AIの著作権|生成AI時代の権利と実務対応

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  • AIと著作権の論点が学習段階と生成・利用段階でどう違うかがわかる
  • 著作権侵害の判断基準と利用規約で確認すべき項目がわかる
  • 社内ガイドラインと生成過程の記録の進め方がわかる
  • 業務利用では各サービスの利用規約と社内ルール整備が侵害回避の鍵

生成AIで作った文章や画像を業務で使う場面が増え、「この生成物を公開して著作権侵害にならないか」「AIで作ったものに自社の著作権はあるのか」という相談が社内で出てくるようになりました。本記事では、AIと著作権の関係を、文化庁の考え方に沿って「開発・学習段階」と「生成・利用段階」に分けて整理し、各AIサービスの利用規約の読み方、企業が整えたい社内ガイドライン、よくある失敗、海外との違いまでを、企業の担当者向けに解説します。

先に結論をお伝えすると、AIの生成物を利用する場面で著作権侵害が問題になるかどうかは、人が作品を作った場合と同じく「既存の著作物との類似性」と「既存の著作物への依拠性」で判断されるとされています。企業として一番効く対策は、公開前の類似チェックと、どのAIでどんな指示(プロンプト)を使って作ったかの記録を残す仕組みを作ることです。

なお本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な判断が必要な場合は、弁護士・弁理士等の専門家にご相談ください。

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Q1. AIと著作権について、いま一番気になっていることは?

目次

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  1. AI著作権、次の一歩は権利管理の仕組み化
  2. AIと著作権の基本|学習段階と生成段階の違い
  3. 生成物の利用における著作権侵害リスク
  4. 各AIサービスの利用規約と権利帰属
  5. 企業が取るべき社内ガイドライン整備
  6. 導入でよくある失敗パターン4つ
  7. 国際動向|米国・日本・英国の違い
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ
  10. 参考文献

AIと著作権の問題は、法律の知識を担当者が覚えるだけでは解決しません。実務で問われるのは、「その生成物が既存の作品に似ていないかを確認したか」「似てしまった場合に、既存作品を真似る意図がなかったことを説明できるか」という2点です。文化庁が公表したチェックリスト&ガイダンスでも、生成に使ったプロンプトなど、生成過程を確認できる状態にしておくことが望ましいとされています。

まずは、AIと著作権の論点がどの段階で生じるのかを全体像で押さえておきましょう。

段階何が起きるか主な論点利用企業が関わる場面
開発・学習段階既存の著作物を集めてAIに学習させる著作権法第30条の4の範囲内か。享受目的が併存しないか自社データで追加学習させる、社内文書を検索させる(RAG)場合
生成・利用段階AIで文章・画像等を作り、公開・販売する既存著作物との類似性と依拠性。通常の著作権侵害と同じ判断広告・Webサイト・資料・商品デザインに生成物を使う場合
生成物の権利生成物に著作権が発生するか、誰に帰属するか人の創作的寄与があるか。規約上の権利帰属生成物を自社の資産として守りたい、他社の無断利用を止めたい場合

表の3つ目、「生成物を自社の資産として守る」段階では、どの生成物に人の手がどれだけ加わったのか、いつ誰が作ったのかを後から示せることが重要になります。ロゴやキャラクター、商品名など、著作権だけでなく商標登録も視野に入る生成物であれば、出願や更新期限を含めて知的財産をまとめて管理する体制が必要です。

下の表は、お名前.comビジネスコンシェルジュの比較記事で紹介している知財管理・知財支援サービスの一部を、強みと確認しておきたい点に分けて整理したものです。どれが優れているかではなく、自社が必要としているのが「手軽な商標登録」なのか「法務相談まで含めた支援」なのか「海外を含む権利化」なのかで見てください。

サービス名(運営)主な強み確認しておきたい点
クラウドリーガル(Molton株式会社)3ステップで商標登録を進められる。法務・労務相談や契約書レビュー、広告審査まで幅広くサポート別の商標のための免除されるサービス料は1回の注文につき1回まで
弁理士法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK世界各国の特許事務所とのネットワーク。国内外の権利化業務や係争対応、知財コンサルティングにも対応各種費用は問い合わせで確認
弁理士法人ベリーベスト国際特許事務所弁護士・弁理士による知的財産チーム。商標出願から権利侵害、外国出願まで幅広く対応一部の費用は内容により価格が変動する

