ソーシャルビジネスとは?特徴や注目される背景・歴史・課題を解説

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  • ソーシャルビジネスとは、多岐に渡る社会の課題を解決するために取り組む事業のこと
  • ソーシャルビジネスは、SDGsの目標達成にも繋がるとして注目されている
  • ソーシャルビジネスはまだ認知度が低く、スキルのある人材が不足していることが課題

ソーシャルビジネスとは、福祉や環境保護など多岐に渡る社会の課題解決のために取り組む事業のことです。SDGsへの関心の高まりもあって、ソーシャルビジネスに取り組む民間企業が増えています。本記事ではソーシャルビジネスの特徴や歴史、課題などを解説します。

目次

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  1. ソーシャルビジネスとは
  2. ソーシャルビジネスの特徴
  3. ソーシャルビジネスの歴史
  4. ソーシャルビジネスが注目される背景
  5. ソーシャルビジネスの課題
  6. ソーシャルビジネスを推進する際のポイント
  7. 実際に行われているソーシャルビジネスの事例
  8. まとめ

ソーシャルビジネスとは

ソーシャルビジネスとは、社会問題の解決が目的のビジネスです。貧困や環境問題、高齢者の介護問題など、社会問題として取り上げられることの解決や新しい社会価値の創造のために事業を行います。

ソーシャルビジネスの大きな特徴は、寄付金や補助金に頼らず、自社の収益や投資から資金調達をしていることです。ここでは、ソーシャルビジネスの定義や他のビジネス、似た言葉との違いを解説します。

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ソーシャルビジネスの定義

ソーシャルビジネスは、経済産業省の「ソーシャルビジネス推進研究会」で、様々な社会的問題を市場としてとらえ、それらを解決する事業という概念になっています。ソーシャルビジネスであることの要件として「社会性」「事業性」「革新性」の3つが必要です。

「社会性」とは、現在社会が抱える問題の解決を目的として事業に取り組むこと、「事業性」は事業目的をビジネスとして実現し、事業活動を継続すること、「革新性」は社会に活かせる新しい商品やサービスの提供や仕組化、社会的価値の創出を行うことです。

世界においても、ソーシャルビジネスという概念はあります。しかし各国における制度や文化、歴史的背景は異なるため、全世界共通の定義は存在しません。

参考:ソーシャルビジネス推進研究会 報告 概要|経済産業省

一般的なビジネスとの違い

企業の利益を目的として運営される一般ビジネスに対し、ソーシャルビジネスは社会問題の解決を目的としています。昨今では環境問題に取り組んでいる一般企業も多いですが、利益が根底にあるため、ソーシャルビジネスとは異なります。

社会問題の解決を第一に考えつつ利益を出すのがソーシャルビジネスです。問題解決だけでなく利益も狙っている分、ソーシャルビジネスを進める難易度は高いと言われています。

NPO法人との違い

NPO法人は外部資金で事業を行っていることもあるという点で、ソーシャルビジネスとは異なります。事業の特性柄、ソーシャルビジネスに分類されることは多いですが、中には事業収益が少ないNPOもあります。

実際に事業収益を上げているNPOや、外部資金に頼らないNPOも存在するため一概には言えませんが、全体的に見るとソーシャルビジネスには当てはまらない事業もあります。

コミュニティビジネスとの違い

コミュニティビジネスは地域の住民が主体となり、ビジネスの手法で地域が抱える課題の解決に取り組む事業のことを指します。地域に特化しているという点で、社会全体での課題に向き合うソーシャルビジネスと異なります。

コミュニティビジネスではまちづくりや観光支援、高齢者支援など、地域によって異なるであろう課題の解決に取り組みます。ビジネスの手法を用いることで、課題の早期解決や地域の活性化が期待されているビジネスです。

ボランティアとの違い

ボランティアとソーシャルビジネスは、収益を上げるための活動であるか否かの点で異なります。ボランティアで収益を得ることはないため、外部資金の調達が必要です。継続して支援を受けられるとも限らず、不安定な活動と言えるでしょう。

