IP-PBXとSIPサーバーの違いを解説|仕組みや構築方法も

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  • IP-PBXとSIPサーバーは、開発された背景や通信の仕組みに違いがある
  • SIPサーバーはIP-PBXのサーバーとして適している
  • PBXとCTIを連携させることで、さらに機能を拡大できる

IP-PBXとSIPサーバーは、どちらもオフィスでIP電話を利用するために活用されるシステムですが、開発された背景や通信の仕組み・手順に違いがあります。本記事では、IP-PBXとSIPサーバーの違いについて、両者の概要・仕組みを含めて解説します。

目次

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  1. IP-PBXとSIPサーバーの違い
  2. IP-PBX用に構築したSIPサーバーの設置パターン
  3. 近年はクラウドPBXが人気
  4. PBXとCTIを連携して機能拡大も可能
  5. まとめ

IP-PBXとSIPサーバーの違い

IP-PBXとSIPサーバーは、オフィスでIP電話を利用する際に使われるシステムであり、それぞれの特徴にはいくつかの違いがあります。IP-PBXはIP電話機の回線交換を担当する電話交換機で、音声通信が可能です。

一方、SIPサーバーは電話番号やIPアドレスの管理を行い、通信手順においても異なります。ここからは、IP-PBXとSIPサーバーの違いに注目し、詳しく解説します。

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IP-PBXとは

IP-PBX(Internet Protocol Private Branch eXchange)は、IPネットワーク上で音声通話システムを利用する際に、IP電話機の回線交換を行う機器です。企業内のネットワーク上でIP電話のシステムを構築・利用することが可能になります。

通常のPBXは、外部からの電話を内部の電話に振り分けるための電話交換機を指します。オフィスでは複数の回線や通話を管理する必要があり、これにはPBXが必要でした。

しかし、IP-PBXでは大型の主装置が不要で、小型化されたハードウェアや物理的な装置を必要としないソフトウェアが利用されます。

IP-PBXの仕組み

IP-PBXの仕組みは、従来のPBXと基本的な構造は同じですが、ネットワークの構築において「電話線」か「インターネット回線」を利用する点が異なります。通常のPBXは電話線を使用し、自社内に電話交換機を構築しています。

一方で、IP-PBXはIPネットワークを介してIP電話機同士をつなぎ、各種機能を制御します。通話がIPネットワーク内で完結するため、通話の安定性が向上し、構築工事も不要で工事費用を節約できます。

IP-PBXに必要なVoIPとは

VoIP(Voice over Internet Protocol)は、音声通信をインターネットやデータ回線を介して行う技術です。IP-PBXでは、このVoIP技術を用いて音声を送受信し、企業内での通話が可能になります。

IP-PBXは企業内の通信インフラを構築し、VoIPを活用することで、IP電話を導入しやすくなります。この技術を通じて、従来の電話回線に頼らず、インターネットを利用して効率的かつ経済的な音声通話が実現されます。

SIPサーバーとは

SIP(Session Initiation Protocol)は、IPネットワーク上で音声通話やビデオ通話を実現するための通信制御プロトコルです。これを利用することで、デジタル化された音声データの送受信が可能になります。

SIPサーバーは、このSIPを利用して音声通話の管理や制御を担当するものです。IP電話やVoIPサービスにおいて中心的な役割を果たし、電話番号の検索や通話のセットアップ、通話の終了などを管理します。

IP-PBXにおいては、SIPサーバーが発信者の電話番号やIPアドレスを受け取り、通話先に転送することで通話が成立します。

SIPサーバーの仕組み

SIPサーバーは、電話番号の検索やIP電話サービスの管理を担当しています。発信した端末の電話番号やIPアドレスがSIPサーバーに送られ、通話先に転送されて通話が成立します。

PBXとの大きな違いは、SIPサーバーが電話交換だけでなく、IPネットワーク全体で電話サービスを提供する機能を有している点です。

SIPサーバーの仕組みは、SIP端末が起動すると、電話番号やIPアドレスがSIPサーバーに転送され、これらの情報がデータベースに保管されます。他の電話機から発信があると、SIPサーバーはデータベースを検索し、対応するIPアドレスへ発信を転送します。

