AIを使って考える技術と、AIの語源・呼び方|発想法の型と業務での使い方

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  • AIの語源と「人工知能」という名前の由来がわかる
  • AIに考えさせる基本5ステップと発想法がわかる
  • 情報漏えい・著作権に配慮した社内への広げ方がわかる

AIを使って考えるとは、AIに結論を出させるのではなく、問いの整理・アイデアの発散・視点の追加・反論といった思考の各段階をAIと分担し、最終判断は人が行う使い方のことです。『AIを使って考えるための全技術』は、この考え方を56の技法にまとめたダイヤモンド社の書籍(石井力重著、加藤昌治監修、2025年6月発行)ですが、本記事は同書の要約ではなく、一般的な発想法と公的機関の資料をもとに、業務での使い方を整理したものです。「AI」という言葉の語源と呼び方、基本の型5ステップ、定番の発想法とプロンプト例、部署別の活用例、情報漏えい・著作権の注意点、社内への広げ方まで順に解説します。まずは下の診断で、いまのつまずきを確認してみてください。

AIを使って考える力を社内に広げるときの、つまずきポイントを診断

Q1. 社内でAIを使って考える場面が増えたとき、いちばん困りそうなことは?

目次

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  1. AIを使って考える力は、個人のコツのままでは社内に広がらない
  2. AIを使って考えるとは|答えを出させず、思考の相棒にする
  3. AIの語源と呼び方|Artificial Intelligenceという名前の由来
  4. AIと一緒に考えるための基本の型5ステップ
  5. 定番の発想法をAIと組み合わせる技術
  6. 業務シーン別|AIを使って考える活用例
  7. AIを使って考えるときによくある失敗
  8. 情報漏えい・権利面で押さえておきたい注意点
  9. AIを使って考える習慣を社内に定着させる進め方
  10. よくある質問(FAQ)
  11. まとめ|明日から始める3つのこと
  12. 参考文献

AIを使って考える力は、個人のコツのままでは社内に広がらない

AIを使って考える力を社内に広げるには、考え方の型と使い方のルールを研修コースにまとめ、全員が同じ基礎から学べる形にするのが近道です。

ここでいう「考える力」とは、AIに丸投げせず、問いを立て、AIの案を選び、事実を確かめて決める力のことです。技法を体系的にまとめた書籍があっても、技法を知っている人が増えるだけでは、入力してよい情報の範囲や出力の確かめ方が人によって違い、成果にも安全面にも差が出ます。個人の工夫を組織で共有できる形に変える部分は、eラーニングなどの研修の仕組みが担えます。

ここでは、そのための基盤になるeラーニングを3つ、役割の違いで並べます。いずれも「AIで考える発想法」専用の教材を提供するサービスではなく、自社の型やルールを学べる形にするための仕組みです。AIに関する教材の有無や範囲は、資料で確認してください。

AIの使い方を社内にそろえる、eラーニング3サービスの役割の違い

自社の状況を選ぶと、合うサービスが強調されます。優劣ではなく役割の違いで並べています

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この状況に合う一例:Smart Boardingは、自社の資料や動画を組み合わせてオリジナルの研修コースを作成できます。

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サービス Smart Boarding SAKU-SAKU Testing OneCompliance(ワンコンプライアンス)
向いている会社 OJTや研修で伝えている内容を、自社独自の研修コースにまとめたい会社 確認テスト付きの研修を、マニュアル不要の簡単な操作で運用したい会社 個人情報・情報セキュリティ・著作権など、AI利用の前提になる法令研修をそろえたい会社
特徴 研修・OJT・eラーニングを1つのシステムで運用。自社の資料や動画と用意された動画を組み合わせたコースを作成でき、LMSで進捗や理解度を確認できる CBTの技術を活かしたテスト機能が中心。動画・スライドの学習と確認テストを組み合わせ、受講状況や結果はリアルタイムで集計される コンプライアンス研修に特化。法務・労務・情報領域のコンテンツを提供し、ダッシュボードや自動リマインダーで受講を管理できる
注意したい点 自社の教育内容を学習プログラムにする際に一定の手間がかかり、担当者との打ち合わせが必要 AIによる不正受講の防止機能などは有償オプション。日本国内仕様で、海外での利用はサポート対象外 料金は受講者の人数に応じて変わる。無料トライアルの期間や内容は問い合わせで確認が必要
資料・詳細

