2025年の崖とは|課題・問題点・対策方法をわかりやすく解説

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  • 「2025年の崖」とは、経済産業省が提示している日本の未来に対する警鐘である
  • 2025年の崖の課題を放置すると、世界の市場でデジタル競争に負ける可能性がある
  • 2025年の崖の問題に対応するためには、システムの刷新や人材育成が必要になる

働き方改革にも影響を及ぼすと言われている「2025年の崖」問題。本記事では、2025年の崖について理解・対応していくために、2025年の崖が示す課題や放置した場合の問題を解説します。DX促進を阻む要因と、対応策についても紹介します。

目次

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  1. 2025年の崖とは
  2. DXとは
  3. 「2025年の崖」が示す現状の課題
  4. 課題を放置した場合に考えられる問題点
  5. DX促進を阻む要因
  6. 「2025年の崖」の対応策
  7. まとめ

2025年の崖とは

2018年の経済産業省によるDXレポートでは、「2025年の崖」と呼ばれる問題が発生すると予測されています。2025年の崖とは、DXレポートによると、企業のITシステムが老朽化・肥大化・複雑化・ブラックボックス化した「レガシーシステム」が原因とされています。

DXが実現できないだけでなく、世界規模でのデジタル競争に遅れを取り、日本経済にも影響を及ぼす可能性があるとされています。その影響は、2025年以降、年間で最大12兆円という現在の約3倍の経済損失が生じる可能性があると予測されています。

2025年の崖と呼ばれる理由としては、2025年に超高齢化社会を迎えることや、大手のERPのサポート終了時期が2025年前後に集中していることが挙げられるためです。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省

2025年の崖と2025年問題の違い

「2025年の崖」と似て非なる言葉に、「2025年問題」があります。これは、2025年を目安に超高齢化社会になることによるさまざまな影響を指します。例えば、医療費や介護費の増加、社会保険料の負担の増大、雇用保険措置にかかる負担などが挙げられます。

2025年の崖とは異なるものですが、どちらも2025年がポイントとなり、併せて向き合っていかなければならない問題です。

2025年の崖が及ぼす働き方改革への影響

働き方改革とは、「働く人々が個々の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会」を実現するための改革のことです。2025年の崖は、この働き方改革にも影響を及ぼすと危惧されています。

2025年の崖への対応ができないでいると、従業員は突発的なシステムへの対応に追われ、労働環境が悪化したり、人材不足によりさらに従業員への業務負担が増えたりするリスクがあります。そのため、働き方改革への実現が遠のく可能性も考えられます。

このような問題を引き起こさないためにも、レガシーシステムの刷新をいち早く行うことが重要です。

DXとは

DXとは、「Digital Transformation (デジタルトランスフォーメーション)」の略で、日本語では「デジタル技術による変革」を指します。具体的には、進化したIT技術や生産性の向上、新たな価値や体験を提供するための変革へ向けての概念です。

そのため、企業はデジタル技術を積極的に導入し、データを中心とした顧客への提供価値や品質向上へ向けての変革など、ビジネスモデルそのものの変革が求められます。さらに、組織や企業文化、昔から根付く風土も改革して、競合の優位を確率することも意味します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは|課題や手順を解説

DXは、デジタル技術によりビジネススタイルを変えていくものです。日本でも浸透し始めてきていますが、推進の遅れの課題が残っています。本記事では、DXが求められる理由と、DXができることやDXを支えるデジタル技術の他、DX推進を成功させるポイントを解説します。

DXとデジタル化との違い

DXとデジタル化の大きな違いは目的にあります。DXとは、デジタル技術とデータを利用してビジネスモデルを変革させ、人々に価値を提供することや、企業の価値を高めることが目的です。

一方のデジタル化は、従来のアナログシステムや、業務プロセスにデジタル技術やITを取り入れて効率化させることを目的としています。DXを実現するには、デジタル化だけではDXが思うように進まず失敗に終わり、ブラックボックスを生む要因となりかねません。

両者の違いを理解したうえで適切にDX推進をしていく必要があります。

「2025年の崖」が示す現状の課題

「2025年の崖」が示す現状の課題として、レガシーシステムの存在や最新技術に対応するための人材不足やコストの高騰などさまざまなリスクが挙げられます。また、急速に変化するIT市場にも敏感に対応していく必要があります。以下で課題について解説します。

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レガシーシステムの存在

レガシーシステムとは、時代にそぐわない古い技術で構築されたシステムを指します。特に、大企業では昔から使用し続けているメインフレームと呼ばれる大型コンピューターや、オフコンと呼ばれる小型のオフィスコンピューターが代表的です。

これらの基幹システムは、構築からすでに20年以上が経過しているものも多く、機動性の悪さや最新技術の採用がしにくいため、DX推進の妨げの原因にもなります。そのため、既存システムの刷新が求められています。

最新技術に対応できない

既存システムのハードウェアやOSの問題点を改善せずに放置していると、新しい技術を採用しようとしても、既存システムに取り入れることは不可能です。そのため、市場の変化に柔軟に対応するビジネスモデルの変更は難しくなります。