AI生成物をめぐるトラブルは、他社から「似ている」と指摘される場面と、自社の生成物が無断で使われる場面の両方で起こりえます。どちらの場面でも、記録と専門家への相談ルートが先に用意されているかどうかで対応の早さが変わります。比較記事では、ここで紹介した3つ以外のサービスや、知財管理の仕組みの選び方も解説しています。

AIと著作権の基本|学習段階と生成段階の違い

日本では、AIが著作物を学習する段階と、AIで作ったものを利用する段階で、適用される著作権法のルールが異なります。この区分は、文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月に取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」で整理されたもので、現在の実務の基本的な出発点になっています。

開発・学習段階:著作権法第30条の4

AIの学習のために既存の著作物を複製することは、著作権法第30条の4により、原則として著作権者の許諾なく行えるとされています。この条文は、著作物に表現された思想や感情を人が味わうこと(享受)を目的としない利用を認めるもので、情報解析はその代表例です。

ただし、どんな学習でも自由というわけではありません。「考え方について」では、特定のクリエイターの作品だけを集めて、その作品の創作的な表現をそのまま出力させることを目的とした追加学習のように、享受目的が併存すると評価される場合は、この条文の対象外になりうるとされています。また、条文のただし書きにある「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」にも適用されません。利用企業が自社でモデルを追加学習させる場合や、社内外の文書を検索して回答させる仕組み(RAG)を作る場合は、この論点が自社の問題として関わってきます。

生成・利用段階:通常の著作権侵害と同じ判断

AIで作った文章や画像を公開・販売する段階では、AIを使っていない場合と同じ基準で著作権侵害が判断されるとされています。つまり、「AIが作ったから特別に許される」ことも「AIが作ったから特別に厳しい」こともありません。判断の軸になるのは、次に説明する類似性と依拠性の2つです。

AI生成物に著作権は発生するか

著作権法で保護される著作物は、思想または感情を創作的に表現したものです。そのため、人が簡単な指示を出しただけでAIが自律的に生成したものは、一般に著作物に当たらないと考えられています。一方で、人が創作意図を持ち、詳細な指示や試行錯誤、生成後の加筆・修正などで創作的に寄与した場合は、その部分について著作物性が認められる可能性があるとされています。

「考え方について」では、創作的寄与の有無を判断する要素として、指示・入力の分量や内容、生成の試行回数、複数の生成物から選ぶ行為、生成後の加筆・修正が挙げられています。ただし、長いプロンプトを書いたから、何度も生成したからといって、それだけで著作物性が認められるわけではない点に注意が必要です。自社の生成物を権利として守りたい場合は、人がどこに手を加えたかを記録しておくことが、後から説明する材料になります。

AI生成物の利用で著作権侵害が成立するには、既存の著作物との「類似性」と、既存の著作物への「依拠性」の両方が必要とされています。どちらか一方だけでは侵害にはならないとされていますが、生成AIでは依拠性の考え方に独特の論点があります。

要件意味生成AIで特に注意したい点
類似性既存著作物の創作的な表現上の本質的な特徴を、生成物から直接感じ取れることアイデアや作風が似ているだけでは原則として類似性は認められないとされる。具体的な表現が似ているかがポイント
依拠性既存著作物に接して、それをもとに作ったこと利用者が既存作品を知らなくても、その作品がAIの学習データに含まれていた場合は、依拠性があったと推認されうるとされる

リスクが高まりやすい使い方

  • プロンプトに特定の作品名、キャラクター名、作家名を入れて、その作品に似せる指示を出す
  • 既存の画像や文章をそのままAIに読み込ませ、少しだけ変えたものを作らせる(画像から画像を作る機能など)
  • 特定のブランドのロゴや商品デザインに近い出力を、確認せずに広告や商品に使う
  • AIが出力した長文を、出典や類似の確認をせずにそのまま記事や書籍として公開する

特に1つ目と2つ目は、利用者自身が既存作品を指定しているため、依拠性が認められやすい使い方です。逆に、既存作品を指定せず一般的な指示で作った生成物でも、学習データの影響で既存作品に似た出力が出る場合があります。そのため、「真似するつもりはなかった」だけでは安心できず、公開前の類似チェックが欠かせません。

侵害と判断された場合に負う責任

AI生成物が他者の著作権を侵害していると判断された場合、生成物を使った企業は、AIを使っていない場合と同じ責任を負います。「AIが作ったものだから」という理由で責任が軽くなるわけではありません。著作権法に基づく主な責任は次の3つです。

