AI活用とは?業務改善・価値創出の2軸と事例・進め方

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  • AI活用は業務改善と価値創出の2軸で整理する
  • 失敗の原因は技術より目的・データ・人の準備
  • 入力ルールと研修で全員が同じ基準をそろえる

AI活用とは、AIを業務や事業に組み込み、既存業務の時間やミスを減らす「業務改善」と、新しい商品・サービスや顧客体験を生み出す「価値創出」の、どちらか、または両方を実現する取り組みです。取り組みの幅が広いため、何を目指すのかを先に決めておく必要があります。総務省の「令和8年版 情報通信白書」では、自社の何らかの業務で生成AIを利用していると答えた日本企業は86.4%に上る一方、組織的な取組はないと答えた企業も27.0%ありました。この記事では、AI活用の2軸、できること、業務領域別の事例、メリットとリスク、失敗の理由、導入の進め方、効果の確認方法を、公的資料をもとに整理します。下の診断で、いまの課題から確認することもできます。

AI活用を社内に広げるときのつまずきを診断

Q1. AI活用で、いまいちばん近い状況はどちらですか?

目次

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  1. AI活用とは|業務改善と価値創出の2軸、そして全社に広げる土台
  2. AIでできること|4つの機能と業務での使いどころ
  3. 業務領域別のAI活用例|公的資料で見る日本企業の事例
  4. AI活用のメリットとデメリット|使わないほうがよい場面も
  5. AIプロジェクトが失敗する理由
  6. AI導入でよくある失敗パターン4つ
  7. AI活用の3つの注意点|目的・戦略整合・役割定義
  8. AI活用のリスクと対策|情報漏えい・誤り・著作権
  9. AI活用の進め方|導入の5ステップ
  10. AI活用の効果をどう確認するか
  11. よくある質問(FAQ)
  12. まとめ|AI活用を失敗させないために今日からできる4つのこと
  13. 参考文献

AI活用とは|業務改善と価値創出の2軸、そして全社に広げる土台

AI活用とは、既存業務の時間やミスを減らす「業務改善」と、新しい商品・サービスや顧客体験を生み出す「価値創出」を、AIで実現する取り組みです。どちらを目指すかによって、選ぶツールも評価の物差しも変わります。

軸目的取り組みの例成果が見えるまでの時間
業務改善既存業務の時間短縮・ミス削減議事録の自動作成、問い合わせの一次対応、請求書の読み取り比較的短い(数週間から数か月で確認しやすい)
価値創出新しい商品・サービス・顧客体験をつくるAIを組み込んだ新機能、購買履歴に基づく個別の提案、問い合わせ内容の分析による新しい顧客理解長め(試行と改善を重ねる前提)

多くの企業は、効果を確かめやすい業務改善から始め、社内にノウハウとデータがたまった段階で価値創出に踏み出す、段階的な進め方をとっています。総務省「令和8年版 情報通信白書」で、日本企業が生成AIの活用により生じうる影響として挙げた回答は、「作業時間の短縮などによる業務の効率化」が61.6%と最も高く、「品質管理の精度向上やパーソナライズなどによる製品・サービスの質の向上」は32.2%、「人員不足の解消」は26.8%でした。日本ではAIが、まず業務改善の手段として捉えられている傾向がうかがえます。

もう1つ、白書が指摘しているのが「使う人が一部に限られる」問題です。生成AIの活用方針を定めている日本企業は68.9%(前年度の調査では49.7%)に増えましたが、汎用的な生成AIツールを導入しても一部の積極的な社員が使うだけで、全社的な活用と効果創出に至らない可能性があるとされています。先進的な企業は、活用ユースケースの収集や社内展開、定期的なワークショップの開催などで、会社全体への浸透を図っているといいます。

こうした浸透の土台になるのが、AIの基本、入力してよい情報などの利用ルール、出力の確かめ方を、部門を問わず全員に同じ基準で伝える仕組みです。その手段の1つが、eラーニングによる研修です。ここでは、AI活用の土台になる研修を仕組み化できるeラーニングを、役割の違いで3つ並べます。いずれもAI活用専用の教材を提供するサービスではなく、自社のルールや使い方を学べる形にするための仕組みです。AIに関する教材の有無や範囲は、資料で確認してください。

