介護施設におけるマニュアル作成の必要性|作成時のポイントも解説

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  • サービス品質の維持やトラブル防止のために、介護施設におけるマニュアル作成は重要
  • 介護施設向けマニュアルを作る際は、専門用語を避け、誰でも実行できる内容にする
  • 作成したマニュアルは教育の際に使用し、いつでも閲覧できる場所に置いておく

介護施設の業務においても、マニュアル作成は非常に重要です。適切なマニュアル作成は、サービス品質の維持や事故・トラブル防止に役立ちます。この記事では、介護施設向けマニュアルを作成する際の注意点や活用するためのポイントを解説します。

目次

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  1. 介護施設におけるマニュアルの課題
  2. 介護施設におけるマニュアル作成の必要性
  3. 介護施設向けマニュアル作成の注意点
  4. 介護施設向けマニュアルの作成時のポイント
  5. 介護施設でマニュアルを効果的に活用するために
  6. まとめ

介護施設におけるマニュアルの課題

介護施設に必要なマニュアルは、介護方法を記した介護マニュアルのほかに、施設を円滑運営するためのマニュアルも必要です。また、災害時や感染症まん延時でも事業を継続させるためのマニュアル策定(BCP)など、作成が義務化されているマニュアルもあります

それらのマニュアルは、すべて利用者や職員・施設を守るとともに、サービス品質を維持したり、事故やトラブルを防止したりするためにあります。しかし、マニュアルが形骸化していて、利用されていない介護施設も多いのが現状です。

マニュアルに沿った介護施設の運営は、利用者やその家族の満足度を高めるとともに、施設や従業員を守るリスクマネジメントにもつながります。誰もがいつでも利用できる見やすいマニュアルを作成して、スムーズで安全な介護施設の運営を行うことが重要です。

マニュアル作成とは?メリット・デメリット、ツールの選び方を解説

マニュアルを作成することで、教育コストを削減し、業務の効率化や属人化防止に効果的です。またマニュアル作成ツールを導入することで、マニュアル作成に関する課題の解決に役立ちます。本記事では、マニュアル作成の手順やマニュアル作成ツールの選び方などを解説しています。

介護施設におけるマニュアル作成の必要性

介護施設がマニュアルを準備しておくことは、利用者や職員・施設を守るために大変重要です。ここでは、介護施設でのマニュアルが果たす役割や必要性を下の4つの観点から解説します。

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サービスの質を一定に保つ

介護施設には多くの利用者がおり、職員はさまざまなサービスを提供しています。そこで大切なのは、介護状態に合わせてサービスの質を一定に保つことです。そのためには、マニュアルを基本としたサービスの提供が必要になります。

職員間でサービスの質が異なると、利用者が一定の職員に介護を頼み、業務負担が偏ってしてしまったり、一定の職員が利用者から疎ましく思われたりするリスクがあります。これらは、サービスをマニュアル化して、サービスの質を一定に保つことで防げます

事故・トラブルを防止する

介護施設では、利用者に提供するサービスの質の違いから来るトラブル以外にも、利用者間のトラブルや利用者の家族と施設とのトラブルなど数多くあります。それらのトラブル対応を間違えると、トラブルがさらに複雑化してしまう場合があります

そこで、想定できる事故やトラブルを事前に洗い出し、その原因を作らないようなマニュアル作成が必要です。たとえば、事故が起きそうな介護の手順や方法をマニュアル化するなどです。ただし、画一的に行うのでなく、ケアプランに基づいた個別の対応は必要です。

また、万が一事故が発生してしまった場合でも、職員がマニュアルに沿った対応を行っていれば、職員個人の過失とはならず、職員を守ることができます

生産性を向上させる

マニュアルに沿ってケアを行えば、誰もが効率のいい方法で品質の高いケアを行うことができます。これにより、職員の業務負担の減少やストレスの軽減になるとともに、業務の効率化につながります

そして、そのようにして生まれた時間は、利用者の個別ケアの充実に当てることができ、利用者へのサービス向上の効果も期待できます

人材育成を効率化する

介護施設では、人手不足が大きな問題となっています。その問題を解決するためには、確保した職員の育成を効率化して、介護に対するやりがいや楽しさを早い段階で体感させることが重要です。そのためにも、人材育成を効率化できるマニュアルが必要です。