責任の種類内容根拠
差止請求生成物の公開・販売の停止や、侵害物の廃棄を求められる。故意や過失がなくても請求されうる著作権法第112条
損害賠償請求故意または過失がある場合に、権利者が受けた損害の賠償を求められる民法第709条、著作権法第114条
刑事罰故意の侵害には10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科あり)。法人には3億円以下の罰金が科されうる著作権法第119条、第124条

差止めは過失の有無を問わないため、広告やパッケージに使った後で指摘を受けると、差し替えや回収の費用が発生します。法的な責任とは別に、取引先や顧客からの信用低下も避けられません。公開前の確認と、次に説明する生成過程の記録は、こうした事態を防ぎ、指摘を受けたときに適切に対応するための備えです。

プロンプト履歴の記録が「説明の材料」になる

競合記事の多くは類似性と依拠性の説明で終わっていますが、実務で差がつくのはその後の「記録」です。文化庁のチェックリスト&ガイダンスでは、生成物が既存作品と類似していないかを確認することに加え、依拠していないことを説明できるよう、生成に使ったプロンプト等の生成過程を確認できる状態にしておくことが望まれるとされています。

具体的には、次の項目を生成物ごとに残しておくと、後から他社に「似ている」と指摘された場合にも経緯を説明しやすくなります。

記録する項目記録の例残しておく理由
使用したAIサービスとプランサービス名、法人プランか個人プランか、利用日生成時点の利用規約(商用利用・権利帰属)を特定するため
入力したプロンプト・参照素材指示文の全文、読み込ませた画像や文書特定の作品を指定していないこと(依拠性がないこと)の説明材料
人による加筆・修正の内容修正前後のファイル、修正した担当者自社の創作的寄与(著作物性)を示す材料
公開前チェックの結果画像検索・類似文章検索の実施日と結果、確認者類似性の確認を行ったことの証跡

AI生成物の権利を誰が持ち、どこまで使ってよいかは、著作権法だけでなく、利用するAIサービスの利用規約でも決まります。規約は同じサービスでも個人向けと法人向けで異なり、改定されることもあるため、使い始める前と定期的な見直しの両方で確認が必要です。

ここでは特定のサービスの規約内容を断定するのではなく、どのサービスを使う場合でも確認したい項目を整理します。実際の条件は、必ず各サービスの最新の規約で確かめてください。

確認項目規約で見るポイント見落とした場合に起きること
生成物の権利帰属生成物の権利を利用者に移転・帰属させるか、提供事業者が保持するか自社の成果物として独占的に使えない可能性がある
商用利用の可否無料プランや特定プランで商用利用が制限されていないか広告や商品に使った後で規約違反になる
入力データの学習利用入力したデータがモデルの改善に使われるか、オプトアウトできるか顧客情報や他社から預かった資料が外部に使われる
第三者の権利侵害時の責任生成物が他者の権利を侵害した場合の責任の所在、補償の有無と条件侵害を指摘されたとき自社だけで対応することになる
禁止される利用実在の人物の模倣、特定の用途での利用などの禁止事項アカウント停止や契約解除につながる
準拠法と管轄どの国の法律が適用され、紛争時にどこの裁判所で争うか海外で手続きを進める必要が生じる

一部の提供事業者は、法人向けプランの利用者に対して、生成物が第三者の著作権を侵害したと主張された場合の補償制度を設けています。ただし、補償の対象になるプラン、安全機能を有効にしていることなどの条件、補償の範囲はサービスごとに異なります。「補償があるから確認しなくてよい」とは考えず、自社の公開前チェックと組み合わせて使うのが基本です。

規約を確認した結果は、社内で使ってよいAIサービスの一覧として、確認日・対象プラン・商用利用の可否・入力してよい情報の範囲と一緒に残しておくと、担当者が変わっても判断がぶれません。

企業が取るべき社内ガイドライン整備

AI著作権への社内対応は、使ってよいAIの範囲を決める、公開前チェックの手順を決める、生成過程を記録する、問題が起きたときの相談先を決める、の4点をガイドラインとして文書化するのが基本です。経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」でも、AIを業務で利用する事業者(AI利用者)に対して、知的財産権を含む他者の権利に配慮した適正な利用が求められています。