AI活用の土台をそろえる、eラーニング3サービスの役割の違い

自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています

自社の状況:

この状況に合う一例:OneCompliance(ワンコンプライアンス)は、個人情報保護法・情報セキュリティ・著作権(AIに関する著作権を含む)などの研修をeラーニングで提供しています。

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この状況に合う一例:Smart Boardingは、自社の資料や動画を組み合わせてオリジナルの研修コースを作成でき、OJTで教えていた内容を学習プログラムにできます。

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この状況に合う一例:SAKU-SAKU Testingは、動画やスライドの学習に確認テストを組み合わせ、自社の設問と用意済みの設問を1つのテストにまとめられます。

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サービス OneCompliance(ワンコンプライアンス) Smart Boarding SAKU-SAKU Testing
向いている会社 個人情報・情報セキュリティ・著作権など、AI利用の前提になる法令の研修を、全員に同じ基準でそろえたい会社 OJTや研修で伝えている内容を、自社独自の研修コースにまとめたい会社 確認テスト付きの研修を、マニュアル不要の簡単な操作で運用したい会社
特徴 コンプライアンス研修に特化。法務・労務・情報領域のコンテンツを提供し、ダッシュボードや自動リマインダーで受講を管理できる 研修・OJT・eラーニングを1つのシステムで運用。自社の資料や動画と用意された動画を組み合わせたコースを作成でき、LMSで進捗や理解度を確認できる CBTの技術を活かしたテスト機能が中心。動画・スライドの学習と確認テストを組み合わせ、受講状況や結果はリアルタイムで集計される
注意したい点 料金は受講者の人数に応じて変わるため、問い合わせでの確認が必要 電話やメール相談、教育プログラム設計といった手厚いサポートを受けられるのは「充実サポートプラン」のみ 事務局運営やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱い
資料・詳細

3サービスの資料をまとめて請求(入力は1回・無料)

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表は横にスクロールできます。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

利用ルールの研修を全員にそろえたい場合の一例が、OneCompliance(ワンコンプライアンス)(株式会社Oyster)です。コンプライアンス研修に特化したeラーニングで、法務・労務・情報領域の研修を提供しており、個人情報保護法や情報セキュリティのほか、AIに関する著作権を含む著作権のコンテンツが用意されています。ダッシュボードや自動リマインダーで受講状況を管理でき、法改正などに合わせて内容が更新されます。一方で、扱うのはコンプライアンス領域の研修であり、AIの使い方や活用事例を学ぶ教材ではありません。料金は受講者の人数に応じて変わるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社Oyster

OneCompliance(ワンコンプライアンス)

OneCompliance(ワンコンプライアンス)
出典:onecompliance.jp

株式会社Oyster

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社内に法務専任担当や教育専任担当がおらず、社内のみでの実施が困難

OneCompliance 導入事例(株式会社プリメディカ。導入の背景・課題感として掲載) 出典:導入事例ページ

AIでできること|4つの機能と業務での使いどころ

AIでできることは、文章の理解と生成、画像や映像の認識、音声の認識と合成、データからの予測と分類の4つに整理できます。どの機能を使うかで、業務での使いどころと、確認したい点が変わります。

できること内容業務での使いどころの例確認したい点
文章の理解・生成文章の要約・翻訳・下書き、質問への回答議事録、メール、社内文書の要約、問い合わせへの回答案づくり事実や数字が正しいかを、人が確認する
画像・映像の認識画像から対象の種類や異常を見分ける製造ラインの外観検査、書類や領収書の読み取り誤って判定したときに、人が確認する工程を置く
音声の認識・合成話し言葉を文字にする、文章を音声にする会議の文字起こし、電話対応の自動化個人情報を含む音声の扱いを決めておく
データからの予測・分類過去のデータから傾向をつかみ、将来の値や分類を出す需要予測、設備の異常検知、顧客の分類データの量と質、予測が外れたときの影響を確認する

AIには、データから傾向を学んで予測・分類する従来型の機械学習と、文章や画像を新しく作る生成AIがあります。業務改善では生成AIによる文書作成や要約が入り口になりやすく、価値創出では予測・分類型のAIと自社データの組み合わせが中心になりやすい、という傾向があります。AIの基本はAIとは?中小企業が安全に始める3ステップ、対話型の生成AIサービスごとの特徴はAIチャットとは|4大サービスの違いと社内基盤から選ぶ方法で解説しています。