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AIを使って考えるとは|答えを出させず、思考の相棒にする

AIを使って考えるとは、AIに結論を出させるのではなく、問いの整理、アイデアの発散、視点の追加、弱点の指摘といった思考の各段階をAIと分担し、最終判断は人が行う使い方のことです。

生成AIは、大量の文章から学習した言葉のつながりをもとに、それらしい文章を生成する仕組みです。そのため、何も条件を付けずに質問すると、学習データの中で最もよくある、つまり最も平均的な答えが返ってきやすくなります。「新商品のアイデアを出して」と頼んで無難な案しか出てこないのは、AIが手を抜いているのではなく、仕組みどおりに動いている結果です。

一方で、AIには人間にない強みもあります。疲れずに何十案でも出せること、自分では思いつかない分野の知識を持ち込めること、遠慮なく反対意見を述べられることです。人は自分の案に愛着を持ちやすく、会議では立場や空気に左右されます。AIを相棒にすると、こうした人間側の弱点を補いながら考えを進められます。

つまりポイントは、AIを「答えの出る検索窓」として使うか、「一緒に考える同僚」として使うかの違いです。両者の違いを整理すると次のようになります。

観点答えを出させる使い方考えるために使う使い方
最初の依頼「〇〇の案を出して」目的・前提・制約を伝えたうえで、考える手順を指定する
やり取りの回数1回で終わる発散、選別、深掘り、反論と何往復もする
AIの役割回答者発案者、聞き手、批判役、別の立場の代弁者
人の役割出力をそのまま使う問いを立て、選び、事実を確かめ、決める
得られるもの平均的な答え自分だけでは届かなかった選択肢と、その根拠
表1:AIに答えを出させる使い方と、考えるために使う使い方の違い

経済産業省と総務省が取りまとめた「AI事業者ガイドライン」(第1.2版)でも、AIを事業に使う側に対して、人間中心の考え方に立って利用することが求められています。「最終判断は人」という原則は、倫理上の要請であると同時に、成果の質を上げるための実務上の前提でもあります。AIそのものの基本や、中小企業が安全に始める手順は、AIとは?中小企業が安全に始める3ステップで解説しています。

書籍『AIを使って考えるための全技術』とはどんな本か

『AIを使って考えるための全技術』は、思考と発想法の専門家である石井力重氏(アイデアプラント代表)が著し、加藤昌治氏が監修した書籍で、ダイヤモンド社から2025年6月に発行されました。副題は「最高の発想」を一瞬で生み出す56の技法です。出版社の書籍紹介ページでは、56の考える技法をAIで再現した本として紹介されています。

同ページの構成を見ると、技法は、すぐにアイデアがほしいとき、アイデアを磨きたいとき、アイデアを実現したいとき、考えるヒントがほしいとき、という場面別の4部に整理されています。技法の中身や使い方は同書で確認してください。なお、著者側のアイデアプラントのサイトでは、読者向けのプロンプトツールが案内されています。

本記事は、同書の内容を紹介・要約するものではありません。ブレインストーミングやSCAMPER法など古くから知られる一般的な発想法と、公的機関が示すAI利用上の注意点をもとに、業務で使うための考え方を独自に整理しています。

AIの語源と呼び方|Artificial Intelligenceという名前の由来

AIは英語のArtificial Intelligenceの略で、日本語では「人工知能」と呼びます。この名称は、1955年のダートマス会議の提案書で使われたことで広まったとされています。

AIの定義や3度のブームといった歴史を含む全体像は別の記事に任せ、ここでは、言葉の成り立ち(語源)と名前の由来に絞って確かめます。

Artificialの語源|「人の技でつくられた」という意味

Artificialは、辞書の語源解説によると、中世ラテン語のartificialis(人の技でつくられた)にさかのぼり、さらにラテン語のartificium(技・技巧・職人技)に由来します(出典: Merriam-Webster)。「人工的な」とは、自然にできたものではなく、人の技でつくられたものという意味です。

Intelligenceの語源|「知能」と訳される言葉

Intelligenceは、ラテン語のintelligentiaから中世フランス語を経て英語に入った言葉です(出典: Merriam-Webster)。日本語では「知能」「知性」と訳され、物事を理解し、新しい状況に対応する働きを指します。

