AIの著作権|生成AI時代の権利と実務対応
Check!
- AI生成物の侵害判断と著作物性の基準がわかる
- 利用規約と取引契約で確認する項目がわかる
- 社内ガイドラインと記録の整え方がわかる
- 業務利用では各サービスの利用規約と社内ルール整備が侵害回避の鍵
生成AIで作った文章や画像を業務で使う場面が増え、「公開して著作権侵害にならないか」「AIで作ったものに自社の著作権はあるのか」という疑問が社内で出るようになりました。結論から言うと、AI生成物の利用で著作権侵害になるかどうかは、人が作った場合と同じく既存の著作物との「類似性」と「依拠性」で判断され、AI生成物に著作権が認められるかどうかは、人の「創作的寄与」の程度で決まるとされています。本記事では、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」とチェックリスト&ガイダンスに沿って、基本の考え方から侵害リスク、海外の訴訟、利用規約、社内ガイドライン、よくある失敗までを、企業の担当者向けに整理します。
なお本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な判断が必要な場合は、弁護士・弁理士等の専門家にご相談ください。
AI生成物の著作権、あなたの会社はどこから確認する?
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AI著作権の結論|企業が確認する3つの場面
AI生成物の著作権で企業が確認するのは、学習への利用、生成物の公開・販売、生成物の権利の3場面です。公開・販売では類似性と依拠性、権利では人の創作的寄与が判断の軸になります。
| 場面 | 判断の軸 | 企業が先に確認すること |
|---|---|---|
| 学習・開発 | 著作権法第30条の4の範囲内か。享受目的が併存しないか | 自社でモデルを追加学習させるか、社内文書を検索して回答させる仕組み(RAG)を作るか |
| 生成物の公開・販売 | 既存の著作物との類似性と依拠性 | 公開前の類似チェックと、プロンプトなど生成過程の記録 |
| 生成物の権利 | 人の創作的寄与があるか。利用規約上の権利帰属 | 加筆・修正の記録と、利用するAIサービスの規約 |
この3場面に共通して、実務で手が止まりやすいのは「文書の確認」です。利用するAIサービスの規約、委託先や取引先との契約、自社の利用ルールはいずれも文書で、確認の漏れや更新の遅れがそのままリスクになります。法務担当や顧問弁護士がいない会社では相談先が、担当者が少ない会社では文書の検索や版管理の手間が課題になります。ここでは、契約書レビュー分野の2つのサービスを、優劣ではなく役割の違いで並べます。
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AIと著作権の基本|学習段階と生成段階の違い
日本では、AIが著作物を学習する段階と、AIで作ったものを利用する段階で、適用される著作権法のルールが異なります。この区分は、文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月に取りまとめた「AIと著作権に関する考え方について」(以下「考え方」)で整理されたもので、現在の実務の基本的な出発点になっています。
開発・学習段階:著作権法第30条の4
AIの学習のために既存の著作物を複製することは、著作権法第30条の4により、原則として著作権者の許諾なく行えるとされています。この条文は、著作物に表現された思想や感情を人が味わうこと(享受)を目的としない利用を認めるもので、情報解析はその代表例です。
ただし、どんな学習でも自由というわけではありません。「考え方」では、特定のクリエイターの作品だけを集めて、その作品の創作的な表現をそのまま出力させることを目的とした追加学習のように、享受目的が併存すると評価される場合は、この条文の対象外になりうるとされています。また、条文のただし書きにある「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」にも適用されません。利用企業が自社でモデルを追加学習させる場合や、社内外の文書を検索して回答させる仕組み(RAG)を作る場合は、この論点が自社の問題として関わってきます。
生成AIに既存の画像や文章を入力して指示を出す場合も、入力に伴う複製は原則として第30条の4が適用されると考えられています。ただし、入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させる目的で入力するときは、享受目的が併存するとして同条が適用されない場合があり、権利者の許諾が必要になると、文化庁のチェックリスト&ガイダンスは説明しています。
生成・利用段階:通常の著作権侵害と同じ判断
AIで作った文章や画像を公開・販売する段階では、AIを使っていない場合と同じ基準で著作権侵害が判断されるとされています。つまり、「AIが作ったから特別に許される」ことも「AIが作ったから特別に厳しい」こともありません。判断の軸になるのは、後ほど説明する類似性と依拠性の2つです。