受信した電話機はメッセージをSIPサーバーに転送し、SIPサーバーが発信した電話機につなげて直接音声通話が可能になります。このように、SIPサーバーはIP電話の円滑な通信をサポートする重要な仕組みとなっています。

SIPサーバーのタイプは2つ

SIPサーバーには「ハードウェアタイプ」と「ソフトウェアタイプ」の2つがあります。ハードウェアタイプは、電話機を使用して通話を行います。

対応可能なIP電話機にはミニハブが搭載されており、SIPフォンのために別途ネットワークを構築する手間が省けます。これに加えて、録音再生や着信履歴の表示などの機能が付いているものもあり、LANケーブルがあれば利用可能です。

一方、ソフトウェアタイプは電話機ではなく、パソコンやアプリを使用して通話します。端末にインストールすることで利用でき、マイクやイヤホンを接続して通話できるため、電話機が不要な特徴があります。

IP-PBXとSIPサーバーは異なるもの

IP-PBXとSIPサーバーは異なるもので、それぞれ異なる機能と用途を持っています。IP-PBXは、PBXを進化させ、様々な機能を追加したものです。IPネットワーク上で音声通話システムを構築し、内外の通信を効率的に行います。

一方、SIPサーバーは通信制御プロトコルであるSIPを用いて、電話番号やIPアドレスの管理を行います。主にIPネットワーク上で音声通話やビデオ通話を実現するためのプロトコルです。

SIPサーバーは電話の呼び出し制御や通話のセットアップ、終了などのプロセスを担当し、IPネットワーク上での電話サービスを可能にします。

SIPサーバーはIP-PBXのサーバーに適している

SIPサーバーはIP電話やVoIPサービスの制御機能を担当し、通話のセットアップや終了などのプロセスを円滑に管理します。この特性から、SIPサーバーはIP-PBXのサーバーと相性が良いです。

IP-PBXはIP電話機の回線交換を担当するものであり、SIPサーバーが提供する通信制御と組み合わせることで、通話制御がスムーズに行えます。IP-PBXとSIPサーバーを連携させることで、IPネットワーク上での通話や様々な機能を最大限に活用できます。

SIPサーバーが通話の制御を担当するため、IP-PBXはこれを活かして柔軟で効率的な電話サービスを提供できます。この相性の良さにより、企業はIP-PBXとSIPサーバーを組み合わせて、効果的かつスムーズな通信インフラを構築することが可能です。

IP-PBX用に構築したSIPサーバーの設置パターン

IP-PBX用に構築されたSIPサーバーは、効率的なコミュニケーション環境を構築する上で重要です。以下では、企業や組織がIP-PBXとSIPサーバーを組み合わせて利用する際の設置パターンに焦点を当て、詳しく解説します。

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メイン拠点に1つのサーバーを設置する

メイン拠点に1つのSIPサーバーを設置する手法では、1つのサーバーを導入・管理することで、比較的簡便にIP電話システムを構築できます。

管理が容易であり、1台のサーバーでシステム全体を効率的に統括できるため、導入費用を抑えながらもIP電話を利用できるメリットがあります。しかし、唯一のサーバーに障害が発生すると、全ての拠点でIP電話が利用できなくなるリスクが存在します。

特に、停電などの要因でSIPサーバーに問題が生じた場合に影響が顕著です。このようなリスクを考慮すると、拠点数が多く信頼性が求められる大規模な企業においては、他の適切な方法も検討すべきです。

メイン拠点に2つのサーバーを設置する

メイン拠点に2つのSIPサーバーを設置する方法は、企業がWAN回線を冗長化し、音声通話の信頼性を高める手段です。通常、各拠点にSIPサーバーを設置する代わりに、冗長化のための機能を備えた機器を配置します。