「AI」という名称の由来|1955年のダートマス会議の提案書

この言葉が研究分野の名前として広まったきっかけは、マッカーシー、ミンスキー、ロチェスター、シャノンの4人が1955年8月31日付でまとめた提案書です。提案書は、1956年の夏にダートマス大学で、2か月・10人でartificial intelligenceの研究を行うことを提案しています。この夏の研究会がダートマス会議と呼ばれ、AIという研究分野の出発点とされています。

提案書の出発点は、学習をはじめ知能のあらゆる側面は、機械でシミュレートできるほど精密に記述できるという仮説でした(要旨)。日本でも、総務省の情報通信白書が「人工知能(AI)」の研究が1950年代から続いてきたと説明しており、「人工知能」という呼び方は公的な資料でも使われています。

別の言い方と、関連語との違い

AIの別の言い方は「人工知能」で、略さない英語表記はArtificial Intelligenceです。読み方や、AI・機械学習・深層学習・LLM・生成AIの関係は、AIは何の略?正式名称Artificial Intelligenceの意味と関連用語の違いで整理しているため、本記事では重ねて説明しません。

語源をたどると、AIはもともと「人間の知的な働きを機械に行わせる」ことを目指した分野の名前です。人の代わりに考える機械のように聞こえますが、実際の生成AIは学習した言葉のつながりから文章を出す仕組みで、結論の責任までは担えません。だからこそ、次の章のように、AIに答えを出させるのではなく、考える相棒として使う型が重要になります。

AIと一緒に考えるための基本の型5ステップ

AIに考えさせるときは、問いを定める、前提を渡す、広げる、絞る、確かめるの5段階で進めると、どんな発想法を使う場合でも出力の質が安定します。

ステップ1:問いを一文で定める

最初に「何を決めたいのか」を一文で書き出します。「売上を上げたい」では広すぎて、AIも一般論しか返せません。「既存顧客のうち、半年以上購入のない層に再購入してもらうための施策を決めたい」のように、対象と決めたいことを具体にします。問いが定まらない場合は、それ自体をAIに相談してかまいません。「いま悩んでいることを話すので、決めるべき問いを3つの候補に整理して」と頼むと、自分の頭の中が整理されます。

ステップ2:前提と制約を渡す

AIは、こちらの会社の事情を何も知りません。業種、顧客層、予算の規模感、使える人員、過去に試してうまくいかなかったことなど、判断に効く前提を箇条書きで渡します。制約を伝えないと、実行できない理想論が並びます。ただし、ここで顧客名や個人情報、未公表の数値などを入力しないよう注意が必要です(詳しくは後述の注意点で解説します)。固有名詞は「A社」「中堅の製造業顧客」のように抽象化して渡しても、発想の質はほとんど落ちません。

ステップ3:型を指定して広げる

アイデアを広げる段階では、「たくさん出して」ではなく、発想法の型を指定します。「代わりのものに置き換える観点で」「真逆の条件を仮定して」「顧客の立場になりきって」などの型があると、AIの出力は平均値から離れます。この段階では質より量を優先し、20案、30案と多めに出させ、評価はまだしません。具体的な型は次の章で紹介します。

ステップ4:基準を決めて絞る

出そろった案を、自分で決めた基準で絞ります。「実行コストが小さい」「3か月以内に効果を確かめられる」「既存顧客との関係を損なわない」など、評価軸を先に言語化し、AIに各案を採点させると整理が早く進みます。ただし採点はあくまで叩き台です。AIは自社の現場感を知らないため、点数が高くても実感に合わない案は、なぜ合わないのかを考えること自体が新しい気づきになります。

ステップ5:反論させて確かめる

残った案について、AIに批判役を任せます。「この案が失敗するとしたら、どんな理由が考えられるか」「懐疑的な上司ならどこを突っ込むか」と聞くと、見落としていたリスクが浮かびます。同時に、案の中に含まれる事実や数字は、必ず一次資料で確かめます。生成AIは、もっともらしい誤り(ハルシネーション)を含む回答をすることがあるためです。

定番の発想法をAIと組み合わせる技術

ブレインストーミング、SCAMPER法、逆設定、ペルソナ、なぜなぜ分析といった定番の発想法は、AIに「型」として指定するだけで、平凡な出力を具体的で多様な案に変える道具になります。

ここで紹介する発想法は、いずれも数十年前から企業の研修や会議で広く使われてきた一般的な手法です。以下のプロンプト例は本記事で独自に作成したもので、自社の状況に合わせて自由に書き換えて使えます。

