「SaaSの死」は本当か|主張・反論・事例を検証しAI時代のSaaSの行方を整理
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- 「SaaSの死」は消滅でなく役割と課金の見直し
- 課金・画面・内製の3つの主張を分けて検証
- AIに使わせる自社データの整備が最初の一歩
「SaaSの死」とは、生成AIやAIエージェントが業務をこなすようになり、人が画面を操作する前提のSaaSの価値や課金の仕組みが成り立たなくなる、という主張のことです。ただし、いま起きているのはSaaSの消滅というより、役割と収益モデルの見直しだという見方も有力で、「本当に死ぬのか」は論点ごとに答えが分かれます。本記事では、2024年12月の米マイクロソフトのナデラCEOの発言、Klarnaの事例、2026年のAnthropicのプラグイン公開と株価の動きを確かめたうえで、「死ぬ」側の主張と反論を並べて検証し、立場ごとの見方の違いと、AI時代に利用企業が整えておきたい自社データの考え方までを整理します。言葉の意味や契約・データ移行のリスクの点検は別記事で扱っているため、本記事は「本当か」の検証に絞ります。なお、本記事は株式投資の助言を目的としたものではありません。
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Q1. 「SaaSの死」で、いちばん確かめたいのは?
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「SaaSの死」は本当か|結論と4つの論点
「SaaSの死」は、現時点では「SaaSの消滅」ではなく「役割と課金の見直し」と見るのが妥当です。ただし論点によっては、「死ぬ」側の主張が当たっている部分もあります。
「死ぬ」側の主張は、大きく4つの論点に分けられます。論点ごとに見ると、どこまでが現実的でどこからが言い過ぎかが見えてきます。
| 論点 | 「死ぬ」側の主張 | 反論・慎重な見方 | 本記事の整理 |
|---|---|---|---|
| 1. ID課金(シート課金) | AIが業務を担うと操作する人が減り、人数課金が成り立たなくなる | 従量課金や成果報酬型との併用に移る可能性はあるが、一斉に切り替わるとは限らない | 課金の見直しは現実的な論点 |
| 2. 画面(UI)の価値 | SaaSは画面を貸しているだけで、AIがAPIを直接使えば不要になる | 価値は画面の裏にあるデータ、業務ルール、権限管理、操作ログにある | 画面だけが価値のSaaSは厳しく、データ基盤型は残りやすい |
| 3. 内製(自作) | AIでコードを書けば、自社で業務システムを作れる | 作った後の保守、セキュリティ、障害対応、法改正への追随が残る | 一部は成り立つが、全面的な置き換えは負担が重い |
| 4. データ基盤 | AIエージェントが複数のデータベースを横断して処理する | AIが正しく動くには、整ったデータと権限管理という土台が先に必要 | 論点の核心。自社データの整備が問われる |
4つの論点のうち、利用企業が自分で手を打てるのは4つ目のデータです。AIエージェントがどれほど進化しても、参照する顧客や取引先の情報が名刺の束や個人のExcelに散らばっていれば、AIはその一部しか使えません。営業や取引先の管理でいえば、名刺は担当者情報の起点であり、AIに使わせる前に整えておきたいデータの1つです。
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誰がいつ言い出したのか|「SaaSの死」の発端を時系列で確認する
「SaaSの死」は、2024年ごろから一部の技術者やベンチャー投資家が使い始め、2024年12月のナデラCEOの発言で注目が高まった言葉です。特定の1人が言い出したというより、複数の発言と出来事が重なって広まりました。
| 時期 | 出来事 | 確認できる出典 |
|---|---|---|
| 2024年ごろ | 一部の技術者やベンチャー投資家が、ブログやSNSで「生成AIでSaaSのビジネスモデルが崩れる」という見解を示す | 日経クロステックの解説 |
| 2024年夏 | Klarnaが、Salesforceなど大手SaaSの利用停止を明らかにする | 日経クロステック、CX Today |
| 2024年12月 | ナデラCEOがインタビューで、伝統的なビジネスアプリケーションはAIエージェント時代に崩壊しうると述べる | 日経クロステックの解説 |
| 2026年1月30日 | Anthropicが、Claude Cowork向けに営業・法務・財務などの職種別プラグイン11種類を公開する | Anthropic(Claude)の公式ブログ |