ガイドラインに盛り込みたい項目

項目決めておく内容
利用可能なAIサービス規約確認済みのサービスとプランの一覧、確認日、見直しの頻度
入力してよい情報個人情報、取引先の資料、他社の著作物を入力してよいかの基準
禁止するプロンプト特定の作品名・作家名・キャラクター名・ブランド名を指定した生成を原則禁止にするなど
公開前チェック画像検索・類似文章検索の実施、作成者以外によるダブルチェック、判断に迷ったときの差し戻し基準
記録の保存プロンプト、生成物、修正履歴、チェック結果の保存場所と保存期間
相談・対応窓口法務担当や外部の弁護士・弁理士への相談ルート、指摘を受けたときの初動

公開範囲で確認の深さを変える

すべての生成物に同じ重さのチェックをかけると、現場の負担が大きくなり、ルール自体が守られなくなります。社内会議のメモなど社外に出ない用途は簡易確認、Webサイトや営業資料は類似チェックとダブルチェック、広告・商品デザイン・ロゴなど長期間使い続けるものは専門家のレビューまで行う、というように公開範囲と影響度で段階を分けると運用が続きやすくなります。

記録は「探せる場所」にまとめる

記録のルールを作っても、担当者ごとのパソコンやチャットに散らばっていると、いざ指摘を受けたときに探し出せません。生成物ごとにプロンプト・修正履歴・チェック結果を1か所にまとめ、ロゴや商品名のように商標登録の対象にもなる生成物は、出願状況や更新期限と一緒に管理できる状態にしておくと安心です。知財を一元管理する仕組みや、外部の弁理士と情報を共有しやすいサービスを使うと、記録と権利化の手続きを同じ流れで回せます。

導入でよくある失敗パターン4つ

AI著作権への対応でよくある失敗は、規約を確認せずに使い始める、生成物をそのまま公開する、記録を残さない、外部委託先の生成AI利用を把握していない、の4つです。下の表で、つまずきやすい運用と改善後の姿を比べてください。

失敗パターンBefore(よくある運用)After(改善後)
1. 規約を確認せずに使い始める個人アカウントの無料プランで作った画像を、そのまま広告に使う規約確認済みのサービスとプランだけを社内で利用可能にし、確認日を記録する
2. 生成物をそのまま公開する見た目がよければ類似チェックをせずにWebに掲載する画像検索・類似文章検索と、作成者以外の確認を公開の条件にする
3. 記録を残さない指摘を受けてから、どんなプロンプトで作ったか思い出せないプロンプト・修正履歴・チェック結果を生成物ごとに1か所へ保存する
4. 外部委託先の利用を把握していない制作会社の納品物に生成AIが使われていたことを後で知る発注時に生成AI利用の有無と使用サービスを確認し、契約に権利侵害がない旨の保証条項を入れる

4つ目の外部委託は見落とされやすいポイントです。自社内のルールを整えても、デザイン制作やライティングを委託した先が生成AIを使っていれば、その部分は自社のチェックの外にあります。継続的に委託する取引先とは、生成AIの利用に関する条項をひな形として用意しておくと、発注のたびに個別に確認する負担を減らせます。条項の内容が自社にとって適切かは、契約書に詳しい専門家に確認しておくと安心です。

国際動向|米国・日本・英国の違い

AIと著作権のルールは国ごとに異なり、日本で問題になりにくい使い方でも、海外で公開・販売する場合には別の確認が必要になることがあります。ここでは主な考え方の違いを概要として整理します。各国の制度は議論や見直しが続いているため、海外展開の際は現地の最新情報を必ず確認してください。

国・地域学習段階の考え方生成物の権利の考え方
日本著作権法第30条の4により、享受目的でない情報解析は原則として許諾不要とされる人の創作的寄与がある部分に著作物性が認められうる
米国公正利用(フェアユース)に当たるかが個別に争われ、複数の訴訟が続いている米国著作権局は、人間による著作(human authorship)が登録の前提との立場を示している
英国商業目的の情報解析に関する例外の範囲について見直しの議論が続いている人間の著作者がいないコンピュータ生成物について、作成に必要な手配をした者を著作者とみなす規定がある

このほか、EUではAI法(AI Act)により、汎用目的AIモデルの提供者に対して学習データの概要の公開や著作権法の順守に関する方針の整備などが求められるようになっています。利用企業が直接の義務を負う場面は限られますが、利用しているAIサービスがこうした対応をしているかは、サービス選定の判断材料になります。

