SaaS企業とは|ビジネス構造と業界マップ
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- SaaS企業の3つの使われ方がわかる
- Horizontal SaaSとVertical SaaSの違いがわかる
- 企業規模別の付き合い方とよくある失敗がわかる
「SaaS企業」という言葉は、会社そのものを指す場合と、業界全体を指す場合、事業内容を指す場合とで使われ方が異なります。取引先や求人情報を見る際にこの違いを理解しておくと、情報を整理しやすくなります。本記事では、SaaS企業のビジネス構造と業界マップを整理します。SaaS業界への転職を検討している場合はSaaS業界とは|職種と関わり方を解説した記事も参考になります。
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SaaS企業とは
SaaS企業とは、サブスクリプションモデルでソフトウェアサービスを提供する事業者を指し、「会社」「業界」「事業」という3つの使われ方があります。「SaaS企業に転職したい」という場合は会社を、「SaaS業界の動向」という場合は業界全体を、「SaaS事業を始める」という場合は事業内容を指すことが多く、文脈によって指すものが変わります。
SaaS企業のビジネス構造
サブスクリプション課金、マルチテナント方式、継続収益モデルという3つが、SaaS企業のビジネス構造を特徴づける要素です。一度契約を獲得した後も継続的に収益を得られる一方、解約されると収益が失われるため、顧客の利用継続を支える体制づくりが重視されます。
SaaS業界の構造|Horizontal SaaSとVertical SaaS
Horizontal SaaSは会計・人事・グループウェアといった業種を問わず使える業務機能を提供し、Vertical SaaSは特定業界に特化した機能を提供するという2分類があります。日本企業のクラウド利用率は2024年時点で80.6%に達し、SaaS企業が提供するサービスは業界を問わず広く浸透しています。
| 分類 | 特徴 |
|---|---|
| Horizontal SaaS | 業種を問わず使える業務機能(会計・人事・グループウェア等) |
| Vertical SaaS | 特定業界に特化した機能 |
Horizontal SaaSの中でも、グループウェアは業種を問わず多くの企業が使う代表的な領域です。SaaS企業のビジネス構造を理解したうえで、まずはこうした業種を問わないSaaSから実際の使い勝手を確認してみると、業界全体の理解が深まります。
SaaS企業との付き合い方
個人事業主・中小企業は導入コストと使いやすさを、大企業はセキュリティ・既存システムとの連携を重視するなど、契約先として見るべき点は企業規模によって異なります。自社の規模に応じた基準で、SaaS企業を評価することが重要です。
取引先としてSaaS企業を評価する際の確認ポイント
SaaS企業を取引先として選ぶ際は、機能や価格だけでなく、事業継続性・サポート体制・データの取り扱いという3つの観点を確認しておくと、契約後のトラブルを避けやすくなります。
事業継続性については、SaaS企業自体が万一事業を終了したりサービスを終了したりした場合、自社の業務データがどうなるかを事前に把握しておくことが重要です。特にスタートアップ段階のSaaS企業は、機能面での優位性がある一方、大手企業に比べて事業継続の見通しが立てにくい面もあります。契約前に、サービス終了時のデータエクスポート手順や告知期間についての規定を確認しておくと安心です。
サポート体制については、問い合わせ窓口の対応時間、日本語サポートの有無、導入支援の範囲などが企業によって大きく異なります。特にVertical SaaSのように業界特化型のサービスでは、業界知識を持ったサポート担当者がいるかどうかが、導入後の運用のしやすさを左右します。無料トライアル期間中に実際に問い合わせをしてみて、レスポンスの速さや対応の質を確認しておくとよいでしょう。
データの取り扱いについては、SaaS企業が自社の業務データをどのように保管・活用しているかを確認しておく必要があります。多くのSaaS企業は、蓄積したデータをサービス改善やAI機能の開発に活用する方針を利用規約に明記していますが、その範囲や第三者提供の有無は企業ごとに差があります。契約前にプライバシーポリシーや利用規約に目を通し、自社にとって許容できる範囲かどうかを判断することが望ましいとされています。
SaaS企業の理解でよくある失敗パターン3つ
「会社」「業界」「事業」の使われ方を混同する、業種特化のVertical SaaSを業種問わず使えると誤解する、企業規模に関係なく同じ基準で評価するという3つが、SaaS企業の理解でよく見られる失敗の典型です。
失敗パターン1:「会社」「業界」「事業」の使われ方を混同する。文脈を読み違えて情報収集の方向を誤るケースです。話題になっている文脈を確認することが回避策になります。
失敗パターン2:業種特化のVertical SaaSを業種問わず使えると誤解する。自社の業種に合わないサービスを検討してしまうケースです。Horizontal・Verticalの分類を確認することが回避策になります。
失敗パターン3:企業規模に関係なく同じ基準で評価する。大企業向けの評価基準を中小企業にそのまま当てはめ、過剰な要件を求めてしまうケースです。自社の規模に応じた基準で評価することが回避策になります。
SaaS企業の収益指標|ARR・チャーンレートの基礎
ARR(年間経常収益)とチャーンレート(解約率)は、SaaS企業の経営状態を外部から判断する際によく参照される代表的な指標です。取引先や投資対象としてSaaS企業を評価する場面、あるいはSaaS企業への転職を検討する場面のいずれでも、これらの指標を知っておくと企業の実態をつかみやすくなります。
