電子署名とは|仕組み・契約書に電子署名を使うメリットを解説

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  • 電子署名は、書類が正当であることや改ざんされていないことを証明するためにある
  • 電子署名を用いることで、電子商取引を安心して行なうことができる
  • 電子署名のやり方には複数の方法あるが、電子契約システムを利用するのが効率的である

電子データに付与される電子署名は、書類の正当性や改ざんされていないことを証明できるため、電子契約書に用いられます。本記事では、電子署名についてとその仕組み・必要性の他、電子署名を導入するメリット・デメリット、やり方について解説します。

目次

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  1. 電子署名とは
  2. 電子署名の仕組み
  3. 電子署名の必要性
  4. 電子署名に関する法律
  5. 契約書に電子署名を導入するメリット
  6. 契約書に電子署名を導入するデメリット
  7. 電子署名のやり方
  8. 電子署名を効率的に行うには電子契約システムがおすすめ
  9. まとめ

電子署名とは

電子署名とは、電子データの文書に対して付与される署名を指し、紙の文書ではサインや印鑑に相当するものです。電子署名を行うことで、書類内容の改ざんが行われていないことや、署名を行った者が本人であることなど、内容が正当である証明になります。

電子署名は、公開鍵暗号技術に基づいており、電子文書をハッシュ関数で圧縮し、電子文書所持者の秘密鍵を暗号化しています。秘密鍵で暗号化された電子文書は、1対1の公開鍵のみでしか複合化できないため、特定の秘密鍵によって暗号化されたものとわかります。

また、電子証明書・電子サイン・電子印鑑などの関連用語もあります。電子書類に用いられる共通点がある一方で、それぞれの機能は大きく異なります。以下で電子署名との違いを具体的に解説しますので、役割や仕組みを把握しておくと良いでしょう。

電子証明書とは

電子証明書とは、紙の契約書でいう印鑑証明書に該当します。重要な文書の場合は、電子署名と電子証明書がセットになっているケースが多いです。電子証明書は、第三者機関である認定局より発行されています。

文書を送る側にとっては自分を証明するものであり、受け取る側では相手が誰なのか確認することを目的としています。電子証明書にはタイプスタンプが付与されており、署名の本人性だけでなく、書類が改ざんされていない正当なものであるという証明にもなります。

電子サインとは

電子サインとは、紙の文書における同意・承認・本人証明などの認証を電子上で行うことを指します。法的効力が担保されている電子署名とは異なり、簡易的な署名方法です。電子契約には、電子サインが用いられるのが一般的です。

電子サインより高い法的効力を担保するには、電子署名を用いることが多いです。本人性の確認を電子証明書で行い、タイムスタンプで非改ざん性が担保されれば、法的効力があることを証明できます。

電子印鑑とは

電子印鑑とは、電子文書に用いるデータ化されたデジタル印鑑を指します。請求書や見積書・納品書・領収書・契約書などの書類に電子印鑑の使用が可能です。

電子印鑑は、本物の印鑑と同じように使用でき、印影をデータ化して背景を透過処理したタイプと、識別情報が付与された電子印鑑があります。識別情報が付与された電子印鑑は、印影をデータ化したものより信頼性が高いです。

そもそも、ビジネスにおける押印は、法的効力を高めるというよりも商習慣による行為です。そのため、電子印鑑も同様、法的効力に欠けるため、重要書類の場合は電子署名が用いられるケースがほとんどです。

電子署名の仕組み

電子署名は、公開鍵暗号方式の仕組みと、ハッシュ値の仕組みによって成り立っています。電子署名の仕組みを把握することで、第三者によるなりすましや、情報漏えい・改ざんなどのリスクを避け、安全性を高めることができます。

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公開鍵暗号方式の仕組み

公開鍵暗号方式とは、電子データを暗号化し、秘密鍵と公開鍵をペアとした暗号鍵を使用する方式を指します。秘密鍵で暗号化されたデータは、ペアの公開鍵でしか複合できないため、信頼性が高いです。

秘密鍵は、紙の取引でいう実印に該当し、本人以外は使用できないため本人性の担保となります。そのため、第三者の目に触れぬように、秘密鍵の取扱いには注意し厳重に管理しなければなりません。

公開鍵暗号方式による電子署名の仕組みは次の通りです。まず、秘密鍵で暗号化した電子データ・電子署名・公開鍵を取引相手に送ります。受け取った相手は、公開鍵にてデータを複合し、電子文書の内容と一致しているか確認を行います。

内容の一致により、送られてきた電子文書は、改ざんのない正当なものであるということが証明されます。

ハッシュ値の仕組み

ハッシュ値とは、ハッシュ関数と呼ばれる数値データを利用して演算した特殊な値を指します。電子署名を暗号化する際にはハッシュ値が使われており、データごとに算出されたハッシュ値によって、同じデータから同じハッシュ値が抽出できます。