生成と利用で判断が分かれる点にも注意が必要です。文化庁のチェックリスト&ガイダンスは、生成そのものであれば、私的使用が目的の場合(著作権法第30条第1項)や、権利者の許諾を得て利用することを前提とした社内の検討過程(同法第30条の3)など、権利制限規定の範囲内で許諾なく適法に行える場合があるとしています。一方で、インターネットでの配信や複製物の譲渡といった利用は、権利制限規定の範囲外となる場合が多いと考えられます。生成が適法にできても、公開や販売の前には侵害の有無を確認する必要があります。
AI生成物に著作権は発生するか
著作権法で保護される著作物は、思想または感情を創作的に表現したものです。そのため、人が簡単な指示を出しただけでAIが自律的に生成したものは、一般に著作物に当たらないと考えられています。一方で、人が創作意図を持ち、創作的な寄与をした場合は、その部分について著作物性が認められる可能性があるとされています。「考え方」は、創作的寄与の有無を判断する要素を次のように整理しています。
| 要素 | 創作的寄与の判断への影響 |
|---|---|
| 指示・入力(プロンプト等)の分量・内容 | 創作的表現といえるものを具体的に示す詳細な指示は、寄与と評価される可能性を高める。長大な指示でも、表現に至らないアイデアを示すにとどまる指示は影響しない |
| 生成の試行回数 | 試行回数が多いこと自体は影響しない。生成物を確認して指示を修正しながら試行を重ねる場合は、著作物性が認められることも考えられる |
| 複数の生成物からの選択 | 単なる選択行為自体は影響しない |
| 人による加筆・修正 | 創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分には、通常、著作物性が認められる。それ以外の部分の判断には影響しない |
長いプロンプトを書いたから、何度も生成したからといって、それだけで著作物性が認められるわけではない点に注意が必要です。自社の生成物を権利として守りたい場合は、人がどこに手を加えたかを記録しておくことが、後から説明する材料になります。
AIで作ったイラスト・ロゴ・キャラクターは誰のものか
「AIで作ったイラストを販売してよいか」「AIが作ったキャラクターやロゴは自社のものになるか」という疑問は、ここまでの2つの問いに分けて考えられます。販売や配信は利用段階にあたるため、既存の作品と類似していないかを確認します。自社のものになるかは、人の創作的寄与の程度と、利用するAIサービスの規約(商用利用の可否・権利帰属)で決まります。画像生成の細かな論点はAI画像生成の業務活用ガイド、「〇〇風」の指示やロゴの扱いはAIで「ジブリ風」デザイン・ロゴを業務に使う前の著作権論点で詳しく扱っています。
ロゴやキャラクターの名称では、著作権とは別に商標の確認も必要です。他社の登録商標と紛らわしくないか、自社で出願するかは、著作権の有無とは別に判断することになります。また、「考え方」は、著作物に当たらないものでも、営業上の利益を侵害する利用であれば民法上の不法行為として損害賠償請求が認められうるとしています。ただし脚注では、特段の事情がなければ不法行為は成立しないとした最高裁判決(平成23年12月8日)も示されており、著作権で守れる場合とは条件が異なります。生成物を自社の資産として守るなら、商標登録や取引先との契約での取り決めを併用する考え方が現実的です。
生成物の利用における著作権侵害リスク
AI生成物の利用で著作権侵害が成立するには、既存の著作物との「類似性」と、既存の著作物への「依拠性」の両方が必要とされています。どちらか一方だけでは侵害にはならないとされていますが、生成AIでは依拠性の考え方に独特の論点があります。
| 要件 | 意味 | 生成AIで特に注意したい点 |
|---|---|---|
| 類似性 | 既存著作物の創作的な表現上の本質的な特徴を、生成物から直接感じ取れること | アイデアや作風が似ているだけでは原則として類似性は認められないとされる。具体的な表現が似ているかがポイント |
| 依拠性 | 既存著作物に接して、それをもとに作ったこと | 利用者が既存作品を知らなくても、その作品がAIの学習データに含まれていた場合は、依拠性があったと推認されうるとされる |
依拠性が認められる2つの場面
「考え方」は、依拠性が認められる場面を主に2つに整理しています。1つ目は、利用者が既存の著作物を認識していて、生成AIでその創作的表現を持つものを生成させた場合です。既存の画像そのものを入力する場合や、作品名などの特定の固有名詞を入力する場合が例に挙げられています。2つ目は、利用者は既存の著作物を知らなかったものの、そのAIが開発・学習段階で当該著作物を学習していた場合です。類似した生成物が出ると、通常は依拠性があったと推認されうるとされています。ただし、学習した著作物の創作的表現が生成されない状態が技術的に担保されていると評価できる場合は、依拠性がないと判断される場合もありうるとされています。
リスクが高まりやすい使い方
