率化

文書管理システムとは、企業内の電子化された文書を一括管理し、文書データを共有するシステムです。紙媒体で文書管理していた企業に文書管理システムを導入することで、文書に関わる業務が大きく変わるため、企業全体で効率的な運用に取り組む必要があります。

文書管理システムの効果的な運用は、企業のDX化・ペーパーレス化・働き方の多様化への対応・セキュリティ強化など、企業が抱える課題を解決する糸口となります。そして、業務の効率化やコスト削減が実現し、最終的には企業の収益向上につながります。

近年では、e-文書法や電子帳簿保存法の改定で、一定期間の保存が義務付けられた文書のほとんどで電子保存が認められており、ペーパーレス化を推進できます。また、データ共有が行えることから、自宅でのテレワークや出先での業務も可能です。

文書管理システムとは?主な機能や導入の際の比較ポイントも解説

文書管理システムは、企業にある資料や文書をデジタル化し、効率良く管理するためのサービスです。この記事では、文書管理システムの主な機能、システム導入によるメリット・デメリットだけでなく、導入の際の比較ポイントなどについても詳しく解説していきます。

文書管理システム運用が上手くいかない原因と対策

文書管理システムを導入しても、運用が上手くいかない場合には必ず原因があります。その中でも、文書管理システムが社内になかなか定着しないことや、思ったほどの効果が得られないということが多いです。ここでは、3つの現象が起こる主な原因と対策を解説します。

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導入したものの社内に定着しない

導入したものの社内に定着しないという問題の原因は、文書管理システムを導入した目的が従業員に理解されていないこと、運用ルールの不備、従業員へのサポート不足などが考えられます。以下では、3点についての解決法を解説します。

文書管理システム導入の目的を周知する

本来であれば、文書管理システム導入前に行っておくべき作業ですが、その作業が不十分な場合、運用が定着しなくなる場合があります。また、現場の現状を把握しないまま導入した場合も、上層部と現場に食い違いが発生し、定着の遅れへとつながってしまいます

そのような場合は、現場で定着しない理由を現場担当者にヒアリングし、明確にすることが大切です。上層部と現場の認識の違いを埋めてから、企業全体へ導入目的の周知を再度行い、メリット・デメリットを含めて理解を得るようにしましょう。

誰でも簡単に扱えるように運用ルールを作成する

文書管理システムが定着しない理由には、システムの運用ルールが制定されていなかったり、従業員がそのルールを理解していなかったりする場合が考えられます。また、同じような文書が異なる分類でフォルダーに保存されている場合も、運用の定着が遅れます。

運用ルールがなければ作成し、ある場合はルールのわかりやすさを再確認しましょう。運用ルールは、わかりやすい分類方法・命名しやすい文書命名方法・業務フローとの一致などを考慮して作成し、誰が行っても同じ結果になるルールである必要があります。

また、導入当初は紙媒体の文書と併用する場合が多いため、ルールは紙文書と電子文書の2つ必要です。なお、紙文書のルールをそのまま電子文書に適用するのは困難であり、文書管理システムの定着を阻害してしまいます。

従業員への教育・サポートを徹底する

文書管理システムが定着しない原因として、従業員がシステムの使い方に精通していない場合があります。この場合は、従業員への研修やサポートを充実させ、文書管理システムを使うことのメリットを認識してもらうことが大切です。

研修では、従業員を集めて研修会を開催する場合もありますが、最近ではe-ラーニングなどでの個別研修も多くなっています。e-ラーニングでは、理解できない部分を見返せることから、研修と同時にシステム導入の目的や導入メリットの徹底的な周知を行えます。

思ったような導入効果を得られない

文書管理システムを導入しても、思ったような導入効果を得られないことがあります。これにはさまざまな原因が考えられ、複数の対策が存在しますが、よく行われる解決法としては下記の4つです。

自社の課題を明確にする

システムの導入効果が感じられない原因の1つに、導入前の自社の文書管理に関わる課題把握が不十分だったことが考えられます。よって、導入前には、自社の文書管理の問題点は何か、システムでどのように解決するのかを明確にしておかなければなりません

