経理DXとは？推進のメリットや注意点、おすすめのシステムも解説

経理DXとは、デジタル技術の導入によって、経理業務の効率化だけでなく企業全体の成長や変革を目指す取り組みです。経理DXを進め、人手不足や業務属人化などの課題解決を図りましょう。この記事では、経理DXを推進するメリットや注意点、おすすめのシステムを解説します。

目次

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1. 経理DXとは
2. 経理DXを進めるべき業務
3. 経理DXを推進するメリット
4. 経理DXを推進する際の注意点
5. 経理DX推進におすすめのシステム
6. まとめ

経理DXとは

経理DXとは、デジタル技術を活用して経理業務を効率化し、業務プロセスを変革していく取り組みです。DXとは、単に紙や手作業をデジタル化するだけでなく、データやITツールを活用して、企業の成長に繋げることを指します。

経理部門では、請求書処理や経費精算、会計入力など多くの作業が時間と手間を必要としますが、DXを進めることでこれらの業務を自動化し、人手不足の解消やミスの削減、属人化の改善が可能になります。

この記事では、経理DXのメリットや注意点、導入におすすめのシステムについて詳しく解説していきます。

経理部門にDXが必要な理由

経理部門はお金を管理する重要な部署ですが、業務の多くが複雑で手作業も多く、負担が大きいのが現状です。近年では人手不足の深刻化や制度改正による業務の複雑化が進み、従来のやり方だけでは対応が難しくなってきています。

こうした課題を解決するために必要なのが経理DXです。ここでは、経理部門にDXが求められる主な理由について詳しく解説します。

属人化と人手不足を解消するため

経理業務にDXが必要な理由は、属人化しやすく、人手不足の影響を強く受ける部門なためです。経理の仕事は専門的な知識が求められるうえ、ルールに沿って正確に処理をする必要があります。

そのため、長年担当している特定の人しか作業内容を把握していないケースが多く、担当者が休んだり辞めたりすると業務が止まるリスクが生じます。また、経理人材は採用市場でも人気が高く、特に中小企業では経験者を確保することが難しいのが現実です。

DXを推進し、請求書処理や経費精算、仕訳入力などを自動化すれば、限られた人数でも回せる仕組みを作れます。さらに、誰が担当しても一定の品質で業務が進むようになり、負担の偏りや属人化を防ぐことができます。

結果として、人材不足の時代でも持続的に経理業務を継続できる強い体制が整います。

電子帳簿保存法・インボイス制度に対応するため

経理DXが重要な理由のもう一つは、電子帳簿保存法やインボイス制度などの法改正によって、経理の業務がより複雑になったためです。これらの制度では、請求書を正しい形式で保存し、電子データで管理することが求められます。

また、適格請求書発行事業者番号の確認など、新たなチェック作業も追加され、手作業だけではミスが発生しやすくなっています。制度に対応できていないと、税務処理が認められず企業に大きな不利益が生じる可能性があります。

DXを進めることで、請求書データの読み取り・保存・仕訳を自動化でき、制度要件のチェックもシステムで行えます。その結果、ミスを大幅に減らし、コンプライアンスを強化することが可能です。

法改正が相次ぐ今、正確さとスピードが求められる経理だからこそ、DXによる対応が必須となっています。

参考：電子帳簿保存法の概要｜国税庁

参考：インボイス制度について｜国税庁

リモートワークに対応するため

従来の経理部門では、紙の請求書を受け取って領収書を確認し、ハンコを押して承認するなど、紙ベースの作業が中心でした。そのため、コロナ禍をきっかけにリモートワークが広がった際、多くの企業で経理だけが出社せざるを得ない状況が続きました。

DXを進め、請求書の電子化やワークフローのオンライン承認、クラウド会計システムの導入などを行えば、場所に縛られずに業務を進められるようになります。また、災害時の事業継続性にも強くなるため、企業として安定的に業務を運用できる体制が構築できます。

経理DXを進めるべき業務

経理DXでは、会社のお金に関わるさまざまな業務をデジタル化し、効率的で正確な仕組みに変えていくことが重要です。DXを進めることで、作業時間の削減やミス防止、属人化の解消が可能になり、経理部門全体がより安定して業務を進められるようになります。