業務領域別のAI活用例|公的資料で見る日本企業の事例

AI活用の使い方は業務領域ごとに異なり、バックオフィスでは業務改善、営業・マーケティングや企画では価値創出に近い使い方が中心になります。代表的な領域と活用例、注意点を整理すると次のとおりです。

業務領域活用例主な軸注意点
総務・経理・人事議事録・規程類の要約、請求書や領収書の読み取り、社内問い合わせへの回答業務改善個人情報・給与情報を入力してよいかのルール化
営業・マーケティング提案書の下書き、商談記録の要約、購買データに基づく提案、広告文の案出し両方表現が景品表示法などに抵触しないかの人による確認
カスタマーサポートチャットボットによる一次対応、回答文の下書き、問い合わせ内容の分類・分析両方AIで対応できない内容を人に引き継ぐ基準
製造・物流需要予測、設備の異常検知、画像による検品、熟練者のノウハウの記録業務改善が中心安全や品質に直結する判断は人が最終確認する
企画・経営市場調査の整理、社内データの分析、新規事業のアイデア出し価値創出出力の根拠となる数値・出典を一次情報で確かめる

同じ「AI活用」でも、どの領域から着手するかで最初に整えるべきものが違います。バックオフィスでは入力してよい情報のルールが先に必要になり、顧客接点では人への引き継ぎ基準が、企画・経営では出力の根拠を確かめる運用が先に必要になります。最初の対象は、作業量が多く手順が決まっている業務、かつ誤りが起きても人が確認して取り戻せる業務から選ぶのが安全です。

業種による違いもあります。製造業では生産計画や設備データの分析といった業務改善が中心になりやすく、小売・EC業では需要予測に加えて購買履歴を使った個別の提案など、価値創出にも踏み込みやすい傾向があります。会計・法務などの専門サービスでは、契約書や資料の下読み・要約に使い、最終的な判断や助言は資格を持つ専門家が行う、という線引きを崩さないことが前提です。

総務省の白書が紹介する日本企業の活用事例

総務省「令和8年版 情報通信白書」は、日本企業のAI活用事例を、研究・商品開発、調達、製造・生産、マーケティング、顧客との接点、経営・コーポレート業務の6つの領域に分けて紹介しています。白書の記載をもとに、領域ごとに取り組みを1つか2つ要約すると次のとおりです。

業務領域白書が紹介する企業の取り組み(要約)
研究・商品開発中外製薬は「AI創薬」を中心に、研究プロセスの効率化と新規価値の創出を目指しています。パナソニックホールディングスの「設計AI」は、モデルの作成からシミュレーションによる評価、形状の決定までを自動化・高速化しているとされています。
調達ロート製薬は、富士通が開発した「マルチAIエージェント技術」と、東京科学大学との共同研究で開発したシステムを組み合わせ、サプライチェーン全体の効率化を目指す実証実験の開始を2025年12月に発表しました。
製造・生産ダイキン工業は、作業映像をもとに空調機の点検・修理作業の抜け漏れを自動で確認する「熟練工AIエージェント」と、設備の異常が故障かどうかを答える「故障診断AIエージェント」を取り入れています。
マーケティング電通は、カスタマージャーニーの作成やコンテンツ生成ツールなどにAIを開発・導入しています。サイバーエージェントは、効果的な広告テキストや画像を予測・自動生成する広告プロダクトを開発しています。
顧客との接点イオンリテールは、マニュアルを学習させた従業員向けの「AIアシスタント」を一部の店舗に導入しています。Gen-AXは、24時間365日、音声問合せに対応する「X-Ghost」を開発しています。
経営・コーポレート業務キリンホールディングスは、過去の取締役会などの議事録データを読み込ませたAI役員「CoreMate」を、起案者の事前の壁打ちに活用しています。ラクスは、領収書を選ぶだけで精算データを自動作成する経費精算のAIエージェントを提供しています。

どの事例も、全社に一斉に導入したというより、領域ごとの課題に合わせて対象を決めている点が共通しています。同じ規模の取り組みをそのまま再現する必要はなく、自社では「どの領域の、どの作業から始めるか」を決める際の参考にするのが現実的です。