ブレインストーミング|量を出して偏りを崩す

アレックス・F・オズボーンが提唱した、批判をせずに自由に数多くの案を出す手法です。AIとの相性が最もよく、人間同士の会議では出しにくい突飛な案も遠慮なく出せます。コツは、案の数と「ありきたりな案を除く」条件を明示することです。

プロンプト例

社内の書類申請の手間を減らす方法を、30案出してください。一般的な「電子化する」「ルールを見直す」は除き、他業界のやり方を借りた案、費用がほぼかからない案、少し突飛な案をそれぞれ10案ずつに分けてください。評価はまだしないでください。

SCAMPER法|7つの観点で既存の案を変形する

オズボーンのチェックリストをもとに、ボブ・エバールが整理した手法で、置き換える(Substitute)、組み合わせる(Combine)、応用する(Adapt)、修正する(Modify)、別の用途に使う(Put to other uses)、取り除く(Eliminate)、逆にする・並べ替える(Reverse/Rearrange)の7つの観点で既存のものを変形させます。ゼロから考えるより、今ある商品や業務を土台に改善案を出したい場面で力を発揮します。7つの観点をすべてAIに順番に当てはめさせると、自分では1つか2つの観点に偏りがちな思考を網羅的に広げられます。

プロンプト例

当社の新入社員向け研修(3日間の集合研修)の改善案を、SCAMPER法の7つの観点それぞれで3案ずつ出してください。観点ごとに見出しを付け、各案に「実行の手間:大・中・小」を添えてください。

逆設定|わざと失敗させる方法を考える

「どうすれば成功するか」ではなく「どうすれば確実に失敗するか」を先に考え、その裏返しを対策にする手法です。人は成功の方法を考えるときほど楽観的になりますが、失敗の方法は具体的に思いつきやすいという性質を使います。AIに失敗の方法を大量に挙げさせてから、それぞれの逆を考えさせると、見落としていた落とし穴の予防策がまとめて手に入ります。

プロンプト例

社内で新しいツールを導入するとき、「誰にも使われずに終わる」ための方法を15個挙げてください。次に、その15個それぞれを防ぐための具体的な対策を1つずつ書いてください。

ペルソナ|別の立場になりきってもらう

具体的な人物像を設定し、その人になりきって意見を述べてもらう手法です。顧客、現場の担当者、経理、法務など、自分とは違う立場の視点を短時間で集められます。「40代、従業員30名の会社の総務担当、IT担当を兼任していて忙しい」のように、状況まで細かく設定するほど、出てくる意見が具体的になります。複数の人物を設定して、互いの意見に反論させる使い方も有効です。ただし、AIが演じる人物像はあくまで想像であり、実際の顧客の声の代わりにはなりません。気づきを得たら、実際の顧客や現場への確認で裏付けを取ります。

なぜなぜ分析と5W1H|深掘りと抜け漏れ確認

問題の原因を「なぜ」と繰り返して掘り下げるなぜなぜ分析は、製造業の品質管理などで広く使われてきた手法です。AIに「なぜ」を問い続けてもらうと、自分では表面的な原因で止めてしまいがちな思考を、根本原因まで導いてもらえます。また、企画書や計画を作ったあとに、いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのようにの5W1Hで抜け漏れがないかをAIにチェックさせると、説明不足の箇所が見つかります。

5つの手法を、使う場面ごとに整理すると次のとおりです。ゼロから選択肢を広げたいならブレインストーミング、既存の商品や業務を改善したいならSCAMPER法が始めやすい型です。

発想法向いている場面AIに指定するポイント
ブレインストーミングゼロから選択肢を広げたい案の数、除外する定番案、評価しないこと
SCAMPER法既存の商品や業務を改善したい7つの観点すべてを順に当てはめること
逆設定計画の落とし穴を事前に潰したい失敗の方法を先に列挙させ、その逆を対策にすること
ペルソナ別の立場の視点が欲しい人物の属性と置かれた状況を細かく設定すること
なぜなぜ分析・5W1H原因を掘り下げたい、抜け漏れを確認したい表面的な原因で止めず、繰り返し問うこと
表2:定番の発想法とAIに指定するポイント

こうした型は、一人が知っているだけでは組織の力になりません。よく使うプロンプトと使い方のルールを社内で共有し、全員が同じ基準で確かめられる仕組みがあると、部署や個人による差が縮まります。自社の現状を、次のセルフチェックで確かめてみてください。