マニュアルのない介護施設では、新しい職員に経験者が付きっきりで教えなくてはならず、育成に長い期間を要します。しかし、マニュアルがあれば、短期間の研修で自立できるようになり、経験者は自分の業務を進めながら見守る場面が多くなります。

また、職員を早期育成して、やりがいのある職場として定着させることで、職員採用や研修などにかかる時間とコストの削減にもつながります

介護施設向けマニュアル作成の注意点

介護施設は、一般企業と異なる特殊性があるため、企業で使うマニュアルとは違った観点を持って作成する必要があります。ここでは、介護施設向けのマニュアルを作成する際の注意点を、下の3点に絞って解説します。

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専門用語を避ける

介護施設では、資格を持った職員ばかりでなく、資格を持たない職員もいます。したがって、マニュアルは資格の有無に関わらず、わかりやすいものでなくてはなりません。そのため、難しい専門用語は避けて、わかりやすい言葉で説明することが大切です。

専門用語が必要な場合は、注釈をつけておくのがおすすめです。介護資格を持った職員や介護に詳しい職員がマニュアルを作成すると、専門用語が多くなりがちです。チームで作成したり、資格のない職員に確認してもらったりするのも良い方法でしょう

マニュアルの目的を明示しておく

介護施設のマニュアルには、管理マニュアル・ケアマニュアル・認知症介護マニュアル・服薬管理マニュアルなど、数多くあります。マニュアル作成時には、そのマニュアルが何のマニュアルなのか一目でわかるようにして、最初の項目にその目的を明示しておきましょう

基本的に介護施設のマニュアルは、事故・トラブルの予防や発生時の迅速な初期対応のために作るものです。マニュアルに沿ったケアをすることで、自分自身や組織を守ることが大きな目的になります。目的を明示することで、マニュアルへの意識の向上が期待できます。

誰でも実行できる内容にする

介護施設のマニュアルは、誰もが実行できる内容でなくては利用されなくなり、事故・トラブルのリスクが高くなります。そのため、マニュアルは理想論で書くのではなく、現場に則した内容でなくてはなりません。

たとえば、マニュアルで歩行時の付添いをルール化することは、条件を付けないと実行不可能です。そのような無理難題を要求するマニュアルは、使えないマニュアルとして放置されるようになります。また、職員の不満が募り離職にもつながります。

介護施設向けマニュアルの作成時のポイント

ここでは、介護施設向けマニュアルの作成時の注意点を考慮しながら、マニュアル作成をするための4つのポイントについて解説します。

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画像を使う

テキストの使用をできるだけ減らし、視覚に訴えられる画像を使うと、すばやく理解できるマニュアルとなります。利用者にサービスを提供しながらマニュアルを確認するシーンもあることから、素早く理解できることは大変重要なポイントです。

また、ケアを流れで理解しなければならないことも多く、それを文章化するのは難しいです。しかし、画像を使えば数枚で説明ができ、簡単なテキストの説明ですみます。これにより、短時間でのマニュアル作成にもつながります

箇条書きやフローチャート形式にする

長いテキストで説明しなければならない部分については、箇条書きにするのがおすすめです。たとえば、「〇〇の場合は以下をチェックしてください」の一文を添えて、チェック事項を箇条書きにします。これにより、漏れのない対応が可能になります。

また、流れがある場合は、番号付きリストやフローチャートを使うと見やすくまとめられます。番号付きリストは番号順に流れを解説する方法で、フローチャートは複雑な流れをまとめるのに便利です。

フローチャートは、一つひとつの手順を実際の業務の順序に合わせて、線で結んでいく方法です。条件によって手順が分かれる場合は線を分岐させて、それぞれの手順をさらに線で結んでいきます。

フローチャートは、条件によって異なる流れを表すのに便利です。テキストにすると長文でわかりにくくなるところを、視覚的でわかりやすく表現できます。

マニュアル化する範囲を決めておく

介護施設の業務は幅広く、すべての業務を包括するようなマニュアルは膨大なページ数になり、作成に時間がかかるとともに扱いにくいものになります。したがって、範囲を絞って取り扱いやすく、調べやすいものにするのがおすすめです。