身近なAI活用例|日常業務で使われている場面

身近なAI活用で代表的なのは、議事録やメールの作成補助です。同じ白書では、業務類型ごとの生成AIの活用状況で「議事録・メール作成補助」が約7割と最も高く、導入効果を実感すると回答した割合も約7割と、ほかの類型より顕著に高くなっています。次いで「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割でした。業務や日常で身近な例には、次のようなものがあります。

  • 会議の録音の文字起こしと、議事録の下書き
  • メールや案内文の文案づくり、長い文書の要約や翻訳
  • 社内の規程やマニュアルに関する問い合わせへの回答
  • スマートフォンの音声入力や、写真の自動分類
  • 購買履歴に基づく、おすすめ商品の表示
3サービスの役割を比較表で見る

AI活用のメリットとデメリット|使わないほうがよい場面も

AI活用のメリットは作業時間の短縮と手戻りの削減、デメリットは出力の誤りと情報管理のリスクで、両方を知ったうえで使う場面を選ぶことが大切です。観点ごとに整理すると次のとおりです。

観点メリットデメリット・リスク対応
作業文書作成・要約・入力などの時間を短縮できる導入や運用に手間がかかり、使いこなす人が一部に偏りやすい対象業務を絞って試し、研修で使い方をそろえる
品質定型のチェックで、ミスや手戻りを減らせる事実と異なる内容がもっともらしく出力されることがある数値や固有名詞は一次情報と照合し、人が確認する
情報の扱い社内の文書やデータを探しやすくなる入力した情報の流出や、他人の著作物との類似のおそれがある入力してよい情報の範囲を決め、社外に出す前に確認する
判断判断に使う材料を、短時間でそろえられるAIの出力に頼りすぎ、判断の理由を説明できなくなる評価の基準は人が決め、最終判断と責任は人が持つ

AIを使わないほうがよい場面

AIを使わないほうがよいのは、AIが苦手なことをさせる場面と、守るべき条件を満たせない場面です。次のような場合は、無理に使わず、条件を整えてから検討するほうが安全です。

  • 個人情報や取引先の機密情報を、社内のルールや契約で認められていないまま入力する業務
  • 誤りの影響が大きいのに、人が内容を確かめられない判断(安全や品質に直結する判断、法律や会計の最終判断など)
  • 目的が決まらないまま、AIを使うこと自体が目的になっている場面
  • 既存のツールやルールの見直しで解決できる課題

3つ目と4つ目は、RANDの報告書が失敗の原因として挙げる「課題より技術を優先する」状態そのものです。「使わない」と決めるのではなく、「使える形に整えてから使う」と考えると、次の章から続く失敗の理由と進め方がつながります。

AIプロジェクトが失敗する理由

AIプロジェクトの失敗は、AIの性能不足よりも、目的の設定・データの準備・技術の選び方・体制づくりといった組織側の判断に原因があることが多いとされています。RAND Corporationが2024年に公表した報告書「The Root Causes of Failure for Artificial Intelligence Projects and How They Can Succeed」は、一部の推計としてAIプロジェクトの80%超が失敗し、その割合はAIを含まないITプロジェクトの約2倍にあたると紹介しています。この報告書は、データサイエンティスト・エンジニア65人へのインタビューをもとに、失敗の根本原因を次の5つに整理しています。

RANDが挙げる根本原因社内で起きがちな状態事前にできる確認
解くべき問題の取り違え経営層と現場で、AIに解決してほしい課題の認識がずれている業務改善と価値創出のどちらを狙うか、課題を1文で書いて共有する
必要なデータの不足学習や分析に使えるデータが散在している、量や質が足りない使うデータの所在・形式・更新頻度を洗い出す
課題より技術を優先する話題のAIを使うこと自体が目的になっている既存のツールやルール変更で解決できないかを先に検討する
基盤への投資不足データを整える仕組みや運用体制がなく、試作から先に進めない本格運用に必要な環境・人員の見積もりを試作段階で出しておく
AIに向かない課題を選ぶ現在のAIでは難しい精度や判断を求めている誤りが起きたときの影響と、人が確認する工程を決める