問題点が洗い出せれば、それを解決するためのシステムの機能が明確になり、製品選択で役立てられます。たとえば、文書を探すのに時間と手間がかかるという問題点を解決するなら、検索機能の充実した製品を選ぶことが重要です。

また、導入後に効果が見られない場合は効果測定を行い、効果が出ない原因を探して改善を図る必要があります。文書管理システムの効果測定は定期的に行い、現在の課題を把握して改善するというPDCAを循環させることにより、徐々に効果が感じられるようになります

管理者と利用者の両方の意見をすり合わせる

管理者と利用者の間で把握している課題や目的に違いがある場合もあります。この場合、効果を感じていないのが誰であるかが問題です。業務の効率化で利用者の課題が解決できていても、管理者の課題がコスト削減であれば、効果が出ていないと判断されてしまいます。

管理者と利用者の両方が効果を感じられていない状況は、両者に課題意識が足らない場合に起こりやすいです。したがって、導入時に十分な課題の把握を行い、管理者と利用者両方の意見のすり合わせを行いましょう。会社全体で解決すべき課題を共有することが大切です。

課題解決に必要な機能を吟味する

導入しても効果が得られない原因として、機能不足や機能が利用されていない場合も考えられます。本来であれば、システム選択時に自社の文書管理の課題を洗い出し、課題解決に必要な機能を吟味してからシステムを導入します。

機能不足の場合は、導入形態がクラウド型であれば、機能追加できる製品もあるため、確認するのがおすすめです。また、機能があっても利用されていない場合は、利用されない原因を究明し、運用ルールの見直しや機能紹介の機会を作るといった対策を行いましょう。

優先順位をつけて文書管理システムを選定する

システムの導入段階で、自社が解決したい課題が複数ある場合には、課題に優先順位をつけることが大切です。そして、優先順位が高い課題から解決されるようなシステム選定をしなければ、狙った導入効果は得られません

また、運用の場面においても、利用するほどに新たな課題が浮上してきます。それらの課題も優先順位をつけて、一つひとつ課題を解決していくと、徐々に導入効果がはっきりと感じられるようになるでしょう。

システム導入の効果はすぐに出るものではありません。導入によって従業員の業務が大きく変わるため、従業員の慣れと活用技術の向上が必要です。なお、既存の紙文書の電子化にも時間が必要なため、管理者と従業員は十分理解して運用しなければなりません。

全社的な運用につながらない

特定の部署において文書管理システムの効果を得られても、全社的な運用につながらない場合があります。その場合には、各部門の担当者が専任されていない、定期的なフィードバックを行えていないことなどが原因として挙げられます。

各部門が全社的な運用への協力意識を持つ

文書管理システムを社内に導入する場合、総務部門やシステム管理部門が主となって導入から運用を行うことになるでしょう。そして、運用開始時には各部門に担当者を専任し、同一のルールで運用を行っていくのが基本です。

しかし、従来までの共通されたルールを変更するのは難しく、途中で過去の文書管理ルールを適用したり、部署ごとに別のシステムを使いだしたりすることがあります。これでは初めに導入した文書管理システムが効果を発揮しなくなってしまいます

したがって、全社的な運用を実現するために、導入前から部門ごとの担当者となる人材に対して徹底した周知を行いましょう。また、運用開始後にも定期的なフィードバックと改善を行い、協力意識を抱かせることが大切です。

文書管理システムを運用する際のその他のポイント

文書管理システムを効果的に運用するためのポイントは、他にもたくさんあります。ここでは、体制づくりと運用ルールの制定について解説します。

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文書管理システムを運用する際のその他のポイント

  1. 組織内の体制と制度を整える
  2. 運用ルールは全社共通にする

組織内の体制と制度を整える

文書管理システムは、企業全体で運用されるシステムです。そのため、企業の中でしっかりとした体制を整えて運用していくことが大切です。ここでは、企業の体制づくりに関わる下記の4つのポイントについて解説します。