既存システムのままでは、デジタル競争に遅れを取る結果になりかねません。

人材不足・維持管理費の高騰

2025年には、IT人材不足の問題が深刻化することや、既存システムの維持管理費の高騰化が予測されており、IT予算の9割以上を占めると言われています。既存システムを維持するには、古いシステムや専門的な言語に精通したエンジニアが必要です。

しかし、そういった高いスキルを持つエンジニアは、2025年前後に定年で退職する割合が多いと言われています。そのため、既存システムの維持管理が厳しくなり、ブラックボックス化を招く要因となります。

エンジニアの不足により、保守運用にかかわる維持管理費も上がるため、メンテナンスできないシステムを抱える企業が増えるといったリスクが発生します。

リスクの増加

2025年には、多くの企業のシステムや業務を支えたSAPやWindows7などのシステムやアプリケーションのサポート期間が終了します。その後、そのままシステムを使い続けると、セキュリティリスクやシステムトラブルが高まる原因となり、大きな課題でもあります。

アプリケーションのサポートが終了すると、セキュリティホールがあっても、修正プログラムが提供されないことで、さまざまなセキュリティリスクにさらされます。基幹システムの入れ替えの検討によってそれらは解決しますが、コストが大きくかかります。

急速に変化するIT市場への対応

IT市場は、日々大きく変化を続けており、企業は柔軟にその変化のスピードに対応していく必要性を求められます。デジタル化のみならず、さまざまな場面でのIT導入は必須事項となりつつあります。

その流れは、今後さらに加速することが予測されており、新しいビジネスモデルへの変更も常に求められます。既存システムのままでは、最新技術を取り入れることができず、市場のIT競争に負ける結果を招くといったリスクも考えられます。

課題を放置した場合に考えられる問題点

課題を放置した場合のシナリオについては、経済産業省の「DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜」に記載されています。以下では、ユーザー企業・ベンダー企業に生じる問題について、それぞれ解説します。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~|経済産業省

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課題を放置した場合に考えられる問題点

  1. ユーザー企業に生じる問題
  2. ベンダー企業に生じる問題

ユーザー企業に生じる問題

ユーザー企業の場合、自社が課題を抱えていることに気づいていないケースがあり、課題を知らず知らずのうちに放置している可能性も少なくありません。メンテナンスを行わなくても日常的に問題なく使用できているうちは、レガシーシステムは潜在的問題と言えます。

その場合、ハードウェアやアプリケーションの維持が限界に達した時点で、大きな問題に気づくことになります。課題を解決するには、長い時間と莫大なコストが発生するうえ、導入の失敗などのリスクも考えられます。

そのため、根本的にシステムを刷新しても、メリットを感じられず経営自体を圧迫する結果になりかねません。

ベンダー企業に生じる問題

ベンダー企業の場合、上記で解説したような課題が潜在的問題であるユーザー企業は、自覚がないためレガシー問題を抱えているかどうかは判断がしにくいです。

REPにも記載がないため、改修を請け負ったベンダー企業は、レガシー問題に対しての内容は見積もりを行わないことになります。そのため、開発に着手してから課題を発見するといったリスクが生じます。

すでに開発が開始しているため、レガシー問題への対応をせざるを得ない状況になり、大赤字の案件となるため、訴訟へ発展する可能性も考えられます。レガシーシステムへの対応ができるエンジニア不足により、対応できるベンダーも少ないのが現状です。

また、ユーザー企業のシステム構築は、複数のベンダーの手によるものであるケースが多く、1つのベンダー企業がシステム仕様やデータを完全に取得することはできません。

したがって、複数のベンダー企業がかかわるシステム全体を把握するのは難しいといった問題も発生します。

DX促進を阻む要因

DXを推進する企業が増えているなかで、さまざまな要因でDX促進が阻まれています。既存システムが日常的に問題なく使用できており、経営者に危機感がない、課題に気付いていないケースもあり、潜在的問題となっているケースがあります。

また、DX促進には時間やコストがかかり、IT人材不足や、ユーザー企業とベンダー企業との関係問題などが、DXがうまく進まない要因となっています。

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既存システムがまだ使えてしまう

既存システムが日常的に問題なく使えている場合は、基幹システムを刷新することに抵抗を感じる企業が多くみられます。新たなシステムを導入した場合、業務内容も変更することになるため煩雑さを感じるためです。

新たなシステムを入れた場合、業務内容も変更することになるため煩雑さを感じるためです。現状で既存システムで効率よく業務が行えていると、DX促進が阻まれてしまいます。

経営者に危機感がない

DX促進が阻まれている要因のひとつに、経営者が危機感を持っていないということも挙げられます。ユーザー企業の多くは、ベンダー企業にIT業務を委託しているため、経営者自身はDXに対しての知識が身についていないケースも少なくありません。

また、新しいものを取り入れることに対し、保守的な考えを持っている経営者の場合、既存システムが現状で問題なく使えていることから、システムの刷新には消極的であるケースなどが要因として挙げられます。

コストと時間がかかる

経営状況の悪化が続くなかで、DX推進のためのコストをかけられない中小企業は少なくありません。基幹システムを刷新することは、大きなプロジェクトであるため、多くの時間を要します。

