SaaS企業とは|ビジネス構造と業界マップを公的データで整理

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  • SaaS企業=SaaSを提供する側の事業者(利用側ではない)
  • 日本企業のクラウド利用率は80.6%(情報通信白書R7・2024年)
  • 個別ランキング化は法令上NG、業種分類で中立的に整理する

「契約しているSaaSの提供元はどんな会社か」「SaaS企業に発注するときに何を見ればいいか」──個人事業主から大企業の担当者まで、SaaS企業との関わりは確実に増えています。日本企業のクラウドサービス利用率は2024年時点で80.6%に達しており(総務省・令和7年版情報通信白書)、いまや業務基盤の中核です。一方で「SaaS企業」と検索される背景には、業界全体の構造や代表的な企業の整理を求める声があります。本記事ではSaaS企業の定義、サブスクリプション型のビジネス構造、Horizontal/Verticalの業界マップ、業務領域別の代表例、規模別の付き合い方までを、Tier1の公的データに基づき中立的に整理します。

目次

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  1. SaaS企業とは|「会社」「業界」「事業」3つの使われ方
  2. SaaS企業のビジネス構造|サブスクリプション・マルチテナント・継続収益
  3. SaaS業界の構造|Horizontal SaaSとVertical SaaSの2分類
  4. 「有名」と検索される代表的SaaS企業の業種分類
  5. SaaS企業との付き合い方|契約先として見るべき点(3層別)
  6. よくある質問(FAQ)
  7. まとめ|SaaS企業を「会社・業界・事業」の3軸で整理する

SaaS企業とは|「会社」「業界」「事業」3つの使われ方

SaaS企業とは、インターネット経由で利用できるソフトウェア(SaaS:Software as a Service)を「提供する側」の事業者を指します。SaaSを「利用する側」の企業ではなく、提供事業者そのものを指す用語として使われるのが基本です。

SaaS企業の役割マップ SaaS提供事業者・SaaS利用企業・クラウドインフラ事業者の3層関係を示す図 SaaS企業の位置づけ(3層構造) 利用層 SaaSを業務で使う企業・個人(個人事業主/中小企業/中堅大企業) 例:会計SaaS/HR SaaS/CRMを契約して業務に活用 提供層=SaaS企業(本記事の対象) 完成したソフトウェアをサービスとして提供する会社 国内外の会計・HR・CRM・コラボ・業種特化型ベンダー インフラ層 クラウドインフラ(IaaS/PaaS)事業者 SaaS企業はこの層を借りて自社サービスを提供することが多い
図1:SaaS企業の役割マップ(提供層に位置づけられる)

「SaaS企業」という言葉は、文脈に応じて3つの使われ方をします。1つ目は「会社」軸で、特定のSaaSを提供している1社を指す使い方。2つ目は「業界」軸で、SaaSを提供する会社が属する業界(SaaS業界)全体を指す使い方。3つ目は「事業」軸で、ある会社が手がけるSaaS事業(部門・サービスライン)を指す使い方です。

日本企業のクラウドサービス利用率は2024年に80.6%へ達しており、10年前の約2倍に拡大しました。「ファイル保管・データ共有」「社内情報共有」「電子メール」「給与・財務会計・人事」などの業務領域でクラウド利用が広がっています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」第Ⅰ部第1章「クラウドサービス」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111210.html、2026年5月29日取得)。SaaS企業はこの広がりを支える「提供層」に位置し、産業の一翼を担っています。

本記事では混乱を避けるため、原則としてSaaSを提供する「会社」を「SaaS企業」と呼びます。SaaSの定義そのものを詳しく知りたい場合は、ピラー記事のSaaSとはを併せて参照してください。

SaaS企業のビジネス構造|サブスクリプション・マルチテナント・継続収益

SaaS企業のビジネス構造は、サブスクリプション課金・マルチテナント基盤・継続収益の3点で特徴づけられます。従来のソフトウェアを「一度買ってもらう」モデルから、「使い続けてもらう」モデルへの転換が、業界全体の前提となっています。

売り切り型とSaaS型の対比 従来のソフトウェア売り切り型とSaaS型サブスクリプションの構造的な違いを4観点で対比した図 売り切り型 vs SaaS型(4観点) 従来:売り切り型 ①課金 一括購入・買い切り ②導入 PCにインストール ③更新 バージョンアップは別購入 ④収益 販売時に大きく計上 所有モデル SaaS型:サブスクリプション ①課金 月額・年額の継続課金 ②導入 ブラウザ・アプリで即利用 ③更新 提供側が継続的に改善 ④収益 期間にわたって平準化 利用モデル(マルチテナント)
図2:売り切り型とSaaS型の構造的な違い

