IaaSとは?概要からメリット・デメリットまで分かりやすく解説

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  • IaaSとは、ネットワークやサーバのインフラ機能を利用するクラウドサービスである
  • IaaSは環境構築の自由度が高いため、アプリ・ゲーム運営やECサイト構築に向いている
  • クラウドサービスは、事業目的に合わせてサービスの種類や機能を選定する

IaaSとは、ネットワークやサーバー(ストレージ・CPU・メモリ)など、インフラ機能だけを利用するクラウドサービスを指します。本記事では、IaaSの機能や導入のメリット・デメリット、サービスを選定する際の比較ポイントについても詳しく解説します。

目次

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  1. IaaSとは
  2. IaaSとPaaS・SaaSの違い
  3. IaaSのサービス・機能
  4. IaaS導入のメリット
  5. IaaS導入のデメリット
  6. IaaSの導入が向いているケース
  7. IaaSサービスの比較ポイント
  8. 導入時の参考になるIaaSの情報開示認定制度
  9. まとめ

IaaSとは

IaaS(Infrastructure as a Service)は、クラウドコンピューティングの一形態であり、読み方は「イアース」または「アイアース」です。IaaSは仮想化技術を活用し、サーバーやストレージ、ネットワークなどの基盤をインターネット経由で提供するサービスです。

従来、システムの構築にはサーバーやソフトウェアを購入し、運用する必要がありました。しかし、IaaSではハードウェアを物理的に所有することなく、サーバーやストレージ、ネットワークをインターネット経由で利用できます。

IaaSとPaaS・SaaSの違い

IaaSやPaaS、SaaSは、クラウド上でサービスを提供する主なモデルです。3つのモデルには、それぞれサービスの特徴や違いがあります。ここでは、3つのサービスについて概要と特徴を解説します。

サービスの種類特徴
IaaS環境構築の自由度、カスタマイズ性が高い
PaaSミドルウェアや開発ツールを提供
SaaS完成されたソフトウェアを提供

IaaSの特徴

IaaSは、クラウド上でコンピューターの基盤であるサーバーやストレージ、ネットワークなどのリソースを提供するサービスです。IaaSは、ハードウェアリソースのみを提供するサービスであるため、環境構築の自由度とカスタマイズ性が高いです。

ホスティングサービスとの違い

ホスティングサービスは、IaaSと同様にインターネット経由でサーバーを利用するサービスですが、物理的なサーバーを複数のユーザーと共有しながら利用しています。つまり、仮想サーバーをユーザーごとに割り当てるIaaSとは異なります。

さらに、ホスティングサービスは、IaaSと比較するとカスタマイズ性や柔軟性にも制限があります。他のユーザーと同じサーバーを共有するため、自社仕様へ自由にカスタマイズすることはできません。

また、ホスティングサービスは月額固定制、IaaSでは従量課金制を主に採用している点も異なります。

PaaSの特徴

PaaS(Platform as a Service:パース)は、アプリケーションの開発・実行に必要なプラットフォームを提供するサービスです。PaaSは、ハードウェアリソースに加えて、OSやミドルウェアといったアプリケーション実行環境・開発ツールも提供します。

PaaSは、アプリやWebサービスの開発をする際に使用され、管理工数・開発工数を削減できる便利なサービスですが、あらかじめ整えられた環境を利用するため、IaaSに比べると自由度に制限があります。

スケーラビリティとメンテナンス負担の軽減

PaaSはスケーラビリティに優れており、アプリケーションの利用状況に応じて自動でリソースを拡張・縮小できます。そのため、アクセス増加によるサーバー負荷や容量不足の心配がなく、ユーザーは安定したサービス運用が可能です。

また、サーバーのアップデートやセキュリティパッチの適用、バックアップなどのメンテナンス作業はクラウド事業者側で管理されるため、運用担当者の負担を大幅に削減できます。その結果、開発者と運用者は本来の業務に集中できる環境を整えられます。

PaaSとは?メリット・デメリット、機能などわかりやすく解説

PaaSとは、アプリケーション開発に必要なOSなどが揃ったプラットフォームを利用できるクラウドサービスです。本記事では、PaaSをよく知らない方のために、IaaS・SaaSとの違いやメリット・デメリット、PaaSの代表的な機能や選定ポイントを解説しています。