| 2026年初頭 | 米国のSaaS関連株が大きく下落し、「SaaSの死」という言葉が市場で広まる | 日経クロステック Active、日経ビジネス |
ナデラCEOの発言|何が「崩壊」すると言ったのか
2024年12月のナデラCEOの発言が注目されたのは、SaaSの仕組みを構造から説明したためです。日経クロステックによると、同氏は多くのビジネスアプリケーションを、データベースの生成・読み取り・更新・削除(CRUD)にビジネスロジックを載せたものと捉え、そのロジックをAIエージェントが担えば、エージェントが複数のデータベースを横断して処理する形になると述べました。この場合、個別のSaaSを画面ごとに使い分ける必然性が薄れる、というのが「崩壊」の意味するところです。
この発言が指したのは、画面とロジックの層がAIエージェントに移る可能性でした。データを保管して正しく処理する基盤の役割をどう見るかが、その後に見解が分かれる出発点になります。
Klarnaの事例|AIで全面的に置き換えたのか
主張に現実味を与えたのが、スウェーデンの金融サービス企業Klarnaの事例です。2024年夏、同社のCEOがSalesforceなど大手SaaSの利用停止に触れ、「AIでSaaSを置き換える」と受け止められて広く報じられました。
ただし、その後の報道では実態がやや違うことがわかります。CX Todayは2024年12月、Klarnaに直接確認した内容として、同社がWorkdayから別のSaaSであるDeelへ移行し、SalesforceのCRMアプリは、別のツールと社内で作ったソリューションの組み合わせに切り替えたと伝えました。Klarnaの広報担当者は、AIと標準化・簡素化を組み合わせた複数の社内施策でSaaSの利用を減らしていると説明し、元の発言は誤って解釈されたとしています。つまりこの事例は「AIがSaaSを丸ごと置き換えた」というより、「SaaSの乗り換え、機能の統合、AIの重ね合わせ」と読むほうが実態に近いといえます。
株価の下落|期待と実際の利用は別物
2026年に入ると、議論は株式市場にも波及しました。Anthropicは2026年1月30日、Claude Cowork向けに、営業・法務・財務分析など職種別に使えるオープンソースのプラグイン11種類を公開しました。前後して米国のSaaS関連株が大きく売られ、日経クロステック Activeは、2026年初頭に「SaaSの死」という言葉が市場で広まったと紹介しています。日経ビジネスの記事では、セールスフォースの株価が年初来で最大28%下落したことにも触れられています。
市場が警戒したのは、AIエージェントが業務ソフトの画面を介さずに仕事をこなすことで、SaaSの収益モデルが変わるという見通しでした。ただし株価は将来への期待や不安を反映するものであり、SaaSという仕組みが実際に使われなくなったことを示すわけではありません。株価や財務指標の見方はSaaS銘柄の見方を解説した記事で整理しています。利用企業にとっては、株価の上下よりも、自社が使うサービスの機能や契約条件が今後どう変わるかのほうが実務に直結します。
「死ぬ」側の3つの主張を検証する|課金・画面・内製
3つの主張のうち、課金モデルの見直しは議論が進む現実的な論点です。一方、画面の不要論と内製論は、データ・保守・法令対応を考えると言い過ぎの面があります。
主張1|AIが人の代わりに働けば、ID課金は成り立たなくなる
多くのSaaSは、利用者1人あたり月額いくらというID課金(シート課金)を採ってきました。AIエージェントが人の代わりに業務をこなすようになると、ログインする人数が減り、人数に比例した収益が伸びにくくなります。そのためSaaSベンダーの間では、ID課金に加えて、AIの利用量に応じた従量課金や、処理した件数・成果に応じた課金を組み合わせる動きが議論されています。この主張は、3つの中ではもっとも現実に近いといえます。
| 課金モデル | 利用企業にとっての利点 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| ID課金(シート課金) | 費用が人数で決まり、予算を立てやすい | 使わない人の分も費用が発生する。AI活用で利用者が減ると割高に感じやすい |
| 従量課金 | 使った分だけの支払いで、小さく始めやすい | AIの利用が増えると費用が膨らみやすく、月ごとの変動が大きい |
| 成果報酬型 | 成果が出た分だけ支払うため、投資対効果が見えやすい | 「成果」の定義や計測方法を、契約で明確にしておく必要がある |
