DX人材とは|DSS-P ver.2.0の6類型・育成と外注の進め方
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- DSS-P ver.2.0で人材類型は5つから6つ(データマネジメント類型を新設)
- 日本企業の85.1%がDX推進人材の不足を回答(IPA「DX動向2025」)
- 規模別の判断軸:個人事業主=兼務+伴走外注/中小=推進リーダー+研修+部分外注/中堅大=6類型内製化+DX認定
DX人材という言葉は広く使われていますが、誰を指し、何を担う人なのかは企業ごとに解釈が分かれます。経済産業省と独立行政法人IPA(情報処理推進機構)は2022年に「デジタルスキル標準(DSS)」を公表し、2026年4月にはver.2.0へと改訂しました。改訂版では「ビジネスアーキテクト」「データマネジメント(新設)」など6つの人材類型が整理され、企業規模に関わらずDX推進に必要な役割の共通言語として使えます。本記事では、DSS-P ver.2.0の6類型と全社員向けのDXリテラシー標準(DSS-L)の関係、規模別の育成と外注の判断軸、活用できる公的支援制度までを、一次情報を引きながら解説します。
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DX人材とは何か ─ 経産省・IPAの定義
DX人材とは、デジタル技術を活用してビジネスや組織の変革をリードする人材を指します。明確な法的定義はありませんが、経済産業省と独立行政法人IPA(情報処理推進機構)が公表する「デジタルスキル標準(DSS)」が、現時点で最も信頼できる公的な指針です。DSSは2022年12月にver.1.0が公表され、2026年4月にver.2.0へと大幅に改訂されました(出典:経済産業省「デジタルスキル標準ver.2.0(DSSver.2.0)を公表します」2026年4月16日、https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260416002/20260416002.html 2026年5月30日取得)。
DX人材とIT人材の違い
DX人材とIT人材は、ともにデジタル技術に関わる人材ですが、目的が異なります。IT人材は、システムの設計・開発・運用といった技術提供を主な役割とします。一方でDX人材は、デジタル技術を手段として「ビジネスや組織の変革」をリードする役割を担います。経済産業省「DX推進ガイドライン」では、DXを「データとデジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。技術導入そのものではなく、変革を通じて競争優位を確立する点に重きが置かれます。
DSS-LとDSS-Pの2層構造
デジタルスキル標準は、対象と目的の異なる2つの標準で構成されています。全てのビジネスパーソンが身につけるべき基礎を示す「DXリテラシー標準(DSS-L)」と、DX推進を担う専門人材の役割とスキルを示す「DX推進スキル標準(DSS-P)」です。DSS-Lは「Why(DXの背景)」「What(活用するデジタル技術)」「How(データ活用)」「マインド・スタンス」の4項目で構成され、職種や役職を問わず全社員が共有すべき共通言語となります。DSS-Pは、DXを牽引する6つの人材類型を定義し、役割ごとに必要なスキルを示します(出典:IPA「デジタルスキル標準(DSS)策定の背景・目的」、https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/about.html 2026年5月30日取得)。
DSS-P ver.2.0で再編された6つの人材類型
DSS-P ver.2.0は、AIの進展とデータ利活用の重要性を踏まえ、人材類型を5つから6つに再編しました。経済産業省のプレスリリースでは「データマネジメント類型の新設、ビジネスアーキテクト類型やデザイナー類型のロールの見直し」が改訂のポイントとして示されています(出典:経済産業省「デジタルスキル標準ver.2.0(DSSver.2.0)を公表します」2026年4月16日)。
6つの人材類型と主な役割
| 類型 | 主な役割 | 備考 |
|---|---|---|
| ビジネスアーキテクト | ビジネス変革の目的を定義し、戦略を行動に落とし込み、関係者を巻き込んで成果を創出 | DX推進の中核 |
| デザイナー | 顧客視点でサービス・製品・体験を設計 | UI/UX・サービスデザイン |