- プロンプトに特定の作品名、キャラクター名、作家名を入れて、その作品に似せる指示を出す
- 既存の画像や文章をそのままAIに読み込ませ、少しだけ変えたものを作らせる(画像から画像を作る機能など)
- 特定のブランドのロゴや商品デザインに近い出力を、確認せずに広告や商品に使う
- AIが出力した長文を、出典や類似の確認をせずにそのまま記事や書籍として公開する
特に1つ目と2つ目は、利用者自身が既存作品を指定しているため、依拠性が認められやすい使い方です。逆に、既存作品を指定せず一般的な指示で作った生成物でも、学習データの影響で既存作品に似た出力が出る場合があります。そのため、「真似するつもりはなかった」だけでは安心できず、公開前の類似チェックが欠かせません。文化庁のチェックリスト&ガイダンスも、生成物の利用に先立って、インターネット検索(文章検索・画像検索)などで既存の著作物と類似していないか確認することを求めています。
侵害と判断された場合に負う責任
AI生成物が他者の著作権を侵害していると判断された場合、生成物を使った企業は、AIを使っていない場合と同じ責任を負います。「AIが作ったものだから」という理由で責任が軽くなるわけではありません。著作権法に基づく主な責任は次の3つです。
| 責任の種類 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 差止請求 | 生成物の公開・販売の停止や、侵害物の廃棄を求められる。故意や過失がなくても請求されうる | 著作権法第112条 |
| 損害賠償請求 | 故意または過失がある場合に、権利者が受けた損害の賠償を求められる | 民法第709条、著作権法第114条 |
| 刑事罰 | 故意の侵害には10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科あり)。法人には3億円以下の罰金が科されうる | 著作権法第119条、第124条 |
利用者が既存の著作物を認識していなかったなど、故意・過失が認められない場合は、侵害が認められても受けうる措置は差止請求にとどまり、損害賠償や刑事罰の対象にはならないと「考え方」は整理しています。ただし、使用料相当額などの不当利得の返還が求められる場合はありうるとされています。差止めは過失の有無を問わないため、広告やパッケージに使った後で指摘を受けると、差し替えや回収の費用が発生します。法的な責任とは別に、取引先や顧客からの信用低下も避けられません。
プロンプト履歴の記録が「説明の材料」になる
文化庁のチェックリスト&ガイダンスは、類似していないかの確認に加えて、依拠性がないことを説明できるよう、生成に用いたプロンプト等の生成過程を確認可能な状態にしておくよう努めることが望まれる、としています。生成物の著作物性を取引先などに説明する観点でも、同じ記録が材料になります。具体的には、次の項目を生成物ごとに残しておくと、後から「似ている」と指摘された場合にも経緯を説明しやすくなります。
| 記録する項目 | 記録の例 | 残しておく理由 |
|---|---|---|
| 使用したAIサービスとプラン | サービス名、法人プランか個人プランか、利用日 | 生成時点の利用規約(商用利用・権利帰属)を特定するため |
| 入力したプロンプト・参照素材 | 指示文の全文、読み込ませた画像や文書 | 特定の作品を指定していないこと(依拠性がないこと)の説明材料 |
| 人による加筆・修正の内容 | 修正前後のファイル、修正した担当者 | 自社の創作的寄与(著作物性)を示す材料 |
| 公開前チェックの結果 | 画像検索・類似文章検索の実施日と結果、確認者 | 類似性の確認を行ったことの証跡 |
AI生成物を取引の対象にするときの注意点
AIを使って作った成果物を取引先に納品したり、ライセンスしたりする場面では、契約の書き方が実務上の論点になります。文化庁のチェックリスト&ガイダンスは、AI生成物を著作物として取引の対象にする場合、AIを利用して作ったものであることや著作物性について、関係者に適切に説明することが求められるとしています。また「考え方」は、著作物に当たらないものを著作物と称してライセンス契約のような取引で流通させた場合、債務不履行責任のほか、不法行為責任や詐欺罪に問われる可能性が考えられるとしています。
納品物の権利の範囲、生成AIの利用の有無、権利侵害があった場合の責任分担といった条項は、取引の内容によって書き方が変わります。弁護士に確認しながら進める場面の一例が、クラウドリーガル(Molton株式会社)です。商品ページでは、取引先から提示された契約書のレビューを弁護士にオンラインで依頼でき、基本1営業日以内にWordコメント付きで返答が届くと紹介されています。法務・労務の相談や、商標登録、広告審査にも対応するとされています。ただし、プランごとに相談時間や契約書レビューの件数に上限があり、上限を超える場合は別途の見積もりになります。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。
ここがおすすめ!