利用企業は、契約更新のタイミングで、AI機能が別料金のオプションになっていないか、AIの利用回数に上限や追加料金がないかを確認します。契約書でどの条項を見るべきかは、SaaSの死が利用者に及ぼす3つのリスクを扱った記事が詳しく、本記事は「本当に死ぬのか」の検証、同記事は「利用者の契約と移行の点検」という役割の違いがあります。具体的な料金はサービスごとに異なり、変更される場合もあるため、最新の公式情報や見積書で確認してください。
主張2|SaaSは「画面のレンタル」にすぎず、AIがAPIを使えば不要になる
2つ目は、SaaSの本質は画面(UI)で、AIエージェントがAPI(ソフトウェア同士をつなぐ窓口)から直接データを操作できるなら、画面の使いやすさに料金を払う意味は薄れる、という主張です。ナデラCEOのCRUD論と同じ構造の議論です。
一方で、SaaSの価値は画面だけにあるわけではありません。画面の裏には、蓄積されたデータ、権限管理、操作ログ、法改正に追随する業務ルールがあり、AIエージェントが安全に動くにはそれらが土台として要ります。日経クロステックが、SaaSはAIに代替されるのではなくAIの基盤になるとの見方を紹介しているのも、この点です。画面だけを提供しているSaaSは影響を受けやすく、データと業務ルールを担うSaaSは基盤として残りやすい、と整理できます。
主張3|AIで自社に作れるなら、SaaSを買う必要はない
3つ目は内製論です。RBCブルーベイは2026年2月の記事で、企業が社内でエージェントを構築できるようになり、SaaSベンダーへの依存を減らせる可能性を挙げています。AIでプログラムを書くコストが下がれば、「買うより作る」が選択肢に入るという見方です。
ただし、作ることと、作ったものを動かし続けることは別です。運用が始まれば、セキュリティ対策、障害対応、法改正への追随、担当者が退職したあとの引き継ぎが必要になります。マイナビニュースTECH+に掲載されたServiceNow Japan提供のPR記事は、AIエージェントが手順どおりには動いても、業務の周辺事情を知らないと思わぬ結果を招くこと、業務が複数の部門にまたがるため単一領域に特化したAIでは対応しにくいことを課題として挙げています。大規模な技術組織を持たない企業ほど、内製の負担は重くなります。
懐疑的な見方の根拠|データ・法令・業務ルール・運用
SaaSが近い将来に一斉になくなると考える根拠は乏しく、「消滅」ではなく「役割の変化」と捉える見方が広がっています。その主な根拠は次の4つです。
| 論点 | 「SaaSの死」を唱える側 | 懐疑的な側 |
|---|---|---|
| データの信頼性 | AIエージェントが複数のデータベースを直接読み書きすればよい | 会計・人事・顧客データは正確性と一貫性が求められ、検証済みの記録基盤が必要 |
| 法令・監査対応 | ルールをAIに教え込めば対応できる | 法改正への追随や監査証跡の保持はベンダーが継続して担っており、自前で置き換える負担は大きい |
| 業務知識の蓄積 | 業務ロジックはAIが生成できる | SaaSには多数の企業の運用で磨かれた業務の型が詰まっており、簡単には再現できない |
| 運用・保守の負担 | AIで開発が省力化され、自社構築のほうが安くなる | 作った後のセキュリティ対策・障害対応・改修は残り続け、中小企業ほど負担が重い |
SaaSベンダー側も、この立場を明確にしています。日本経済新聞(日経ビジネス)は2026年4月、セールスフォース・ジャパンの小出伸一会長兼社長への取材をもとに、「AIは我々を代替できない」とする同社の見方を報じました。AIエージェントが正しく動くには、正確な顧客データ、権限管理、業務フローといった土台が必要で、それを担ってきたのがSaaSだという考え方です。
置き換えが成り立つ条件を整理する(本記事の整理)
「SaaSが死ぬか」を問うより、「自社のどの業務なら、SaaSをAIで置き換えられるか」を問うほうが、実務には役立ちます。ここまでの主張と反論から、置き換えが成り立つ条件を本記事なりに4つにまとめました。複数の記事や発言を読み比べた整理であり、調査にもとづく統計ではありません。
| 条件 | 確認すること | 満たさない場合に起きやすいこと |
|---|---|---|
| データがAPIで取り出せる | データの保管先が1か所に整理され、他のシステムから呼び出せるか | AIが参照できるのは一部のデータだけになり、判断が偏る |
| 業務ルールが文書になっている | 担当者の頭の中にある例外処理が、手順書として残っているか | AIが手順どおりに動いても、周辺事情を知らずに誤った処理をする |
| 誤りの影響が小さい、または検証できる | AIの出力を人が確認する工程と、操作ログを残す仕組みがあるか | 誤りに気づくのが遅れ、会計や顧客対応に影響が出る |