| データマネジメント | データの安全性・信頼性を確保し、組織全体でのデータ利活用を促進 | ver.2.0で新設 |
| データサイエンティスト | データ収集・解析、AIシステムの設計・実装・運用 | AI活用の中核 |
| ソフトウェアエンジニア | 製品・サービスを提供するシステム/ソフトウェアの設計・実装・運用 | 技術実装の中核 |
| サイバーセキュリティ | 情報セキュリティの確保とリスク管理 | 横断的な安全性担保 |
IPAは「DXを推進する人材は、他の類型とのつながりを積極的に構築した上で、他類型の巻き込みや他類型への手助けを行うことが重要」と説明しています。指示や依頼の関係ではなく、複数の類型が場面ごとに協働するという考え方です。中小企業や個人事業主では、一人が複数類型を兼務する形が現実的な出発点となります。
自社に必要な類型をどう見極めるか
すべての企業で6類型すべてを揃える必要はありません。DXで何を変えたいか(ビジネスモデル変革なのか、業務効率化なのか、顧客体験向上なのか)によって優先順位は変わります。まずは「ビジネスアーキテクト」相当の役割を担う人を1名定め、自社が解決したい課題に応じて他類型を加えていく方法が一般的です。中堅・大企業ではDX推進部門として6類型を内製化する選択肢がありますが、中小企業では兼務+外部委託の組み合わせ、個人事業主では1人で兼務しつつ伴走型コンサルや研修を活用する形が現実的です。
なぜ85.1%の企業で不足するのか ─ DX動向2025の現状
独立行政法人IPAが2025年6月26日に公表した「DX動向2025」は、日本・米国・ドイツ3か国の比較調査を行い、日本企業の85.1%でDXを推進する人材が不足していることを明らかにしました。この数値は米国・ドイツと比較して著しく高く、日本のDX推進における構造課題となっています(出典:IPA「DX動向2025-AI時代のデジタル人材育成」、https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/discussion-paper/dx2025_digital_talent_ai_era.html 2026年5月30日取得)。
量と質の両面で不足している
DX動向2025は、不足が「量」だけでなく「質」の両面に及ぶことを指摘しています。量の不足とは、必要な人数が単純に揃わない状態です。質の不足とは、人数は確保できても期待するスキル水準に達していない、もしくは役割の定義そのものが曖昧で評価できない状態を指します。質の不足は、採用要件を定義できない、研修の効果を測定できない、配置後の活躍が見えないといった形で表面化します。
不足の3つの構造課題
不足の背景には次の3つの構造課題があります。第一に、職務定義の曖昧さです。DX推進を担う人材のスキルセットが明確に定義されていない企業が多く、採用や育成、評価がかみ合わない状況が続いています。第二に、AI活用スキルの要求変化です。生成AIの登場以降、求められるスキルが急速に拡張され、データ分析・プロンプト活用・AIガバナンスなど、評価軸そのものが流動的になっています。第三に、人事制度の硬直性です。従来の職務等級制度や人事評価が、変革を担う人材の働き方と整合しないまま運用されている企業が少なくありません。
これらは大企業に固有の課題ではなく、中小企業や個人事業主にも形を変えて発生します。中小企業では「誰がDXを担うかを社内で言語化できていない」状態が、個人事業主では「経営者本人が兼務しているがスキルセットを棚卸しできていない」状態が、それぞれ質的不足として現れます。
育てるか外注するか ─ 規模別の判断軸
DX人材は内製化(育成・採用)と外注(コンサル・委託)の組み合わせで確保するのが現実的です。すべてを内製化できる企業は限られ、すべてを外注化すると変革のノウハウが社内に残らないというトレードオフがあります。経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」(2024年9月改訂)でも、人材の確保・育成は経営戦略の一部として位置づけられています(出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc.html 2026年5月30日取得)。
個人事業主:1人で兼務+伴走型コンサル