この5つを見ると、多くは導入前の段階で防げるものです。とくに1つ目の「問題の取り違え」は、経営層が現場の業務を十分に把握しないまま「AIで何かできないか」と指示を出す場合に起きやすいとされています。「どの業務の、どの作業を、どれだけ減らしたいのか」まで具体化してから着手することが、失敗を避ける最初の一歩です。

この記事では、RANDの5つの原因を社内で確認しやすいように「目的・データ・人」の3点に置き換えて考えることをおすすめします。目的は「問題の取り違え」と「技術優先」を、データは「データ不足」と「基盤への投資不足」を、人は「AIに向かない課題を人の確認でどう補うか」と、使う人の理解度をそれぞれ確認する観点です。3点のうち1つでも答えられない項目があれば、ツール選びより先にそこを埋めるのが近道です。

AI導入でよくある失敗パターン4つ

AI導入の失敗は、目的なき導入、出力の検証不足、一部の人だけの活用、効果の測り忘れという4つのパターンに集約できます。いずれも、導入前と導入後の進め方を少し変えるだけで防げます。

失敗パターンBefore(よくある進め方)After(改善した進め方)
1. 目的なき導入他社が使っているからと全社でツールを契約し、使い道は各部署に任せる対象業務を1つに絞り、減らしたい作業時間や件数を決めてから試す
2. 出力の検証不足AIが作った文章や数値をそのまま社外向け資料に使う一次情報との照合、社外に出す前の人による確認を手順に組み込む
3. 一部の人だけの活用詳しい担当者が1人で推進し、その人の異動で活用が止まる基本的な使い方と注意点を研修にまとめ、部門を問わず学べるようにする
4. 効果の測り忘れ導入前の作業時間を記録しておらず、効果を「便利になった」としか説明できない導入前に基準値を記録し、同じ方法で導入後と比べる

4つのうち、後から取り戻すのが最も難しいのが3つ目の「一部の人だけの活用」です。ツールの設定やルールは文書にすれば残せますが、使いこなすための理解は、人に蓄積されます。推進役の担当者に知識が集中していると、異動や退職のタイミングで活用が止まり、せっかくの導入が振り出しに戻ってしまいます。

これを防ぐには、AIの基本的な仕組み、入力してはいけない情報、出力を確かめる方法といった共通の知識を、研修として仕組み化しておくことが有効です。集合研修は日程調整の負担が大きく、受講できない人が出やすいため、自分のペースで繰り返し学べて受講状況も把握できるeラーニングと相性がよい分野です。研修内容を選ぶときのよりどころには、経済産業省の「デジタルスキル標準」(2026年4月にバージョン2.0を公表)があります。

社内で使い方の型を研修コースにまとめたい場合の一例が、Smart Boarding(株式会社FCE)です。研修・OJT・eラーニングを1つのシステムで運用でき、自社の資料や動画と、用意された動画を組み合わせたオリジナルの研修コースを作れます。OJTで教えていた内容を学習プログラムにしておけば、特定の指導者に頼らず、いつでも何度でも学習と復習ができます。学習管理(LMS)機能で受講者ごとの進捗や理解度を確認でき、小テストも作成できます。一方で、電話やメール相談、教育プログラム設計といった手厚いサポートを受けられるのは「充実サポートプラン」のみです。AIに関する教材が含まれるかどうかは、資料で確認してください。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

株式会社FCE

Smart Boarding

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出典:www.smartboarding.net

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出典:Smart Boarding

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今、eラーニングシステムを導入する企業が増えています。特に「LearnO」と「Smart Boarding」は2大人気サービスで、評価を見てもどちらが本当に自社に合うサービスなのか悩んでいる方も少なくありません。本記事では、徹底比較したビジコン編集部が目的別・使い方別に違いを明確に解説します。

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Smart Boarding 導入事例(株式会社ミツハシ) 出典:導入事例ページ
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AI活用の3つの注意点|目的・戦略整合・役割定義

AI活用を進めるうえでは、目的を明確にすること、経営戦略と整合させること、社内の役割と責任を定めることの3点に注意が必要です。経済産業省と総務省が公表している「AI事業者ガイドライン」(第1.2版)は、AIを開発する事業者だけでなく、業務でAIを利用する事業者も対象にしており、AIを使う目的の明確化や、リスクに応じた体制づくり(AIガバナンス)の考え方が示されています。ガイドラインは法的な義務を課すものではありませんが、社内ルールを作るときの参考になります。