SaaSの特徴

SaaS(Software as a Service:サース)は、ソフトウェアそのものをインターネット経由で提供するサービスです。利用者は、自身のデバイス・ブラウザからアプリケーションにアクセスし、インターネットを介してソフトウェアを利用します。

SaaSは完成されたソフトウェアをユーザーが利用するサービスで、スマホアプリもSaaSに該当します。すぐに導入できる利便性の高いサービスですが、基本的に機能や仕様などのカスタマイズは不可能です。

自動アップデートと保守の簡略化

SaaSは、アプリケーションのアップデートやセキュリティパッチの適用がクラウド事業者によって自動で行われます。つまり、ユーザー側でバージョン管理や保守作業を行う必要がなく、常に最新の機能とセキュリティ環境を利用できます。

これにより、システム運用の負担を軽減できるだけでなく、アップデートによる互換性トラブルの心配もなく、安定してサービスを継続利用可能な点がSaaSの大きな魅力です。

IaaSのサービス・機能

IaaSは、クラウド上でハードウェアリソースを利用できる便利なサービスです。ここでは、IaaSが提供するサービスや機能について解説します。

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サービス・機能主な内容
インフラの提供ハードウェア領域の提供・管理
セキュリティ機能外部からの攻撃防止やデータ保護
連携サービス他サービスとの連携
システム管理・監視システムの稼働状況の把握と監視

インフラの提供

IaaSは、ハードウェア領域のインフラをインターネット経由で利用できます。具体的には、サーバーやネットワーク、ストレージなどが提供されます。ユーザーはサーバーにOSやミドルウェア、ソフトウェアなどをインストールして利用します。

ユーザーは自らハードウェア環境を構築することなく、必要なときに必要な分だけリソースの利用が可能です。

セキュリティ機能

IaaSの主なサービス・機能の1つに、セキュリティ機能があります。外部からの攻撃防止やデータ保護、アクセス制御などの機能が備わっており、外部からの攻撃を検知・防御することで機密性とプライバシーが保護されます。

セキュリティ機能の活用により、データ漏洩やシステムへの不正アクセスのリスクを低減し、ビジネスの信頼性を向上させることが可能です。

連携サービス

IaaSは、他のサービスとの連携や統合が可能です。連携することにより、異なるサービスやシステム間でのデータとリソースの共有、相互作用が実現します。 

異なるサービスを組み合わせることで、特定の要件に合わせたカスタマイズや、スケーラビリティの向上を図れます。

システム管理・監視

IaaSでは、システム管理や監視などの運用管理をベンダー側が行います。 ベンダーは、充実した体制でシステム管理・監視を行い、安定した稼働を実現しています。

システムの稼働状況をリアルタイムで監視し、障害やパフォーマンスの問題を早期に検知し、迅速に対応することは運用において非常に重要です。これらがサービスとして提供されることで、ユーザーはその分の運用リソースをかけずに済みます。

IaaS導入のメリット

IaaSはシステムの開発・構築を行うことにより、さまざまなメリットが得られます。ここでは、IaaSを導入するメリットについて解説します。

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環境構築の自由度が高い

IaaSのメリットの1つは、環境構築における自由度の高さです。IaaSでは、さまざまなプラットフォームやツールとの統合が容易であり、自由な開発環境の構築が可能です。

IaaSは、クラウド上で提供されるサービスでありながら、オンプレミス環境に匹敵する自由度を持ち合わせています。オンプレミス環境ではハードウェアの調達や設定に時間とコストがかかりますが、IaaSではハードウェアの保有や管理が不要な点も利点です。

拡張・縮小が可能

IaaSでは、クラウドを活用してハードウェアリソースを提供するため、自社のニーズに合わせて柔軟に環境をカスタマイズできます。

スケーラビリティに優れており、必要なCPU、メモリ、ストレージなどのリソースを自由に追加・削減できるため、ビジネスの成長や需要の変動にも容易に対応が可能です。 また、不要なリソースを縮小・解約することで、コストの節約にも役立ちます。

BCP対策ができる

BCPとは、災害時や緊急時における事業の継続を確保するための計画です。IaaSは、クラウド上でハードウェア領域を提供するサービスで、インターネット環境があれば利用できるため、BCP対策になります。