このように異なるデータからは同じハッシュ値は抽出されない特徴を活かし、データの改ざんがないか検証することが可能です。

ハッシュ値を利用した電子署名では、ハッシュ関数を使い、電子文書と電子署名をハッシュ値に演算しデータ圧縮を行います。電子署名を秘密鍵で暗号化して、圧縮した電子文書・電子署名・電子証明書・公開鍵を送信します。

受け取り側は公開鍵でデータを複合し、電子署名に含まれるハッシュ値と電子文書のハッシュ値を比較し、同一であることを確認して改ざんのない正当な書類であることを証明します。

電子署名の必要性

電子文書においては、電子化することにより文書の変更がしやすくなるため、さまざまなリスクも発生します。また、外部からのサーバー攻撃や内部のミスにより情報漏えいが発生し、データを改ざんされたり、削除されたりしてしまう可能性もあります。

そのため、電子化された文書が改ざんのない正当なものであり、間違いなく本人より送信されたものであるという証明が必要です。法的効力を高めるためにも、電子署名の必要性が注目されています。

電子署名に関する法律

デジタル化・DX化が推進するなかで、電子取引などの関連法案として2001年4月1日に施行されたのが、電子署名法です。

従来書面にて行われてきた契約を電子化する際に、書面の取引で行われていた押印・署名に相当し、同等の法的効力のあるものを付与する必要があるため施行されたものです。また、電子署名を行う際は、「本人性」と「非改ざん性」の要件を満たす必要があります。

参考:電子署名及び認証業務に関する法律||e-Gov法令検索

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電子署名に関する法律のポイント

  1. 本人性
  2. 非改ざん性

本人性

本人性の証明とは、本人の意思によって電子署名が付与されたことを指します。電子署名だけでは紙の文書における印鑑の役割だけとなり、それが本人による署名かどうかは証明できません。

そこで、紙の重要文書の契約で押印の本人性を証明する、印鑑証明書と同等の効力を持つ電子証明書を添付することで、本人性を証明することができます。電子証明書は信頼された第三者機関である電子認定局が発行しているため、信頼性が高いです。

非改ざん性

非改ざん性の証明とは、署名時点から電子文書が改ざんされていないことを指します。紙の文書と比較して、電子文書は改ざんしても証拠が残りにくく、印影や筆跡が残らないため誰が作成したものか証明しにくいといった弱点があります。

そのため、間違いなく本人が作成し署名を行った正当な文書であることを証明するために、電子証明書やタイムスタンプが必要です。電子証明書やタイムスタンプ添付することにより、改ざんされていないものという証明が可能です。

契約書に電子署名を導入するメリット

契約書に電子署名を導入することで、さまざまなメリットが得られます。契約書の改ざんが検知可能になることや、業務の効率化、ペーパーレスによるコスト削減などの効果が期待できます。以下で具体的に解説します。

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改ざん検知ができる

電子署名のデータにはハッシュ値が含まれているため、送信前・送信後のファイルを比較し、同一のものであるかどうか確認することで改ざんを検知できます。電子署名を行った後にデータの改ざんがあった場合、ハッシュ値が送信前のファイルと合致しなくなります。

また、第三者が知ることのない秘密鍵を使用してデータを暗号化しているため、データとハッシュ値の両方が改ざんされていても検知することが可能です。このように、電子署名を行うことで原本性の担保になります

業務を効率化できる

紙の契約書で契約を行う場合、紙の契約書を作成して署名捺印を行い、契約が締結されます。紙の契約書を利用することで、ひとつひとつのプロセスに手間が生じます。また、本人性を確認するために、印鑑証明書の発行も必要です。

しかし、契約書を電子化することで、契約書の電子データに電子署名を行うだけで契約が締結できます。契約書の作成も、CRMやSFAと連携している場合、顧客データを反映できるため大幅に効率化できます。

また、契約書の保管も電子データのままできるため、保管場所の確保の必要もなく、契約書の検索も簡単にできます。

ペーパーレス化によりコストを削減できる

電子契約にした場合、紙の契約書と比較するとさまざまなコスト削減が実現します。紙の契約書は、用紙や製本テープ、印刷費といった作成に関するコストがかかり、作成には手間がかかるため、残業代などの人件費が発生する場合もあります。

また、契約書を交わす際は印紙も必要になり、発送する場合郵送費もかかります。電子契約は、契約書の作成から署名捺印も電子署名を行うことですべて電子データで完結します。電子契約の場合は、紙の課税文書ではないため印紙も不要です。

契約書に電子署名を導入するデメリット

電子署名を行うことで、以上で解説したように、さまざまなメリットが得られますが、場合によってはデメリットが発生する可能性もあります。契約書に電子署名を導入する際は、これらの事項にも注意しなければなりません。

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契約書に電子署名を導入する2つのデメリット

  1. 電子署名が使用できない契約書もある
  2. 取引先に同意を得る必要がある

電子署名が使用できない契約書もある

現在は、ほとんどの契約において電子化が認められていますが、公正証書化する必要性や、消費者保護の観点による書面交付の必要性から、中には電子化が認められていない契約書もあります。電子化できない契約書は以下のとおりです。