注意点1. 目的を明確にする

何のためにAIを使うのかが曖昧なままだと、評価の物差しが決まらず、続けるべきかやめるべきかの判断ができません。業務改善なら「どの作業の時間を何割減らすか」、価値創出なら「どの顧客にどんな新しい体験を届けるか」まで言葉にしておきます。目的は1つに絞るほど、効果の検証がしやすくなります。

注意点2. 経営戦略と整合させる

部署ごとにばらばらにAIツールを導入すると、データが部署内に閉じてしまい、全社で活用できない状態(サイロ化)が起きやすくなります。AI活用を経営のテーマとして位置づけ、会社として重視する課題とつながった領域から着手すると、予算や人員の確保もしやすくなります。DX全体の進め方はDX化の進め方|6ステップとロードマップの作り方、よくある失敗5つも参考にしてください。

注意点3. 役割と責任を定める

AIの出力をもとに判断した結果について、最終的な責任は人と組織にあります。誰が利用ルールを決めるのか、誰が出力を確認するのか、問題が起きたときに誰が対応するのかを、あらかじめ決めておくことが大切です。白書でも、リスク対策の取組として「全社的な指針やガイドラインを整備している」と答えた日本企業が41.1%と、取組の中で最も高い回答でした。指針の整備は、AI活用の出発点といえます。とくに、個人情報や取引先の機密情報を入力してよいかどうかは、個人情報保護法や契約上の守秘義務にかかわるため、社内ルールとして明文化し、全員に周知しておく必要があります。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的な助言ではありません。個別の判断が必要な場合は、専門家や所管の行政機関に確認してください。

AI活用のリスクと対策|情報漏えい・誤り・著作権

AI活用のリスクは、情報漏えい、出力の誤り、著作権などの権利侵害の3つに分けられ、入力ルールの明文化と、出力を人が確認する手順が基本の対策になります。

情報漏えい|入力してはいけない情報

個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(令和5年6月2日)で、個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。また、本人の同意なく個人データを入力し、応答の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性があるとして、サービス提供事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を確認するよう注意喚起しています。

社員が個人の判断でAIを業務に使う「シャドーAI」にも注意が必要です。白書は、シャドーAIは入力した機密情報の流出等のリスクをはらむとしています。企業内に、情報漏えい対策等を施した生成AIの活用環境を整え、あわせて利用時のルールやガイドラインを整備・周知することで、生成AIを安全に使えるようになると整理しています。

出力の誤り|ハルシネーションへの備え

生成AIの回答には、事実と異なる内容がもっともらしく含まれることがあります(ハルシネーション)。AIの出力を社外への提案や社内の決定に使う場合は、事実・数字・制度について、誰がどの資料で確認したかを残す手順を業務フローに組み込んでおくと、後から判断の根拠をたどれます。

著作権|生成物を社外に出す前の確認

文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日取りまとめ)で、生成AIと著作権の関係を整理しています。著作権法は、アイデアそのものではなく創作的な表現を保護する考え方に立っており、AIが出力した文章や画像が既存の著作物に似ている場合に著作権侵害となるかどうかは、類似性や依拠性が論点になります。社外に出す前に、特定の作品の表現に似ていないかを確認してください。なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談してください。

ルールは決めるだけでなく、全員が同じ基準で学ぶ

ここまでの3点は、ルールを文書にしても、読まれなければ守られません。個人情報の扱い、情報セキュリティ、著作権といった内容を、全員が同じ基準で学ぶ場があると、確認の根拠も残せます。コンプライアンス研修に特化したeラーニングであるOneComplianceは、先ほど紹介したとおり、個人情報保護法・情報セキュリティ・著作権(AIに関する著作権を含む)のコンテンツを用意しており、ルールを研修として全員に届ける手段の1つになります。

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AI活用の進め方|導入の5ステップ

AI活用は、課題の明確化、データの確認、導入方法の検討、小さな試行(PoC)、本格導入と定着という5つのステップで段階的に進めるのが基本です。ここまでの失敗原因と注意点を、実際に着手する順番に並べ直すと次のようになります。