以下では、それぞれの業務でどのようにDXを進められるのか詳しく解説します。

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債務管理

債務管理とは、債権者に対して支払うべきお金を正しく管理する業務のことです。仕入先から送られてくる請求書を確認し、支払期日までにお金を支払う一連の流れが業務内容です。

債務管理は紙の請求書や、内容の入力・押印、承認フローなど手作業が多く、ミスや作業遅延が起きやすいのが課題です。DXを進めることで、請求書をデータで受け取り、自動で内容を読み取ってシステムに登録し、電子承認でスムーズに決済できるようになります。

インボイス制度でも電子データ管理が求められつつあるため、DXは制度対応にも有効です。紙と手作業に頼った運用から脱却し、スピードと正確さを両立する仕組みを作れる点が、債務管理のDXの大きなメリットです。

債権管理

債権管理とは、商品やサービスを販売した後、取引先から正しく入金されているかを管理する業務です。売上に対する入金が遅れたり、金額が不足していたりすると、会社の資金繰りに影響が出るため非常に重要な業務と言えます。

しかし、入金チェックを手作業で行うと時間がかかるうえ、漏れやミスが発生しやすいという課題があります。DXを進めれば、銀行口座の入金データを自動で取り込み、売掛金と突き合わせて自動消込ができるようになります。

さらに、督促メールの自動送信や入金状況の一覧化など、債権管理全体を効率化できます。資金回収のスピードが上がり、会社の経営を安定させるうえでも、DXは非常に有効な手段です。

財務会計

財務会計とは、会社のすべての取引を仕訳して帳簿にまとめ、最終的に決算書を作成する業務です。経理の中心となる作業であり、正確さが求められる一方で非常に時間がかかる領域でもあります。

従来は領収書を見ながら仕訳を手入力し、決算期には膨大な量のデータを整理しなければなりませんでした。DXを進めることで、証憑データの読み取りによる自動仕訳、銀行データやクレジット明細との自動連携、会計システムによる決算書の自動作成が可能になります。

また、リアルタイムで財務状況が把握できるため、経営者が迅速に判断できる点も大きなメリットです。

経理DXを推進するメリット

経理DXによって業務のデジタル化・自動化が進めば、作業時間の削減やミス防止、属人化解消だけでなく、経営判断のスピード向上といった全社的なメリットにもつながります。

ここでは、経理DXによって得られる代表的なメリットを具体的に紹介します。

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業務を標準化できる

経理DXのメリットのひとつは、誰が担当しても同じ品質の業務ができるようになる業務の標準化を図れることです。

従来の経理業務は、担当者が独自に作ったExcelや手順書に依存しやすく、特定の担当者に業務を任せきりになってしまう属人化が大きな課題でした。属人化は、担当者が休むと業務が止まったり、引き継ぎがスムーズにできず大きなミスにつながるリスクがあります。

しかしDXを進め、システム上で一連の業務フローを自動化すれば、判断基準・処理手順がツールの中に標準化されます。

例えば、請求書の処理方法や仕訳ルール、承認フローなどがシステムに組み込まれるため、誰が作業しても同じ結果が出せるようになり、業務品質が安定します。人材不足が進む中で、特定の人に依存しない強い経理体制を作れることは非常に大きなメリットです。

コア業務に集中できる

経理DXを進めることで、単純かつ繰り返しが多い作業をシステムによって自動化でき、担当者はより重要なコア業務に集中できるようになります。例えば、請求書の仕訳入力や振込データの作成などは、時間と手間が多くかかる作業です。

DXによってこれらが自動化されれば、空いた時間を使って担当者は経営データの分析、予算の立案、資金繰りの改善提案といった企業の成長に直結する業務に取り組めるでしょう。

経理は過去の数字を処理する仕事と誤解されることもありますが、経営を支える重要な役割もになっています。

経営状況を把握しやすくなる

経理DXを進めると、会社の経営状況をリアルタイムで把握しやすくなります。従来は集計や入力作業に時間がかかり、経営者が月末や翌月にならないと数字を確認できないケースが多くありました。

しかし、会計システムやデータ連携を使えば、売上・費用・利益・資金繰りなどの重要な数値が自動で集計され、いつでも最新のデータを把握できます。

データが可視化されることで、経営者は迅速に判断を下せるようになったり、経理担当者も数字の分析に集中できます。数字の見える化によって企業全体の意思決定が速く、正確になっていく点が大きなメリットです。