システム運用を推進するための体制

まず必要なのは、システム運用を推進するための体制づくりです。導入方針の決定から運用・改善までを一貫して取り組むために、システムの導入を検討し始めた時点で体制を整えましょう

これは、文書管理システムの基盤を整えて施策立案などの重要な役割を果たすため、経営陣が主軸となって行うのが適切です。そして、企業全体の情報を得るために、文書管理システムに関わるすべての部署において、担当者を含めることを推奨します。

システムの管理体制

文書管理システムは導入だけでは効果を見込めず、自社に適した設定と運用を行ってから初めて効果を発揮します。そのため、より良いシステム構築を担うシステム管理の体制づくりが大切であり、システムをスムーズに運用できる環境づくりが求められます。

具体的には、システム運用のルール見直し・セキュリティ対策・ログ解析・周辺機器の導入などを担います。その際、IT関連や文書分類に造詣が深い従業員など、比較的専門性の高い人材での組織化が必要です。

特に、導入形態がオンプレミス型である場合、組織化の役割は大きくなります。システムのメンテナンスからセキュリティ対策まで行うため、高度な専門知識を有した人材が必要です。

従業員に対する教育体制

文書管理システムを効率的かつ安全に利用するためには、従業員の教育が欠かせません。よって、従業員に継続的な教育を行うための体制づくりを行いましょう。この体制では、研修の実施ばかりでなく、人員や教育コストの確保・教育計画の立案なども担います。

教育内容には、システムの操作方法をはじめ、従業員の情報漏えいやコンプライアンス違反の防止のための情報リテラシー教育も含まれます。文書管理システムの導入は、従業員にとって大きな業務環境の変化となるため、導入前からの教育が必要です。

システム運用を反映した評価制度

文書管理システムの効率化に向けて、評価制度にシステムの運用を反映させる方法があります。主に業務遂行能力や、個人の持つスキルなどを評価する能力評価への反映が行われ、評価によって従業員のシステムを活用するモチベーションを高められます

また、評価できる資格には、文書の最適な電子保存の方法を理解し、文書の大切さを伝える能力を持った人が取得できる、日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の文書情報管理士があります。電子文書管理のエキスパートとして、取得を推奨する企業も多いです。

参考:文書情報管理士|JIIMA

運用ルールは全社共通にする

文書管理システムは、部署に関わらず活用されるシステムであるため、企業内で統一した運用ルールが必要です。また、システムで管理されている文書データは共有され、システムにアクセスできる全国の支社や営業所でも扱えるため、全社共通にするのがおすすめです。

運用ルールを全社共通にして、どこからでも同じように運用できるようにすることで、各支社などで重複した文書保存をする必要はなく、統一性のある運用が図れます。その結果、業務の効率化がさらに推進されます。

運用ルールは、文書フローの各段階で、紙文書と電子文書それぞれで作成するのがおすすめです。また、運用ルールには下記のような項目を含む必要があります。

  1. 保管・保存が必要な文書範囲(法律の遵守)
  2. 文書の保管・保存方法(分類方法・命名方法)
  3. 保存期間・廃棄方法(法律の遵守・廃棄者の指定)

ルールは運用を通して見直しを行う

運用ルールは、一度作成したら終わりではありません。社会・業界・企業の変化、効果測定などにより、随時見直していく必要があります。身近な場面として、企業のワークフローに変化があれば、多くの場合で運用ルールの変更が必要です。

また、効果測定で問題点が見つかった際に、その問題が運用ルールにある場合もあります。したがって、運用ルールは常に見直し、企業のさまざまな変化に素早く対応できるような体制づくりが重要です。

まとめ

文書管理システムは文書管理を効率よく行うためのシステムで、導入すると企業内にある多くの部署業務に変化が起こります。しかし、課題の明確化ができていなかったり、体制・制度が整っていなかったりすると、運用が上手くいかない場合もあり、注意が必要です。

よって、製品選定の段階で、自社の文書管理における課題を把握して必要な機能を搭載した製品を選ぶことが重要視されます。そして、導入後もより高い導入効果を目指し、文書管理システム運用のための体制や運用ルールを改善していくことが大切です。

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