サブスクリプション課金

SaaS企業は月額または年額の利用料を継続的に受け取る形で収益を得ます。利用者から見ると初期費用を抑えやすく、提供側から見ると単発の販売ではなく「使い続けてもらう関係」を築く前提でサービス設計が組まれます。総務省の調査でも、企業がクラウドサービス(SaaSを含む)を利用する理由として「資産や保守体制を社内に持つ必要がない」「どこでもサービスを利用できる」が上位に挙がっており、サブスクリプション型の利点と整合しています(出典:総務省「令和6年通信利用動向調査(企業編)」2025年5月30日、https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR202400_002.pdf、2026年5月29日取得)。

マルチテナント方式

マルチテナントとは、1つのソフトウェア基盤を多数の利用企業(テナント)で共有する仕組みです。提供側は基盤を一元的に運用・更新できるため、規模が大きくなるほど運用コストの効率が上がり、サービス価格を抑えやすくなります。利用側はデータを分離して扱うため、原則として他テナントの情報は見えません。

継続収益(ARR・MRR)の考え方

SaaS企業は売上を「年間継続収益(ARR)」「月間継続収益(MRR)」という形で把握することが一般的です。新規契約の獲得だけでなく、既存顧客の継続利用・拡張利用が重要視されるため、カスタマーサクセス組織を置く会社が増えています。営業組織を分業化する「The Model」と呼ばれる手法や、具体的なKPI設計については、関連記事のSaaS事業とは|代表例から学ぶ定義・営業手法・具体的サービスで詳しく整理しています。

SaaS業界の構造|Horizontal SaaSとVertical SaaSの2分類

SaaS業界は大きく、業務領域を横断する「Horizontal SaaS」と、特定業界に特化した「Vertical SaaS」の2つに分かれます。業務担当者がSaaS企業と関わる場面では、自社の課題がどちらの軸で解決できるかを見極めることが、選定の第一歩になります。

Horizontal SaaSとVertical SaaSの2軸マップ 業務領域横断のHorizontal SaaSと、業界特化のVertical SaaSを業務領域別に整理したマップ SaaS業界の2分類(Horizontal / Vertical) Horizontal SaaS(業務領域横断) どの業界でも共通して使える業務系SaaS 会計/経理 財務・請求・支払 HR/人事 労務・勤怠・採用 CRM/営業 顧客管理・SFA コラボ/会議 チャット・Web会議 名刺・ 広報 Vertical SaaS(業界特化) 特定業界の業務プロセスに合わせて設計されたSaaS 建設・不動産 現場管理・図面 医療・介護 電子カルテ・記録 飲食・小売 POS・在庫管理 物流・運輸 配送・庫内 教育・ 士業
図3:SaaS業界の2軸(業務領域横断 × 業界特化)

Horizontal SaaS(業務領域横断)

業種を問わず、ほぼすべての企業に共通する業務(会計・人事・営業・コラボレーションなど)を支えるSaaSです。総務省の調査では、企業がクラウドで利用するサービスとして「ファイル保管・データ共有」「社内情報共有・ポータル」「電子メール」「給与・財務会計・人事」が上位に挙がっており、これらはHorizontal SaaSの主要領域に対応しています(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」同URL、2026年5月29日取得)。

Vertical SaaS(業界特化)

建設・不動産・医療・介護・飲食・小売・物流・教育・士業など、特定の業界の業務プロセスに最適化されたSaaSです。業界固有の法規制・帳票・取引慣行に対応している点が強みで、汎用ツールでは扱いにくい現場業務に踏み込んでいます。近年は業界ごとに専業のSaaS企業が複数登場しており、業界の中堅・大企業からスタートアップまで利用層が広がっています。

個人事業主や小規模事業者は Horizontal SaaS を1〜2本契約するだけで業務が回るケースが多く、中堅・大企業になるほど Horizontal と Vertical を組み合わせる傾向があります。なお、AI技術の進展がSaaS業界全体に与える変化(賛否両論)については、関連記事の「SaaSの死」議論と賛否で整理しています。

「有名」と検索される代表的SaaS企業の業種分類

SaaS企業を「業種分類」で整理すると、自社の課題と提供事業者の対応領域を結びつけやすくなります。本記事は法令上の理由から、ランキングや優劣比較はおこなわず、各社が公式に公表しているサービス領域を中立的に整理します。