業務の中には、マニュアル化しなくてもスムーズに行えるものもあります。マニュアルの必要な作業は、職員によって差が出やすい作業や事故リスクの高い作業などです。事前にマニュアル化が必要な作業を洗い出してから、作成するのがおすすめです。

テンプレート化しておく

マニュアルは、調べたいことがすぐ調べられるように、同じ形式で整えておくことが重要です。そのためにも、マニュアルのテンプレートを用意しておくのがおすすめです。調べにくいマニュアルは、利用されなくなる恐れがあります。

テンプレートがあれば、誰が作成しても同じ形式で、見やすく調べやすいマニュアルになります。また、マニュアル作成者以外が内容の追加や更新を行う際も、作業がスムーズにできるようになります。

テンプレートは、インターネット上で公開されているものや、無料でダウンロードできるものもあります。また、マニュアルが簡単に作成できるマニュアル作成ツールの利用もおすすめです。ツールの中には、さまざまなテンプレートが用意されています。

介護施設でマニュアルを効果的に活用するために

折角作成したマニュアルも活用されなくては、業務の効率化やリスクマネジメントはできません。ここでは、介護施設でマニュアルを浸透させ、効果的に活用するためのポイントを3つ解説します。

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スタッフを教育する際に使用する

新人を早く育成して、介護の楽しさややりがいを早期に体験させることは、新人の定着にもつながります。そこで、マニュアルを新人教育に利用して、マニュアルを確認しながらでも、一人でやれる充実感を味わわせることが大切です。

そのために、新人教育はマニュアルの活用から始め、不明点を自己判断でなく、マニュアルで確認する習慣を身に付けさせましょう。これにより、新人でも経験のある職員と同質のサービスが提供でき、利用者からの信頼も早く得られるようになります。

また、新人ばかりでなく、職員のスキルアップ研修にもマニュアルを使うのがおすすめです。特に少し業務に慣れた職員は、マニュアルを軽視しがちです。そのような職員に対して、再度マニュアルの重要性を認識させることは、リスクマネジメントにつながります。

いつでも閲覧できる場所に置いておく

マニュアルは、すぐ利用できる場所に保管したり、目につく場所に掲示したりするなど、いつでも確認できるようにしておきましょう。たとえば、入浴マニュアルを脱衣所に、電話での問い合わせ対応マニュアルを電話の近くに掲示するのがおすすめです。

介護施設の現場は多忙で、遠くまでマニュアルを取りに行くことができないケースもあります。そのような時のために、広い施設では複数の場所にマニュアルを置いておくなどの工夫も必要になります。

最近では、マニュアルをスマホで閲覧する施設も増えています。電子マニュアルは動画の掲載ができたり、検索で調べたい情報を素早く見つけられたりするため大変便利です。マニュアル作成ツールを利用すれば、簡単にスマホ対応のマニュアル作成ができておすすめです。

変更・修正は速やかに行う

マニュアルに変更や修正が必要な場合は、速やかに対応を行うことが重要です。昔の作業内容が残っていると、マニュアルを使う職員の混乱を招き、予期せぬトラブルに発展してしまう恐れがあります。また、そのような信用性のないマニュアルは利用されなくなります。

変更や修正を速やかに行うためには、マニュアル管理の担当者を決めておくのがおすすめです。また、マニュアルデータの保管場所を職員で共有し、誰でも修正できるようにしておく方法もあります。

変更や修正が簡単にできないと、頻繁な修正や訂正は困難になり、結果として古いマニュアルが放置されてしまう恐れがあります。誰でも簡単に変更や修正ができるツールの利用を考えるのも、常に最新のマニュアルを保つためにおすすめです。

まとめ

介護施設の業務において、マニュアル作成は非常に重要です。適切なマニュアル作成は、サービス品質の維持や事故・トラブル防止に役立ちます。マニュアルの作成は、介護資格の有無を問わず、施設の職員全員が理解できるものにすることが重要です。

そのためにも、専門用語はできるだけ使わずに、誰もが無理なく実行できる内容を記載しましょう。また、画像などを使って素早く理解できるマニュアルにすることも大切です。マニュアル作成には、簡単に作成できるツールの活用がおすすめです。

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