データをクラウド上に保存することで、災害時におけるデータの損失を最小限に抑えられます。さらに、IaaSではデータのバックアップが行われるため、万が一の際も復旧が容易です。

コストを抑えられる

IaaSでは、必要なリソースの容量に応じて料金が発生するため、余計なコストがかからず、常にコストの最適化が図れます

また、従来のオンプレミス環境では、高額な初期投資や不定期に発生する維持費用が必要でしたが、IaaSでは決まった料金体系の中で必要なリソース分だけ支払う仕組みのため、導入ハードルが低くコスト管理もしやすいです。

運用負担を軽減できる

IaaSを利用すれば自社にハードウェアを置く必要がないため、ハードウェア領域の管理を自社で行わずに済みます。ハードウェアの更新や管理はサービス事業者が担い、自社で手間をかけずとも安定した稼働が実現できるのは大きなメリットです。

自社では本来の目的である開発に注力でき、生産性向上につながります。そして、IaaSなどのクラウドサービスは、最新テクノロジーの実装によって競合サービスに対する優位性を保ちつつ、自社では実装が難しい最新の技術を取り入れることが可能です。

IaaS導入のデメリット

IaaSにはメリットが多いですが、デメリットも存在します。メリット・デメリットの両方を理解したうえで、IaaSの導入を検討しましょう。ここでは、IaaSを利用するデメリットについて解説します。

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環境構築・運用には専門知識が必要

IaaS導入では、環境構築・運用の専門知識が必要です。従来のオンプレミス環境と比較すると、自社でサーバーやネットワークを構築する手間はなくなりますが、その代わりにクラウド上のリソースを適切に設計・構築しなければなりません

PaaSと違い、OSやデータベースなどのミドルウェアを自由に選択できる分、それらに関する知識と管理スキルが求められます。さらに、セキュリティやパフォーマンスの最適化なども考慮することが大切です。

IaaSの利用では、システム開発における環境構築について、専門的な知識や経験を持つエンジニアの存在が必須となります。

運用・保守には労力が必要

専門知識を持った人材を配置して運用を続けるには、その分の労力がかかります。特に、IaaS環境では、ミドルウェアの管理・セキュリティ対策などの運用・保守業務を自社で行う必要があります。

運用・保守業務には一定の労力が常に求められるため、事前に人員体制を整えておかなければなりません。その際、人件費についても考慮するのが重要です。

インターネット障害時は利用できない

インターネット障害時には、サービスの利用ができません。IaaSはインターネット経由でリソースを提供するため、インターネット接続が不安定な場合や障害が発生した際には、サービスにアクセスできなくなる可能性があります

IaaSの導入が向いているケース

IaaSは環境構築の自由度の高さが1番のメリットであるため、柔軟なカスタマイズが必要となる開発案件に向いています。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。

環境の自由度が求められるアプリ・ゲーム開発

プラットフォームやプログラミング環境に関する要件が多く含まれる、アプリ・ゲーム開発にはIaaSの利用が適しています。オンプレミスと変わらない柔軟性を保ちながら、環境構築を効率化できます

場合によっては、ミドルウェアまで提供されるPaaSの方が向いていることもありますが、より自由度の高い環境が必要であればIaaSを選ぶのがおすすめです。また、IaaSはテスト環境としても優秀で、テストに必要な分のリソースだけを利用することもできます。

テスト後は、そのままリソースを拡張して本格運用につなげることも可能です。

ECサイトの構築・運用

ECサイトは、商品の種類によっては季節でアクセス数が大きく増減することがあります。その他、特別なキャンペーンなどでデータ容量が急に多くなることも考えられます。

IaaSであれば、そういった場合にも柔軟にリソースを追加・削減でき、料金も使った分だけの支払いで済むため、オンプレミスのように規模が大きくなる時期に合わせて、あらかじめ環境を構築しておく必要がありません。

マーケティングのために他のシステムと連携したい場合も、クラウドサービス同士であればスムーズに連携できる可能性が高いです。

IaaSサービスの比較ポイント

IaaSサービスにはさまざまな種類があり、導入する際は自社のニーズに合った製品選びが大切です。ここでは、具体的なIaaSサービスの選び方・比較ポイントについて解説します。