AIを使って考える進め方、社内の状況をセルフチェック

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業務シーン別|AIを使って考える活用例

AIを使って考える技術は、企画だけでなく、営業の提案準備、人事の制度設計、総務の業務改善など、判断や工夫が必要な業務全般に使えます。部署ごとに使いどころと、人が必ず確認すべき点が異なります。

部署考えるテーマの例相性のよい型人が必ず確認すべき点
企画・マーケティング新サービスの切り口、キャンペーン案ブレインストーミング、SCAMPER法市場データの正確さ、他社の商標や表現との重複
営業提案の論点整理、想定される反論への準備ペルソナ、逆設定顧客名や取引条件を入力していないか、自社の実績と合っているか
人事研修テーマの検討、制度変更の影響整理ペルソナ、5W1H従業員の個人情報を入力していないか、労働関係法令との整合
総務・管理部門申請手続きの簡素化、ムダな作業の洗い出しSCAMPER法、なぜなぜ分析社内規程との整合、変更の影響を受ける部署への確認
経営・管理職方針の検討、会議の論点整理逆設定、ペルソナ未公表の経営情報を入力していないか、最終判断の根拠が説明できるか
表3:部署別のAI活用テーマと確認ポイント

たとえば営業担当なら、商談前に「慎重な購買担当者」「コスト重視の経理部長」といったペルソナをAIに演じてもらい、想定される質問と反論を洗い出しておくと、準備の抜けが減ります。人事なら、研修制度を変えるときに「新入社員」「中途入社者」「育成を担う管理職」それぞれの立場から懸念点を出させると、説明資料で先回りすべき論点が見えます。

日常的な使い方の幅を広げたい場合は、ChatGPTの活用方法をまとめた記事も参考になります。

部署ごとに「どの業務で、どの型を使い、何を人が確かめるか」を決めておくと、活用が属人的になるのを防げます。決めた内容は、研修コースとして全員が見られる形にしておくと、新しく入った社員や異動してきた社員にも同じ基準を伝えられます。自社の資料や動画で部署別のコースを作りたい場合は、前述のSmart Boardingのように、オリジナルの研修コースを組めるサービスが選択肢になります。

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AIを使って考えるときによくある失敗

よくある失敗は、1回の質問で結論を求める、前提を伝えない、出力を検証せずに使う、AIに判断を委ねる、の4つです。いずれも「相棒ではなく答えの機械として使う」ことから生まれます。

失敗パターン起きること改善のしかた
1回の質問で結論を求める平均的な答えで満足し、考えが深まらない広げる、絞る、確かめるの往復を前提にする
前提を伝えない自社では実行できない一般論が並ぶ業種・規模・制約を抽象化して渡す
出力を検証せずに使う誤った数字や存在しない制度が資料に混じる事実や数値は一次資料で確認する手順を決める
判断をAIに委ねる決定の理由を説明できず、責任の所在があいまいになる評価基準は人が決め、AIの採点は叩き台として扱う
自分の意見を補強させるだけ都合のよい根拠ばかり集まり、判断が偏るあえて反対の立場から反論させる
表4:AIを使って考えるときの失敗パターンと改善策

特に見落とされやすいのが最後の「自分の意見を補強させるだけ」です。生成AIは、質問の仕方に引っ張られやすい性質があります。「この案のよいところを教えて」と聞けばよいところが並び、「この案は正しいよね」と聞けば同意が返ってきやすくなります。自分の考えを確かめたいときほど、「この案に反対する立場から、最も強い反論を3つ挙げて」と、逆向きの問いを立てる習慣が大切です。

情報漏えい・権利面で押さえておきたい注意点

AIと考えるときは、個人情報や機密情報を入力しないこと、生成物が他人の著作物に似ていないか確かめること、出力の誤りを前提に人が確認することの3点を、社内ルールとして明文化しておくことが重要です。

個人情報と機密情報の入力

個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(令和5年6月2日)で、個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認するよう求めています。また、本人の同意なく個人データを入力し、応答の出力以外の目的で取り扱われる場合は、個人情報保護法に違反する可能性があるとして、サービス提供事業者が個人データを機械学習に利用しないこと等を確認するよう注意喚起しています。考えるための相談では、固有名詞を伏せても発想の質はほとんど変わりません。顧客名、従業員の氏名、未公表の数値などは入力せず、「A社」「中堅の顧客」のように置き換える運用を徹底しましょう。