業務領域別のSaaS企業の分類例 業務領域別に国内外のSaaS企業を5区分(会計・HR・CRM/SFA・コラボ・業種特化)で整理したマトリクス。順位ではなく中立的な分類 業務領域別の分類例(中立的整理・順位ではない) 会計・経理・請求 財務会計/請求書発行/経費精算/給与計算 HR・人事・労務 労務管理/勤怠管理/採用管理/タレントマネジメント CRM・SFA・MA 顧客管理/営業支援/マーケティングオートメーション コラボ・コミュニケーション チャット/Web会議/ファイル共有/プロジェクト管理 業種特化(Vertical) 建設/医療/介護/飲食/小売/物流/教育/士業 など
図4:業務領域別のSaaS企業の分類例(順位ではない中立的整理)

「SaaS 有名」「saas 企業 一覧」などで検索される文脈で名前が挙がりやすい企業は、業務領域ごとに分かれます。総務省「令和7年版 情報通信白書」でも、企業がクラウドで利用する業務として「ファイル保管・データ共有」「社内情報共有・ポータル」「電子メール」「給与・財務会計・人事」「スケジュール共有」が上位に挙げられており、本記事の業種分類とおおむね一致します(出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」同URL、2026年5月29日取得)。

業務領域具体的な機能例事業者の傾向
会計・経理・請求会計帳簿、請求書発行、経費精算、給与計算、インボイス対応国内発の上場SaaS企業が複数。個人事業主から大企業まで利用層が幅広い
HR・人事・労務労務手続き、勤怠管理、採用管理、タレントマネジメント国内発のスタートアップが多数。中堅・大企業向けは外資の人事SaaSも存在
CRM・SFA・MA顧客管理、営業支援、商談履歴、見込み顧客育成外資SaaSが歴史的に強く、近年は国内SaaSも領域を広げる
コラボ・コミュニケーションチャット、Web会議、ファイル共有、プロジェクト管理外資の総合プラットフォーム型が中心。国内特化型も領域別に存在
業種特化(Vertical)建設現場管理、電子カルテ、POS、配送管理、学習管理など業界ごとに専業ベンダーが複数。中堅企業発のスタートアップも増加

個別企業名のランキングや「おすすめ◯◯選」といった推奨表現は、景品表示法・ステマ規制の観点から本記事では扱いません。具体的なサービス選定をおこなう際は、各社の公式プロダクトページや料金プラン、サポート体制を一次情報として確認することをおすすめします。

SaaS企業との付き合い方|契約先として見るべき点(3層別)

SaaS企業との付き合い方は、自社の規模・運用体制によって重視するポイントが変わります。個人事業主、中小企業、中堅・大企業の3層に分けて、SaaS企業を契約先として見るときのチェックポイントを整理します。

規模別のSaaS企業選定チェックリスト 個人事業主・中小企業・中堅大企業の3層別に、SaaS企業を契約先として見るときのチェック項目を並列で示した図 規模別のチェックポイント(3層併記) 個人事業主・ フリーランス □ 月額の継続コスト □ 解約のしやすさ □ 提供元の継続性 □ サポートの言語 □ データのエクス  ポート可否 □ 無料/低価格プラン 中小企業 10〜300名規模 □ ユーザー単位の課金 □ 権限管理機能 □ 退職時のID整理 □ 他SaaSとの連携 □ 取引先選定の  社内基準 □ 個人情報の取扱い 中堅・大企業 300名以上 □ ISMAP等の評価 □ シングルサインオン □ 監査ログ・運用 □ SLA・障害対応 □ 全社ガバナンス  設計 □ 委託先監督義務
図5:3層ペルソナ別のSaaS企業選定チェックリスト

個人事業主・フリーランス

個人事業主・フリーランスの場合、月額の継続コストと解約のしやすさが最優先の判断軸になります。SaaSを1〜2本に集約して業務全体をカバーするケースが多いため、提供元の事業継続性、データのエクスポート可否(解約後に自分のデータを取り出せるか)、無料・低価格プランの有無を確認しておくと安心です。

中小企業

中小企業(10〜300名規模)では、ユーザー単位の課金管理、権限管理機能、退職時のID整理が重要になります。複数のSaaSを並行利用するケースが増えるため、それぞれのSaaSで権限設定がどこまで細かくできるか、退職者のIDを速やかに無効化できるかが運用上の論点です。個人情報を扱うSaaSの場合、個人情報保護委員会のガイドラインで「委託先の監督」「安全管理措置」が求められる点も押さえておきましょう(出典:個人情報保護委員会 公式サイト https://www.ppc.go.jp/、2026年5月29日取得)。