- 厳選された「クラウドリーガル弁護士」による契約書レビュー
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- 契約書レビューだけでなく、企業法務業務にも対応
ここが少し気になる…
- 契約書レビューはサービス内の一部で、1通あたり7ページ以下のもの
株式会社Medii(医療・従業員42人)は、秘密保持契約の審査を顧問弁護士に頼むと返答が遅れることが課題でしたが、導入後は契約書レビューを依頼しやすくなり、顧問弁護士には高度な案件に集中してもらえるようになったと紹介されています。
出典:クラウドリーガル導入事例(株式会社Medii)
国際動向|米国・日本・英国の違い
AIと著作権のルールは国ごとに異なり、日本で問題になりにくい使い方でも、海外で公開・販売する場合には別の確認が必要になることがあります。ここでは主な考え方の違いを概要として整理します。各国の制度は議論や見直しが続いているため、海外展開の際は現地の最新情報を必ず確認してください。
| 国・地域 | 学習段階の考え方 | 生成物の権利の考え方 |
|---|---|---|
| 日本 | 著作権法第30条の4により、享受目的でない情報解析は原則として許諾不要とされる | 人の創作的寄与がある部分に著作物性が認められうる |
| 米国 | 公正利用(フェアユース)に当たるかが個別に争われ、複数の訴訟が続いている | 米国著作権局は、人間による著作(human authorship)が登録の前提との立場を示している |
| 英国 | 商業目的の情報解析に関する例外の範囲について見直しの議論が続いている | 人間の著作者がいないコンピュータ生成物について、作成に必要な手配をした者を著作者とみなす規定がある |
このほか、EUではAI法(AI Act)により、汎用目的AIモデルの提供者に対して学習データの概要の公開や著作権法の順守に関する方針の整備などが求められるようになっています。利用企業が直接の義務を負う場面は限られますが、利用しているAIサービスがこうした対応をしているかは、サービス選定の判断材料になります。著作権以外のAI関連の法律を含めた全体像は、AIの法律とは?推進法・著作権・EU法の全体像で整理しています。
海外で続く訴訟と、利用企業が読み取れること
AIの学習や出力をめぐっては、権利者がAIの開発・提供事業者を訴える動きが続いています。文化庁の委託調査報告書(令和7年3月)では、2023年から2024年にかけて米国を中心に提起された訴訟が一覧で整理されています。そのうち、文章と画像の代表的なものを抜き出すと次のとおりです。
| 訴訟 | 提訴時期・裁判所 | 原告の主な主張 |
|---|---|---|
| Andersen v. Stability AI | 2023年1月、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所 | 複数の芸術家が、自分たちの作品が画像生成AIの学習に無断で使われたと主張 |
| New York Times v. Microsoft | 2023年12月、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所 | 報道機関が、記事が無許可で学習に読み込まれ、要約や表現スタイルの模倣が行われていると主張(被告はMicrosoftとOpenAI) |
| Getty Images v. Stability AI | 英国の高等法院(2023年1月)、米国のデラウェア地区連邦地方裁判所 | 写真・映像素材の提供企業が、画像が無断で学習に使われたと主張。生成画像に原告のウォーターマークが再現されていたことが発端 |
同報告書によると、2025年1月時点では、和解や取り下げで終わった例はあるものの、裁判所の最終的な判決まで至った例は確認されていないとされています。その後も各国で新しい提訴や判断が続いており、結論はまだ固まっていません。個々の訴訟の勝ち負けを追いかけるよりも、利用企業としては次の3点を読み取っておくと実務に生かせます。
- 訴えられているのは主にAIの開発・提供事業者だが、生成物を公開した利用者の責任がなくなるわけではない。出力に既存作品の表現やウォーターマークが残っていないかを公開前に確認する
- 利用しているAIサービスが訴訟の当事者になると、機能や規約が変わる可能性がある。規約確認の見直し時期を社内ルールに入れておく