生成物と著作権

文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日取りまとめ)で、生成AIと著作権の関係を整理しています。著作権法は、思想や作風といったアイデアそのものは保護せず、創作的な表現を保護する考え方に立っています。一方で、AIが出力した文章や画像が既存の著作物に似ている場合に著作権侵害となるかどうかは、類似性や依拠性が論点になります。アイデアや発想法そのものを使うこと自体は問題になりにくくても、社外に出す前に、特定の作品の表現に似ていないかを確認する必要があります。特定の書籍や記事の文章をそのままAIに読み込ませ、要約や言い換えを大量に作って公開する使い方も、権利侵害の懸念があるため避けるのが無難です。なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談してください。

誤った出力への備え

生成AIの回答には、事実と異なる内容がもっともらしく含まれることがあります。AIと考えた結果を社外への提案や社内の決定に使う場合は、事実・数字・制度について誰がどの資料で確認したかを残す手順を業務フローに組み込んでおくと、後から判断の根拠をたどれます。

ルールは決めるだけでなく、研修で全員にそろえる

ここまでの3点は、ルールを文書にしても、読まれなければ守られません。個人情報の扱い、情報セキュリティ、著作権といった内容を、全員が同じ基準で学ぶ場を設けておくと、確認の根拠も残せます。コンプライアンス研修に特化したeラーニングの一例が、OneCompliance(ワンコンプライアンス)(株式会社Oyster)です。法務・労務・情報領域の研修を提供し、個人情報保護法や情報セキュリティのほか、AIに関する著作権を含む著作権のコンテンツが用意されています。ダッシュボードや自動リマインダーで受講状況を管理でき、法改正などに合わせて内容が更新されます。一方で、扱うのはコンプライアンス領域の研修であり、AIを使って考えるための発想法を学ぶ教材ではありません。料金は受講者の人数に応じて変わるため、資料や公式サイトで確認してください。

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社内に法務専任担当や教育専任担当がおらず、社内のみでの実施が困難

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AIを使って考える習慣を社内に定着させる進め方

社内への定着は、基礎知識とルールをそろえる、小さなテーマで試す、うまくいった型を共有する、研修で全員に広げる、の4段階で進めると、個人の工夫を組織の力に変えやすくなります。

  1. 基礎知識とルールをそろえる:AIの仕組み、入力してよい情報の範囲、出力の確認手順を全員が理解している状態を作ります。
  2. 小さなテーマで試す:会議のアイデア出しや業務改善案など、失敗しても影響の小さいテーマで、数名のチームが基本の型を試します。
  3. うまくいった型を共有する:効果のあったプロンプトと、その使いどころを社内の共有場所にまとめ、誰でも再利用できるようにします。
  4. 研修で全員に広げる:基礎知識と型を研修の形にし、新しく入った社員も同じ土台から始められるようにします。

上司・リーダーはAIの使い方より「考えた過程」を見る

定着の成否を左右するのが、現場の上司の関わり方です。部下が「AIはこう言っていました」と報告してきたとき、そのまま受け入れるのも、AIを使ったこと自体を否定するのも、考える習慣を育てません。「あなたはこの案をどう評価しますか」「採用するならどんな条件が必要ですか」「採用しない理由があるとしたら何ですか」と問い返し、AIの出力を部下自身の判断として説明できるかを確かめることが大切です。使うツールやプロンプトの細かな書き方に口を出すより、どんな問いを立て、どの案をどんな基準で選び、どこを自分で確かめたのかという「考えた過程」を評価の対象にすると、AIへの丸投げを防ぎつつ工夫する意欲を損ないません。また、問いが具体的すぎると選択肢が狭まり、抽象的すぎると答えがぼやけるため、「もう一段広い目的から考えると別の手はないか」と問いの抽象度を調整する助言も、上司が担いやすい役割です。最終的な判断の責任は人にあるという前提を、上司が日々のやり取りの中で示し続けることが、組織の中で「AIを使って考える」文化を根付かせる近道になります。

1つ目と4つ目は、個人の努力だけでは進みにくい部分です。AIの基礎を社員ごとに説明して回るのは現実的ではなく、理解度にも差が出ます。eラーニングを使えば、全員が同じ内容を自分のペースで学べ、受講状況も管理できます。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している「デジタルスキル標準」は、ビジネスパーソンがDXに関するリテラシーを身につけるための「DXリテラシー標準」などを示しています。組織として学習の仕組みを整えることは、AIを使って考える文化を根付かせる土台になります。