海外で続く訴訟と、利用企業が読み取れること

表の米国の欄で触れたとおり、AIの学習や出力をめぐっては、権利者がAIの開発・提供事業者を訴える動きが続いています。文化庁の委託調査報告書(令和7年3月)では、2023年から2024年にかけて米国を中心に提起された訴訟が一覧で整理されています。そのうち、文章と画像の代表的なものを抜き出すと次のとおりです。

訴訟提訴時期・裁判所原告の主な主張
Andersen v. Stability AI2023年1月、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所複数の芸術家が、自分たちの作品が画像生成AIの学習に無断で使われたと主張
New York Times v. Microsoft2023年12月、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所報道機関が、記事が無許可で学習に読み込まれ、要約や表現スタイルの模倣が行われていると主張(被告はMicrosoftとOpenAI)
Getty Images v. Stability AI英国の高等法院(2023年1月)、米国のデラウェア地区連邦地方裁判所写真・映像素材の提供企業が、画像が無断で学習に使われたと主張。生成画像に原告のウォーターマークが再現されていたことが発端

同報告書によると、2025年1月時点では、和解や取り下げで終わった例はあるものの、裁判所の最終的な判決まで至った例は確認されていないとされています。その後も各国で新しい提訴や判断が続いており、結論はまだ固まっていません。個々の訴訟の勝ち負けを追いかけるよりも、利用企業としては次の3点を読み取っておくと実務に生かせます。

  • 訴えられているのは主にAIの開発・提供事業者だが、生成物を公開した利用者の責任がなくなるわけではない。出力に既存作品の表現やウォーターマークが残っていないかを公開前に確認する
  • 利用しているAIサービスが訴訟の当事者になると、機能や規約が変わる可能性がある。規約確認の見直し時期を社内ルールに入れておく
  • 判断の基準が今後変わりうるため、現時点の解釈に頼り切らず、生成過程の記録を残して後から説明できる状態を保つ

日本の企業が注意したいのは、「日本の第30条の4で学習が許されている」ことが、海外での生成物の利用まで保証するわけではない点です。海外向けの広告や商品に生成物を使う場合は、現地の法律に詳しい専門家への確認を、日本国内向けとは別の手順として用意しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. AIで作った画像や文章は著作権侵害になりますか?

A. AIを使ったかどうかに関係なく、既存の著作物との類似性と依拠性がある場合に侵害となりうるとされています。公開前に既存作品と似ていないかを確認することが大切です。

Q. AIの学習に著作物を使うことは違法ですか?

A. 日本では著作権法第30条の4により、情報解析など享受を目的としない利用は原則として許諾不要とされています。ただし特定作品の表現を出力させる目的の学習などは対象外になりうるとされています。

Q. AI生成物に著作権は発生しますか?

A. 簡単な指示だけでAIが生成したものは一般に著作物に当たらないと考えられています。人が創作的に寄与した場合は、その部分に著作物性が認められる可能性があります。

Q. 利用規約では何を確認すればよいですか?

A. 生成物の権利帰属、商用利用の可否、入力データの学習利用、第三者の権利侵害時の責任、禁止される利用、準拠法の6点を、利用するプランごとに確認します。

Q. プロンプトの履歴はなぜ残しておくべきですか?

A. 既存作品に似ていると指摘された場合に、特定の作品を指定していないことなど生成過程を説明する材料になるためです。文化庁のガイダンスでも生成過程を確認できる状態にしておくことが望まれるとされています。

Q. AI生成物の権利や記録はどのように管理すればよいですか?

A. プロンプト・修正履歴・公開前チェックの結果を生成物ごとに1か所へまとめます。ロゴや商品名など商標登録も関わる生成物は、知財管理の仕組みで出願状況と一緒に管理すると安心です。

まとめ

AIと著作権の論点は、学習段階と生成・利用段階で分けて考えるのが基本です。利用企業として押さえておきたいのは次の4つです。

  1. 生成物の利用では、既存の著作物との類似性と依拠性で侵害が判断されることを理解する
  2. 利用するAIサービスの規約を、権利帰属・商用利用・入力データの扱いまでプランごとに確認する
  3. 公開範囲に応じた公開前チェックと、プロンプトを含む生成過程の記録を社内ルールにする
  4. 記録と権利化を1か所で管理できる仕組みと、専門家への相談ルートを用意しておく

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、弁護士・弁理士等の専門家にご相談ください。

参考文献

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