| 作った後を担う人がいる | 保守・セキュリティ・法改正対応を続ける担当と予算があるか | 担当者の退職や法改正で、運用が止まる |
この4条件を見ると、最初につまずきやすいのは、データがAPIで取り出せる状態になっているかどうかです。条件の1つ目は、SaaSを使い続ける場合にも、AIに任せる場合にも関わってきます。SaaSの業種別の分類や収益の仕組みは、SaaS業界の分類や収益構造を解説した記事も参考になります。
立場で見方はこう分かれる|資産運用・ベンダー・AI新興企業・メディア
「SaaSの死」に対する見方は、投資家、SaaSベンダー、AI新興企業、メディアで異なります。誰がどの立場で語っているかを見分けると、見出しだけの印象に振り回されにくくなります。
| 立場 | 語られている見方 | 出典 |
|---|---|---|
| 資産運用会社(RBCブルーベイ) | 企業が内製エージェントを作れるようになりSaaS依存を減らせる、長期には新しいAIベースの製品に置き換わる可能性がある。一方で、AIはSaaSを置き換えるのではなく統合するという見方もある | RBCブルーベイ「SaaSの難題」(2026年2月) |
| SaaSベンダー(セールスフォース・ジャパン) | 「AIは我々を代替できない」とする立場 | 日本経済新聞(日経ビジネス、2026年4月) |
| AI新興企業(DevRev) | AIがSaaS市場を置き換えていくと語る。当面のSaaSはデータの保管場所として対話型AIと連携し、その後AIがSaaSの機能を吸収していくという見立て | @IT(2026年3月) |
| IT専門メディア | SaaSは人が操作するツールから、AIに呼び出される機能部品へ移りつつある、または代替ではなくAIの基盤になるという見方 | 日経クロステック Active、日経クロステック |
立場は違っても、重なる部分があります。どの立場の見方でも、人が画面を操作する比重は下がり、データとAPI連携、権限管理の重要性が増すという方向は共通しています。違いが出るのは、SaaSが「AIに置き換えられる側」になるのか、「AIが使う基盤」になるのか、そしてその変化が何年かけて進むのかという点です。語り手が投資家なのかベンダーなのか、AIの提供側なのかを確認してから読むと、主張の強さを割り引いて受け止められます。SaaSベンダーのビジネスモデルや業界の見取り図は、SaaS企業のビジネスモデルや業界マップを解説した記事が参考になります。
SaaSはどう変わるのか|操作の主体・データとAPI・AIの内蔵
SaaSはこれから、「人が画面を操作するためのツール」から「AIエージェントが業務を実行するための基盤」へ重心を移していくと考えられます。利用企業が見ておきたい変化は次の3つです。
1. 操作の主体が人からAIエージェントへ
これまでのSaaSは、人がログインしてボタンを押し、データを入力する前提で設計されてきました。今後は、AIエージェントがAPI経由でSaaSを呼び出し、データの登録や更新、レポートの作成までを代行する場面が増えていきます。人の役割は、日々の入力作業から、AIの提案を確認して承認する役割へ移っていきます。
2. 画面よりデータとAPIの質が問われる
AIエージェントにとって重要なのは、画面の見た目よりも、データが整理されているか、APIが公開されて安定して使えるか、権限管理や操作ログがきちんと残るかです。SaaSを選ぶ基準も、「使いやすい画面か」に加えて「AIから安全に呼び出せるか」が重視されるようになります。
3. SaaS自身がAIエージェントを内蔵する
外部のAIに操作されるだけでなく、SaaS自身がAIエージェントを内蔵する動きも進んでいます。商談記録からの要点抽出、次のアクションの提案、問い合わせ回答案の作成などを、製品の中のAIが担います。SaaSベンダーにとっては、蓄積してきた業務データと業務知識を活かしてAIの精度を高められることが、汎用AIに対する強みになります。
利用企業が契約更新やサービス選定のときに確認しておきたいのは、次の5点です。
- ベンダーがAI機能の提供方針やロードマップを公開しているか
- APIが公開され、他のシステムとデータをやり取りできるか
- 権限管理と操作ログが残り、AIが操作した履歴も確認できるか
- AI機能が別料金や利用回数の上限つきになっていないか
- 解約したときにデータを取り出せる形式と期間が決まっているか
日本企業が今できること|AIに使わせる自社データを整える
AI時代に利用企業が最初に整えるべきなのは、AIを使うこと以前に、AIが参照できる自社データを1か所に集めて、正確に保つことです。