個人事業主の場合、DX人材を専任で確保することは現実的でなく、経営者本人が複数類型を兼務しながら、外部の伴走型コンサルや研修を組み合わせる形が出発点となります。重要なのは、まずDXリテラシー標準(DSS-L)の4項目(Why/What/How/マインド)を学習し、自社の経営課題を言語化することです。実装はSaaSやクラウドサービスを活用して外部委託化し、自分はビジネスアーキテクト相当の役割に集中する考え方が向いています。無料の公的研修(マナビDX等)から着手する選択肢もあります。
中小企業:推進リーダー+研修+部分外注
中小企業では、DX推進リーダーを1〜2名定め、社内研修と外部委託を組み合わせる形が現実的です。推進リーダーはビジネスアーキテクトの役割を主に担い、データマネジメントやサイバーセキュリティは社内人材を研修で底上げします。実装系(ソフトウェアエンジニア・データサイエンティスト)は外部委託する選択も多く、その際は人材開発支援助成金やIT導入補助金などの公的支援を活用すると初期費用を抑えられます。
中堅・大企業:6類型の内製化+DX認定取得
中堅・大企業では、DX推進部門を設置し、6類型を計画的に内製化する選択肢が現実的です。スキルマップを作成し、各類型ごとに必要な人数と習熟度を定義したうえで、採用・育成・配置を計画します。経済産業省の「DX認定制度」を取得すれば、税制優遇(DX投資促進税制)や対外的なブランディングにつながり、東証「DX銘柄」を視野に入れることも可能です。
DXコンサルを選ぶ際の確認ポイント
外注先としてDXコンサルを選ぶ際は、次の3点を確認すると判断しやすくなります。第一に、自社の業界・業種での支援実績があるかどうかです。第二に、契約形態が成果報酬型か工数型かを明確にし、双方のリスク分担を確認します。第三に、成果指標(KPI)を契約段階で言語化し、振り返りのタイミングと方法を合意することです。コンサル側に丸投げするのではなく、自社の推進リーダーがビジネスアーキテクトとして伴走することで、ノウハウを社内に残せます。
リスキリングの進め方と公的支援制度
既存社員のリスキリングは、DX人材を社内で育てる現実的な手段です。新規採用に比べて時間はかかりますが、業務知識を持つ社員が変革を担うことで、変革ノウハウが社内に蓄積される利点があります。リスキリングは3段階で進めると整理しやすくなります。
リスキリング3段階
| 段階 | 対象 | 内容 | 想定期間 |
|---|---|---|---|
| 1. リテラシー底上げ | 全社員 | DSS-Lの4項目を学習し、DXの共通言語を社内で揃える | 1〜3か月 |
| 2. 役割別習得 | 推進候補者 | DSS-Pの6類型から自社で必要なロールを選び、対応スキルを習得 | 3〜6か月 |
| 3. 実務適用 | 推進担当者 | 実プロジェクトで習得スキルを適用し、振り返りで定着 | 6か月〜 |
活用できる主な公的支援制度
リスキリングを進める際、活用できる公的支援制度がいくつかあります。代表的なものを紹介します。
- 人材開発支援助成金(厚生労働省):従業員に職務関連の専門訓練を実施した事業主に対し、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」などDX関連の訓練に対応するコースがあります。
- 第四次産業革命スキル習得講座認定制度(リスキル/経済産業省):IT・データ等の専門的かつ実践的な教育訓練講座を経済産業大臣が認定する制度です。認定講座は厚生労働省の「教育訓練給付制度」の対象となり、受講者の費用負担を軽減できます。
- マナビDX(経済産業省・IPA):デジタルスキル標準に準拠した学習コンテンツをポータルサイトで提供しています。無料・有料の講座が並び、リテラシー底上げの初期段階で活用できます。
制度の対象要件や支給額は年度ごとに改定される場合があります。申請前には必ず厚生労働省・経済産業省の公式ページで最新の要件を確認してください(出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html 2026年5月30日取得)。
規模別の優先取り組みステップ
個人事業主はマナビDXの無料コンテンツでDSS-L4項目を学習することから始めると無理がありません。中小企業はまず推進リーダー候補者にDSS-Pの該当類型の研修を実施し、人材開発支援助成金で経費を圧縮します。中堅・大企業はDX推進部門全体のスキルマップを作成し、6類型ごとに必要な習熟度を定義したうえで、認定講座と社内研修を組み合わせて計画的に充足します。いずれの規模でも、最初の一歩は「自社に必要な類型を1つ選ぶ」ことから始めると現実的です。
よくある質問(FAQ)
Q1. DX人材とIT人材の違いは何ですか?