また、外部資金を頼ることで自分たちの自由な活動や決定権が阻まれることもあります。社会問題の解決に向けて取り組まれている点で共通していますが、ソーシャルビジネスは収益を上げて資金を保つことができれば、取り組みを継続できます。

ソーシャルビジネスの特徴

ソーシャルビジネスの最大の特徴は、事業の目的が社会問題の解決であることです。例えば、何かを販売する際は「利益」に着目するのではなく、「消費者が社会的背景を理解できるような方法で販売する」というような観点で戦略がとられます。

例えば、何かを販売する際は「利益」に着目するのではなく、「消費者が社会的背景を理解できるような方法で販売する」というような観点で戦略がとられます。

また、社会問題と向き合う事業活動を行いながら、自社の事業収益で経営を続けられていることも特徴の一つです。外部資金を得ることがないため、自社の理想とする方向へビジネスを進めることができます。

ソーシャルビジネスの歴史

ソーシャルビジネスには1980年代にまで遡る、長い歴史があります。ここでは、ソーシャルビジネスの歴史を解説します。

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1980年代:イギリスでのソーシャルビジネスの始まり

ソーシャルビジネスの始まりは1980年代、マーガレット・サッチャーにより「小さな政府」へ移行する政策が実施されたことが始まりです。政府の経済活動への介入する規模を少なくしたことで公共サービスは縮小され、歳出の削減につながりました。

しかし、失業者が増えて貧富の差が生まれる結果となり、公共サービスを補完するために次々と事業が立ち上げられました。その事業が、今のソーシャルビジネスの原型といえます。

2006年:ムハマド・ユヌス氏のノーベル平和賞受賞

ソーシャルビジネスが概念として広まったのは、2006年にムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞したことが影響しています。ユヌス氏は母国であるバングラデシュを貧困から救うため、グラミン銀行を設立して貧困に苦しむ人々への融資を行うようになります。

マイクロファイナンスによる融資で、貧困層の女性や低所得の自営業者、農村部の人々の自立を支援し、貧困問題への取り組みに貢献しました。事業の収益化もしており、現在も拡大を続けています。

ソーシャルビジネスが注目される背景

世界でソーシャルビジネスの重要性は高まり、注目を集めています。それには社会の変化が大きく関わっています。ここでは、ソーシャルビジネスが注目される背景を解説します。

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SDGsへの関心・取り組み

ソーシャルビジネスへの注目は、2015年に国連サミットで採択されたSDGsへの関心が大きく関係しています。SDGsとは「持続可能な開発目標」のことで、世界が共通して掲げる17の目標が定められています。

SDGsの掲げる目標は解決するべき社会問題として、人々は認識するようになりました。そんな中で、SDGsの目標達成に向けた取り組みを行うという観点から、ソーシャルビジネスへの関心が高まっています。

民間企業における社会問題への意識の高まり

民間企業が自社の利益だけではなく、社会問題の解決に対しても意識が向き始めたことにより、ソーシャルビジネスが注目されるようになりました。人々の価値観や社会を取り巻く環境の変化により、利益重視のビジネスでは生き残れないという考えが浸透したためです。

企業のブランド力を高めて経営を続けるためには、社会への貢献や価値の提供が必要不可欠になっています。それにより、利益ではなく社会問題や社会への貢献度を重視するという、ソーシャルビジネスの概念がビジネスモデルに取り入れられることもあります。

ソーシャルビジネスの課題

ソーシャルビジネスは、社会に貢献する企業として重宝される企業ですが、課題も抱えています。ここでは、ソーシャルビジネスの課題を解説します。

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認知度が低い

ソーシャルビジネスは認知度が低いことが課題とされています。日本政策金融公庫総合研究所のアンケートによると、ソーシャルビジネスとコミュニティビジネスのどちらも知らない人が半数以上という結果が出ています。