日本では、「SaaSの死」を心配する以前に、AI活用の準備を進めている段階の企業が少なくありません。総務省の「令和8年版 情報通信白書」によると、生成AIの活用方針について「積極的に活用する方針」または「活用する領域を限定して利用する方針」と答えた企業の割合は、2025年度の調査で日本が68.9%(前年度は49.7%)でした。企業規模別では大企業が74.0%、中小企業が58.1%で、中小企業の上昇が特に大きい一方、調査した他の3か国(米国、ドイツ、中国)と比べると日本は低い結果です。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX動向2025」も、日米独の比較から、日本企業の取り組みを「内向き・部分最適」から「外向き・全体最適」へ移す必要があるとしています。
こうした状況を踏まえると、日本企業にとっての現実的な課題は、SaaSを捨ててAIで自前のシステムを作ることではなく、業務データを集約し、その上でAIを活用できる状態を整えることだといえます。SaaSやAIの前に、データそのものの置き場所と更新の仕組みを決めておく必要があります。企業のタイプと規模によって受け止め方は異なります。
企業規模による受け止め方の違い
| 企業規模 | 現実的な受け止め方 | 当面の優先事項 |
|---|---|---|
| 小規模事業者・中小企業 | 自前でAIシステムを構築する体力は限られ、SaaSに組み込まれたAIを使うのが近道 | 紙やExcelに散らばった情報をSaaSに集約し、AI機能を試す |
| 中堅企業 | 複数のSaaSを使い分けており、データ連携の設計が課題になりやすい | SaaS間のデータ連携とAPIの活用状況を棚卸しする |
| 大企業 | 一部業務でAIエージェントによる置き換えを検討する余地がある | 自社構築とSaaS活用の範囲を切り分け、運用負担も含めて比較する |
よくある受け止め方の失敗
| 失敗パターン | 起きやすい問題 | より良い対応 |
|---|---|---|
| 「SaaSは終わる」と考えて導入を先送りする | データが紙やExcelに散らばったままで、AIを活用する土台ができない | まずデータを集約し、AI活用の前提を整える |
| 既存SaaSを急いで解約し自社構築に切り替える | 法令対応や保守の負担を見落とし、運用が回らなくなる | 置き換える範囲を小さく試し、運用コストまで含めて判断する |
| 株価や見出しだけで判断する | 自社の業務に関係のない話題に振り回される | 利用中のSaaSのAI対応状況と契約条件を確認する |
最初に整えたいのは取引先・顧客のデータ
自社データの中でも、営業部門で最初に確認したいのが、取引先や顧客の情報です。AIが商談の要約や次のアクションの提案をするとき、土台になるのは、誰がどの会社のどの立場にいるかという担当者情報と、異動や昇進に合わせた更新の記録です。ところが現場では、名刺の束、個人のExcel、スマートフォンの連絡先に情報が分かれ、異動や昇進の更新も担当者任せになりがちです。AIの前に、これらを1か所に集めて更新できる状態にしておくと、どのSaaSやAIを選んでも使い回せます。次のチェックで、自社の状態を確認してみてください。
AIに使わせる取引先データ、いまの状態をセルフチェック
当てはまるものを選んでください(登録不要)
チェックが複数つく場合、AIエージェントの導入以前に、データを集めて更新する仕組みが課題になっています。取引先データの入口を整える手段として、名刺管理SKYPCEの商品ページで、機能や連携の対応を確認してみるのも1つの方法です。ほかの手段と比べる場合も、自社の取引先データをどこに集めるのかを先に決めておくと、判断しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「SaaSの死」とはどういう意味ですか?
A. 生成AIやAIエージェントの進化によって、人が画面を操作する前提で業務処理をサブスクリプション型で提供するSaaSのビジネスモデルが崩れる、という主張とそれをめぐる議論のことです。2024年ごろから広まり、2026年初頭には株価の下落とともに市場でも注目されました。
Q2. 「SaaSの死」を言い出したのは誰ですか?
A. 特定の1人が言い出したというより、2024年ごろに一部の技術者やベンチャー投資家がブログやSNSで示した見解が広まったとされています(日経クロステック)。2024年12月に、マイクロソフトのナデラCEOが「伝統的なビジネスアプリケーションはAIエージェント時代に崩壊する可能性がある」と述べたことで、注目が高まりました。
Q3. SaaSは本当になくなるのですか?