中堅・大企業

中堅・大企業(300名以上)では、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)等の第三者評価、シングルサインオン対応、監査ログ、SLA(サービス品質保証)、障害対応体制が選定基準に加わります。全社単位で利用するSaaSは「全社ガバナンス設計」の中に位置づけられ、情報システム部門・法務・経営企画が連携して取引先選定をおこなうことが多くなります。総務省「令和6年通信利用動向調査」でも、企業規模が大きいほどクラウドサービスの導入領域が広がる傾向が確認できます(出典:総務省 報道資料「令和6年通信利用動向調査の結果」2025年5月30日、https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin02_02000178.html、2026年5月29日取得)。

よくある質問(FAQ)

Q. SaaS企業とSaaS事業者は同じ意味ですか?

A. ほぼ同じ意味で使われます。「SaaS企業」は会社・組織そのものを指し、「SaaS事業者」はそのSaaS提供事業を営む主体としての立場を強調する表現です。文脈上はどちらでも通じます。なお、自社内にSaaS事業部を持つ大企業の場合、「会社全体=SaaS企業」とは言わず「SaaS事業を手がける企業」と表現することもあります。

Q. 有名なSaaS企業のランキングはありますか?

A. 民間調査会社や業界メディアが独自基準でランキングを公表しているケースはありますが、本記事では景品表示法・ステマ規制の観点から、特定の順位付けや推奨はおこないません。検索意図によって「売上が大きい」「利用社数が多い」「成長率が高い」など評価軸が異なるため、自社の比較軸を明確にしたうえで、各社の公式IR資料・プロダクトページを直接確認することをおすすめします。

Q. 国内のSaaS企業の代表例を教えてください

A. 業務領域別に分類すると、会計・経理領域、HR・労務領域、CRM・SFA領域、コラボ領域、業種特化領域それぞれに国内発の企業が複数存在します。具体的な社名・サービス名は各社の公式サイトで提供サービスを確認するのが確実です。本記事の「「有名」と検索される代表的SaaS企業の業種分類」で示した業種分類の表を参考に、自社の業務領域と合致するベンダーを比較検討してください。

Q. SaaS企業の業務領域はどう分類されますか?

A. 大きくはHorizontal SaaS(業務領域横断)とVertical SaaS(業界特化)の2分類です。Horizontal SaaSはさらに会計・HR・CRM・コラボなどに細分化され、Vertical SaaSは建設・医療・飲食・物流などの業界ごとに分かれます。総務省「令和7年版 情報通信白書」でも、企業のクラウド利用は「ファイル共有」「電子メール」「給与・財務会計・人事」など複数の業務領域に分散していることが示されています。

Q. 個人事業主・小規模事業者がSaaS企業を選ぶ際の注意点は?

A. 「月額の継続コスト」「解約のしやすさ」「データのエクスポート可否」「提供元の事業継続性」の4点を中心に確認するとよいでしょう。特にデータのエクスポート可否は、将来別のSaaSへ移行する場合に大きく影響します。料金プラン変更や解約時のデータ取り出し手順は、契約前に必ず公式ヘルプで確認してください。

まとめ|SaaS企業を「会社・業界・事業」の3軸で整理する

SaaS企業とは、インターネット経由で利用できるソフトウェアを提供する事業者であり、サブスクリプション課金・マルチテナント基盤・継続収益の3点で従来の売り切り型ソフトウェア企業と区別されます。業界全体は Horizontal SaaS(業務領域横断)と Vertical SaaS(業界特化)の2軸に分かれ、業務領域ごとに国内外のベンダーが存在します。個人事業主から大企業まで、自社の規模・運用体制に合わせて見るべき点が変わるため、ランキングや推奨ではなく「自社の業務領域に合うか」「データの扱いに不安がないか」を軸に判断するのが基本です。

SaaSそのものの定義や、PaaS・IaaSとの違いはSaaSとはで詳しく整理しています。SaaS事業の営業手法(The Modelなど)や事業モデルの細部はSaaS事業とは|代表例から学ぶ定義・営業手法・具体的サービス、AI時代におけるSaaS業界の変化に関する議論は「SaaSの死」議論と賛否で取り上げています。あわせて参照してください。

参考文献

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