コストを削減できる

経理DXはコスト削減にも大きく貢献します。例えば、業務が効率化されることで作業時間が減り、人件費の削減につながります。特に請求書処理や仕訳入力、紙の書類管理などは時間がかかりやすく、DXによって自動化すれば大幅な工数削減が可能です。

また、紙からデジタルに移行することで、印刷代や郵送費、紙の保管スペースにかかるコストも削減できます。電子データで管理すれば検索性も向上し、探す時間も不要です。さらに、ミスが減ることで修正対応の手間やトラブル対応コストも抑えられます。

経理DXは、システム導入などのコストがかかるケースもあります。しかし、長期的に見ると人件費・紙代・保管費用・ミス対応コストなど、多くの無駄削減に期待できるため、大きな費用削減効果をもたらします。

SDGsにも貢献

経理DXは環境への配慮という面でも大きな価値があり、SDGsへの貢献にもつながります。

SDGsとは、国連が掲げた持続可能な社会を目指すための17の目標のことです。

その中には「気候変動対策」「持続可能な生産と消費」「働きがいと経済成長」などが含まれています。経理DXによってペーパーレス化を進めることで、紙の使用量が減って森林資源の保護や企業イメージの向上に繋がります。

また、印刷や郵送が減るためCO₂の排出も削減できるでしょう。このように経理DXは、業務改善と同時に環境保護や社会課題の解決にもつながる取り組みです。

参考：SDGsとは？｜外務省

ガバナンスを強化できる

経理DXは、企業のガバナンス強化にも期待できます。システムを導入することで、ルールを徹底できる環境と不正を防止する仕組みが整うため、企業の信用低下につながるリスクを大きく減らせます。

従来の紙ベースやExcel中心の運用では、誰がいつ何をしたのかが分かりにくく、誤操作や不正が起きても特定が難しい課題がありました。しかし、会計システムやワークフローを導入すれば、承認ルールの固定化やアクセス権限の管理、操作ログが自動で記録されます。

そのため、「上司の承認がない支払いができない」「入力者と承認者が同一にならない」など、不正を未然に防ぐ体制が整います。ガバナンスが強化されることで、企業の信頼性が高まり、取引先や金融機関からの評価向上にもつながる重要なメリットです。

働き方改革を推進できる

経理DXは、働き方改革を強力に後押しする効果があります。具体的には、業務の自動化によって残業を減らし、柔軟な働き方を実現できるため、働き方改革の実現に期待できます。

働き方改革とは、厚生労働省が推進する、長時間労働の是正・生産性向上・多様な働き方の実現を目指す取り組みのことです。しかし、経理業務は月末・月初に作業が集中し、手作業が多いため、残業や長時間労働が発生することも少なくありません。

DXに取り組み、請求書処理や仕訳入力、承認フローが自動化されれば、作業時間が大きく削減されます。また電子化によって押印や紙書類の管理が不要となり、出社しなくても作業できるようになるため、リモートワークも進めやすくなるでしょう。

参考：働き方改革特設サイト｜ 厚生労働省

自社のイメージ向上に繋がる

経理DXは、企業のイメージ向上にも大きく貢献します。SDGsの達成に向けた取り組みや働き方改革の推進が社会から選ばれる会社づくりにつながり、採用活動でも競争力が高まります。

DXを進めることでペーパーレス化が実現し、資源削減・CO₂削減など環境への配慮が行われます。これはSDGsの「気候変動対策」「持続可能な消費と生産」に貢献する取り組みであり、企業の社会的評価を高めるポイントです。

また、働き方改革によって残業時間が削減され、社員が健康的に働ける環境が整うことで、社員を大切にする企業というイメージが定着します。特に企業の社会的姿勢や働きやすさを重視する求職者も多いため、DXを進めている企業は採用面でも有利です。

経理DXを推進する際の注意点

経理DXを進めることで、業務の効率化やミスの削減、リモートワークへの対応など多くのメリットが得られます。

しかし、十分な効果を出すためには、いくつか注意すべきポイントがあります。目的に合ったシステム選び、導入後の運用体制づくり、セキュリティや社内外との連携など、事前に確認しておくべきことは少なくありません。