A. 近い将来に一斉になくなると考える根拠は乏しく、「消滅」より「役割の変化」と捉える見方が広がっています。ただし、課金モデルの見直しは現実的な論点で、画面の使いやすさだけが価値のツールはAIに吸収される可能性があります。正確なデータの蓄積、法令対応、業務ルールを担うSaaSは、AIエージェントの基盤として残りやすいと考えられます。
Q4. KlarnaはAIでSalesforceを置き換えたのですか?
A. Klarnaは2024年夏にSalesforceなどの利用停止に触れましたが、CX Todayによると、AIだけで全面的に置き換えたわけではありません。Workdayは別のSaaSであるDeelへ移行し、SalesforceのCRMは別のツールと社内で作ったソリューションの組み合わせに切り替えたと同社は説明しています。
Q5. 自社でAIシステムを作れば、SaaSを解約してもよいですか?
A. 急いで解約するのは慎重に考えたほうがよいといえます。作った後の保守、セキュリティ対策、障害対応、法改正への追随が自社の負担になるためです。まず置き換える範囲を小さく試し、運用コストまで含めて比較してから判断するのが現実的です。
Q6. 中小企業はSaaSの利用を控えるべきですか?
A. 控える必要はないと考えられます。AIを業務に活かすには、データが整理されて1か所に集まっていることが前提になるためです。自前でAIシステムを作る体力が限られる企業ほど、AI機能を組み込んだSaaSを活用し、取引先情報などのデータを集約しておくことが現実的な選択肢になります。
まとめ|「SaaSの死」を判断するために押さえたい4つのこと
「SaaSの死」は、AIエージェントの登場によって業務ソフトの役割と収益モデルが問い直されている、という議論です。ナデラCEOの発言、Klarnaの事例、2026年の株価の動きが話題になりましたが、主張を課金・画面・内製に分けて見ると、確からしさには差があります。次の4点を押さえておくと、議論に振り回されずに済みます。
- 「死ぬ」側の主張を、課金・画面・内製・データ基盤の4つの論点に分けて、確からしさを見分ける
- 投資家・ベンダー・AI新興企業といった語り手の立場を確認し、見出しや株価だけで判断しない
- 利用中のSaaSのAI対応、API公開、課金体系、データの取り出しやすさを、契約更新時に確認する
- AIに使わせる取引先情報などの自社データを集約し、名刺管理SKYPCEのようなサービスの資料で自社に合うかを検討する
本記事は、公開情報や報道をもとに議論の構図を整理したものであり、特定企業の株式の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
参考文献
- 総務省「令和8年版 情報通信白書 生成AIの活用方針等」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r08/html/nd121110.html、2026年10月15日確認
- 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2025.html、2026年10月15日確認
- 日経クロステック「生成AI台頭で「SaaSの死」が議論に、代替でなくAIの基盤との見方も」https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/keyword/18/00002/031200310/、2026年10月15日確認
- 日本経済新聞(日経ビジネス)「SaaSの死、セールスフォースはどう見る「AIは我々を代替できない」」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC307N10Q6A330C2000000/、2026年10月15日確認(冒頭部分のみ公開)
- 日経クロステック Active「表面化した「SaaSの死」、進化するAIと折り合いをつける生き残り戦略は?」https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/wp/b/26/03/05/06088/、2026年10月15日確認
- Anthropic(Claude)「Customize Cowork with plugins」https://claude.com/blog/cowork-plugins、2026年10月15日確認
- CX Today「Klarna Didn’t Replace Salesforce & Workday with AI; It Replaced Them with Alternative SaaS Apps」https://www.cxtoday.com/crm/klarna-didnt-replace-salesforce-it-replaced-them-with-alternative-saas-apps/、2026年10月15日確認
- RBCブルーベイ「SaaSの難題 – ソフトウェアの死か再生か?」https://www.rbcbluebay.jp/what-we-think/insights/the-saas-conundrum–the-death-or-rebirth-of-software/、2026年10月15日確認
- @IT「「SaaSの死?」で注目 米AIスタートアップのCEOが語るAIエージェントOS戦略とSaaSのゆくえ」https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2603/16/news091.html、2026年10月15日確認
- マイナビニュース TECH+(ServiceNow Japan提供のPR記事)「「SaaSの死」は現実か。AIエージェント時代に求められる業務基盤と2つの条件」https://news.mynavi.jp/techplus/kikaku/20260708-4672655/、2026年10月15日確認
- Sky株式会社「名刺管理のSKYPCE(スカイピース)特長」https://skypce.net/businesscard/、2026年10月15日確認