- 判断の基準が今後変わりうるため、現時点の解釈に頼り切らず、生成過程の記録を残して後から説明できる状態を保つ
日本の企業が注意したいのは、「日本の第30条の4で学習が許されている」ことが、海外での生成物の利用まで保証するわけではない点です。海外向けの広告や商品に生成物を使う場合は、現地の法律に詳しい専門家への確認を、日本国内向けとは別の手順として用意しておきましょう。
各AIサービスの利用規約と権利帰属
AI生成物の権利を誰が持ち、どこまで使ってよいかは、著作権法だけでなく、利用するAIサービスの利用規約でも決まります。規約は同じサービスでも個人向けと法人向けで異なり、改定されることもあるため、使い始める前と定期的な見直しの両方で確認が必要です。
ここでは特定のサービスの規約内容を断定するのではなく、どのサービスを使う場合でも確認したい項目を整理します。実際の条件は、必ず各サービスの最新の規約で確かめてください。
| 確認項目 | 規約で見るポイント | 見落とした場合に起きること |
|---|---|---|
| 生成物の権利帰属 | 生成物の権利を利用者に移転・帰属させるか、提供事業者が保持するか | 自社の成果物として独占的に使えない可能性がある |
| 商用利用の可否 | 無料プランや特定プランで商用利用が制限されていないか | 広告や商品に使った後で規約違反になる |
| 入力データの学習利用 | 入力したデータがモデルの改善に使われるか、オプトアウトできるか | 顧客情報や他社から預かった資料が外部に使われる |
| 第三者の権利侵害時の責任 | 生成物が他者の権利を侵害した場合の責任の所在、補償の有無と条件 | 侵害を指摘されたとき自社だけで対応することになる |
| 禁止される利用 | 実在の人物の模倣、特定の用途での利用などの禁止事項 | アカウント停止や契約解除につながる |
| 準拠法と管轄 | どの国の法律が適用され、紛争時にどこの裁判所で争うか | 海外で手続きを進める必要が生じる |
一部の提供事業者は、法人向けプランの利用者に対して、生成物が第三者の著作権を侵害したと主張された場合の補償制度を設けています。ただし、補償の対象になるプラン、安全機能を有効にしていることなどの条件、補償の範囲はサービスごとに異なります。「補償があるから確認しなくてよい」とは考えず、自社の公開前チェックと組み合わせて使うのが基本です。
規約を確認した結果は、社内で使ってよいAIサービスの一覧として、確認日・対象プラン・商用利用の可否・入力してよい情報の範囲と一緒に残しておくと、担当者が変わっても判断がぶれません。規約の文言の解釈や、取引先との契約への落とし込みで判断に迷う場合は、弁護士に確認しながら進めるのが確実です。
2サービスの役割を比較表で見る企業が取るべき社内ガイドライン整備
AI著作権への社内対応は、使ってよいAIの範囲を決める、公開前チェックの手順を決める、生成過程を記録する、問題が起きたときの相談先を決める、の4点をガイドラインとして文書化するのが基本です。経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」でも、AIを業務で利用する事業者(AI利用者)に対して、知的財産権を含む他者の権利に配慮した適正な利用が求められています。文化庁のチェックリスト&ガイダンスも、業務で生成AIを使う利用者に、内部的なルールの策定など著作権侵害の予防措置を講じることを求めています。
ガイドラインに盛り込みたい項目
| 項目 | 決めておく内容 | 文化庁チェックリスト(業務利用者)の関連項目 |
|---|---|---|
| 利用可能なAIサービス | 規約確認済みのサービスとプランの一覧、確認日、見直しの頻度 | 著作権侵害に対する予防措置と、侵害が生じた場合の対応の検討 |
| 入力してよい情報 | 個人情報、取引先の資料、他社の著作物を入力してよいかの基準 | 著作物の入力が非享受目的の要件を満たすかの確認 |
| 禁止するプロンプト | 特定の作品名・作家名・キャラクター名・ブランド名を指定した生成を原則禁止にするなど | 固有名詞の入力は依拠性が認められやすくなる点の周知 |
| 公開前チェック | 画像検索・類似文章検索の実施、作成者以外によるダブルチェック、判断に迷ったときの差し戻し基準 | 利用に先立つ、既存の著作物との類似の確認 |
| 記録の保存 | プロンプト、生成物、修正履歴、チェック結果の保存場所と保存期間 | 生成過程を確認可能な状態にしておくこと |