  1. 任意後見契約書
  2. 事業用定期借地権設定のための契約書
  3. 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約書

上記の契約書のほかにも、公正証書は公証人のもとで紙媒体で作成するといったルールが現在も適用されているため、任意で契約書を公正証書として作成したい場合も電子化はできません。

取引先に同意を得る必要がある

電子契約は、取引先企業の同意がなければ締結できません。電子契約に慣れていない企業は、紙の契約書と異なるフローを面倒な業務として受け取ったり、法律面での不安が残ったりするなどの理由で同意に応じないケースがあります。

また、電子契約システムを導入する際、コストが発生するため負担になるといった理由もあり、自社だけが電子契約を望んでいる場合は、同意を得るのが困難になります。

取引先に同意を得るためには、電子契約で得られるメリットについて説明を行い、納得してもらえるようにアプローチを行うと良いでしょう。

電子署名のやり方

電子署名のやり方にはさまざまな方法があります。PDFファイルやWord・Excelファイルでの署名や、メール・電子契約システムを利用する方法などがあります。以下で4つの方法について具体的に解説します。

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PDFファイルに電子署名する

PDFファイルに電子署名する方法は、Adobe AcrobatやAdobe Acrobat Readerで電子署名を付与したいPDFファイルを開き、「ファイルタブ」の「その他の形式で保存」を選択し「認証済みPDF」を選びます。

署名フィールドが表示されたら「電子署名」を選択し、「ドラッグして新規署名ボックスを作成」を選びます。その後、デジタルIDの設定を行い、文書中の署名を追加する場所にデジタルIDに設定したPINコードやパスワードを入力し「署名」をクリックすれば完了です。

Word・Excelに電子署名する

Word・Excelに電子署名する方法は、文書・シート上で署名を行う場所を選択し、「挿入」タブ「テキスト」内の「署名欄」をクリックし「Microsoft Office 署名欄」を選択します。

「署名の設定」が表示されたら、署名を行う人の氏名・メールアドレスなどの情報を入力します。また、ダイアログ下のチェックボックスは、コメントや署名日の表示など必要に応じて追加可能です。

メールに電子署名を付ける

メールで電子署名を行う方法は、メールソフトやサービスによってやり方は異なりますが、メッセージのオプション内に、電子署名を追加するツールがあります。電子署名をする場合は、S/MIMEやPGPの規格を使用してメールに電子署名を付与します。

S/MIMEやPGPは、メールの暗号化による盗聴防止とメールへの電子署名の役割を持っています。ただし、無料のウェブメールはS/MIMEに対応していないものが多い傾向があり、電子署名を利用できない場合があります。

電子契約システムを利用する

電子契約システムとは、紙の契約書に署名・捺印をする代わりに、インターネット上で電子ファイルに電子署名を付与することで契約を締結できるシステムを指します。システムにより、電子契約書の作成や、保管の機能を搭載したものもあります。

電子契約システムを利用すれば、電子ファイルを相手に送るだけで、自動的に電子署名が付与されるため、手間がかかりません。従来書面上で行われていた契約プロセスが、電子契約システム1つですべて完結するため、もっとも効率的な電子署名の方法と言えます。

電子契約システムとは?仕組みやメリット・デメリットを解説

電子契約システムとは、企業などが契約時に交わす署名や押印等の書類でのやり取りを電子上で行うことができるシステムです。この記事では、電子契約システムの仕組みや、メリット・デメリット、選び方や導入する際の注意点などを解説します。

電子署名を効率的に行うには電子契約システムがおすすめ

電子署名を効率的に行うには、電子契約システムの利用がおすすめです。電子契約システムを導入することで、契約に関わるプロセスがすべて自動化し、1つのシステム内ですべてのプロセスが適切な方法で完結します。

システムによっては、契約書作成から契約の締結、契約書の保管まで行えるものもあります。また、CRMやSFAなど他ツールとの連携により、顧客情報や案件情報がそのまま電子契約システムに反映されるなど、さまざまな側面で効率化が期待できます

おすすめの電子契約システム9選|選び方や導入手順を詳しく解説

電子契約システムとは、PDF形式の契約書にインターネット上で押印や署名をして契約締結できるシステムのことです。システムの導入をしたくても種類が多くてどれを選べば良いか分からない企業もあるでしょう。本記事では、おすすめの電子契約システムと選び方を解説しています。

まとめ

電子署名とは、電子データの文書に対して付与される署名を指します。紙の文書ではサインや印鑑に相当するものであり、署名を行った者が間違いなく本人であり、書類の内容が改ざんされていないことを証明するものです。

従来紙の契約書で行われていた契約を電子化することで、電子商取引を安心して行うことができます。電子署名のやり方にはさまざまな方法がありますが、電子契約システムを利用するのがもっとも効率的です。

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