ステップやること次に進む目安
1. 課題を明確にする業務改善と価値創出のどちらを狙うかを決め、対象業務と減らしたい作業を1文で書く経営層と現場で課題の認識がそろっている
2. データと現状を確認する使うデータの所在・形式を洗い出し、導入前の作業時間や件数を記録する比較に使う基準値がそろっている
3. 導入方法を検討する既存のツールやルール変更で足りないかを確かめたうえで、汎用の生成AIサービス、業務特化型のツール、自社開発、業務ごと外部に任せる方法などから選ぶ入力してよい情報と確認担当者が決まっている
4. 小さく試す(PoC)1つの業務・少人数で試し、事前に決めた指標で効果と課題を確認する指標の改善と、本格運用に必要な環境・人員の見積もりが出ている
5. 本格導入と定着対象部署を広げ、研修と社内ルールを整え、利用状況を定期的に確認する一部の担当者に頼らず、部署を問わず使われている

5つのステップのうち、1と2は失敗原因の「問題の取り違え」と「データの不足」に、3は「課題より技術を優先する」に、4と5は「基盤への投資不足」と「一部の人だけの活用」にそれぞれ対応しています。途中で目安を満たせないときは、無理に次へ進まず前のステップに戻るほうが、結果的に早く定着します。また、AIの機能や提供されるサービスは変化が速いため、本格導入の後も利用ルールやツールの選択を定期的に見直す前提で運用することが大切です。

白書が整理する効果創出のステップも、同じ流れです。まず汎用的な生成AIを、社員が安全に個人作業で使える環境を整えます。そのうえで、人間とAIの協業のあり方を検討し、業務プロセス全体をAI前提で見直していく、という段階的な進め方です。上の表では、ステップ4と5がこの浸透の段階にあたります。

導入方法の選択肢|ツール・自社開発・AI BPO

ステップ3の導入方法は、大きく3つに分けられます。1つ目は、汎用の生成AIサービスや業務特化型のツールを契約して、自社で使う方法です。小さく始めやすい一方で、使いこなす人を育てる必要があります。2つ目は、自社でAIを開発する方法で、データと人材への投資が前提になります。どのAIを選ぶかは、AIおすすめの選び方|用途別マップと5つの判断軸で整理しています。

3つ目が、AI BPOです。BPOは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略で、業務プロセスの一部を外部の専門事業者に任せる手法を指します。AI BPOは、そのうちAI技術を活用する形態です(パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社の解説を参照)。自社でAIツールを運用する負担を抑えられる反面、機密情報を委託先と共有するため、情報セキュリティ対策の確認が欠かせません。また、AIがハルシネーションを起こすおそれがあるため、社員がAIの仕組みを理解し、出力を正しく判断できるようにする教育も求められます。外部に任せる場合も、社内の理解を高める取り組みは不要になりません。

AI活用の進め方、社内の準備状況をセルフチェック

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AI活用の効果をどう確認するか

AI活用の効果は、業務改善と価値創出で指標を分け、導入前に記録した基準値と比べて確認するのが基本です。1つの指標だけで判断すると実際の効果を見誤ることがあるため、複数の指標を組み合わせて評価します。

確認する対象指標の例確認のタイミング
業務改善の効果1件あたりの作業時間、処理件数、ミスや手戻りの件数導入前と、導入後1から3か月
価値創出の効果顧客満足度、新サービスの利用者数、売上への貢献半年から1年の中長期
社内定着の状況利用者数と部署の広がり、研修の受講率、ルール違反や問い合わせの件数毎月

小さく試す段階(PoC:概念実証)では、対象業務を1つに絞り、「作業時間がどれだけ減ったか」「誤りがどれだけ減ったか」という数値を事前に決めておきます。指標を決めずに試すと、「なんとなく便利だった」という印象論で終わり、本格展開の判断材料になりません。白書で導入効果を実感する割合が最も高かった「議事録・メール作成補助」のような定型の補助業務は、導入前後の作業時間を比べやすく、効果を確かめる最初の対象に向いています。

見落とされやすいのが、表の3段目にある「社内定着の状況」です。業務改善の数値がよくても、実際に使っているのが一部の部署だけであれば、全社で見た効果は限られます。利用者の広がりと研修の受講状況をあわせて追うことで、「どの部署で理解が進んでいないのか」「どこでルール違反が起きやすいのか」が分かり、次に打つ手を決めやすくなります。