| 取引先への説明 | AI生成物を納品・ライセンスするときの、AI利用の有無と著作物性の説明方法 | 関係するステークホルダーへの適切な説明 |
| 相談・対応窓口 | 法務担当や外部の弁護士・弁理士への相談ルート、指摘を受けたときの初動 | 事案の情報共有、サービスの停止、権利者への対応、原因解明、再発防止の想定 |
ルールは周知して初めて機能する
ガイドラインを作っても、現場に知られていなければ守られません。AI生成物を扱う担当者には、特定の作品名を指定したプロンプトがなぜ危ないのか、公開前に何を検索するのかを、具体例で説明しておくと定着しやすくなります。研修は一度で終わらせず、規約の改定や新しい訴訟の動きがあったときに、ルールの見直しとあわせて周知し直す運用にしておきましょう。
公開範囲で確認の深さを変える
すべての生成物に同じ重さのチェックをかけると、現場の負担が大きくなり、ルール自体が守られなくなります。社内会議のメモなど社外に出ない用途は簡易確認、Webサイトや営業資料は類似チェックとダブルチェック、広告・商品デザイン・ロゴなど長期間使い続けるものは専門家のレビューまで行う、というように公開範囲と影響度で段階を分けると運用が続きやすくなります。
記録は「探せる場所」にまとめる
記録のルールを作っても、担当者ごとのパソコンやチャットに散らばっていると、いざ指摘を受けたときに探し出せません。生成物ごとにプロンプト・修正履歴・チェック結果を1か所にまとめ、ロゴや商品名のように商標登録の対象にもなる生成物は、出願状況や更新期限と一緒に管理できる状態にしておくと安心です。
指摘を受けたときの初動を決めておく
文化庁のチェックリスト&ガイダンスは、侵害が生じた場合に講じる対応を、あらかじめ想定しておくことを挙げています。例として、事案に関する情報共有、AIサービスの停止・復旧、権利者への対応、原因の解明、再発防止措置が示されています。自社のルールでは、最初に連絡する人、当該生成物の公開を止める判断者、権利者への連絡を誰が行うかを決めておくと、初動が遅れません。
AI生成物の著作権対応、今の運用は大丈夫?セルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
導入でよくある失敗パターン4つ
AI著作権への対応でよくある失敗は、規約を確認せずに使い始める、生成物をそのまま公開する、記録を残さない、外部委託先の生成AI利用を把握していない、の4つです。下の表で、つまずきやすい運用と改善後の姿を比べてください。
| 失敗パターン | Before(よくある運用) | After(改善後) |
|---|---|---|
| 1. 規約を確認せずに使い始める | 個人アカウントの無料プランで作った画像を、そのまま広告に使う | 規約確認済みのサービスとプランだけを社内で利用可能にし、確認日を記録する |
| 2. 生成物をそのまま公開する | 見た目がよければ類似チェックをせずにWebに掲載する | 画像検索・類似文章検索と、作成者以外の確認を公開の条件にする |
| 3. 記録を残さない | 指摘を受けてから、どんなプロンプトで作ったか思い出せない | プロンプト・修正履歴・チェック結果を生成物ごとに1か所へ保存する |
| 4. 外部委託先の利用を把握していない | 制作会社の納品物に生成AIが使われていたことを後で知る | 発注時に生成AI利用の有無と使用サービスを確認し、契約に権利侵害がない旨の保証条項を入れる |
4つ目の外部委託は見落とされやすいポイントです。自社内のルールを整えても、デザイン制作やライティングを委託した先が生成AIを使っていれば、その部分は自社のチェックの外にあります。継続的に委託する取引先とは、生成AIの利用に関する条項をひな形として用意しておくと、発注のたびに個別に確認する負担を減らせます。条項の内容が自社にとって適切かは、契約書に詳しい専門家に確認しておくと安心です。
委託先向けの契約ひな形や社内の生成AI利用ルールは、繰り返し使い、規約や解釈の変化に合わせて改訂していく文書です。過去の契約の検索、条項の抜けのチェック、改訂履歴の管理がそろっていると、運用が続きやすくなります。こうした文書業務を支えるサービスの一例が、先ほど紹介したLAWGUEです。
2サービスの役割を比較表で見るよくある質問(FAQ)
Q1. AIで作った画像や文章は著作権侵害になりますか?