ここでは、経理DXを進めるうえで特に重要となる注意点について、わかりやすく解説していきます。

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目的を明確化してからシステムを導入する

経理DXを推進する際は、目的を明確にしてからシステムを導入することに留意しましょう。目的が曖昧なままDXを進めると、必要のない機能を持つ高額なシステムを選んでしまったり、現場の業務改善につながらないという失敗が起きやすくなります。

そのため、まずは現状の業務フローをしっかり把握し、目的を明確にすることが重要です。その上で目的に合った最適なツールを選ぶべきであり、システム導入が目的になってしまわないよう注意が必要です。

DXはあくまで変革のための取り組みであり、目的は業務改善や生産性の向上などがあります。目的に沿ったツールを選べば、導入後の効果の最大化や現場の負担も軽減できます。

費用とデジタル人材の確保が必要

経理DXを進めるには、システム導入費用とデジタルを扱える人材の確保が必要です。ただし、新しいシステムを導入する際には、初期費用や月額利用料が発生し、規模によっては決して小さくない投資になります。

また、導入しても使いこなせなければ意味がないため、操作方法を理解してトラブル対応ができる人材が必要です。既存の社員が学ぶ時間を確保するか、新しく採用するかも検討しなければなりません。

DX導入には補助金を活用できる場合もありますが、運用を定着させるためには継続的な学習やサポート体制が重要です。導入して終わりではなく、使いこなせる組織づくりを行いましょう。

取引先や従業員の協力が必要

経理DXを進める際は、自社だけでなく取引先や従業員の協力が欠かせません。DXは社内外を巻き込むプロジェクトであり、協力体制が整わなければ運用が成り立ちません。

例えば、請求書などを紙でやり取りしていた取引先には、電子請求書やシステムを利用してもらう必要があります。また、社内でも経費精算の方法や申請フローが変わるため、従業員に新しいやり方を理解してもらう必要があります。

紙ベースからの移行では、慣れないうちは抵抗感を抱く従業員が出てくる可能性もあるため、丁寧な説明や研修が必要です。DXの推進は単なるシステム変更ではなく、社内全体の業務の進め方を変える取り組みです。

既存システムとの連携性を確認しておく

経理DXの導入で意外と見落とされがちなのが、現在自社で利用しているシステムと連携できるかどうかです。DXを進める際には、既存システムと連携できるシステムを選ぶことが非常に重要です。

新しいツールを導入しても、運用している会計ソフトや販売管理システムとデータ連携できなければ、結局手入力の作業が残り、DXの効果が半減してしまいます。また、機能が重複して無駄なコストが発生する可能性もあります。

導入前には、「どのシステムと連携できるか」「APIが使えるか」「データ形式は合っているか」などを必ず確認しましょう。システム同士がスムーズに連携できれば、データ入力の手間がなくなり、ミスの防止や業務の自動化も進みます。

セキュリティ対策を徹底する

経理DXではデータをクラウド上で管理するケースが多いため、セキュリティ対策は最重要項目です。情報漏えいや不正アクセスを防ぐためには、安全性の高いツール選定と従業員のセキュリティ教育が必須です。

経理部門では、請求書データや口座情報、給与情報など機密性の高い情報を扱うため、システムに不備があれば大きなトラブルにつながります。具体的には、暗号化やアクセス権限管理、多要素認証、ログ監査などの機能を備えたシステムを選ぶ必要があります。

また、どれだけ安全なツールでも、従業員のパスワード管理が甘ければ意味がありません。フィッシング詐欺や不審メールの見分け方など、基本的なリテラシー教育も定期的に行い、安全対策を徹底することで、DXを安心して推進できる環境が整います。

経理DX推進におすすめのシステム

おすすめの会計ソフト

おすすめの経費精算システム

おすすめのRPAツール

まとめ

経理DXとは、デジタル技術を活用して経理業務を効率化し、企業全体の成長につなげる取り組みです。属人化や人手不足、制度対応の複雑化といった課題を解決し、経理の負担を大幅に減らせる点が大きなメリットです。

債務管理・債権管理・財務会計など幅広い業務で自動化が進み、ミスの削減やスピード向上が期待できます。一方でシステム導入の目的を明確にすること、費用や人材確保、取引先との協力、セキュリティ対策など、進める際の注意点も押さえておく必要があります。

経理DXは導入すれば終わりではなく、企業をより強く、柔軟にするための継続的な取り組みです。本記事を参考に、自社の状況に合ったDX推進を進めていきましょう。