A. IT人材は技術提供(システム設計・開発・運用)を主な役割とし、DX人材はデジタル技術を手段として「ビジネス・組織の変革」をリードする役割を担います。両者は重なる部分もありますが、目的が異なります。経済産業省「DX推進ガイドライン」では、DXを「ビジネスモデル・業務・組織・プロセス・企業文化の変革を通じて競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
Q2. 小規模事業者でもDX人材は必要ですか?
A. 規模に関わらず必要です。個人事業主の場合は、経営者本人がビジネスアーキテクト相当の役割を兼務する形が一般的です。専任の人材を確保する必要はなく、DXリテラシー標準(DSS-L)の4項目を学習して経営課題を言語化し、必要なときに外部の伴走型コンサルや無料の公的研修(マナビDX等)を組み合わせる形で始められます。
Q3. DX人材の不足はどれくらい深刻ですか?
A. IPA「DX動向2025」によれば、日本企業の85.1%でDXを推進する人材が不足しています。米国・ドイツと比較して著しく高い水準であり、不足は「量」と「質」の両面に及びます。職務定義の曖昧さ、AI活用スキルの要求変化、人事制度の硬直性が背景にあります。
Q4. DX研修にかかる費用の相場は?
A. 費用は研修の種類・期間・形式(集合研修/オンライン/個別コンサル等)によって幅があるため、一律の相場を示すことは難しい状況です。重要なのは、人材開発支援助成金などの公的助成や、第四次産業革命スキル習得講座認定制度の対象講座を選ぶことで、自社負担を軽減する設計です。具体的な助成額は厚生労働省・経済産業省の公式ページで最新の要件を確認してください。
Q5. DXコンサルは何を依頼できますか?
A. 一般的には、DX戦略策定、業務プロセス可視化、ツール選定、PoC(概念実証)支援、社員向け研修、推進体制構築の伴走などを依頼できます。コンサル会社によって得意領域は異なるため、自社の業界・業種での実績、契約形態(成果報酬型/工数型)、成果指標(KPI)の設定方法を契約前に確認することが大切です。丸投げではなく、自社の推進リーダーが伴走する形がノウハウ蓄積につながります。
Q6. リスキリング助成金は誰でも使えますか?
A. 人材開発支援助成金は、雇用保険適用事業所の事業主が対象で、従業員に職務関連の専門訓練を実施した場合に申請できます。コース別(人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなど)に対象要件と助成率が定められており、年度ごとに改定される場合があります。個人事業主や中小企業も対象になるコースが多くありますが、申請前には必ず厚生労働省の公式ページで最新の要件を確認してください。
まとめ|今日からできる3つのこと
DX人材は「6類型を全部揃える」ことが目的ではなく、自社の経営課題に応じて必要な役割を選び、内製と外注を組み合わせて確保するものです。最後に、規模に関わらず今日から着手できる3つのアクションをまとめます。
- 自社に必要な人材類型を、DSS-P ver.2.0の6類型(ビジネスアーキテクト/デザイナー/データマネジメント/データサイエンティスト/ソフトウェアエンジニア/サイバーセキュリティ)で洗い出す。
- DXリテラシー標準(DSS-L)の4項目を全社員(個人事業主は経営者本人)の共通言語にし、無料の公的研修(マナビDX等)から学習を始める。
- 人材開発支援助成金や第四次産業革命スキル習得講座認定制度など、活用できる公的支援制度を1つ選び、申請準備に入る。
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参考文献
- 経済産業省・独立行政法人IPA「デジタルスキル標準ver.2.0(DSSver.2.0)を公表します」/経済産業省/2026年4月16日/https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260416002/20260416002.html /取得日:2026年5月30日
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