これにより、WAN障害が発生してももう一方のサーバーが引き継ぎ、ビジネス通話の中断を最小限に食い止めることができます。ただし、この手法の導入には一定のコストや手間がかかります。

しかし、通話サービスの中断を回避でき、信頼性向上につながるため、企業にとっては有益な投資となるでしょう。冷静な検討とバランスを取りながら、最適な選択を行うことが求められます。

複数の拠点にサーバーを設置する

複数の拠点にSIPサーバーを設置する手法は、1台のみでの運用時のリスクを軽減できる一方で、新たな課題も生じます。各拠点にサーバーを配置することで、一つの拠点での障害が他の拠点に波及せず、通話サービスの信頼性が向上します。

ただし、導入費用が1台のみで運用するよりも高くなり、サーバーの数が増えることで管理が複雑になります。各サーバーの設定やメンテナンスが必要で、これには労力と時間を要する可能性があります。

特に、中小企業や小規模事業者にとっては、これらのデメリットが大きな負担となることが考えられます。一方で、通信の信頼性向上が求められる多拠点の企業には、リスクとリターンを検討したうえでこの構築方法が適しているでしょう。

近年はクラウドPBXが人気

近年注目されているクラウドPBXは、インターネットを通じて提供される電話回線サービスです。オフィスや自宅など異なる場所でも、インターネット接続があれば会社の電話番号を利用できます。

そのため、携帯電話やノートPCでも内線通話や外部からの電話を受け発信でき、外出中でもスムーズに電話に対応できます。クラウドPBXの特徴は、自社でSIPサーバーを用意する手間がないことです。

通話に必要な設備がクラウド上にあり、インターネット接続があればすぐに利用できるため、柔軟で場所を選ばない働き方が可能です。

クラウドPBXとは?機能やメリット・デメリットなどを解説

クラウドPBXとは、インターネットに接続して利用できるオフィス向け電話システムです。クラウドPBXの導入で、社外からでも会社宛の電話に出られたり、通話料の削減ができたりします。本記事では、クラウドPBXを導入するメリットや選び方などを解説しています。

PBXとCTIを連携して機能拡大も可能

PBXはCTIと連携して、機能を拡大することも可能です。ここからは、CTIと連携するメリットを解説します。

CTIとは

CTI(Computer Telephony Integration)は、コンピュータと電話・FAXを統合するシステムで、パソコンを活用した電話業務を実現します。パソコンと社内PBXを連携させ、CRMやSFAとも連携し、電話の内容を記録することができます。

一方で、PBXは企業内の電話を結びつけ、通話を転送するなどの業務を効率化します。CTIはこのPBXと各種情報システムを統合し、電話業務をさらに効果的に展開できるようにします。

PBXとCTIを連携するメリット

PBXとCTIを連携させることには多くのメリットがあります。たとえば、コールセンターやサポートセンターの業務が大きく効率化されます。

この連携により、オペレーターはコンピュータを通じて電話の発着信を行い、同時に顧客情報や対応履歴が画面に表示されます。CTIは電話の着信時に自動的に顧客情報を取得し、画面に表示する機能も備えています。

これにより、通話中でもリアルタイムで適切な情報を取り扱うことが可能となり、顧客に対してより適したサービスを行うことができます。これが結果として、顧客満足度の向上や業務の効率化に繋がります。

まとめ

自社でPBXを構築する際は、機能や特徴を理解し、必要な機能を確認することが重要です。IP-PBXはIP電話機の回線交換を担当する電話交換機であり、一方でSIPサーバーは電話番号やIPアドレスの管理・検索が可能です。

複数のSIPサーバーを設置することで電話のリスクを抑えつつも、その導入には注意が必要です。

近年注目されているクラウドPBXは、インターネットを通じて提供される電話回線サービスです。オフィスや自宅など異なる場所でも、インターネット接続があれば会社の電話番号を利用できます。

これらの選択肢を比較検討することで、効果的な通信環境を整え、業務の効率化や柔軟な働き方を実現することができるでしょう。

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