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事業目的に合っているか

IaaSサービスごとに異なる特徴や強みを持っているため、機能・サービス内容などを十分に比較したうえで選択しましょう

特定の時期にアクセス数が多くなるなど、利用規模が短期間で大幅に増減する場合には、サーバーやその他リソースの増減をより簡単に行えるIaaSがおすすめです。そして、人件費削減を重視する場合には、自動化機能を豊富に搭載しているIaaSが良いでしょう。

このように、自社がIaaS導入によって解決したい課題は何か、IaaSに求めるものとして重視するのはどのようなことかを明確にすることが、IaaS選定における最初のステップです。

セキュリティ対策が万全か

IaaSサービスの比較ポイントとして、セキュリティ対策の内容も重要です。IaaSはインターネット経由で利用するため、サイバー攻撃などのセキュリティリスクはゼロにできません。

そのため、IaaSを選ぶ際には、アクセス制御や認証・暗号化の仕組み、監視体制などプロバイダのセキュリティ対策を評価し、自社の求めるセキュリティレベルを満たしているかを確認しましょう。

サポート体制が手厚いか

セキュリティ対策と併せて、サポート体制の充実度も確認しておくのが大事です。安定してIaaSサービスを利用するには、トラブル発生時や緊急時に、迅速かつ効果的な技術サポートが必要となります。

導入前に、サポート体制が24時間365日稼働しているか、専門知識を持つエンジニアやコンサルタントが在籍しているか、サポートは無料か有料かなどをチェックしましょう。

他システムとの互換性があるか

IaaSのサービス・機能の1つとして「連携サービス」を挙げましたが、実際にどのシステムと連携できるかはサービスによって異なります

例えば、オンプレミス型のシステムと連携できるIaaSサービスもあります。オンプレミスとクラウドを組み合わせて運用するハイブリッド環境を実現できれば、ビジネスの柔軟性と運用効率が向上しやすいです。

既存のデータをIaaSに移行する場合なども、互換性があって移行できるか、移行手順や必要な工数を確認しておくことが重要です。

費用対効果は高いか

IaaS導入にはコストがかかるため、費用対効果の高さも重要です。予想される費用と導入によって削減できるコストを算出してみましょう。

また、IaaSの料金体系は多くが従量課金制ですが、時間単位での課金または分単位による課金が存在します。利用の仕方によってどちらが良いかは変わってくるため、事前のシミュレーションが重要です。

なお、費用対効果を算出する際は中長期的な視点が必要です。コスト削減をはじめ、さまざまな効果が得られるようになるには、ある程度の時間がかかります。数ヶ月あるいは数年後を見越した視点と、客観的な視点で評価しましょう。

導入時の参考になるIaaSの情報開示認定制度

クラウドサービスの普及に伴い、ベンダーの安全性・信頼性に不安がある事案も増加しました。そのような背景から、「IaaS・PaaSの安全・信頼性に係る情報開示認定制度」が制定されました。

この制度は、ベンダーがIaaS・PaaS サービスについての安全・信頼性に係る実施水準や、状態に関する情報を適切に開示していることを認定するものです。情報開示認定制度の存在により、利用者は安全性の高いサービスを選定しやすくなります。

認定証・認定マークを確認

「IaaS・PaaSの安全・信頼性に係る情報開示認定制度」で認定された事業者は、認定証と

認定マークを付与されます。認定マークはWebページや広告媒体に使用することができるため、サービス選びでは認定マークの有無も参考にしてみましょう。

参考:IaaS・PaaS の安全・信頼性に係る情報開示認定制度 | 一般社団法人日本クラウド産業協会

まとめ

IaaSはクラウドコンピューティングの一形態で、手軽かつ柔軟にハードウェア領域のリソースを利用できるのが特徴です。自社でハードウェアを保有する必要はないものの、環境構築の自由度が高く、リソースの拡張・縮小が可能な点が大きなメリットです。

組織の要件やビジネス目標に合わせた適切なIaaSサービスの選択は、開発の効率化とコスト削減につながります。本記事で解説したIaaSサービスの比較ポイントを踏まえ、自社に合ったIaaSを導入しましょう。

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