近年はSNSやメディアによる情報発信により認知度は高まりつつありますが、意識して情報収集しない層にとっては知られにくいです。ソーシャルビジネスとして大きな成果を得るには、社会的に認知され、多くの人の協力やサービスの機会につなげることが課題です。

参考:「ソーシャルビジネス・コミュニティビジネスに関するアンケート」の結果について|日本政策金融公庫総合研究所

事業として成り立たないケースが多い

ソーシャルビジネスは、事業として成り立たず倒産するケースもよくあります。社会問題の解決への意欲はあっても、ビジネスのスキルが足りず経営が行き詰まる可能性が高いためです。実際、持続可能な事業として展開を実現している企業は、少ない傾向にあります。

ソーシャルビジネスでも、具体的な経営戦略の策定や他事業との連携など、ビジネスモデルの観点を忘れず事業計画をしていくことが大切です。社会的な問題を解決するための熱い思いだけでなく、経営者としての冷静な分析やマネジメント力なども求められます。

ソーシャルビジネスを推進する際のポイント

ソーシャルビジネスに継続して取り組むためには、意識しておきたいことがあります。ここでは、ソーシャルビジネスを推進する際のポイントを解説します。

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楽しみながら解決に取り組む

ソーシャルビジネスを推進するためには、楽しみながら社会問題の解決に取り組むことが大切です。ソーシャルビジネスの父であるユヌス氏は、「Do it with Joy(楽しむこと)」を、ソーシャルビジネスの原則に加えています。

社会問題の解決には困難が多く、次々と新たな課題が降りかかってくることもあります。そういった状況に疲弊して、事業の実現を諦めてしまう人も少なからずいるでしょう。

自分が楽しんで事業に取り組めているか、実現に近づいているかなど、時々振り返ることも大切です。最初にはなかった成果が得られていることも、モチベーションにつながります。

冷静な思考でビジネスモデルを構築する

ソーシャルビジネスに取り組む際は、冷静な思考を保ちながらビジネスモデルを構築することが必要です。社会問題の解決への情熱だけで始めれば、課題へのアプローチ方法や社会構造を理解できず、挫折することもあります。

事業が成功しなければ、本望である社会問題の解決にもつながりません。熱い気持ちを持ちながらも、情報収集や現状分析は冷静に行い、収益化できるビジネスモデルを作り上げることが大切です。

周囲からの協力を仰ぐ

ソーシャルビジネスでは、周囲の協力を得ることが必要不可欠です。事業を進めていくに当たり、連携や共同研究、サービスの利用につながるための支援を受けるには、ビジネスの理念に賛同してもらうことが重要になるでしょう。

まずは自分の考えを周りに共有し、共感して一緒に解決できる仲間を見つけることが大切です。

実際に行われているソーシャルビジネスの事例

ソーシャルビジネスは日本だけでなく世界中で取り組まれています。以下に代表的なソーシャルビジネスをまとめました。

  1. 工場を設立し、未経験から職人に育てる雇用環境の確立
  2. 貧困地域の現地資源を活用した製造・雇用確保
  3. 小規模農家の支援・農業従事者増加支援
  4. 精神疾患や知的障がいなどを抱えた人たちに向けた就労・学習支援

ソーシャルビジネスは世界の貧困層をイメージしがちですが、農家や病気・障がいと向き合う人たちに向けた、日本国内でのビジネスも多くあります。

まとめ

ソーシャルビジネスは、社会問題の解決を目的としたビジネスです。SDGsへの取り組みや人々の社会問題への意識が高まっていることにより、ソーシャルビジネスが注目を集めるようになりました。

ソーシャルビジネスは覚悟を持って取り組めば、社会貢献をしながら自社の収益で事業を続けることができます。ただ、認知度の低さや情熱だけでビジネスは成り立たないという課題も残されています。
ソーシャルビジネスへの取り組みを考える際は、情報収集や現状の分析を客観的に行い、戦略的にビジネスモデルを構築することが大切です。

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