そのため、コストや時間のかかるDX促進の優先順位は低く、重要視されないため、ほかの業務に埋もれてしまうことがDX促進を阻む要因となっています。

IT人材不足

ユーザー企業の多くは、ベンダー企業にITに関わる業務をすべて委託していることが多く、ユーザー企業にはシステムに関するノウハウが蓄積されていません。そのため、ベンダー企業に頼らなくてはいけない現状となっています。

また、既存システムの開発に携わったITエンジニアは定年を迎え、退職する時期となっているため、ユーザー企業にITエンジニアが少ない状況となっています。これにより、DX促進も阻まれています。

ユーザ企業・ベンダー企業の関係

ユーザー企業とベンダー企業との関係性もDXを阻む要因とされています。上記でも解説したとおり、自社でシステム構築やメンテナンスをすべて行う企業は少ない傾向にあり、多くの企業はベンダー企業にITにかかわる業務を丸投げしているケースがほとんどです。

そのため、ユーザー企業はITにかかわる情報に乏しく、DXで得られるメリットを受け入れることに消極的です。ベンダー企業がDXを提案して、導入した場合は構築の工程内でトラブルが発生し手戻りなどがあった場合、開発費用が超過したり、納期が延びたりします。

こういったケースは、基幹システムの刷新目的をユーザー企業が明確化できないことが要因であることが考えられますが、費用の超過や納期の延長はベンダー企業の責任とされるケースもあります。そのため、ベンダー企業はDX提案に消極的になります。

「2025年の崖」の対応策

上記で解説したように、「2025年の崖」はさまざまな問題が重なり合うことで、DX推進の妨げになっています。それらを解決するには、DX推進にあたっての対応策が必要とされます。以下で具体的な対応策について解説します。

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DX推進ガイドラインを策定する

DXを推進させるには、DXガイドラインの策定をすることが望ましい施策です。DXを進めるためには、データの最大限活用するために、新しいデジタル技術を適用していかなければなりません。

そのためには、既存のシステムをDXに対応できるものに見直すことが求められます。また、DX実現には、実行プロセスや各部門の役割について理解し、業界や企業、個人のすべてがDXの捉え方に対し、統一した認識を持つ必要があります。

そこで、「DXシステムガイドライン」の策定がおすすめです。ガイドラインに沿って対応していくことでDXへの認識が統一され、DX促進の障害を回避することが期待できます。

DX推進指標を活用する

DX推進指標とは、企業の経営者や担当者がDX推進に向け、現状や課題に対する認識を共有し、自社のDX進行度の評価に利用できる指標です。これは、DXのマニュアルやガイドの役割も担います。

DX推進指標を活用することで、業界における自社の位置づけを把握し、次に向けて取り組むべきアクションの発見ができます。また、現状の課題や認識を全体で共有することにより、組織力が向上しDX推進の後押しになることが期待できます。

ITシステムを刷新する

「2025年の崖」への対応策として、もっとも重要視される事項がITシステムの刷新です。レガシーシステムがDX推進を阻むさまざまな要因を生み出していると考えられます。そのため、ITシステムをDXに対応できるものに刷新することが重要です。

しかし、ITシステムを刷新するには、コストや時間が大きくかかります。DX推進の目的を明確にし、ユーザー企業とベンダー企業が手戻りのないように認識を共有し、基幹システムの移行を進めることが大切です。

最新技術分野へ積極的に対応する

「2025年の崖」への対応策には、最新技術分野へ積極的に対応することも挙げられます。デジタル技術や新たな技術へ積極的に進出し、競争力を維持することで、日々変化するIT市場にも柔軟かつスピーディーに対応していくことが可能です。

そのため、DXも促進され、データの最大限活用が業務を効率化し、2025年の崖の要因にあるような課題が発生しにくい状態が維持できます。

DX人材を育成・確保する

「2025年の崖」の要因のひとつに、IT人材の不足が挙げられます。そのため、2025年の崖対応策には、DX人材の育成と確保が必要です。ユーザー企業とベンダー企業共に、それぞれ求められるスキルを明確にし、人材育成を行う必要性があります。

人材育成方法として、経済産業省と情報処理推進機構が推進している「ITスキル基準」や「情報処理技術者試験」を活用できます。DXに精通したスキルを持つ人材を育てて確保することで、DXも促進されるため2025年の崖対応策となります。

まとめ

DX推進が阻まれるだけでなく、日本経済にも大きな影響を及ぼす恐れがあると言われているのが「2025年の崖」と呼ばれる問題です。

企業のITシステムの老朽化などによるレガシーシステムの存在が大きな要因とされており、ITシステムの刷新に消極的な中小企業に多く見られる傾向があります。レガシーシステムを未だに稼働させている要因の一つに、経営者の認識や危機感の低さがあります。

2025年の崖へ対応していくためには、DXの目的を明確にし、ユーザー企業とベンダー企業が情報共有をして、積極的に最新技術へ取り組むことが求められます。DX推進に柔軟に対応できるように、2025年の崖問題に注目し、自社の現状と見比べてみましょう。

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