A. AIを使ったかどうかに関係なく、既存の著作物との類似性と依拠性がある場合に侵害となりうるとされています。公開前に既存作品と似ていないかを確認することが大切です。
Q2. AI生成物に著作権は発生しますか?
A. 簡単な指示だけでAIが生成したものは一般に著作物に当たらないと考えられています。人が創作的に寄与した場合や、創作的な加筆・修正を加えた場合は、その部分に著作物性が認められる可能性があります。
Q3. AIで作ったイラストを販売するのは違法ですか?
A. AIで作ったこと自体は違法ではありません。販売は利用段階にあたるため、既存の作品との類似性と依拠性がなければ侵害にはならないとされています。販売前の類似チェックと、利用するAIサービスの商用利用の条件の確認が必要です。
Q4. AIで作ったキャラクターやロゴの著作権はどうなりますか?
A. 人の創作的寄与の程度によって、著作物性が認められるかが決まります。また、AIサービスの規約で権利の帰属や商用利用の条件が定められていることがあります。ロゴや名称は商標の確認も必要です。
Q5. AIの学習に著作物を使うことは違法ですか?
A. 日本では著作権法第30条の4により、情報解析など享受を目的としない利用は原則として許諾不要とされています。ただし特定作品の表現を出力させる目的の学習などは対象外になりうるとされています。
Q6. 社内でまず整えるルールは何ですか?
A. 利用するAIサービスの規約確認、公開前の類似チェック、プロンプト・修正履歴・チェック結果の記録の3点です。文化庁のガイダンスでも、生成過程を確認できる状態にしておくことが望まれるとされています。
まとめ
AIと著作権の論点は、学習段階と生成・利用段階で分けて考えるのが基本です。利用企業として押さえておきたいのは次の5つです。
- 生成物の利用では、既存の著作物との類似性と依拠性で侵害が判断されることを理解する
- 生成物に自社の著作権が認められるかは人の創作的寄与で決まるため、加筆・修正を記録する
- 利用するAIサービスの規約を、権利帰属・商用利用・入力データの扱いまでプランごとに確認する
- 公開範囲に応じた公開前チェックと、プロンプトを含む生成過程の記録を社内ルールにする
- 規約や契約、社内ルールの確認と更新を担当者任せにせず、弁護士への相談窓口や文書を一元管理する仕組みの導入を検討する
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、弁護士・弁理士等の専門家にご相談ください。
参考文献
- 文化庁「AIと著作権について」https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
- 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf
- 文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(令和6年7月31日)https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/seisaku/r06_02/pdf/94089701_05.pdf
- 文化庁委託事業「AIを含めたデジタル技術の進展に対応した著作権等に係る諸問題に関する諸外国調査 報告書」(令和7年3月)https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/chosakuken/pdf/94256801_01.pdf
- 経済産業省「AI事業者ガイドライン」(第1.2版)https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20260331_report.html
- e-Gov法令検索「著作権法」https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
- LAWGUE導入事例(株式会社すららネット)https://lawgue.com/voice/4829/
- クラウドリーガル導入事例(株式会社Medii)https://www.molton.inc/voice/2/