研修のあとに、理解度を確認テストで確かめたい場合の一例が、SAKU-SAKU Testing(株式会社イー・コミュニケーションズ)です。CBTの技術を活かしたテスト機能が中心のeラーニングプラットフォームで、動画やスライドの学習と確認テストを組み合わせられます。既存の設問と自社のオリジナル設問を1つのテストにまとめられ、受講状況や結果はリアルタイムで集計されて、データ出力もできます。コンプライアンス・ハラスメント・情報セキュリティなどの研修コンテンツも用意されていますが、AIに関する教材が含まれるかどうかは、資料で確認してください。事務局運営やカスタマーデスクを利用する場合はオプション扱いです。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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出典:www.e-coms.co.jp

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よくある質問(FAQ)

Q1. AIの身近な活用例にはどんなものがありますか?

A. 業務では、議事録やメールの作成補助、文書の要約・翻訳、社内の問い合わせへの回答、問い合わせの一次対応などが代表的です。総務省の「令和8年版 情報通信白書」では、「議事録・メール作成補助」で生成AIを活用していると回答した割合が約7割で、業務類型の中で最も高くなっています。日常生活では、スマートフォンの音声入力や写真の自動分類などにもAIが使われています。

Q2. AIを使わないほうがよいのは、どんな場面ですか?

A. 個人情報や機密情報など、入力が認められていない情報を扱う業務、誤りの影響が大きいのに人が内容を確かめられない判断、目的が決まらないままAIを使うこと自体が目的になっている場面です。「使わない」と決めるのではなく、入力ルールや確認の手順を整えてから使うかどうかを検討すると安全です。

Q3. AI活用は「業務改善」と「価値創出」のどちらから始めるべきですか?

A. 多くの企業は、効果を確かめやすい業務改善から始め、社内にノウハウとデータがたまった段階で価値創出に進む段階的な進め方をとっています。導入時に、業務改善で空いた時間を何に使うかも決めておくと、2つの軸を連動させやすくなります。

Q4. AIプロジェクトはなぜ失敗しやすいのですか?

A. RAND Corporationの報告書は、解くべき問題の取り違え、データの不足、課題より技術を優先すること、基盤への投資不足、AIに向かない課題の選択の5つを根本原因に挙げています。多くはAIの性能ではなく組織側の判断によるもので、導入前の確認で防げます。

Q5. 業務でAIを使うとき、入力してはいけない情報は何ですか?

A. 顧客や従業員の個人情報、取引先との契約で守秘義務のある情報、未公表の数値などの機密情報は、原則として入力しないようにします。個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認するよう注意喚起しています。入力してよい範囲を社内ルールとして明文化し、全員に周知しておくことが大切です。

Q6. AI活用を一部の部署だけでなく全社に広げるにはどうすればよいですか?

A. AIの基本的な仕組み、入力してはいけない情報、出力の確認方法といった共通の知識を研修として整理し、部門を問わず学べるようにすることが有効です。あわせて、うまくいった活用例を集めて社内に共有したり、定期的なワークショップを開いたりすると、浸透しやすくなります。自分のペースで学べて受講状況も把握できるeラーニングは、異動や新入社員への展開にも使えます。

まとめ|AI活用を失敗させないために今日からできる4つのこと

AI活用は、業務改善と価値創出の2軸で目的を整理し、組織側の準備を整えてから進めることで、失敗のリスクを大きく下げられます。今日から着手できることは次の4つです。

  1. 目的を1文で決める:業務改善と価値創出のどちらを狙い、どの作業をどれだけ減らしたいかを言葉にする。
  2. 目的・データ・人の3点を確認する:答えられない項目があれば、ツール選びより先にそこを埋める。
  3. 導入前の基準値を記録する:作業時間や件数を記録し、導入後と同じ方法で比べる。
  4. 社内で学べる仕組みを検討する:AIの基本と入力ルールを研修にまとめる方法として、eラーニング3サービスの資料を取り寄せて比べる。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的な助言ではありません。AIの利用ルールや個人情報の取り扱いについて個別の判断が必要な場合は、専門家や所管の行政機関に確認してください。

参考文献

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