ARR(Annual Recurring Revenue)は、契約している顧客から向こう1年間にわたって継続的に得られる見込みの収益を示す指標です。単月の売上高だけでは、新規契約が多かった月とそうでない月で数字が大きく変動してしまいますが、ARRを見ることで、サブスクリプション型ビジネスの「積み上がっている収益の規模」を安定的に把握できます。SaaS企業が成長しているかどうかを判断する際、前年同時期のARRと比較して伸び率を確認するという見方がよく使われます。
チャーンレートは、一定期間内に解約した顧客の割合を示す指標です。新規契約をどれだけ獲得しても、既存顧客の解約(チャーン)が多ければ、ARRの積み上げは頭打ちになります。チャーンレートが低いSaaS企業は、顧客が継続的に価値を感じてサービスを使い続けている状態にあるといえ、事業の安定性を示す指標の一つとして参照されます。逆にチャーンレートが高止まりしている場合は、機能や価格に対する顧客満足度に課題がある可能性があります。
これらの指標は、上場しているSaaS企業であれば決算資料等で開示されることがありますが、非上場企業では公開されていない場合も多く、必ずしも入手できるとは限りません。取引先として検討する際は、こうした指標の開示有無や、営業担当者への質問を通じて、事業の健全性をうかがい知る材料の一つとして活用するとよいでしょう。
SaaS企業の成長ステージによる特徴の違い
SaaS企業は、創業間もないスタートアップ期、顧客数が拡大する成長期、収益基盤が安定する成熟期という段階によって、機能開発の速度や組織体制、サポートの手厚さが大きく変わります。取引先や転職先としてSaaS企業を検討する際は、その企業が現在どの成長ステージにあるかを把握しておくと、期待できる点とリスクの両方を見積もりやすくなります。
スタートアップ期のSaaS企業は、特定の課題に対する機能開発のスピードが速く、要望を伝えると比較的短いサイクルで製品に反映されやすいという利点があります。一方で、組織体制やサポート窓口がまだ整っていないことも多く、担当者が退職すると引き継ぎが不十分になるといった事業運営上のリスクも抱えがちです。この段階のSaaS企業と取引する場合は、機能の先進性だけでなく、資金調達の状況や事業の継続見通しについても情報を集めておくことが望ましいとされています。
成長期に入ったSaaS企業は、顧客数の拡大に合わせてカスタマーサクセス部門やサポート体制を整備し始める時期にあたります。この段階では、機能追加のペースを維持しながらも、既存顧客の利用継続を支える仕組みづくりに投資が向けられる傾向があります。求人情報を見る際も、成長期のSaaS企業では営業・カスタマーサクセス・開発の各職種で採用が活発になりやすく、組織全体が拡大局面にあることが特徴です。
成熟期のSaaS企業は、既に一定規模の顧客基盤を確立しており、サポート体制やセキュリティ対応、契約実務の面で安定した運用が期待できます。反面、新機能の追加スピードはスタートアップ期に比べて緩やかになりやすく、業界の変化に対応した機能拡張がやや遅れる場合もあります。大企業がSaaS企業を取引先として選定する際、成熟期の企業を優先する傾向があるのは、こうした運用面の安定性を重視するためだと考えられます。
海外SaaS企業と国内SaaS企業を比較する視点
海外発のSaaS企業と国内発のSaaS企業では、日本語サポートの充実度、法制度や商習慣への対応、料金体系の考え方に違いが見られることが多く、比較検討する際はこれらの観点を分けて確認すると判断しやすくなります。
海外SaaS企業は、グローバルで蓄積した開発リソースを背景に、幅広い機能や先進的な技術を取り入れている場合が多い一方、日本語でのサポート対応時間が限定的だったり、問い合わせの窓口が海外拠点になっていたりするケースがあります。また、契約書や利用規約が英語で作成され、日本語版は参考訳という位置づけにとどまることもあるため、契約実務の面で確認すべき事項が増える点には注意が必要です。請求書の発行形式や税務処理についても、国内の商習慣と異なる場合があるため、経理部門と事前にすり合わせておくと安心です。
国内SaaS企業は、日本の商習慣や法制度、業界特有の実務フローを踏まえて機能設計されていることが多く、Vertical SaaSの領域では特にこの傾向が強く表れます。日本語での手厚いサポートを受けやすい一方、グローバル展開している海外SaaS企業に比べると、多言語対応や海外拠点との連携機能が限定的な場合があります。海外展開を予定している企業や、海外拠点とのデータ連携を重視する企業は、この点を比較検討の材料に加えておくとよいでしょう。
いずれの場合も、機能や価格だけで比較するのではなく、自社の業務フローや取引先とのやり取りにどの程度フィットするかという観点から、海外SaaS企業と国内SaaS企業を並べて検討することが、契約後のミスマッチを防ぐことにつながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. SaaS企業とは何ですか?
A. サブスクリプションモデルでソフトウェアサービスを提供する事業者を指し、「会社」「業界」「事業」という3つの使われ方があります。
Q2. SaaS企業とSaaS事業者は同じ意味ですか?
A. 概ね同じ意味で使われますが、文脈によって指す範囲が異なる場合があります。
Q3. SaaS企業のランキングはありますか?
A. 特定企業間の優劣を示すランキングは扱わず、事業分野による分類で整理しています。
Q4. Horizontal SaaSとVertical SaaSの違いは何ですか?
A. Horizontal SaaSは業種を問わない業務機能、Vertical SaaSは特定業界に特化した機能を提供します。
Q5. 中小企業がSaaS企業を選ぶ基準は何ですか?
A. 導入コストと使いやすさを重視する傾向があります。
Q6. 大企業がSaaS企業を選ぶ基準は何ですか?
A. セキュリティや既存システムとの連携を重視する傾向があります。
まとめ|今日からできる3つのこと
- 文脈を確認して使われ方を見極める:会社・業界・事業を混同しません。
- Horizontal・Verticalの分類を確認する:業種の適合性を見落としません。
- 自社の規模に応じた基準で評価する:一律の基準で判断しません。