効果を確かめるときは、「AIを使った人数」だけでなく、「会議で出る案の数が増えたか」「企画書の手戻りが減ったか」など、考える質に関わる変化を追うと、取り組みの価値を説明しやすくなります。研修の効果についても、受講したかどうかだけでなく、基本を理解できているかを確かめる仕組みがあると、次の改善につなげやすくなります。

研修のあとに理解度を確かめたい場合の一例が、SAKU-SAKU Testing(株式会社イー・コミュニケーションズ)です。CBTの技術を活かしたテスト機能が中心で、動画やスライドで学んだあとに確認テストを出せます。自社のオリジナル設問と用意済みの設問を1つのテストにまとめられ、受講状況や結果はリアルタイムで集計されます。コンプライアンスや情報セキュリティなどの研修コンテンツも用意されていますが、AIを使って考えるための教材が含まれるかどうかは、資料で確認してください。AIによる不正受講の防止機能などは有償オプションで、日本国内仕様のため海外での利用はサポート対象外です。料金はプランによって異なるため、資料や公式サイトで確認してください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. AIを使って考えるための全技術とは、どんな本ですか?

A. ダイヤモンド社から2025年6月に発行された書籍で、著者は石井力重氏、監修は加藤昌治氏です。副題は「最高の発想」を一瞬で生み出す56の技法で、出版社は56の考える技法をAIで再現した本として紹介しています。技法の中身は同書で確認してください。本記事は同書の要約ではなく、一般的な発想法と公的資料をもとに業務での使い方を整理したものです。

Q2. AIに考えさせるには、どうすればよいですか?

A. AIに結論を出させるのではなく、問いを一文で定め、前提と制約を渡し、発想法の型を指定して案を広げ、基準を決めて絞り、反論させて確かめる、という5ステップで進めます。何往復もやり取りし、最終判断と事実の確認は人が行います。

Q3. AIはなぜ「AI」と呼ばれるのですか?

A. AIは、Artificial Intelligence(人工知能)の頭文字を取った略称です。この名称は、1955年にマッカーシーらがまとめたダートマス会議の提案書で使われたことで広まったとされています。Artificialは「人の技でつくられた」、Intelligenceは「知能」を意味する言葉です。

Q4. 業務でAIに相談するとき、入力してはいけない情報は何ですか?

A. 顧客や従業員の個人情報、取引条件や未公表の数値などの機密情報は、原則として入力しないようにしましょう。考えるための相談では、固有名詞を「A社」「中堅の顧客」のように置き換えても発想の質はほとんど変わりません。入力してよい範囲を社内ルールとして明文化しておくことが大切です。

Q5. AIと一緒に考えた案を使うと、著作権の問題はありますか?

A. アイデアや発想法そのものは、著作権法では保護の対象とされていません。ただし、AIが出力した文章や画像が既存の作品の表現に似ている場合は、著作権侵害となりうるとされています。社外に出す前に類似の表現がないかを確認し、判断に迷う場合は専門家に相談してください。

Q6. AIを使って考える習慣を社内に広めるにはどうすればよいですか?

A. まずAIの仕組みや入力ルールといった基礎知識を全員でそろえ、小さなテーマで試してうまくいった型を社内で共有するのが効果的です。基礎知識やルールの部分は、eラーニングなどの研修で学べるようにすると、社員ごとの理解度の差を縮めながら全社に広げられます。

まとめ|明日から始める3つのこと

AIを使って考えるとは、AIに答えを丸投げせず、思考の各段階を分担する相棒として使うことです。問いを定め、前提を渡し、発想法の型で広げ、基準を決めて絞り、反論させて確かめる。この流れを身につけると、AIの出力は平均的な答えから、自分では届かなかった選択肢へと変わります。業務で取り入れる際は、次の3つから始めてみてください。

  1. 次の会議や企画で、ブレインストーミングかSCAMPER法を1つ選び、AIに型を指定して案を出させてみる
  2. 入力してよい情報の範囲と、出力を人が確認する手順を社内ルールとして書き出す
  3. うまくいった型の共有、AI利用のルール、理解度の確認を研修の形で整える方法として、eラーニング3サービスの資料を取り寄せて比べる

参考文献

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